1946年にネルーが書いたインド国民啓蒙歴史書『インドの発見』のドラマ化
です。原作をもとに1話約45分全53話の大作連続ドラマで、イメージ的には、NHK大河ドラマのような映像と演出です。こ
ういう作品で日本史のドラマをNHK大河ドラマでできないものだろうか、と思ってしまいました。出演者が10人程度と、規模
は小さく、予算もそれ程大きくはないようなので、戦争場面も、最初演習かと思ってしまったほどですが、それでもカメラワーク
や演出を工夫していることがわかる仕上がりとなっています。インドの映画は、シリアスな歴史映画であっても、ミュージカルが
入ってしまうのがイマイチに感じられることが多いのですが、本作はミュージカル場面はないという点で非常に特徴的です。 このドラマは、ヒンドゥー語で字幕はありません。すると、私のような極少数もの好きを除けば、基本的に視聴者はヒンドゥー 語のわかるインド人ということになるものと思われます。すると、各回の再生数には、インド人の興味と好みが反映されている可 能性が高そうです。そこで、各回のアクセス回数をグラフにして比較してみました。 意外なのは、日本でも有名なカーリダーサの2回で、初回は1万5千を越えているものの、第二回は1万以下となっているこ と。日本ではインド文学といえばサンスクリット文学が思い浮かぶほどですが、インド国民にとっては、こうした歴史ドラマより も単発の映画の方が馴染みがあるのでしょうか。カーリダーサの映画はインドで何本か製作されていますが、いずれも1966年 以前なので、最近ではあまり関心をもたれていないのかも知れません。 一方、中世ラージプート叙事詩の『プリトゥヴィーラージ・ラーソー』やラージプートの英雄ラーナ・サンガを扱った『ラー ナ・サンガ、イブラヒーム・ローディ、バーブル』、マラータ同盟の英雄シヴァージーを扱った『シヴァージー』の回は2万を越 えていて、なんとなくですが、ヒンドゥーの英雄を扱った回に人気があるような印象を受けます。 南インドのドラヴィダ語圏を扱った回は6回あり、古代を扱ったサンガム文学の回、中世チョーラ王朝を扱った回、近世ヴィ ジャヤナガル王国を扱った回がそれぞれ2回ずつあるのですが、これらが1万程度かそれ以下なのは、私が視聴した youtubeの版がヒンドゥー語だからであって、調べてはいませんが、もしかしたらドラヴィダ系諸語の版もあがっていて、 それらの南インドの回についての視聴回数はもっと多いかも知れません。 インドについては、中央公論社の世界の歴史シリーズの『古代インドの文明と社会』とムガル帝国から英領インドへ』を読んで いたので概要は把握しているつもりでしたが、それでもインド人の視点では随分異なった印象を受け、非常に刺激になりました。 ところで、牛の戦車競争って、インド映画にあってもよさそうなのに、見たことがありません。 この作品中のどこかでそれに近い映像を見た気がするのですが、見つからないので、ネット上でみかけた近い映像を載せてみまし た。こちらにインドではなさそうですが、二頭立て牛の戦車競争の映像があります。 https://www.youtube.com/watch?v=RYZbiQPrz4I しかし、激しさはいまいちです。私がみた記憶のある牛の戦車競争の映像は、以下の写真のような激しさで、戦車が脱輪しそうな くらい跳ね上がって大迫力でした(以下のものは戦車ではなく、犂のようなものに乗っています)。 以下のものはパキスタンのものですが、これもイメージに近い感じです。こんな感じの激しさで、草原を10くらいの二頭立て の牛の戦車が一斉に競争するというものを見た記憶があるのです。。。 https://www.youtube.com/watch?v=lDTtSSQhiCM 追記:後日、この番組で見た牛レースの場面を見つけました。第二十九話の冒頭部分でした。 もうひとつ。第38話の冒頭に登場した17世紀のマラータ同盟の城砦の映像。左画像の奥が、右画像の断崖となっている。マ ハーラーシュートラ州のラーイガド城(Raigarh)。左中央にあるのが、マラータ同盟創設者の英 雄シヴァージー廟。Wikipediaにいくつか写真が載っているが、断崖の様子の画像はないため、ここに掲載してみまし た。 |