※※お断り
この日本語参考訳は英語版からの重訳です。ギリシア語は読めませんのでギリシア語原文の参照は行っていません。これを掲載する目的は、内容自体にあるわけ
ではなく、全体像を簡単にちょっと知りたい、という方のための材料を提示することにあります(日本語訳作成目的の詳
細ついては以前こ
ちらの記事に記載しています)。頌詩の全体構成については、こ
ちらの記事をご参照ください。英訳文の出典は、
Chales.A.Behr著 『P. Aelius Aristides: The Complete Works, vol. 2』 Leiden: Bril(1981年) のp73からp96、註釈はpp373-379です。全部で109節に分かれています。 素人の翻訳であることが明瞭にわかるように、意訳はしておらず、自分の能力の範囲内に応じた直訳調です。正直詩文の 翻訳は私のスキルではたちうちできません。細かい文言を確認したい方は、英訳原文か、ギリシア語原文を参照するよ う、お願いいたします。今後も逐次気づいた箇所は修正してゆく予定です。英訳情報の入手や、英訳文の入手自体につい て複数の方のご厚意を受けました。私はこういうことを書くのにふさわしい者ではありませんが、この場を借りてお礼申 し上げます。※※ 本文に節題はありませんが、おおむね前半で過去の諸帝国を論じ、後半でローマ帝国を論じています。 【過去の帝国論】
一部ローマ帝国の分析も登場していますが、基本的には過去の帝国を分析しています。
14-23)アケメネス朝
24-27)アレクサンドロス
28-39)ローマ帝国
40-57)アテナイとラケダイモン(スパルタ)
【ローマ帝国論】
58-69)全体について
70-89)軍隊
90-91)政体
92-109)全体
以下本文です。 1)海や陸地を旅する人々にとって、各自が思いつくものごとに誓いを立てる習慣がある。ある詩人は、「金
の角の乳香」に誓った
と、冗談を言っている。しかしわれわれ紳士たちは、この旅行や航海の間、この誓いを行ったのである。その誓いとは野蛮なものでも、調子はずれでも、我々の
芸術からかけ離れているわけでもなく、もし我々が安全を保持されるべきだとしたら、われわれは
公式にこの都市に祈願したであろう。
2)その都市の地位に相応しい誓いをすることは不可能で、本当にもうひとつ別の誓いを必要とするのである。この ような演説をもたらすことができるということは、私よりも偉大な人に相応しいことであり、それはその都市の偉大 で重い尊厳に相応しいのである。われわれはもう演説を約束したし、それを我々はこなせたであろう。なぜなら他の 人々は、神々の基準に相応しいものに対して、彼らの基準に相応しいものを用いることさえしているからである。 3)しかしこの偉大な都市に暮らす紳士諸君、もしあなたたちが私の誓いが失敗してしまわないよう心配したり、私 の挑戦を助けようとするならば、我々の賛歌のまさに始まりにあたって、我々はそのような才能を持った人々に会う ことが出来たと率直にいう ことができる、「もしもその人は以前は文化的ではなかった」としても、エウリピデスの引用をすることで彼らを通してそのようにいうことができるのである。 彼は直ぐに技巧をつけ、賢くなり、彼自身の能力を越える主題について話すことさえできるのである。 4)全ての諸君、この都市について詠う者、詠うであろう者、しかし彼らは、静かであったかどうか、よりも、でき る限り静かであったことでそれを損なってしまうのであり、存在している状態を明白にもせず、損ないもせず、汚染 されない状態で知られるようにし続けるのである。演説は、もう一 方では、彼らの意思とは反対のことをする。彼らの賛歌においては、彼らは、彼らが管理しているものを正確には描いていない。しかしもし忍耐があって、芸術 性を持ち、ハンサムな容貌と管理された肉体を描く一部の画家たちが失敗すべきだとするならば、全ての人は確実 に、彼は何も描かなかった方がましだった、と言うであろうし、人々に劣位な模倣を示すのではなく、寧ろ(画家 の)体自身がさらされるようになるのだ。 だから、この都市についても同じことだと私は考えているのだ。 5)演説はその驚異の多くを損ない、まるで誰か遠征の数を報告したがっている人と同じ効果を持つように私
には見える。例えば
クセルクセスは感嘆とともに 彼が1万や2万の兵士とそれと同じくらいの騎兵を見たという具合に表現すべきであるが、一方
で、彼を驚嘆させた全てのことの断片を話すことさえなかったことになるのである。
6)この都市は、雄弁術の力を暴いた最初の都市である。十分ではないにしても。それについて正しく話すことがで きるわけでも、それを正しく見ることもでさえできないが、その都市を守護している全てを見る神よりも、全てを見 るアルゴス*が必要とされるのである。 *アルゴスは100の目を持つとされるギシリア神
多くの占領された丘や平原の都市化された牧草地や、ひとつの都市の名前へと集約された広大な領域を目にし
た者は、正確に彼の眺めを把握できるであろうか?
7)ホメロスが雪についていったことは、それは「高い山々の頂と岬の天辺と水仙の野原と、人々の豊かな耕作地に 積もって」「港と灰色の海の浜辺に降り注ぐ」、であった。この都市もそのようなことをしているのである。それは 岬の天辺に積もり、 その領土の土地に積もり、海に降りてゆく。そこは人類共通の貿易市場があり地上で共通の生産市場がある。この都市ではどこであれ、す べての中心から彼を妨げるものは無く、ひとつのものはすべて同じなのである。 8)表面に降り注ぐだけではなく、確かに比喩を越えてそれは空中に向かって立ち上がり、偉大な高みに達し、つま りはその上昇は雪の積雪や岬自身に積もる雪とも比較できない。ちょうど一人の男のように、規模と強さにおいて他 の全てに遠く優越し、彼が 彼の頭上を越えて他のものを持ち上げない限り、それは満たされることはない。だからその都市は領土を広大に拡大して移住しても満足しないし、それはその頭 を同じ規模の他の諸都市の頭上に次々と上げても満足しない。このようにその名前はそこに与えられ、ここでの状況 は強さ以外のものはない。それゆえ、もしある人がその全てを諸都市に対して設置し、移植し、広げようとするべき なら、諸都市はいまや地上はるか 空中に高く、ひとつがその上にと重なり、いまやイタリアの間にあるすべての空間が満たされ、イオニア海へと拡大してゆくつながりをもったひとつの都市が形 成された、と私は考えるのである。 9)今や、私にはそれを十分に描くことはできないくらい(その都市は)偉大だけれども、眼はよりよい証人であ る。ある人が他 の都市の事例に あるようにいうかも知れないが、ここには境界が無いのである。一部の人々はアテネとラケダイモン人に注目し、前者の規模はその力の二倍あり、後者の規模は その力より大きくはないように見えていた−この不吉な注目点はその例には欠けていたのであろう。しかし、この都 市 については そのように言われることはなく、この都市は、あらゆる点で偉大であり、このような規模で一貫した力を獲得したことはないほどのもので ある。もし誰かが帝国全体を考える場合、世界の一つの断片が世界全体を支配しているなどと考えてみる場合、彼は その都市に驚愕するのであるが、もし彼がその都市自身やその境界を考える場合、世界全体が偉大なひとつの都市に よって統治されている、ということについてはもはや驚かないので ある。 10)ある散文作家はアジアについて、「全てを支配する者は、太陽の軌道の全てを支配している」といったが、彼 は、太陽が 昇って沈む ところからアフリカ全てとヨーロッパを除外していたので、それは真実ではなかった。しかしいまや太陽の軌道とあなたの所有物は等しく、太陽の軌道は常にあ なたの領土にあると、覆されたのであった。あなたの帝国の境界を定めるいかなる海洋上の岩はなく、(境界を定め る)ケリドネ諸島とキアネ諸島*もなく、海へ向かって日帰りで走る馬もなく、あなたは定まった領域に支配を限定 されることもなく、 あなたの力の限界を誰も定めないのである。しかし海は、あなたの帝国と人々がすむ世界の中央を通して区切りなく一種の帯のように流れているのである。 *カリアスの和によればペルシア人との間に置かれた境界 11)海について、諸大陸が「広大で大きく広がって」おり、これらの地域からの生産物をあなたに供給している。 ここではすべての土地と海からその季節の全ての収穫物や、それぞれの土地、川、湖の生産物やギリシア人と蛮族の 工芸品も運ばれてくる、すなわち、もし 誰かがこれら全てのものを見たいと思えば、彼は世界中を旅行してまわるか、この都市にいればそれを見ることができるに違いない。全て の富は常にそこにあり、成長し、それぞれの人々の間で生産される、ということ以外にはありようがないのである。 多くの商船 が、毎日終日全ての人々の全ての種類の商品を運んでここに到着する。つまり、その都市は地上全てへの共通の工場のようなものである。 12)インドや幸福なるアラビアからの多くの貨物を見ることができ、もしあなたが望むのであれば、木々が人々の ために未来にまでそこにそのまま残されていることや、もし彼らが必要とするなら、彼ら独自の産物を納めにここに 来なくてはならないということを想像したりすることができる。更にそこに蛮人世界からの装飾品やバビロンからの 衣服を着た人々をみることができる。その品々は、もしナクソス(*エーゲ海の島)やキトノス島(*どちらもキュ クラデス諸島)からの荷物を持っている商人がアテネにお運び込むよりも、より容易に、より莫大な量に達している のである。 13) 船の到着と出発は決してやむことはなく続き、つまりある人は港に対してだけではなく、海に対してさえ感嘆するのだ。ヘシオドスは大洋の果てについて語っ た、 そこは全てのものが始まりと終わりへと向かって流れているのだと。そう、全てのものはここに集めてこられるのである。存在し、あるいは、かつて存在した、 交易、船乗り、農業、鉱山の精錬業者、全ての工芸人たちすべてが産みだされ、成長したのである。ここで見ないも の何であれ、存在したことがないし、存在しない。つまり、今日の諸都市に関するその都市か、過去に滅んでしまっ た諸帝国に関するその帝国の どちらがより偉大で優れているのかを決めるのは簡単ではないのである。 14) 確かに、多くのことが話され、このような偉大なことや多くのことが話されてきた後とあっては、私は恥
ずかしく思う。そ
れらの言葉は私を失敗させるべきだろうし、私は蛮人の帝国とギリシア人の力にも言及するように見えるだろう。そして私はアイオリス人の詩人の反対のことを
しようとしているように見えるだろう。彼らが、彼らの時代の何かを見くびろうとする時はいつであれ、古代人の間にあ
る
有名で偉大なものをそれと比較してきた。彼らがそれを特に暴く方法だと信じているがゆえに。しかし私は、あなたの環境がどのように優越しているかを示す他
の方法をとることができないので、古代の平凡な諸事と比較することする。あなたは、あなたの優越性により、もっとも
些細なことについても、もっとも偉大なことさえ含め全てのものを作り上げた。私は議論のためにもっとも偉大なことを
選択するつもりだけれども、恐らくあなたはこれらについて笑うことだろう。
15) ペルシア帝国について考えてみよう。その帝国は一度はギリシア人の間で多大な名声を得て、”大王”という称 号を、それ を持つ王に与えた。私は彼ら以前の重要ではない帝国は省略する。その規模やそこで行われたことについて順番にわれわれについてみてよう。 われわれは、彼らがどのようにその所有物(領土)を享受したか、どのように彼らの臣民を取り扱ったのかを検討しなけ ればならない。 16) 最初は、今の大西洋があなたにとって意味していることが、その王にとっての地中海であった時のこと(につい て述べよ う)。ここが彼の帝国の国境だった。すなわち、イオニア人とアイオリス人が、彼の領域の境界に住んでいたのだ。王が「日の昇るところから日の没するところ まで全て」のギリシアを一度横断しようとしたとき、彼の大いなる失敗についてのみ驚愕することになったのだった。彼 は多くの領土を奪われたという事実によって、彼の境界の区分を示したのだった。なるほど、彼はギリシアは統治するこ とからは遠かったので、 イオ ニアは彼の王国の境界を形成し、彼は実際に、矢が届く距離の点で遠く、円盤を投げるには遠いがために、世界の居住地の半分とその上地中海自身 (を治めるというあなたの事実)によって、あなたの帝国にはかなわないのである。 17) いや、彼はこれらの境界にいたるまで常に王であったわけではない。長い間アネネ人の力やラケダイモン人の力 に負ってい たのだ。彼はイオニア人アイオリス人そして地中海にいたるまでの王であったが、今やイオニア人どころか、地中海でさえなく、 リュディア人も遠く、キアネ諸島の西の海を見ることもない。まるで彼が子供たちの遊びにおける王であったかのよう に、今や残りの内陸部やその上子孫や困窮している人々が彼を王と認めた。アゲシラオスの軍隊と彼以前のクレアルコス の軍と1万人の軍隊はこれを明確にし、以前フリュギアを通過して、まるでそこが自分の国であるかのように、後には砂 漠地域を通過するかのようにユーフラテス川を越えたのだった。 18) 彼らは彼らの帝国をオエバラスの言葉に従って謳歌していた。オエバラスは最初にキュロスの怒りについて語っ たといわ れている。彼(キュロス)は、(オエバラスの言葉が原因で)彼が望むかどうかに関わらず、彼の帝国のあらゆる地域への、彼にとって必要で、必要とされた広 範囲の地域を巡ることになったのだった。もし彼が王であり続けようとするなら、彼が踏み固めたあらゆるものは獣皮* だ と考えるべきだったのだ。彼が地ならししたもの、地面に触れてそこを去った時、再び反乱が起き、もう一度彼が歩いて平らにし たものは。彷徨える王は、舗装された車道を行き、荷車には乗らないという点だけが遊牧のスキティア人と違うのであ り、同じ場所に残る不信と恐れを通してバビロンやスーサやエクバタナを統治している方法で皮の一種のように土地を踏 み固め、これらの場所を永続的にどう保持する のかを知ることはなく、彼らを牧夫のように気遣うことさえなかったのだ。 *英語版註記によると、アレクサンドロスの逸話(プルターク英雄伝65,6)に関連していると思われる 19)これらは本当に従来からの彼らの性質であり、その帝国が実際に彼らのものであったとは信じられないので
ある。彼らは彼ら自身であるかのように気遣うこともなく、諸都市や領域の美しいものや偉大なものを増加させることも
なかった。しかし彼らが彼らに所属していないものを侵略した人々と似て、彼らは恥ずかしくも彼らの帝国を衰亡させ、
可能な限り弱い臣民を支配しようとした。そして、彼らが殺人の競技会で他の者と競っているかのように、第二位の者は
常に五種競技の競技者に似て先を行く人を追い越そうとしてきた。競技会は可能な限りの殺戮場と化し、可能な限り多く
の人々とその家を根絶し、可能な限り誓いを破る場であった。
20) これが、彼らが彼らの驚異の力によって享受し、付随する自然の法則が彼らにもたらしたものであり、反乱、内 戦、打ち続く闘争、終わることのない競争という方法で扱われた彼らの一部に仕組まれたものだったのである。 21) これは確かに、彼ら自身が享受しているものであり、従来そうであったような、祈る者へ答えるよりは寧ろ呪い の元での支配であった。彼らの臣民はこのような人々によって支配される全てを喜ぶ。これらの一部は多かれ少なかれす でに言及した。子供の美しさは両親にとって恐ろしい。妻の美しさは夫にとって怖れとなる。もっとも偉大な犯罪は罰を 受ける必要がないが、彼は多くのものを持っている。そしてより多くの諸都市は破壊され、今私が語っている事に近いよ うな状況に引き裂かれるのだ。 22) 生き残ることは臣民よりも敵にとって容易である。戦いにおいて、彼らは容易に破れるが、権力において
は、彼らの犯罪に節操なく従順になる。そして彼らは奴隷のように彼らの追随者へと変わり果て、彼らは自由人に、まる
で敵であるかのように害をなし、彼らが
永遠の憎悪で満たされた結果として、代償として憎むのである。しばしば彼らは敵より臣民を怖れる。というのも、彼らは次第に和解の手段として戦争を利用す
るからである。
23) その理由は、彼らがどう支配するかを知らず、臣民を彼らの義務で満たすこともないからである。支配者
がひどい支配をするときは必ずよい臣民であることは不可能である。帝国と専制主義は、まだ区別されていないが、しか
し王と主人は同じであった。それゆえ、
彼らは正当な理由で多大な進歩を遂げることがなかったのだった。この言葉(主人)とは、家庭を越えるものではないのである。
24) 再び、アレクサンドロスが偉大な帝国を彼の時代に築きあげ、地球上を侵略し、実際彼らがいうように、彼は
一人の王とい
うよりも、ひとつの王国の所有者のようであった。まるでいくらかの個人的な市民が多くのよき土地を獲得し、その果実を味わう前に死んでしまったように。そ
のようなことが彼の身に起こったように私には見えるのである。
25) 彼はほとんどの領土に進撃し、彼に抵抗した全ての者を征服し、すべての困難を満たすことを享受した。まだ
彼は彼の帝国
を打ち立てることができなかった。彼の労苦に終わりが来たが、彼は彼の仕事の道半ばで死んだのだった。つまりあるものたちは、彼は
多くの戦いで勝利したとはいえ最低の王であり、彼は王国にとって偉大な競争者であったが、まだ彼の偉大な計画と技術の価
値を何も味わえなかった。まるでオリンピックの試合の競技者が彼の敵対者に打ち勝ち、彼の勝利の後直ぐに死んでしまい、
彼の頭上に王冠を載せられよい思いをする前に 死んでしまうのと同じ経験を持ったのだった。
26) いかなる法律を彼は人々にもたらしたのか?または、どのような最終的な調整を財政と軍隊と艦隊にもたらし
たのか?固定した周期で運用される、どのような種類の日常的行政とともに彼が直接行った仕事ではどのようなものがあるの
だろうか?彼が臣民の間にもたらした政府の措置には何があるのか?彼がひとつだけ彼の資質による価値ある記憶と業績を残
した、それは彼によってその名を与えられたエジプトの都市だった。彼はあなたのためにこれを建設したのだった。だからあ
なたはあなたが獲得した後でその偉大な都市を所有し支配した。それゆえ彼はペルシアの支配者たちを追放したものの、彼自
身ではほとんど支配できなかった。
27) 彼が死んだとき、マケドニア人たちは直ぐに無数の部分に分裂してしまい、実際その帝国はそれらを越えてい
たことを証明した。彼らはもはや彼ら自身の国を維持することもできず、彼らは彼ら自身の国を去ることを強制される運命へ
と深く沈んでいった、他の者を支配するために。彼らは、支配することができる人々よりも彼らの本国から追放された人々に
似ていた。謎のようなのは、マケドニアにおけるマケドニア人は、まるで彼らがこれらの諸都市と領土にとって、寧ろ支配と
いうよりも軍隊であったかのように、諸王を根絶やしにした王になることができた場所をそれぞれ支配し、大王をつうじてで
はなく彼ら自身で、もしこういうことができるならば、王なしで太守
(サトラップ)たちだけで支配したのだった。われわれはこのような国家は、王というより山賊というべきなのだろうか?
28)今や、確かに あなたの帝国の境界は侮られることのなき広大さを持ち、そのような彼らの領域は計測され
ることもできな
い。ペルシア人の帝国の境界が設定されている場所から西にかけての、あなたの帝国の残りの部分は、それら(ペルシア人の帝国)の全体よりも巨大である。
何であれあなたから逃れることはできない。それが都市であれ国であれ港であれ土地であれ、あなたが無用のものとして
非難する何か以外は。紅海やナイル川の急流、マエオティス湖※など、以前の人々は世界の果てであるかのように話をし
ていたこれらの場所は、この都市(ローマのこと)
にとっては、「中庭のフェンス」のようなものだ。一部の著述家は大洋があるとも、地球を取り巻いて大洋が流れているとも信じているわけではなく、詩人が創
造し、彼らの聴衆を喜ばせるために配置した
と彼らが考えている地球の名称があると信じているわけでもなく、あなたはこの大洋を徹底的に発見したがゆえにそこにある島はあなたの注意から逃れることさ
えできないのである。
※黒海北部のアゾフ海 29)あなたの帝国はすごく巨大であり偉大であるけれども、その環境におけるよりもそのよき秩序において偉大なので ある。王の土地はミュシア人やサカエ人やピシディア人※やその他によって保持されているわけではない。一部強制的に 移住した場所や反乱にある場所、 占領できない場所があり、一方で王がすべてを所有していても「王の土地」とは呼ばれてもいない。まるで王がいないかのようにサトラップ (太守)同士が他の者と戦っている場所があるわけでもなく、これらの側の諸都市とその他の側の諸都市や、いくばくか の兵士が 送られた場所やその他の者が追放された場所の間で戦いが行われているわけでもない。あらゆる騒乱の静まった、囲われた中庭のように、一つの囲いがあなたの 帝国を囲っているのである。だから全ての人々が居住する世界は合唱よりも偉大な調和で話し、帝国が永遠に続くように 祈るのである。この合唱を指導する第一人者によって一緒に見事に鍛えられているのである。 ※ミュシア(小アジア北西部)、サカエ(スキタイ/黒海北岸)、ピシディア(小アジア南西部) 30)全てのあらゆる場所は等しく臣従している。山地に住んでいる人々は、−異議を唱えない限り−苛酷な谷に住んで いるひとよりも謙虚であり、富める平野の植民市と住民は、あなたの農民たちである。もはや大陸と島の間にいかなる違 いもない。妨げることのない土地とひとつの部族のように、全てが静かに服従しているのだ。 31)あらゆるものは勅令と同意の署名により達成されている。それは抒情詩を奏でるより簡単である。もし何かがなさ れなければならないとすれば、それを法令にすれば十分であり、達成される。諸都市と人々へと送られた支配者たちは、 彼らの元で互いに支配者であるのであり、彼らの個人的な地位や彼らそれぞれの関係については、対等な臣民なのであ る。確かに、ある人は、この性質(敬愛という点で)について、彼らは彼らの臣民と違う、と言い、その点で彼らは最初 に臣民の義務を教える。深い恐れが偉大な支配者や全体の代表者全員に対して注入されるのだ。 32)それゆえ、彼らは、彼らが彼ら自身になすことよりも彼らの行為の知識を持っている、と信じている。そして彼ら は彼に指示を与え、監督する主人の前での誰よりも、彼を尊敬し、怖れている。彼の名前を聞いただけで彼が冷静を保つ ことができる、ということを彼自身については、誰も信じていない。彼は立ち上がり、賞賛し、彼を敬愛し、二つの祈り をするように提案する。一人は皇帝の代理で神に祈る人、皇帝自身に関し、彼の個人的な諸事に関して祈る人々。もし彼 らが嘆願や彼らの臣民の法的特権に公的であれ私的であれ疑いを持つ場合、誰かがこれらの特権を与えられるかどうかに ついては、彼らは直ちに彼に送り、何がなされるべきかを問い、彼らは彼の合図を待ち、その合図は、合唱団が彼らの教 師を待つよりも待たされることはないのである。 33)それゆえ、彼にとっては帝国全土を旅することによって、個人的な問題を確認するために異なったときに異なった 人々を訪 ねることによって、彼自身を消耗させる必要もなく、いつでも彼は彼らの土地に入ってゆけるのである。その場所から移動すること なく、手紙を 書くことによって人々が居住している世界全てを統治することは彼にとって非常にたやすいことである。手紙は彼らが到着するよりも迅速に書かれ、まるで翼の 生えた配達人によって運ばれたようである。 34)今や、言葉と行為で示されている感謝と驚きと賞賛の特別な価値とは何であるかについて話そう。あなたはそのよ うな力と 権威で支配し、偉大な帝国を保持しているけれども、あなたにとって特有の、あらゆる点で平等であることにもっとも成功していることも証明したのである。 ※35)は英語版には抜けている。原文での有無は不明 36)あなたは自由民を支配しえるただ一人の人である。カリア※はファラナバズスへ与えられたのではなく、フリギュ アはティッサフェルネスへ与えられたものでもない。エジプトは他の誰かに与えられたのではなく、ひとつの家庭のよう に、人々はまだまだ彼らが仕える人々にあたえられるわけでも、それらの人々に所属しているように話されるわけでもな い。男性が自由人でない場合でさえも(そうなのである)。 ※ファラナバズス 前5世紀ペルシア帝国のサトラップ。カリアはトルコ南西、古代都市ハリカルナッソスのある地方。 フリュギアは小アジア中西部 ティッサフェルネス ペロポネソス戦争時のサルディスのサトラップ しかし個々の都市におけるこれらのように、まるで単一の都市の中であるかのように、あなたは人々が居住する世界全体 を通して 統治し、彼らの臣下を気遣い、保護するために選挙によって選ばれた知事をあなたは任命し、彼は彼らの主人ではないのである。それゆえ知事は彼の任期が終了 した時はいつでも知事によって継承され、彼が後任者と会うことは思いもよらないことで、まるでその土地が彼自身のも のであるかのような騒乱が発生することから彼は非常に遠くにいるのだ。 37)ある(ギリシア都市の)市民による法廷への訴えのように、司法審査下にある事件はその訴えを起こした人々の一 部より も、 事件を取り扱う人々の一部の表決に関して恐れが起こるのである。つまり、ある人がいうように、人々はいまやできる限り彼らを喜ばすために 彼らに送り込まれた人によって統治されているのである。 38)どのようにして、このような統治の形式がすべての民主政を越えていないというのだろうか?その都市で判決が出 された後では、他のどこかに行ったり、他の判決を受けることは不可能である。いくつかの小さい都市が外部の判決を必 要とするような場合以外は、人 はその決定に満足しなくてはならない。しかしあなたの間では今、有罪判決を受けた被告や、担当した事件で敗北した検察官でさえ、不当な損失と判決に例外の 判決を得ることができる。もう一人の偉大な裁判官※が、正義のいかなる側面も逃さない人々に残されているのである。 ※皇帝、もしくはローマのこと 39)ここでは、偉大で公平な平等性が弱者と権力、曖昧さと名声、貧乏人と富める貴族の間にある。ヘシオドス
の言葉が過ぎる
−「彼は簡単に人を強くし、簡単に強気者を打ち砕く」。この偉大な裁判官と知事は、しかしながら正義が彼を導き、船に風が吹いているよう
に貧乏人よりも富める者に好意を持ち付き添うのではなく、来るものは誰であれ平等に支援するのである。
40) 私の演説でこの点に達したため、私はいまやギリシアの問題について再考しよう。些細なことを扱っているよ
うに思えることを恐れ、恥じている。しかしながら、私が今まさにいうように、私はまるで私が等しいものを比べていたよう
にそれらを再考するわけではない。他の事例にないから、私は存在しているこれらを使用せざるを得ないのである。あなたに
匹敵する、またはそれに近いいかなる他の達成さえも見つけることは不可能であるということを、驚きの感覚をもって示すこ
とは馬鹿げているが、全てはこれらによって日陰に投げ込まれており、まだわれわれが同じ重要なことへの達成に言及するま
で比較をするのを待つことも馬鹿げているのである。実際に、私はこのような経路がとられるべきであるとは考えていない。
なぜならわれわれが同じ問題について話す場合さえ、その達成は同じように注目されるわけではないのである。
41)確かに、私は帝国規模の話と諸事の重みの両方におけるこれらの達成が、私が今調査したことに劣るように見えるであ ろうことに気付いていないわけではない。富と力において、蛮人より優れている一方で、知識と寛大さでギリシア人を凌駕し ていることは、私にとって重要な問題で、美徳に関して完全でありかつ他の何よりも栄誉ある演説家の主題なのである。 42)それゆえ私は彼らが彼自身をどのように指導したのか、彼らの影響範囲がどれほど偉大であったのかについて論じよ う。も し彼らが明白により小さな範囲でさえ維持できなかったならば、その表決が支持されることは明白である。 43)アテナイ人とラケダイモン人は彼らの帝国と支配のためにあらゆることを引き受けた。彼らの力の範囲は海を航海し、 キュクラデス諸島を支配し、トラキアやテルモピュレー、ヘレスポントゥス、コリュファシウム※に領土を獲得した。彼らの 力はこのようなものだった。彼らの経験は、まるで体を熟知しようと願う人が、全身に代わってつめや髪先までを把握するべ きなのと同じであり、これらを持つということは、彼が願っているものを彼は持っているのだと考えるべきなのと同じなの あった。帝国のための彼らの願いは、海のそばの岬や港などのようなものや、島々のわずかばかりの果実を楽しむことであ り、彼らの気力は海の領域に拡大し、それを保持することができる能力を越えた広大な帝国を夢想したのだった。 ※それぞれ、現ブルガリア/現ギリシア中部/現ダータネルス海峡/現アルバニアあたり 44)多くの周期にそれはあったけれども、この時代にはお互いがギリシアの指導者であり、ある人の言うところによると、 彼らはひとつの世代の間さえその場所を保持することはなかった。彼らはきちんと保持することさえなく帝国へと突進し、こ とわざに あるように、 彼らは「カドモスの勝利」※を他者に対して勝ち得た。まるで片方が、他方が持続的に憎まれるべきでは無い、と考えていたかのように、 それが共有物であったかのように。 ※勝利が帳消しになるような損害の激しい勝利(こ ちら) 45)ラケダイモン人の一人の指揮官は、ラケダイモン人の自由とは、ギリシア人が率先して他の支配者を彼ら自身のために 探していたような方法でギリシア人を扱ったのであった。しかし、彼ら(ギリシア人)は、アテナイ人へと彼ら自身が引き継 がれたときには、数ヶ月間も経たないうちに後悔した。彼らは法外な貢納に耐えることも、言い訳のために、それらを盗んだ に人々にも耐えることができず、アテナイで彼らの事物の記録を提出することを毎年強要され、一方植民市は、もし他にも必 要なものが発生した場合には、彼らの土地や船を、徴税と貢納を集めるために彼らの土地へと送らされた。 46)加えて、彼らは自由な城砦を持つことができず、彼らは慈悲があるかどうかもわからないアテナイ人の人気のある指導 者に臣従させられ、彼らはしばし、神聖な祭りと祝祭の間、不要な遠征に行くことや単純にそこにとどめ置かれさせられ、こ れらのことを耐える価値に対する対価としては、アテナイ人の保護はまったく役に立たなかった。 47)それゆえ彼らの多くはアネナイ人に怒り、以前彼らがアテナイ人のもとに去ったのと同じ方法でラケダイモン人のもと に行き、 再び欺かれたのだった。ラケダイモン人がギリシア人の自由のためにアテナイ人に対して戦争を行うと宣言したとき、それによって 彼らの多くに勝利し、彼らがアテナイ人の壁を引き裂き、諸事の統制をして、行動の全ての力を確保した後、彼らはアテナイ 人を凌いで全てのギリシアの諸都市で専制政治を打ち立て、彼らはそれを婉曲的に「十人支配(decarcy)」と呼んの だった。 48)彼らはアテナイの単独支配を破壊し、その場所に多くの彼ら独自ものを紹介した。それはアテナイやスパルタと
いった中央行政府から彼らの臣下を虐待することではなく、それぞれがもともとあったかのようにひっきりなしに打ち立てら
れ、それら独自の
国に組み合わされたのだった。それゆえ、もし戦争の開始において、ラケダイモン人が、彼らはアテナイ人と戦うのであるとギリシア人に宣言したとすれば、す
なわち、アテナイ人がなしたよりも大きく傷つけることでギリシア人をよりしばしば苦しめ、アテナイ人によるギリシア人の
扱いが実に自由だったと示していれば、彼らは(ラケダイモン人の味方をするという)約束を保持しなかっただろう。
49)そして彼らは直ぐに他の亡命者により打ち破られ※、テーベ人によって潰され、コリントス人によって憎まれた。海は 彼ら追放された「ハルモスト」※※で満たされた。というのも、彼らは統制されておらず、彼らが海に投げ出された時、彼ら は彼らの諸都市を保持 しておらず、称号だけを保持していたからである。 ※クニドスの海戦。亡命者とはペルシアに亡命していたアテネ人コノンのこと。 ※※Harmost スパルタの指揮官職 50)そしてギリシア人によって彼らへと向けられた憎しみと犯罪を通した時、テーベ人は強大になり、彼らを征服した。ラ ケダイモン人が排除されると、テーベ人がただひとつの決戦で勝利したあと※直ぐに誰も再びテーベ人に耐えることはできな くなった。しかしテー ベ人にとってラケダイモン人を征服したことよりも、カドメイア※※を保持することの方がまだ明確に有利だった。 ※前371年のレウクトラの戦い。 ※※前383年のラケダイモン人により略奪されたテーベの要塞(こちら) 51)「三つの頭を持つ怪物」※−は決して必要ない!−を書いた並外れたかの男のごとくに、私はギリシア人共通の告発と してこの記録を準備したのではない。あなた以前には、いかに統治するかについての知識はまだ存在しておらず、かの書はそ の知識を示そうと願って書かれたものなのだから。もしそれが存在していたならば、ギリシア人のうちに見つけられたであろ う。ギシリア人は知識の点で他の全ての種族を遠く優越しているのだから。しかしこれもあなたの発明であり、それは残りの 部分に加えて紹介されたのだった。全てのギリシア人にいわれるべきだとするならば、もちろんアネナイ人について言われて いることは、ほとんどもっともであるといえる。彼らは不正に反対したり、 ペルシア人やリュディア人を征服することや、富を怖れることなく、労苦に耐えること、というような事々についてはよりましではあった が、しかし彼らはまだ政府の技術で教育されておらず、彼らは都合の良い、望ましいこととは反対のことをもたらしてしまっ たのだった。 ※ランプサコスのアナクシメネスの作品。三頭とは、アテネ、テーベ、スパルタのこと。前4世紀の作品) 52)最初に、彼らは諸都市に軍隊を送った。その兵士たちは常に各々の出身地の住民数よりも少なくはなく、彼らが送られ た地域の人々よりも少なくはなかった。彼らはこれらの人々に疑念を生じてはいたが、まだ兵士たちによって守られているわ けではなく、彼らは力と暴力を通じて諸事を行った。引き続き彼らは、諸都市を安全に保持したわけではなく、その上憎ま れ、他の人々を上回る確固たる優位性がないだけでなく、優位性を得るための強い名声を持ち、よいことをする代わりに帝国 の悪を享受したのだった。 53)更にまだある。常にばらばらにし、切り刻まれることで彼らはその故郷では弱まり、彼ら独自の国を保持することがで きなくなってしまった。なぜなら、彼らは他の諸国を所有しようと探していたからである。その時には、彼らが支配したいと 望んだ人々と比べて彼らが送った軍隊の規模は上回っていたわけではなく、彼らの背後に彼らと同等の力を残しているわけで もなかった。 彼らは故郷の外においてもその故郷にお いてもあまりにも少数で、彼らの帝国中に広まることは彼らにとってやっかいなこととなった。最後に彼らはそれを維持できる手段を持っていなかったため、彼 らが必要とすることと反対の努力を目指した。そして彼らの野望の達成は、彼らを困難に陥れ、呪いのようになった。失敗は それほど負担ではなく、それほど危険でもなかった。(元の)支配者たちに代わっ て、彼らは海外で、切り刻み根絶した人々や労苦のために苦労した人々以外誰も集めることはできなかった。最後に、彼らの労働の合計が、速やかに−静かに− 集計され、詩がそこにおかれるように全ては再び、最初にそこにあった場所に戻されたのだった。 54)彼らは、陰謀の危険があるために、彼らの臣民たちを強化するということは彼らにとっては都合のよいことではなく、 外国の戦争のために再度弱めるというわけでもなく、つまりは同盟からいくらか利点を得ようとしたのかも知れない。彼ら は、一方の手で同盟を推進し、他方で他の者とともに引き戻しながら、まるでゲームのように彼らに吸い込まれた。彼らとと もに何をするのかを知らずに、まるで彼らが、存在すること、存在しないことの両方を彼らに望んでいるかのように。彼らは 案内し、管理したが、しかしそれは、彼らが言うことができない事だったのだ。 55)全てのうちでもっとも馬鹿げていて奇妙なことは、反乱している者たちに対する戦闘へと残る同盟軍を強制したことで ある。彼らの同盟軍は同じことをしようとしているのだけれども、まるで彼ら自身に対する戦闘を起こすようにと反乱軍たち を説得しょうとしているかのようであった。同じ党派に属している人々を反乱軍たちに向けて導いていた、などとは考えても おらず、仮にこれらの同盟軍が、その他の者たちをまじめに支援していようと、彼らが傷つけられている残りの同盟軍に利点 を示すようなこともしなかった。それゆえ、ここでは、彼らは、彼らの望むところ、彼らにとって都合のよいところと反対の 方へ連れてゆかれるのだ。 56)彼らは反乱に勝利しようとする一方、反乱することに忠実である人々を作り出してさえいた。彼らが敵対者に対して、 残っている忠誠心によってアテナイ人の利益に奉仕する人々である、ということを彼らに示したのだが、彼ら全てが普通に反 乱軍側にいれば、安全で自由であったであろう。遂には、彼らは捕虜となり、誰もいなくなってしまった。アテナイ人は、同 盟者が個別に切り捨てられたために、彼らに忠実な同盟者達よりも彼ら自身を傷つけることになったのであった。しかしアテ ナイ人は、彼らの行動の方向によって、共通の反乱の思想を紹介したのだった。 57)このように、その時そこでは、秩序だった行政府の手続きがあったわけではなく、彼らはこれをまじめに追求していた わけでもなかった。彼らの領土は小さかったのだけれども−例えば国境の土地と割り当てなど−政府における無能と経験の浅 さにより、それらを保持することができなかった。だから彼らは、彼らの諸都市を寛大さで導くこともできなかったし、彼ら をしっかり保持し続けることもでき ず、同時に抑圧し弱めていたのだった。最終的に彼らはイソップのカラス※のように、剥ぎ取られ、他の全てに対して一人戦ったのだった。 ※イソップの童話『鷲と鴉/An Eagle and a Daw』.(こ ちら134) (58)
しかしながら、以前すべての人類から逃れていたものは、ある人がいうように、あなただけがそれを発見し、満たすために予約されていたのだ。不思議なことで
はない!ちょうど他の科学的なことが、物質があることで沸き起こるように、偉大な帝国と卓越した力が形成される時、
その目覚めにおいては、その科学もまた構成され紹介され、両者は、確かに他の一方により強められたのだった。帝国の
偉大さを通じて経験の必要性が発生し、その上正しさと必然性の双方でも、帝国は統治の方法の知識を蓄えたのだった。
59)しかし、以下のことは、あなたの政府と壮大な概念における、もっとも価値ある思慮と賞賛なのであり、すべてに おいて前例がないのである。あなたはあなたの帝国−この言葉で私は人類が居住する世界全部を意味している−において 人類の世界を二つにわけた。あなたは、より多くを達成した人、貴族、力のある人々たち全てを市民とした。彼らが土着 の親族をもっていたとしても、残りの人々はあなたにより、臣民と統治される人 とされたのだった。 60) 海であろうと、市民になろうとしない人々の土地の広大な広がりであろうと、この場所がアジアとヨーロッパであろうと区別されることなない。しかし、全ての 地域は全ての人々に開かれている。公職に就くことや信頼されることから妨げられている外国人は誰もいない。しかし、 そこではひとりの男、最高統治者、監督者のもとで世界共通の民主主義が打ちたてられており、全てのひとびとは共同の 会合場所にいるかのようにそこに集い、お互いに公平に扱われている。 61)まるで共通の町が設計されたかのように、ひとつの都市がその境界と領域をもち、つまりこの都市が人々が住む世 界全体となった。全ての自由民(ペリオイコイ)、或いは全ての異なった場所、各デーモスごとに住む人々は、ひとつの アクロポリスに集まってい る、とあなたはいうだろう。 62) それは誰も拒むことはない。ちょうど大地が全ての人々を支えるように、それは全ての地域から来た人々を受け 入れ、 海が川を受け入れるがごとくであった。それは海と共通している。海は川の流入によって偉大になるわけではなく、川はそれ自身のうちに、海へと流れ込むとい う偉大さをもっていることが運命であった場合と同様、その偉大さゆえにここで明確に付加えられるものは何もないので ある。しかし彼らの外衣の襞に物を置くように、その都市は、やってくる者、出てゆく者にかかわらず、あらゆるものが 平等に現 れ、存在し、また隠されるのである。 63)そして私の演説を続けることで、そのことは受け入れられましょう。われわれが言ってきたように、あなた方は偉 大であり、非常に大きな領域にあなた方の都市を置いた。そしてあなたの誇りにおいては、それを誰とも共有せず与えず にいれば賞賛されることはなく、あなたはその価値を一人の市民の体に見出し、あなたは「ローマ人」という言葉をひと つの都市に帰属させるのではなく、 その名前を共通の種族の名前とした。これは全ての種族の外側にあるものではなく、残りの種族全体に匹敵するものなのである。 あなたはいまやギリシア人とバルバロイに種族を分けることはなく、人類の目に入る愚かしい人を区別することもない。 なぜならあなたは、ギリシ ア人全体の種族−そう言っていいかも知れない−よりも多くの人々にひとつの都市を贈ったのだから。しかしあなたは人々をローマ人と非ローマ人にわけてし まったのである。 64)人々がこのように分割されたために、それぞれの都市における多数の人々は、あなたたちの市民となった。彼ら は、彼らの同族の地元民よりも多くなり、彼らのいくばくかはこの都市では決して見かけることがなくなってしまった。 アクロポリスを守る守備隊は必要がなくなり、もっとも重要で強力な人々は、それぞれの場所であなたのために彼らの 国々を守っている。そしてあなたは二重の方法で彼らの諸都市を守っているのだ。ひとつはここから、そしてもうひとつ は彼らを通して個別に。 65)あなたの帝国においては、妬みは横行していない。あなたにとっては、あなた方自身が、妬みのない最初の人だっ たのだ。なぜならば、あなたはあらゆるものを共通に、全ての人々に与え、順番に、支配者になるよりも、従属者になら ない能力のある人々にこれらを与えたのだから。残りの一部の人々には憎しみの残滓さえない。政府が普遍化し、ひとつ の都市のようになり、正当な理由を持った統治者は外国人だけではなく、彼ら自身の人々を統治した。加えて、この政府 のもとでは全ての民衆は彼らの間の権力者たちに対し、 安心感をもっており、もし権力者たちがあえて無法な変革を行えば、ただちにあなたの怒りと報復が、権力者たちを没落させる、ということによって安心感を与 えられているのである。 66)このように、正当な理由とともに、現在の環境は、富める者にも貧しいものにとっても満足すべき具合のよいもの となっており、生きるためにこれ以上のものはないのである。すべての人々を包含する単一の調和のとれた政府が出現し た。それ以前には、あなたのような偉大で寛大で現実の力を持つ帝国のもとで統合されることが可能だとは思われていな かった。そして数ある支配者たちの中で、あなただけが、真実の力を持つことができたのだった。 67)このように、諸都市は守備隊から自由となり、軍隊や騎兵隊は全属州を守備することに専念できるようになり、他 の住民によりもたらされたまれな事由である以外、これらの多くはそれぞれの種族の諸都市ごとに分散させられることも なくなった。軍隊は地方に分散させられ、多くの属州では彼らの軍隊がどこにいるのかを知ることもない。もし、この類 まれなる偉大さを通して一部の都市が自治を行う力を失ったとしても、あなたはこれらの人々を監督し守る役人たちを妬 むことさえない。全ての人々は、一部の人々が他の人々から徴税する場合と比べると、大いなる喜びとともにあなたに税 を払っている。正当な理由で! 68)能力が不足しているひとびとにとって支配者は安全ではないが、彼らがいうように、二番目の選択肢は、彼らより も優れた者により支配されることである。いまや、あなたによって支配されることが第一の選択肢として提示されてい る。したがって、すべての人々は あなたに緊密に結び付けられており、船の乗客が舵取り人から逃れようと思うことはない以上に、あなたから逃れようなどとは思わないで あろう。 ちょうど洞窟の蝙蝠が、岩や他の何かに密にしがみつくように、全ての人々はあなたを頼り、誰かがこの鎖から落
ちないように心配し、彼らが、彼ら自身をあなたに諦めさせることよりも、あなたによって諦められることの方を怖れる
といった事態の方が多いのである。
69) 帝国と卓越した人々における紛争の場所において、全ての以前に引き起こされた戦争を通じて、これらの
人々の一部は、
静かに流れる小川のように最も心地よい静けを喜び、次第に彼らの苦労と生涯を終わらせ、空虚なシャドウボクシングを悔い改めたのだった。その他の者たち
は、彼ら自身が持っている帝国を認識することも思い出すこともなかった。確かに、パンフィリア人の話のように、さも
なくば、もし彼のようではなく、プラトンの話のように、他の人々に対する闘争や騒乱を通じてすでに葬儀用の薪の山の
上に横たわっ ているよう
な諸都市は、直ちに一人の指導者を受け取り、直ぐに復興した。しかし彼らはどのようにこの国に到着したのか、彼らは、彼らの今目の前にある環境に驚愕する
以外の何者をも知ることも、言うこともできないのである。彼らは、たったいまいた夢から目覚めた人が、 ただちに
これらのことを知覚し、そこに巻き込まれたように、同じ経験をしたのだった。
70)戦争が起こるとはもはや信じられていない。ほとんどの人々は退屈な神話のようにそれらを聞く。故郷のど
こかで衝突が発
生してさえ、並ぶべきものない偉大な帝国で起こるようなものとして、ダキア人の狂気や、ムーア人の病的な気質や、紅海の惨め
な人々−彼らは年齢の利点を活かすという点では同じではない−を通じて、確かにこれらの戦争や戦争についての議論は
神話のように遠くをすばやく通過してゆくのだった。
71)戦争があなたにとって生まれつきの気性であってさえ、このような偉大な平和をあなたにもたらしたのだった。 [昨日 は靴屋や大工だった人々が、今日は歩兵や騎兵になったり、今ちょうど農民である人が兵士になる、というようなこともない。貧乏な家庭で同じ人が料理をした り、家を維持したり、ベッドを作ったりするようには、あなたはあなたの職業を混ぜ合わせたりはしない。必要のない兵 士になるために、他の仕事に巻き込まれている人々をあなたは待つこともない。あなたの軍隊を召集する特権をあなたの 敵に与えさせることもない。] 72)私はあなたの帝国やその政府の全土に関してあなたが達成した決定や、どのようにあなたがそれを打ち建てたのか を議論してきた。いまや、軍事とあなたの軍隊について、どのようにあなたがそれを認識したか、それに与えた組織につ いて話すときが来た。 この問題に関するあなたの知識は注目すべきであり、全体的に事例がない。 73)エジプト人も孤立している軍隊、という特徴を展開してきた。彼らは稀有な賢さを顕しているようである。その土 地の防衛戦争を行う人々はお互いから離れ、分かれて居住していたという点で、まさに多くのいくつかの点で他の人々を 越えているようであり、彼らが 「賢いエジプト人」というがごとくである。あなたがたは同じ決定をしたとはいえ、あなたは同じ方法をとらなかった。しかしあなたはあなたをよりよく、より 賢く分割したのだった。エジプト人がとった方法は、ふたつのグループの間の市民権を不平等にすることだった。粉骨砕 身し続けた兵士たちは、戦わない兵士たちよりも劣位に置かれていた−恐らく彼ら(戦わない兵士)はこの点でまったく 満足していなかったが−。あなたとともに、全ての人々は等しい権利を有すことになったため、戦う軍隊は遠くに移住さ せられた。このように、大胆さが、ギリシア人とエジプト人、及びあなたの軍隊より名声の劣るものたちによって示され たのだった。 74)すべての人々は軍事的装備という点であなたより非常に劣っているけれども、彼らは軍隊に関する彼らの概念にお いて更に遠く後塵を拝している。あなたは軍事奉仕を実施し、苦難に耐える都市から来た人々が、あなたの帝国の価値あ る果実と現在の幸運を喜ばない、と思っている。あなたは外国人を信じていない。必要な時が来る以前に兵士はまだ必要 である。あなたは何をしたというのか?あなたはあなた自身の軍隊を、あなたの市民に課すことなく見出すことができた のだ。帝国全体に関するあなたの政策はあなたにこれをなさ しめた、つまり、あなたはその実行を必要とする、または実行する能力のある人が従事するいかなる奉仕に関しても外国人として彼らを分類することはない、と いうことを実現したのだった。 75)あなたの軍隊を徴集する方法とは何なのだろうか?あなたはあなたに従属する全ての土地を旅し、この奉仕を実施 する人びとをそこから探したしだ。そしてあなたは彼らを見つけたとき、同時にあなたは彼らが彼ら自身の国への結びつ きを切り離し、反対にあなたの都市に彼らを結びつけた。つまり、将来彼らは、以前の彼ら自身の起源を表明することを 恥じるようにされたのだ。もし彼らが市民であれば、あなたも彼らを兵士とし、一方あなたの都市の人々は軍事奉仕をし ないことになり、軍事奉仕をする人々は少数の市民とな り、軍隊に参加するときに、彼らがもともと所属していた都市から切り離されることで、その同じ日から、あなたの都市の守護者と市民になったのだった。 76)そしてこのように全ての人々は従い、どの都市も怒っていない。あなたは非常に多くの兵士たちをそれぞれの人々 から徴集したが、それらは彼らを供給した人々にとっても、彼ら自身にとっても重荷にはならず、彼ら自身の単一の軍隊 の補助軍を構成することで満足するであろう。それゆえ、全ての諸都市はそこへ送り込まれた兵士を快く迎え入れる。ま るで彼らが、彼らのパートナーであるかのよう に。個々のそれぞれの都市は、彼らの都市出身の軍隊を持たず、あなた以外のどこであろうと兵士を送り込むこともない。彼らは 慎重に、最後の一人まで配置されているのである。 77)確かに、あなたがそれぞれの地域から、もっとも適した人々に税金を課したあと、あなたの次の改革の利点は小さ いものではなかった。 あなたは選ばれた人々とってそれが必要であるとは考えなかった。その人々とは、最高の状態にある人々、肉体的
に優れた者であり、国家の祭儀や冠大会のために練習に参加するため、もっとも重要な点では、競技者になろうとしてい
る人々であり、できるだ
け多くの勝利における実際の行動者かつ勝利者になろうとしている人々であり、彼らはこのようなひとつの帝国を代表しているのである。これらについて、私は
言おう、彼らだけがまさにこの時に集められた、可能なかぎり最善で特別な、全ての人々のうちで最適な人々であり、こ
れらの行動のためにずっと前から練習していたというわけではなく、すなわち、彼らが優越している隊列に彼らを直ちに
連れてきたのであった。
78)あなたは、その言葉の共通の意味で彼らを「浄化」し、「選抜」し、私が言及する諸特権とは別にせず、彼らがそ の都市に残っている他の人々をうらやむというような手法ででもなく、基本的に彼らが他の者と同じ階級を得る、という こともなく、つまりは彼らは 市民権における名誉ある参加を共有するようにそれを受け入れたのだった。そしてあなたが、この革新を作り出し、彼らをこのように取り扱った時、あなたは彼 らをあなたの帝国の辺境へとつれて行き、そこで一定の間隔で彼らを配置し、それぞれの人々に、異なった地域を守る業 務を与えたのである。 79)あなたは新しい計画とアイデアを防壁に関しても持っている。これは今言及されるべきことである。この都市は頑 固なラケダイモン人の流儀で城塞化されている、というわけではなく、更にバビロンのような誇張された方法で防壁が作 られているわけでもなく、以前であれ後代であれ、他の都市ならどこでも、壮大に要塞化されてきたよう作られているわ けではなかった。しかしあなたはこの要塞を子供の遊びや女性の仕事であるように示したのだった。 80)その都市自身に城壁を置くということは、あなたはそれが基本であり、あなたの他の考えと一貫していない
のではないか、
と信じていた。まるでそのことを隠すように、従属者たちから逃げるように、主人が彼自身を彼の所有する奴隷を恐れているように示すべきであるかのように。
しかしながら、あなたは城壁に手を抜いてはいない。あなたはあなたの都市ではなく、あなたの帝国にこれらを置いたの
だ。そしてあなたは彼らをあなたの富と栄光と、その周囲にある、そばで見る価値のあるものからできる限り引き離して
配置し、もし彼らを見たいと思う者は、その都市から出発して彼らを訪問する旅に出て、彼らのもとへの旅は、数ヶ月か
数年でかかる事案となるのだ。
81)人が住む世界のもっとも外側を越えると、ひとつの都市の要塞の防衛の第二次ラインのようで、あなたはもうひと つ別の外周を描き、それはより柔軟で容易に防衛される。そこではあなたは防衛壁を置き、境界の諸都市を建設し、その 住民たちを異なった場所に配置して互いに満たしあい、有用な工芸品を供給しあい、装飾品を供給しあうのであった。 82)ちょうど軍営の周囲に囲いを掘るように、これらのすべては円形の城壁と呼ばれていて、つまりはこの周囲の環境 は10パ ラサング(約60km)でも20パラサングとか、それ以上ということもなく、あなたが正しく直ぐにいうことができるようなも のではない。 しかしそれは、エチオピアの居住可能な地域や、反対側はファシス地方(黒海東南岸、現グルジア)、ユーフラテス川の島々や、最終的には巨大な西方の島(ブ リテン島のこと)によって囲まれているのである。 83)これらの城壁は瀝青や焼き煉瓦で建設されているわけではなく、漆喰で輝いているわけでもない。しかしそれぞれ の場所で城壁と普通呼ばれる種類のものがあり、それらの多くは確かに、ホメロスが家の壁について語ったように、石を 注意深く密着させて作られていて、それらは巨大な規模で青銅よりも神々しく輝いている。 84)この円は、これらの城壁よりも偉大で壮大であり、全ての方向にあり、あらゆる点で堅固で壊れにくく、円周を越 えて遠くまで輝いており、ただし決して小さくはなく、人々はこれらの城壁を防護する地点に彼らの盾を備えていて、飛 翔するとは信じら れていないが、ホメロスがミュルミドーン人に帰属させたその調和の中で戦争の全ての道具とともにお互いに参加したのだった。そしてそれらを私が言及した城 壁と比較したのだった。よって彼らの兜はお互いに接していて、その間には矢も通らぬほどであった。 彼らの頭上に掲げた盾は亀甲陣をなし、それはその都市のやり方の陣形よりも遥かに安定していて、そこに騎兵で
さえ上ることが可能なほどである。そしてあなたは本当にエウリピデスを引用していうだろう、あなたは「青銅の靴を履
いた平原」を
見るのだと。そして彼らの胸当てはきつく互いに未着していて、軍営の中央に非武装の兵士を配置すべき時でさえ彼らはお互いに武装により守られている。彼ら
の予備の装備は、固定した流路を流れる小川から滴り落ちる雨滴のように降りている。このような全体的な調和こそが、
彼らの戦略革命の周囲と世界全体の国境の周囲を取り巻いていているのだ。
85)古のダリウス王とともに戦ったアルタファルネスとダティスはひとつの島にあるひとつの都市を網で捕らえること はできたが、もしそのように表現することができるとしたら、あなたは人々が居住する世界全体を網にかけ、この方法で 同盟者と外国人− 以前に言及した人々(上述のエチオピア人等)−の双方により安全を保持しているのだ。あなたは全ての人類から選抜し、前へと導き、彼らに勇気ある 男になることを後悔しないという希望を与えたのだ。常に最上位の命令権を保持している人物は貴族である必然はなく、 命令権において二番目の者は、次の階級やその次の階級出身者である必要はなかった※。軍人は、その称号ではなく、彼 が値する職能により階級を保持するのである。業績がよい人物かどうかを決めるのである。そしてあなたは明瞭な事例を この全てに与えた。つまりこれら全ての人は怠惰を 不幸とみなし、行動が彼らの願いを達成する方法であり、敵に対抗するひとつの心であり、昇進のために他者に対して生涯を闘争にかけ、 ただ一人で敵を見つけることを祈っているのだ。 ※註101の英訳者註曰く、この部分はアリステイデスの説明が不足しており、誰でも指揮官になれたわけではなく、出 身階層ごとにキャリアには一定の限度があった、としている(出世し た親の階層を継承した子供が親より上のランクに出世することはできた)。 86)それゆえ、軍隊の陣形と訓練を考える者は誰であれ、彼はホメロスの表現を用いることを信じるだろう、それは 「10倍」 の敵がいてさえ、彼らは速やかにルートをとり、ローマ人よりも少ない一人の男を残す※。しかし彼は製図と人員配置についても考え、彼はエジ プト人の話を思い出すだろう。カンビュセスが土地を略奪し、そこにある寺院を奪った時、この男はテーベの城壁の上に 立ち、一握りの土の塊といっぱいの水をナイルから汲んで彼の前に立ち尽くした。その意味は、彼はエジプト自身やナイ ル川を略奪して運び去ることはできない。彼はエジプト人の富をまだ運び去っていない、これらが残っているならば、 人々は速やかに再び多くを所有し、富はエジプトを見捨てることはないであろう。あなたの軍隊についてもこのように考 えることは可能で、誰も土地自体をその根元から引き、そこに空白を残すことができない限り、人の住む世界がその場所 に残る限り、そのように言うことができる。あなたを打ち負かす軍隊の計画については不可能であるが、しかし人が住む あらゆる地方からやってきた兵士は、あなたが望むくらいに大きいに違いない。 ※(英訳註103 10人の敵が一人のローマ人に遭遇した場合、敵はローマ人に併合される、という意味に補う 87)そして戦略に関しては、あなたは全人類に子供になるよう示した。あなたがあなたの兵士たちや将校たちに敵に対 してこれを実施するように指示しただけでなく、最初に(敵自身に)対して(示したのだ)。それゆえ毎日彼らはその (防衛)線で生活し、誰も彼らに与えられた職務を離れない。まるで永遠の合唱の中にいるかのように、それぞれの兵士 が彼の場所を知り、そこを保持し、このため、従属国は彼らの優位性を妬まず、彼ら自身が勝っているひとたち(従属 国)を完全に命令に服従させているのである。 88)以前に他のものたちがラケダイモン人について言ったことは悩ましい。それは、「将校を指揮する将校から構成さ れる軍隊」を小数の人々のために守る、ということである。最初にあなたに言ったことと、(少数の人々に対して)保持 される、ということは、これに対応している。しかし、その人々は時期尚早にもそれを生み出してしまった。まだラケダ イモン人の軍隊がほとんど多くの人数から構成されていて、全ての人々が将校となることは、ありえないことではない。 しかし大規模な徴募兵と種族とからなる時には、彼らの名前を発見することさえ容易ではなく、一人の男から始めて、彼 の権威は、すべてに浸透していて、彼は全てのもの、諸国民、諸都市、諸軍団、諸将たち自身を監督し、最終的には四人 か二人の兵士を指揮する一人の男に至るのである−我々はそれらの間のすべてを省略してしまったが−。そして丁度紡績 糸が大きなより糸から小さいより糸へと撚り合わされるように、この方法で一人が、最後のものに至るまで、次々と正し い位置に並べられるのだ。どうしてあなたは全ての人間の組織を越えていかなかったのであろうか? 89) 次のホメロスの詩句の引用が私の頭に浮かんだ。終わりを少し変更している。「このようなことはオリン
ピアのゼウスの帝国の範囲内のことである」。ひとりの男が多くに命令する場合は常に、彼にとっては彼らは召使であ
り、使者であり、彼に対して低い地位にいるものである。彼らが責任を負っている人々より遥かに優越している。彼らが
速やかに混乱や妨げなく諸事を達成する時はいつでも、嫉妬がなければいつでも、あらゆること、あらゆる場所が正義と
尊敬で満たされるときはいつでも、美徳の果実が誰にも失われないときはいつでも、この詩句はどうしてもっとも適して
いないというのであろうか?
90)あなたの都市自身においてさえ、あなたは他の人類が誰一人成し遂げられなかったような行政府の形を建設
したように私には見える。以前には、三つの政体が人類にはあった。二つの名前が個別についており、政体の所有者の性
質により区分されると考えられていた。すなわち、暴君と寡頭政、君主政と貴族政である。三つ目はよく運営されていよ
うと、悪く運営されていようと、民主政と名づけられていた。国家はこれらの政体の間から選ばれており、しかしなが
ら、それぞれの人々は選択するか、運命を受け入れている。まだあなたの政府はまったく同じではないが、これら全ての
政体の負の側面以外をあわせたようなものとなっている。そしてそのような政体が最善のものだと証明した。それゆえ、
人が人々の権力を考慮するときはいつも、彼らがどのように彼ら全ての希望と要望を容易に達成するのかについては、彼
は、それは民主政体であり、人々の判断の誤り以外は何も不足はない、と信じている。しかし彼が、元老院が審議し、役
職を占有していると考えるときは常に人は、これよりも貴族政がよいとは考えないのである。しかし、彼がこれら全ての
代表者であり監督者であると考えるときは、彼らの手から人々がその望むことを満たすことを受け取り、上層階級は彼ら
の役職と権力を受け取り、人はこの男の中にもっとも完全な君主制の所有者を見るのであり、王の尊厳よりも偉大で、専
制君主の邪悪さからの自由を見るのである。
91)そして、これらを区別し、その中にその都市自身の内部と都市の外側の両方で、あなたの行政府についての
問題を明確に見ることは、あなたにとって理由のないことではない。あなただけが支配者なのだと、人は言うかも知れな
い。その他のあなた以前に権力を持っていた、次々と主人となった者や、他人の奴隷となった他の者たち、帝国の違法な
継承者たちは場所を変えて継承し続けた。まるでそれが球体をまわすように。マケドニア人はペルシア人の奴隷であった
し、ペルシア人はメディア人の、メディア人はアッシリア人の奴隷であった。しかし全ての人々は彼らがあなたを知る限
り、支配者としてあなたを知っていた。あなたはその開始にあたって以前からそうであったかのように自由であり、直接
支配者として生まれたので、これに関連するすべてを準備できたし、それ以前には誰も持たなかった政体を編み出すこと
ができ、不変の法律を課し、全ての人々に命令を下したのだった。
92)長年私に起こり、しばしば私の唇にこみあげてきて私を困惑させるものがある。それはいままでは常に私の
演説の原因になってきた。もし私が今これを言うならばたぶん私は場違いとなるのだろう。どれほどあなたは帝国全土す
べての人々に卓越しているか、あなたの権威、あなたの政府の概念において卓越しているか、が言われてきた。いまや私
は、以前の全ての人々に、それは地球上でもっとも大き
な領域を統治した人々や、以前からそうであったように、これらの人々の裸の体を統治した人々にさえ言われていることについ
て、(そのようにいう人々が)誤っていたわけでははかろう、と考えている。あなたは帝国全土を諸都市と装飾で満たし
たのであった。
93)いつ地上の多くの諸都市が陸地や海じゅうにあるようになったのか?いつそれらは徹底的に飾られたのか?
誰がそのような
旅行をして旅行の日々、諸都市の数を数え上げ、時にはまるで路地を通るように二、三の都市を一日のうちに通過するようになったのか?それゆえこれらのかつ
ての人々は彼らの帝国の全領域においてもっとも低い地位にあったというだけではなく、あなたと同様に彼らが支配した
土地でさえも(そのような状況だったのである)。それぞれの人々は、彼らの支配下で平等であることや、同じ状況であ
ることを喜ばなかったが、そこに存在した諸部族は、彼らの間に現在存在している都市とバランスを保つことができる。
そして、人々はいうだろう、これらの人々は、従来からあるような、砂漠と軍隊の王であるが、あなたは諸都市の支配者
であると。
94)今や ギリシアの全ての諸都市があなたの元で繁栄し、そこでは供物や芸術や、彼らの全ての装飾品が、郊
外にある装飾品
のようにあなたに名誉をもたらしているのである。海岸沿いとその内陸部は都市で満たされ、いくらかが建設され、その他はあなたの元であな
たによって増加したのである。
95)イオニアは多くの戦いを行ってきて、その軍隊や太守から自由になり、そこは美しさの基準として全てに
とって明らかに
されおり、かつて彼女自身が装飾や優雅さにおいて他の種族を圧倒していた頃よりも、現在の彼女自身は上回っているのである。
エジプトにお
けるアレクサンドロスの偉大で誇らしげな都市はあなたの帝国の飾りとなった。他の所有者の間の富める女性の首飾りや腕輪のように。
96)あなたは引き続きギリシアのために、まるで彼らがあなたの養い親であるかのように彼らを守り、もとから
そうであったように復興させ、彼らの最高のものに自由とを自治−彼らは元は支配者だったが−を与えて気遣っている。
一方で、その他のものについては穏健で偉大な考えで導き、気遣い、蛮族については、それぞれの人々の気質によって厳
格に、或いは紳士的に教育している。馬の調教師よりも悪くない、ということがあなたにとっては相応しいように、あな
たは人々の支配者なので、あなたにとっては、彼らを導き、彼らの気質を調べることが寧ろ相応しいのである。
97)人々の住む世界全土では、かつて民族祭を催しており、そこでは武器を運んでいる人はその古い衣装と武器
を脇に置いて振り返り、(祭典を)開催し、飾りつけるための権威とあらゆる種類の娯楽で満たした。他の全ての争いの
もとは諸都市では死に絶え、この単一の敵対者のみがそれらすべてを持っているのだ。お互いがどのように出来る限り公
平で魅力的に魅せるか、全ての都市は体育場や噴水、関門、寺院、手工芸や学校で満たされている、というような単純な
競争だけが、全ての人々を支配していのである。
98)あなたからこれらの諸都市へ流れる贈り物の流れは決してとまることはなく、他より大きな割合を受け取っ
た人はどこにも 見つけることはできないのである。なぜならば、あなたの寛大さは全てに平等なのだから。
99)確かに、栄華と優美さによる諸都市の輝きと地上の全ては喜びの庭のように飾られた。味方と敵の合図の火
と、原野から湧き上がる煙が大地と海を越えてゆく時は、まるで風がそれらを遠くでまわしているかのようである。それ
ゆえ、消すことのできない神秘な火のように、民族祭の祝祭は決して終わらず、いつもどこかで、異なった人々と異なっ
た時間で流れてゆくのである。それゆえあなたの帝国の外において−そういうところがあるとするならば−そこだけが哀
れまれるべきなのである。なぜなら彼らはそのような利点を奪 われてい るからである。
100)確かに、あなたはよく知られていることをもっともよく証明した。地上は全ての母であり、すべ
ての普遍的な故郷である
ということを。今やギリシアと蛮族の両方にとって、彼の財産をもっていようと、財産がなかろうと、彼らが行きたいところへは
どこでも容易 に旅行することができる、まったくまるで彼がひとつの国から他の国に行くように。
そして彼はキリキア門であろうとそのそばにあるアラビアを通過してエジプトに至る隘路や険しい山々や果てしない巨大な川、親切心のない蛮族のそばであろう
と、怖れることもない。しかし彼の安全にとって、彼がローマ人であり、とりわけあなたのもとにいる人々の一
人であるということで十分なのである。
101)そしてホメロスがいうように「大地は全てにとって共通である」。あなたは居住する世界全てを
調査し、多くの方法で川に橋をかけ、山々を切り開いて馬車道を切り出し、砂漠を郵便施設で満たし、あなたの
方法でよき秩序と生活ですべを文明化することで実現したのである。それゆえ私はあなた以前の時代を想像する
のである、トリプトレモス※以前に存在していたと考えられる生活は素朴で苛酷でほとんど山の中の暮らしと変
わるところがなかった。まだもし全体的にそうではないとしても、アテナイ人がわれわれの現在の耕やされた生
活を開始し、これが彼らがいうように「第二のよりよい試み」でもってあなたによって確実にされたのである。
※ギリシア神話の穀物神デメテルの子
102)そしていまや、確かに世界の破滅を記載する必要はなく、それぞれの人々の法律を数え上げる必
要もない。あなたは居住する世界の全ての門を開くことで、また、あらゆることの観察者となるための力を、そ
れを望む全ての人々に与えることで、更に、全ての人々に普遍的法律を与えることにより、また更に、以前は読
むための楽しみであった行為をやめさせることで−それらについて実際に考えて見ると耐え難いことではあった
が−、全ての人々の間で法律的結婚をさせることで、全世界に居住する人々を一つの世帯のように組織すること
によって、あなたは普遍的な地理学者となったのである。
103)確かに、詩人達はゼウスの支配以前には党派をなしていて、騒がしく、秩序は乱れていたが、ゼ
ウスが支配者となった時、全ての秩序が定められ、タイタンは大地のもっとも深いところに消えさせられ、彼と
彼を支援した神々によってそこに追放さ
れた。あなたの支配以前と、とあなたの支配下の状況の概観は、ある人は、あなたの帝国以前には全てが混乱にあり、さかさまで無秩序にあったとみなしただろ
う。しかしあなたが管理するようになり、混乱と分裂は終了し、普遍的秩序と生命に栄光の光が入り、政府と法
律が前面にでて、そこでは神々の祭壇が信じられているのである。
104)以前には、彼らの父親たちをを弱めていたかのように、人々は地上を破壊していた。彼らは彼ら
の子供たちを飲み込むことはなかったが、党派的争いでは、彼ら自身の寺院内でさえ、お互いに殺し合った。し
かし今や、全てに対して普遍的で明白な全体的安全が地上自身とそこで暮らす人々に与えられた。そして人々は
悩ましい悪業から完全に自由になるために、よく統治されるための多くの手段を見出したように私には見えるの
である。神々は、彼らの慈悲で上記のことを注視し、あなたの帝国を成功させるようにあなたに加担し、彼らは
そのあなたの領土を確実なものとしているように見える。
105)ゼウスは、あなたが(人類の)居住する世界−そこは、彼らがいったように「彼のよくできた作
品」である−をよく気遣ったがために。ヘラは、法の元でもたらされる結婚のゆえに。アテナとヘファエストス
は、芸術が名誉あるものとなったために。ディオニシオスとデメテルは果実が傷つかないがゆえに。ポセイドン
は海が戦闘で浄化され、彼が商船を軍艦のために交換したがゆえに。確かに、アポロとアルテミスとムーサーの
合唱は決して劇場での奉仕者に保持されるのをやめたことはない。ヘルメスは使者と競技の共有なしではいられ
ず、アフロディテは種子と優美さなしではいられない。−その時代はいつ最適となったのか?或いは諸都市はい
つ益々偉大な運命を持ったのか?アスクレピウスと
エジプト人の神の恵みは人類の間で増えて広大に広がる経験となった。アレスはあなたによって名誉を失ったわけではなく、ラピテース族の宴会でのことのよう
に、彼は放置されていていた(ことを根に持って)混乱の中に全てを放り込んでしまうかのような恐れもない。
しかしあなたの帝国のない川岸では、彼は終わりのない踊りを踊り続け、彼の武器を血で清め続けたのだった。
確かに、太陽は全てを見つめ、あなたのもとで暴力や傷害の行為はなく、前代ではしばしばあった種類のことも
ないように見え、つまりよい理由で彼はあなたの偉大なる歓喜に満ちた帝国を眺めるのだった。
106)ホメロスはあなたの帝国が存在することを知らなかった。しかし彼はそれを予見しており、詩文
で予言している。だからもしヘシオドスはホメロスと同じくらい完全な詩人であり、同じ占いの力を与えられて
いるならば、彼は黄金の種族とともに始まるという人間の世代を描けはしなかっただろうと私には思えるのであ
る。さもなくば、いずれにせよ彼が最後の鉄の種族の議論におけるこの始まりを描いた時、彼らの破滅が起こる
と言うことはできなかっただろう。彼は「彼らが灰色の寺院とともに生まれるとき」と言っている。しかし彼
は、あなたの指導力と帝国が建設された時には、鉄の種族が地上で滅びるといったことだろう。そして彼は正義
と畏怖を人類に取り戻させ、彼はあなたの前に彼らが生まれることを残念がったことだろう。
107)だからあなたの貴重な諸施設はずっととどまり、まこと、あなたにより紹介され、これまで以上
に確認された。確かに、
現在の支配者(ピウス)は偉大な競技者のようであり、明らかに前任者と同じくらい優れており−それを描くことは容易ではない
が−彼自身が他の人物より秀でている。そして人は、彼が描く決断は何であれ真実の正義であり法である、とい
うであろう。また人は次のような残り全てを凌ぐことを付け加えるだろう。これは何なのか?明確に彼は、帝国
の行政において彼の同僚と同等に扱われており、彼は同僚を親族とみなし、彼は前任者の誰よりも多くのそれら
を持っている。
108) われわれの演説をあなたの帝国の巨大さに匹敵させるための当初の競詩大会は、誰であれその
能力を超えていて、できるかぎり帝国の歴史全体に近い時間を必要としている。これは永遠そのものとなるであ
ろう。それゆえ、酒神賛歌(ディテュランボス)の詩と賞賛のように、ひとりの祈祷者を追加してわれわれの演
説を締めくくることが最善であろう。
109)全ての神々とその神々の息子たちに含めさせ、この帝国とこの都市を永遠に咲き続けさせ、「鉄
床が海の上に立ち」、
「木々が春に咲き終わり」、全人類にとってよいことが維持され、偉大な皇帝と彼の息子(マルクスとルキウス)が安全に保持されるまで止むことはないであろ
う。私の無謀な行為は終わった。成功したか失敗したかは、今あなたが決めることができる(了)。
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