インド初代首相ネルーの著書『インドの発見』のドラマ化。1988年インド製作。1話約
40-60分全53回(全回タイト
ル一覧表はこちら)。ネルーを演じる俳優が、各回の最初と最後、また、回によっては途中で登場し、ナレーション
をつとめ、インドの歴史をわかりやすく語ってゆく番組。以下の記事中のタイトルの後ろの数字は各回の時間。括弧内は、私が視
聴した時点のyoutbeの視聴回数。番組はヒンドゥー語なので、基本的に視聴者はイ
ンド人だとの想定で、ヒンドゥー語利用者の方に、どの回に人気があるのかの参考とするために書き写してみました。オープニングとエンディングの音楽は、リ
グヴェーダ賛歌を元にした音楽のようです。映像は、CGが登場する以前のNHKの大河ドラマのような感じ
です。NHKの大河ドラマも、全50回くらいで日本史全体を扱うものを一度くらい製作してもいいのではないでしょうか。以下各回の簡単な紹介です。今回紹
介する10話の中では、セットに凝っていて見応えがあるのはインダス文明の都市を扱った第二話でしょうか。 第一回 Bharat Mata Ki Jai 36'24"(74221) 「Bharat Mata Ki Jai」とは、ネルーが集まった群集に呼びかけるときに毎回用いた挨拶の言葉とのこと。バーラトはインドの正式国名。マハーバーラタに登場する古代のバー ラタ族に因む民族名。ネルーは、多様な言語の民族の共存するインド国民に対し、どの言語にも属さない共通の挨拶の言葉を考え 出して用いたのではないか、と推測されます。第一回は、インドの国土の紹介の回で、各地の自然や史跡がナレー ションとともに映される、ナショナル・ジオグラフィクスの紀行映像のような回。歴史再現ドラマ映像はなし。 第二回 始まり 43'44" (57638) 石器時代の洞窟壁画やインダス文明の遺跡の解説の回。インダス文明の都市の再現映像が登場。商業都市として繁栄している様 子が描かれる。 貴族共和制のようで、右下の建物が中央行政府・集会場を兼ねた建物らしい。左下は中央通り。 メソポタミア文明との交流を描いた部分でギルガメッシュを題材とした仮面劇が町の中心の建物の前で上演される。インダス文 明 というよりも、古代ギリシアっぽい演劇。劇の最中、突然騎馬民族の襲撃を受け、町は大混乱に陥る。ナレーションで、ネルー は、インダス文明の滅亡とアーリア人の移住には500年くらいのギャップがあるが、インダス文明をインドは継承していると感 じている、と語っているらしい。 インダス文明の再現ドラマ映像ははじめて見ました。結構リアルに感じられましたが、鮮やかな色とりどりの布は当時の技術力 で ありえたのかどうか、そこだけ疑問に感じました。 第三回 ヴェーダの人びとの到来 51'57" (41770) 冒頭、ピクニックのようなアーリア人移住の様子が描かれる。続いてヴェーダの儀式が描かれた後、神託が下り、金属の槍を もったアーリア人たちは都市を襲撃する。襲撃する都市は、前回のインダス文明の都市とほぼ同じ。左下がアーリア人の集会所。 右 下が襲撃される都市の城門からメインストリートを見たところ。 賭博、葬儀、ア シュヴァメーダ祭(馬祀祭)の様子が描かれる。アシュヴァメーダ祭は、インドの統一王者が行う儀式。中国でいえ ば封禅の儀のようなもので、唯の国王では実施はできず、インドを統一した特別の王中の王が行なうとされている儀式のこと。馬 を解き放ち、1年間自由に走らせ、その後に旗を立てて廻る。この再現映像では伝えられている内容をそのまま映像化し、数名の 役人が旗を持って走って周り、ところどころ旗を立てて廻っている。 第四回 カースト制度 45'54 (32663) 犂を用いた農作業の様子、仏陀、らしき人が冒頭少し登場するだけで、政治史上の事件は登場していない(と思われる)。特に 印象に残る映像はなし。 第五回 マハーバーラタ(1) 48'28" (30694) マハーバーラタを読んだことはないのですが、あらすじの紹介を読んでも、紹介記事ごとに設定や筋が違って感じられるとい う、錯綜した話なので、どの部分が映像化されているのかほとんどわかりませんでした。わかったのは、この回の五王子賭博事件 の部分。下右画像は、クルの王子ドゥルヨーダナの宮殿での賭博によりすべての財産を巻き上げられて困り果てて相談する五王 子。こんな感じの映像です、というくらいしか紹介のしようがなく残念です。一ついえるのは、第九回に登場する諸国の宮殿より も立派な宮殿となっていて、この時代(紀元前1000−700年くらい)の時代映像としては、あまりリアルさは感じられませ んでした。 第六回 マハーバーラタ(2) 43'16" (19115) 戦闘を直接に描いた場面もなし。このドラマは、回により予算の使い方に偏りが見られ、後の方の回、例えばバーブルのインド 征服戦争などは、エキストラや爆薬を多用した、それなりの戦闘場面が描かれているのですが、マハーバーラタの戦争は壮大過ぎ てこの番組の予算規模では描けなかったのか、戦争後に遠く廃墟となった故郷を見詰める王子たちが語り続ける(左下画像)、と いう構成になっています。詳しいストーリーがわかるか、ヒンドゥー語の聞き取りが出来ればもっと楽しめるのだと思われます。 第七回 ラーマーヤナ(1) 48'02" (14741) マハーバーラタと並ぶ民族叙事詩ラーマーヤーナの回前半。 第八回 ラーマーヤナ(2) 44'20" (11419) ラーマーヤナの回も、印象に残る映像がないので省略。でも、この機会に薄いこともあり、『バガバット・ギーター』(岩波文 庫)を読んでみました。 第九回 共和国と王国 37'38" (15125) 十六国時代の話だと思われます。この時代は、原始的な部族共和制政体をとっている国と王政の国にわかれて割拠していた時代 です。左下画像が共和国、右下が王国。共和国では議論が果てしなく続く。森の中の仏陀にも教えを請う。共和国は、隣国の王国 と水争いにあったようで、押しかけていた王国の要請を受け入れて、水門をあけると、そこにつけこんで王国(コーサラ国らし い)がなだれ込んできて、結局共和国は虐殺されて占領されてしまう。という話です。 これが共和国の政治の中心地。第三話で登場したアーリア人の集会所とあまり変わら
ない感じ。
第10回 人生の否定と受容 56'11" (16538) この回は、仏教開祖ゴーダマ・ブッダとジャイナ教開祖マハーヴィーラの話。ジャイナ教の神像が不気味な可愛さ。 こちらは仏陀。左が悟りを開いた後、菩提樹の下で弟子達に説教しているところ。右下の車に乗っているのが若き仏陀・ゴーダ マシッダールタ。 IMDbのドラマ紹介は こちら |