本日は、スペイン総選挙の日ですね(この記事を公開した時点では欧州は2011年20日)。
この日は、プリモ・デ・リベラ将軍の息子、ホセ・アントニオ・プリモ・
デ・リベラと、フランコ将軍の命日(ついでに加えると、ブエナベントゥーラ・ドゥルティの命日でもある)。スペイン内戦期の主要
人物の命日に現代スペイン
史でもかなり重要な総選挙の日を設定したのは、やはり国民に内戦期の混乱やフランコ独裁時代を思い出して投票して欲しい、という
意図があるのではないかと
思えます。あと最近のスペインの話題というと、9月にスペイン版アマゾンが開店したことでしょうか。早速スペイン歴史映画を探し
てみましたが、まだあまり
登録されていないようです。。。 さて歴史映画の紹介です。 1972年ギリシア製作。当時軍事政権下にあったため、検閲により、公開時の題名は「ヒポクラテス」とさせられたとのこと。 2000年に元の題名に戻った らしい。原題「ΙΠΠΟΚΡΑΤΗΣ ΚΑΙ ΔΗΜΟΚΡΑΤΙΑ(ヒポクラテスと民主主義)」。本作は、軍事政権下で作成され、「民主主義」の題名がつけられたとのことなので、政治的メッセージの 強い作品なのだと思います。題名も、「ヒポクラテスとペリクレス」としてもいいのでは、と思える程、ペリクレス(前495頃 -429年)が登場します。映 画のラストはペリクレスの臨終で終わるので、ヒポクラテス(前460頃-370年頃)は実は、だしに使われただけで、製作者達の 本来の意図は、「ペリクレ スと民主主義」にあったのではないかと思いました。下記がそのペリクレスです。 本作は、あまり動きの無いドラマで、ギリシア語版を見たので、筋はあまりわかりませんでした。下記ギリシア語の映画紹介サイト に簡単に記載されたあらすじを参考に、画面ショットを交えてあらすじをご紹介いたします。 紀元前430年のコス島。地元の治療師達がアスクレピオスの像に宣誓している。この伝統的な治癒師達は、ヒポクラテスが新しく考 案して進めている科学的な 療法に批判的で、ヒポクラテスは、彼らに告発されることになる。以下がその告発法廷。左下隅(部屋の中央)に肩の一部が写ってい るのがヒポクラテス。 下記がヒポクラテス。 こちらは告発者達。地味ながら、色とりどりの服装をしている。 告発者のリーダー格の男。この紫の衣装も印象的。 診察に赴くヒポクラテスは、途中でアスクレピオスの像を見上げる。ある婦人の家を診療する。どうやら回復に向かっているようであ る。自宅の書斎で本を読む ヒポクラテス。構造がよくわからないが、壁の穴に巻物の書籍が格納されており、梯子を使って書物を取り出しているところ。 書物を読みながら、何か発見があったようで、叫んで立ち上がる(アルキメデスで有名な「ヘウレーカ(見つけた)」ではなかった) が、まさにその時に家に 人々が乗り込んでくる。彼らはヒポクラテス派らしい。ヒポクラテスを顕彰しようと月桂樹かなにかの草冠をかけようとされるが、ヒ ポクラテスは辞退する。 その後のある日、ヒポクラテスが書斎で本を読んでいると、家人が、書庫が火事だと伝えに来る。下記写真の左奥の書庫に火が見え ている。ヒポクラテスの前には机と書籍が。当時の書斎の様子がわかる。 恐らく敵対派が火をつけたのだと思われる。そして、またも法廷に呼び出されるのだった。 法廷から戻ると、家の前に民衆が集まり、ヒポクラテスにものを投げつける。ヒポクラテスのおかげで病から回復した婦人が割って 入り、石かなにかに打たれて絶命してしまう。それを見た人々は皆うな垂れるのだった。 結局彼は追放となったようで、アテネにゆくことになる。そのアテネは、稀代の政治家ペリクレスが支配している時代だった。劇場と 思われる場所で、人々を前 に、ヒポクラテスを紹介し、(恐らく)受け入れるよう、演説している場面だと思われる。人々は最初反対している様子だったが、ペ リクレスの演説により、最 後は歓声を上げて歓迎することになる。 ペリクレス。 夜、ヒポクラテスは、ペリクレスの愛人で高級娼婦のアスパシアのサロンに招かれ、アテネ知識人と談笑する。恐らく、ソクラテ ス、エウリピデス、ディアスといった人々だと思われる。 こちらは、控え室で化粧を整えるアスパシア。このあとアップで登場する場面が多かったのだが、40代くらい。結構な貫禄だった (アスパシアは推定前470-400年の在年なので、前430年には40歳となり、違和感の無い配役という感じ)。 この後、そこに兵士二人を連れた役人が来る。どうやら連行されたのは建築家のフィディアスらしい(なおこの時、ペリクレスは 「ペリクリー」と発音されていた)。フィディアスが、建設費用を私的に流用したとされる事件を描いているものと思われる。 下記はペリクレスの家かアスパシアの家でくつろぐペリクレスとアスパシア。 ヒポクラテスは家を診療所としている。その家の回廊で診察を待つ人々。 これは、脳外科手術の様子。まるで拷問しているみたいに見える(ショッカーの改造手術のようにも見える)。しかし、この患者 は、次の場面で回復している様子が写されていた。 アテネに疫病が流行し始めたある日、兵士を連れた役人がヒポクラテスの家に来る。下記はその兵士。 ペリクレス(かアスパシア)の家に招かれ、疫病の対策を会話しているようである。 町では次々と人々が死んでゆく。それを見て心を痛めるヒポクラテスと妻エミリー。 ヒポクラテスの友人(恐らくアテネの知名人)も疫病にかかってしまう。中央右がヒポクラテス。右端が妻エミリー。左端が病人の 妻。この写真の見所は、布団。 下記はアゴラ(?)でアスパシア糾弾する人々。しかし、またしても、劇場で民衆を前にペリクレスが、アスパシアを弁護する演説 を行い、人々を説得してしまうのだった。アスパシアは涙にむせるのだった。 町を歩くヒポクラテスと妻。町には屍がところかしこに放置されている。ヒポクラテスは家で妻と薬を作り続けるが、あまり効果は 上がっていないようである。そして、街中ではついに、公然と路地の横で性交が行われるようになってしまった。完全にやけになって いる人々。 ところが、ヒポクラテスは、町を歩くたびに気になっていることがあった。それは、鍛冶屋がいつも元気に仕事をしていることだっ た。気になったヒポクラテスは、ある日、ついに質問し、解決策がひらめくのだった。喜び勇んで家に帰ると妻が発病していたのだっ た。 ヒポクラテスが発見したこととは、恐らく、疫病の流行は、物理的に空気感染する、ということだったと思われる。そこで、街中に 放置してあった遺体を焼くように呼びかけ、町中が遺体を焼く火でにぎわうようになる。 一方ヒポクラテスの自宅で熱でうなされる妻は、高熱のあまり町の中にさまよい出だし、ヒポクラテスの幻影を見て、火に飛び込ん で亡くなってしまうのだった。妻の墓に跪くヒポクラテス。 三度舞台は劇場。市民に攻められているペリクレス。そして遂にペリクレスも倒れてしまう。死の床のペリクレスを見舞うアスパシ ア。 この直後、ペリクレスは亡くなる。アスパシアがペリクレスの両目を閉じさせたところで終わる。 -Tέλος- 現在のギリシアについては、最近「ギリシャ危機の真実 ルポ「破綻」国家を行く (Mainichi Business Books)藤原章生著」を読みました(感想はこちら)。 本映画に登場する古代ギリシアの方が現代社会に近い感じ。本書に描かれた現在のギリシアの方が南米文学のような感じ。不思議な国です。 参考サイト http://tainiothiki.gr/v2/filmography/view/1/1014 古代ギリシア映画一覧表はこち ら。 |