Bharat Ek Khoj(भारत एक खोज/インドの発見)(4)第24話から27話

 インド初代首相ネルーの著書『インドの発見』のドラマ化。1988年インド製作。1話約 40-60分全53回。(全回タイト ル一覧表はこちら)。今回は中世の北インドを扱った第24回から第27回。


第24回  デリー・サルタナット(1)アフガン族とプ リトビーラージ・ラーソー 47'54" (28377)

 前半1/3がガズニー朝の話、後半1/3が、中世のヒンドゥー語叙事詩「プリトゥビラージ・ラーソー」の話です。
 
 「プリトゥビラージ・ラーソー」とは、チャンド・バル ダーイーによるラージプート族のチャウハーン朝の 王プリ トゥヴィーラージ3世(1149-92年/在1169-92年)の恋と武勇を主題とした吟遊叙事詩。中世インド で最もポピュラーな恋愛詩とのことです。

 7世紀中頃、北インドを統一していたヴァルダナ朝崩壊後、西部インドからデカン高原はラージプート族が割拠する土地となっ ており、現ラージャスターン地方では、領土の拡大縮小を繰り返しながらチャウハーン朝が長く続き、10世紀からインド侵入を 続けるイスラーム勢力と抗争を繰り返していました。12世紀中頃のチャウハーン朝は、デリーをも支配していたが、アフガンス タンを本拠とするイスラーム王朝であるゴール朝に デリー近郊のタ ラーインの戦い(1192年)で敗北し、以降ムガル朝が滅亡するまで、デリーはイスラーム勢力の治めるところと なったとのことです。

 このドラマでは、途中チャンド・バルダーイーだと思われる宮廷詩人が登場し、歌いつつドラマのナレーションを行っていま す。1191年のプ リトゥヴィラージ3世とムハンマド・ゴーリーの最初の激突場面は全部後世のミニアチュールを背景に宮廷詩が歌われる構成と なっています。ラージプート吟遊詩を味わうのにいいかも。こぶしがきいていて、日本の民謡に似た感じ。

 以下右側が、チャウハーン朝の宮廷とプリトゥビラージ3世、左がゴール朝の宮廷とムハンマド・ゴーリー(在 1173-1206年)。恋愛叙事詩の主人 公ということで、最初、左の人物がプリトゥビラージ3世だと思っていたのですが違っていました。史実では、この頃のプリトゥ ビラージ3世は42歳くらいの筈ですが、そのままに見える、いかつい無骨なおっさんとして描かれています。いかにも武人とい う 感じ。更に、英雄叙事詩でもあるのだから、先頭きって戦場に出ているのかと思っていたのですが、プリトゥビラージ王は宮廷に いて、戦場に出るのはムハンマド・ゴーリーの方。ムハマンド・ゴーリーの方がハンサムでスマートです。



 ムハンマド・ゴーリーは、プリトゥビラージ3世からの使者を激昂して殺してしまい開戦しますが、敗北(1191年)し、プ リトゥビラー ジ3世の宮廷に連行されて来られ、寛大に許され、宝石などを贈られて解放されます。

 一方、カナウジ王ジャイチャンドの娘サニョーギターは、 侍女達の噂話に、まだ会ったことも無いプリトゥビラージ3世に恋焦がれるようになり、王の方もサニョーギターの噂を聞き恋焦 がれるようになった(らし い)。下左がサニョーギター、右側は、連行されてきたムハンマド・ゴーリー(右)とその家臣。戦場で敗れてそのまま連行され てきたらしいので汚れています。
 
 
 
 カナウジ王ジャイチャンドとチャウハーン朝は、ライバル同士なので、サニョーギターとプリトゥビラージ3世の関係は、ロメ オとジュリエットのような関係らしい。プリトゥビラージ3世が、カナウジ王宮の外に馬と共に突然現れ、それを窓から見つけた サニョーギターが、馬にのって王宮を脱出、プリトゥビラージ3世が、サニョーギターをさらってゆくところで終わり。どうやら この回と次の回は続いているようです。

 話が前後してしまいましたが、この回の前半1/3は、ガズニー朝のマフムードの帷幕にやってくる、アッバース朝の使者や桂 冠詩人た ちなどが描かれます。フィルダウシーも登場し、マフムードの前で「シャーナーメ」を熱唱しています(左がフィルダウシー、右 がマフムード王(在998-1030年)。シャーナーメって、こういう語感なんだ、ということをはじめて知りました。独特の 韻律がありますね。




第25回 ラーソーとアラーウッディーン・ハルジー 41'40" (12452)

 前回の続き。サニョーギターとプリトゥビラージ3世が寝台の上でいちゃついているところに、家臣が何度も「ムハンマド・ ゴーリーが迫っ てます!」と注進に来る。ようやく重い腰を上げるプリトゥビラージ3世。ここで二回目のムハッマド・ゴーリーとの戦闘(1192年)が描か れますが、今回も実戦映像は無く、戦いのミニアチュールをバックに宮廷詩人が歌って終わり。そうして、戦いは敗北に終わり、 今度はムハンマ ド・ゴーリーの宮廷に、敗戦したプリトゥビラージ3世が連行される。そうして、盲目にされ、幽閉されてしまうのでした。デリーはゴール朝 に占領されてしまいます。

 史実では、プリトゥイラージ3世は、このまま処刑されて終わるのですが、伝説では、盲目のプリトゥイラージ3世にムハンマ ド・ゴーリーが、弓矢で的を射よ、と命じ、プリトゥイラージ3世は、急に向き直り、ムハンマド・ゴーリーを射殺することに成 功した、というなっていて、このドラマでも、そのような終わり方となっています。

 この回の後半は、アラーウッデイーン・ハルジー(在1296-1316年)のお話。ハルジー朝開祖ジャラールッディーン (在 1290-96年)を、狩りにまぎれて射殺し、アラーウッデイーン・ハルジーが即位。評判通りの悪人面です。



宮廷内で相談している場面で終わり。この回も次回に続きます。


第26回  デリー・サルタナットとパドマー ヴァッ ト 45'15" (10932)

 アワディー語で書かれた神秘的叙事詩パドマーヴァットの話。1540年頃アウド地方のイスラーム教徒のマ リク・ムハンマド・ジャアーヤシー (1477-1542年)によって書かれた封建的伝説で、とラージプターナー英雄チッタウルの王ラワ ル・ラタン・シンの妻で あるパドマーワティー(またはパドミ ニー)の冒険譚(ジャアーヤシーとは、地名のジャイス出身の意味)。詩の一部は、シェール・シャー(在1539-45年)に捧げられた。

  冒頭に、チッタウル王の居城であるチッ トール城の 遺構の映像が登場します。峻厳な断崖の上の城壁を築いていて難攻不落な風情。




 叙事詩は、前回も登場したアラー・ウッディーン・ハルジー(在1296−1316年)の時代。前回と同じ役者さんが演じて いる が、顔にしわがよっていて、老けメイクとなっているが、悪役づらは変わらない(以下中央が、アラー・ウッディーン・ハルジー)。右がチットール王、左の赤 と黄色の女性がチットール王の妻パドマーワティー。



 この包囲は1303年の事件らしい。スルタンからの書状に激怒するチットール王。なにやら使者が行き来して交渉するが、決 裂したらしく、鎧をまとうハルジー。 チットール城に押し寄せるハルジー軍。チットール城側は城壁の上で侍女達が舞を舞って見せ、ハルジー軍を徴発する。見上げるハルジーは、部下に命じて城壁 の上で舞う侍女達を射る。しかし更に踊 り続ける踊り子達。城内の窓から見守るパドマーヴァット。なかなか落城しない。再び使者が行き来する。その後、スルターン・ハルジーとチットール王はチェ スで決着をつけることになる。

 チェスが終わった後も二人は談笑していたが、結局兵士が来てマハーラージャ・チットールは捉えられて牢獄に入れられてしま う。泣くパドマ(下左)。



 パドマは二人の家臣になにやらお願いし、夫の捕らえられている洞窟に向かう。変装し、スルターンの使者だと途中の衛兵をだ ましてやってき たらしい。結局ばれて乱戦になるが、夫王を助け出すことに成功する(下左が、洞窟に向かうパドマーワティー)、右が城壁の上で舞う侍女たち)。




第27回 融合 59'10" (11573)

 概ねフィーローズ・シャー(在1351-1388年)時代の話。イスラームの神秘主義運動であるスーフィズムとヒンドゥー 神秘主義運動の融合の話。この回は政治情勢はなく、社会情勢の話。最初はイスラーム神秘主義思想家ア ミール・ホスロー(1253-1325年)の合唱(カッ ワーリー)の様子が描かれる。アーミル・ホスローは、現在にまで続くヒンドゥースターニー音楽の 祖といえる人物です。アーミル・ホスローにおいて、既にイスラーム思想とヒンドゥー思想の融合が見られる、とする。

 中盤の筋は不明。チャンダという王女が登場し、詩と歌とともに話が進む。有名な詩の題材を扱っているようだ。夫の王はイス ラームの人との決闘に出て行く。夫は怪我したものの勝利する。チャンダはロリという男性と恋仲になり、駆け落ちする。しか し、道中チャンダは毒蛇に噛まれて死去。夫も一緒に荼毘になる。夫版サティーのようである。この回のテーマからすると、片方 がヒンドゥー教徒でもう片方がイスラーム教徒なのかも知れない。

  最後はカ ビール(1440-1518年)の話。ヒンドゥーとイスラームの融合を図る思想を説いた。シーク教の開祖ナー ナク(1469-1539年)へも影響を与えたとされる思想家について触れられて終わる。

IMDbのドラマ紹介は こちら

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