シールーヤ


 彼の支配の後、シールーヤが王権を継い だ。彼の統治名は、カワード(世)だった。

 彼は、ホスロー(1世)アノーシールワーンの息子であるホルミズド(4世)の子、ホスロー(2世)の息子だった。国家の貴顕達 は、彼が王となり
彼の父 を監禁した後、ペルシア 人達の元から、シールーヤの前に来て、次のように言ったとされている。

 「我々は、二人の王を持つべきだということは、ふさわしくありません。あなたが、ホスローを殺して、我々が、あなたを信頼し、 服従する召使となるか、我々が、貴方を廃位して、我々が貴方に王座を確保する前にそうしていた様に、彼(ホスロー)に我々の服従 を与えるか」

 これらの言葉は、シールーヤの心に恐ろしく響き、彼を打ちのめした。彼は、ホスローを政府の宮殿から、マーラスファンドと呼ば れる男の家に移すよう指示した。ホスローは、年老いた馬にのって、彼の頭を覆い、分遣隊に伴われて、その家へと移送された。その 途上、路上に設営された売り場に座っている靴屋のもとに彼を連れて行った。靴屋が、ひとりの頭巾の騎乗者をともなった騎兵隊の一 団を見たとき、彼は、その頭巾姿が、ホスローであるとわかり、靴屋の靴型で、彼を打ちのめした。ホスローに付き従っていた部隊の 一人が靴屋のもとにとって返し、鞘を抜いて靴屋の頭を切り、部隊に戻った。

 ホスローがマーラスファンドの家へと押し込められ、シールーヤが、国家の貴顕と、彼らに従う宮廷を統率する家族の一員を集め た。

 「我々は、一致した考えを持っている。第一として、我々の父である王―彼は彼の政府の中に、彼の害悪の行為のすべてをおし進め た王―に使者を遣わし、これらの多くの事象を彼に示す」

 そうして、彼はアルダシール・クラーから来た男を送った。彼は、アスファード・ジュスナフといい、彼の地位は、(王家の)秘書 官の長であったこともあり、王国を統治する役割にあった。シールーヤは彼に言った。

 「王であるわれらの父の元に汝を遣かわす。私の名において、我々は、彼の失敗の為に国家が不幸となったとは考えていないし、臣 下の人々の一員に責任もないが、 神が、あなたが害悪を与えることとなった命令によって神の恩恵を損なったと、あなたを非難していると伝えなさい。

(第1に)あなたの父であるホルミズドへの犯罪。あなたの彼への暴力は、彼を王座から引き落とし、彼を盲いにし、もっとも恐ろし い方法で彼を殺し、更に、 彼を傷つけることで、あなたが自分自身に齎したおおきな罪の重さについて。

(第2に)我々、あなたの息子達を、あらゆる良きことに参加することや、幸福などすべてのことから我々を遠ざけた誤った措置につ いて。

(第3に)あなたが、永遠に投獄するように課した人々に対する誤った措置について。彼らが極限的な貧困や悲惨な生活状況や食料事 情による厳しさに悩まされた点、彼らを故郷や妻、子供達から切り離した点について。

(第4に)あなた自身のために、あなたが自分で任じた女性達への考慮不足について。あなたは、愛情や愛といったものを示すことに 失敗し、彼女達が、子供を 身ごもったり、子供を持ったりすると、その夫達のもとへと彼女達を送り返したこと。また、彼女達の意思に反して、あなたの宮殿に彼らをとどめ置いたこと。

(第5に)あなたが、あなたの臣下へ、全般的に土地税を徴収するようにさせ、暴力と悪意でそれらを取り扱うようにしたこと。

(第6に)あなたが人々から力づくで集めた莫大な富ゆえに、人々はあなたの支配を憎むように仕向けさせてしまい、悲惨な生活と苦 痛を彼らに齎したことにつ いて。

(第7に)あなたが、長期間ビザンツや、その他の辺境地 帯に配備した軍団について。彼らをその家族から引き離したことについて。

(第8に)あなたのビザンツ王マウリキウスに対する信頼 を失う振る舞いについて。あなたの振る舞いにおいて、マウリキウスの賞賛に値する振る舞いに対する、あなたの不遜な態度。彼 が貴方のために避難場所を探し、あなたのために 見事な振る舞いをし、貴方の敵の悪意からあなたを守り、彼の娘達の中で、彼にとってもっとも高貴である娘をあなたと娶わせ、あなたの名の運命を高めたとい うことにも関わらず、あなたは、あなたの、彼に対する正しい義務を知りながら、あなたや、あなたに従う故郷の人々のいづれもが、必要でもなく、価 値を認めていなかった「真 実の十字架」の返還に際し、彼に敬意を払うことを拒絶したこと。あなたは(今や)このことを良く知っている。もしあなたが、 臣下や我々に、貴方の無実だという証拠を示したり、説明をすることができるならば、それらを持ってきてくるように。もしあな たが、なにも提示できないのであれば、我々があなたに関する意思を告げる前に、神へあなたの悔恨を示して神に差出すように。

 アスファードは、シールーヤから、ホスローに対するこ の伝言を、彼の頭に叩き込んみ、彼にそれを伝える為にシールーヤの王宮を出発した。彼が、ホスローが囚われている王宮に到着 した時、ジーリヌース(ジャーリーヌース)と呼ばれる男が座っているのを見つけた。彼は、ホスローを守ることで信頼を得てき た衛兵の隊長だった。彼は、少しの間、ジーリヌースと会話をして、アスファード・ジュスナスは、シールーヤからの伝言を伝えにホスローのもとへ行くための許可を彼に求めた。ジー リヌースは、戻って、ヴェー ル越しでホスローと会話する為のカーテンを引いて、彼の前に行って言った。

 「神があなたに長命を与えんことを。アスファール・ ジュスナスが門のところに来ています。彼は、王シールーヤがあなたに伝言を 託して派遣した者です。あなたにまみえることを欲しています。あなたが希望するところについて決断してください」

 ホスローは、笑って、冗談を言うように言った。

「アスファードの息子、ジーリヌースよ、お前が言ってい ることは、知的な人物のいうことと反対のことだ。お前の言っている伝言が王 シールーヤからのもので、王位に面してる者であるならば、入ってくるのに、我々に許可を求める必要などない。もし、我々が、 ここに入るためのの許可か、拒否するための許可を行う権威を持っているのであれば、シールーヤは王ではなかろう。しかし、こ こで関係する警句は、「神がそれを意図し、王がそれを命じ、そのように実行するということだ」

 よって、アスファード・ジュスナスを招きいれ、 彼が携えてきた伝言をよこさせた。

 ジーリヌースがこの話を聞いたとき、彼は、王の前を去 り、アスファード・ジュスナスの手をとり、彼に言った。「立ちなさい。正しい儀礼にのっとってホスローの面前へ行きなさい」 アスファード・ジュスナスは、ゆっくり立ち上がって、彼が伴ってきた従者の一人を呼んだ。彼が(いつも)着ている外套を手にし、彼のからきれいで 白い服を引き出して、それを使って彼の顔を拭った。

 そうして、彼はホスローの前に赴いた。彼が彼と顔を合 わせた時、彼は、ホスローの前に平伏した。ホスローは、起き上がるように指示した。そこで、彼は立ち上がって、ホスローの前 でお辞儀した。ホスローは、金で刺繍されたクスラワーニー絨毯の上に座っていた。その絨毯は、絹の絨毯の上に敷かれていて、 金で刺繍されたようなクッションの上に、だらしなく座っていた。彼は、丸められた黄色のマルメロ*8を手にしていた。彼が、 アサファード・ジュスナスに気付いた時、彼は足を組んで座りなおし、座っていた場所に、マルメロを置いた。それは完璧に丸め られていて、椅子の上のクッションも滑らかだったので、詰め込んでいたものが膨らみながら、3種 類の絨毯のうち、一番上にある絨毯の上にある3つのクッションのもっとも天 辺から落ちていき、絨毯から絨毯へと、遂にはもっとも下の絨毯へと転がって いった。いささか距離があったので、汚れてしまっていた。アスファード・ジュスナスは、(マルメロに)袂をひっかけたので、ホスローの前に転がっていっ た。 しかし、ホスローは、アスファール・ジュスナスに、彼から離れているように身振りで示して言った、「私から離れているように!」よってアスファール・ジュ スナスは、絨毯 の端に腰を下ろし、横になり、 またもとの場所に立って、彼の胸に手をおくことで、ホスローの前での礼儀を示した。ホスローは頭を低くし、事象についてふさわしい警句を唱え始めた。

 「ひとつの、思いもしない困難があったとき、再び前へ 進ませることは意味が無いか、機能しない。ものごとがうまくいっている時 は、それにあえて逆らうことは意味がないし、機能しない。この2つのことが順番に起こった場合、意味も機能も両方の場合で不 足する」

 そうして彼は、アスファード・ジュスナスに言った、

 「このように、このマルメロが、丸まっているのが膨ら んで、ご覧のように落ち、埃に汚れてしまった。それは、我々にとっては一つ の通告である。それこそが、お前が持ち運んでくる任務を負った伝言のよう に、お前がしようと思っていることであり、結果なのだ。実に、マルメロはよいものを意味するが、高いところから、深いところ へ落ちてしまうと、座るところの覆いにとどまらず、速く落ちると、遠くまで転がり、埃にまみれてしまう。すべての起こること は、悪い兆を示している。君主の栄光は、一般大衆の手に預けられ、 我々は、王の権力を取り上げられ、王家の一族でないものに受け渡される前の我々の後継者の手にも、長くは維持されぬであろう。今、それを得て、お前が携え てきた伝言と持ってきた言葉とを聞かせるのだ」

 アスファード・ジュスナスは、シールーヤが、彼に託し た伝言を語り始めた。一言も漏らさずに、文の順序も正確に。

 ホスローは、その伝 言に続ける回答をした。

「シールーヤに伝達せよ。短き生の者*6よ、私からの伝言は、知識のある者にはふさわしくなかろう。その者は、ささいな罪についての話 や、それらの真実を徹底的に保障することなく、 それらについて、彼自身の中に確証があるわけでもなく、ささいな不正を、誰にでも広げるような輩なのだ。お前が我々の責任とし、我々の扉に 置き、お前が広め、内外にばらまいた罪と犯罪を大げさにさせるの だ。しかも、罪人を傲岸さで拒絶し、犯罪の加害者を非難することができる人は、すべての罪と犯罪とに関わらないようにできる人なのである。短い支配となる 男よ、もののわかっていない男よ、 我々が、お前が、我々の責任だとしているような事の罪が我々にあるというのであるならば、我々を咎め、内外に広めることは、そぐわない。お前が、お前自身 が持っている欠点が理解できず、お前がしているように、我々に関するそれらを広めるのであれば、お前は、お前自身の欠点を もっとよく知るべきである。お前の、我々についての短い非難をやめ、我々の失敗を詮索することをやめることだ。お前の病んだ 演説が、お前自身の公正さの不足と無知を公に知らしめてしまうことになるからだ。

 理由に欠け、知識も不十分だ!もし、我々に死を迫るほ どの犯罪 に対する罪について、我々に広く示すことに、お前が努力したということについて、現実的な根拠があり、それについてのいくばくかの証拠があるのであれば、 お前が自身の宗教組織(ゾロアスターのそれ)で行われていた判断を思い出すべきである。ある男の息子が、彼の父親の地位を手 に入れられるものと考え、死が男に値するものと考えるような、そうした息子を妨げるような、宗教的判断を。よき人々との交流 を彼に齎し、彼らと一緒に座し、彼らと打ち解けるようなことを。彼を王にすることにふさわしくない少数の場所以外については、宗教組織 の判断を思い出すべきである。我々は―神を称え、神の慈悲に感謝する!―まっすぐな振る舞いと、意思と、神との関係と、我々 の宗教的組織の支持者と、信頼と、息子達の一団全体と、我々が決して陥らな い地位、または罪の証明を得るにふさわしい地位に、またはいかなる道筋にも 通じて到達しているのである。我々は、お前が我々に課そうとしている罪や、我々の扉に置いた犯罪に関する状況を説明すること ができる。 我々が掲げた証拠と、提出した検討内容のあらゆることにいて、一部をはしょるようなことをせずに説明することができる。もしお前が、お前 の判断不足の知識や、お前の行動の害悪となる振る舞いや、理由の欠如を満たそうとしたとしても。

(第1に)お前が我々の父、ホルミズドに関して言及して いることについては、ここでの我々の答弁は、害をなす、悪意のある人物が我々に対してけしかけているということを言おう。彼 は、我々について疑いを育て、我々に対して、 憎しみと怨恨たということが重要な点である。我々は、我々からの彼の嫌悪と、彼が持つ、我々に 対する悪い見方を自覚している。だから、我々 は、彼に近づきすぎることを次第に恐れるようになり、彼への恐れから逃れる為に、彼の王宮を引き払い、アゼルバイジャンへの道をとったのだ。この時までに 王権は分解し、ばらばらになっていたのだ。よく知られているように。我々は、彼について起こったことの知らせを知ると直ち に、彼の王宮へ向けて、アゼルバイジャンを出発した。しかし、背信者バフラーム(チュービーン)は、反乱軍の大規模な軍隊と ともに我々を襲い、その指揮は死に値し、彼の従者を混乱させ、王国から我々を追い出した。我々は、ビザンツ人の地に避難場所 を求め、そこから、軍団と軍備を得て戻り、彼に戦いを挑んだのだ。結果として、彼は、我々の前から逃げ、トルコ人の地へ至っ たのだった。人々の間で一般に知られているように、破滅と地獄を携えて。

 最終的に、領域の支配を国に達成し、我々の権威が土地 に戻り、神の支援とともに、我々は、我々の臣下のために、彼らがいた極限の状況から、すべての苦痛と災難を取り除いたのだ。我等は、我等に言った。

「支配する政策を適用することができ、我々の王権を開始 することができるもっともよい行動の方法の一つは、我々の父のために復讐することだった。彼の為に報復し、彼の血を流すこと に巻き込まれたすべての人を殺すことだった」

そして、我等がそれに関する全ての我等の意思を達成し、 我等が目的とすることを達成した時、我等は、注意を王国の他の統治の場へと振り向けたのだ。だから我等は、彼の血を流すこと に加わった全ての人、または、彼に対して陰謀を企てたり、たくらんだ全ての人に死を齎すこととしたのだ。

(第2に)お前が我々の息子に関して言及していることについては、我々のここ での反証は、私がこの世に齎した全ての息子は、神が彼の上に齎した選択を例外として、完全に彼らの身体の四肢まで健全だっ た。しかし、我々は、お前のために、臣下と国への憎しみからなされることからお前を守るために望んだことのに、お前に関係ない物事に巻き込まれることからお前を守る為に、衛兵を任命したのだ。だから我等は、お前のために十分なことをし た。というのは、お前の生活の為の費用、衣服やお前がる馬具、お前が望む あらゆるものを与えた、お前も分かっているように。特にお前に関することでは、占星術師が、お前のホロスコープから運命を告げたという話がある。それは、お前が我々の上に害悪を齎すか、さもなくば、害悪 が、お前の政府を通して齎されるということだ。とにかく、お前に死を齎すようには命じなかった。しかし、お前のホロスコープ を示す文書を封印し、我々に配偶者である、シーリーンの保管にゆだねたのだった。

 ホロスコープの示すところによって、その文書に我々は信頼を 置いているという事実の証明として、フルミーシャー*5というインドの王が我々の支配の36年目に書を送ってよこした、という一件がある。我々に臣属する という委任状を送ってきたのだ。彼は我々や、お前や、我々の息子達の皆に、あらゆることについて書き送ってきており、お前達 のうちのそれぞれへの手紙と一緒に贈り物を贈っ てよこしたのだ。お前への彼の贈り物とは、(お前はそれらを思い出すことだろう)、一頭の象、一振りの剣、一羽の白い鷹、黄 金で波打つ錦の外套を含んでいた。我々が、彼がお前に送った贈り物を見たと き、インドの言葉で、お前に手紙を書き送っているのを見つけた。「この秘密の内容を明かすな」我々は、彼がお前達のそれぞれ に送ったすべての贈り物や手紙をお前達にすべてに届かせるよう指示を与えた。我々は、その宛名ゆえに彼の手紙をそのままにし たのだった。我々はインド人書記に送って、封印を壊し、中身を読むよう指示した。そこには、「喜びあれ、魂の気持ち新たに し、心に幸福あれ、汝がアードゥハルの日に王位に着かれんために。ホスローの治世38年目のアードゥハルの月に。彼の王権の 保持者であり、彼の国の支配者として崇められんことを」とあった。我々は、お前が我々自身の没落と地獄への転落を通じて、王 権を得るだろうと確信した。確信しているにも関わらず、以前にお前に与えられたような贈り物や生活の為の補助金、様々な手当 てを帳消しにすることができず、お前に死を賜らせるようなこともしなかったのだ。フルミーシャーの手紙を、我々の封印で再度 封印し、我々の女王であるシーリーンへと委ねたのだ。彼女はまだ生きていて、心身ともにしっかりしていた。もしお前が、お前 のホロスコープの指し示すところと、お前へのフルミーシャーの手紙を、彼女からもらって読みたければ、お前の改悛と後悔をお 前の元にもたらすために、それをするがよい!

(第3に)お前が、永遠の牢獄を課されている状況に関 し、言及し ていることに関して。我等は、ジャユーマルト(カユーマルト)の時代からビシュタースブ(ウィシュタースパ)の支配まで、古代の王は、彼らの王権を正義の 名において使い、ビシュタースブの時代から我等自身が権力を担い、宗教的純粋さとともに、正義の意味により指揮したというこ とを、正当化として言わせてもらう。今、お前は、教育や、知識や、理由が不足しているのだから、宗教上の権威者や、宗教組織の支援(字義的には、役にに立たない兵 士)べきなのだ。国 王に従わず、国王に叛旗を翻すものどもの、彼らが彼らの誓いを破ったり、彼らの罪を死であ がなったり、許しや慈悲を示されるのに、彼らがふさわしくないとされているとお前に訴えるような連中について。それを知り、 これら全てにも関わらず、我等が、これらの人々の終わりに、永遠の牢獄を課している人々は、もし、公正な判決がなされるな ら、殺されるか、目を潰されるか、手か足か、他のどこかの四肢を切断されるのがふさわしい連中なのだ。どれほど頻繁に彼ら を、あるいは我等のさまざまな大臣を保護するような命令がなされるのか、どれほど頻繁に、処刑にふさわしい人々にふさわしい 運命について言及されていることか。「彼らを早急に殺せ、彼らが、お前を殺す意味と方法を見つける前に」まだ、人生を維持し ようとする我等の意思があり、血を流すことが嫌いである為に、我等は彼らについて、ゆっくりと慎重に行動し、神の手にゆ委ね、我等は過失という、我々自身の限界の為に、監禁するという方法を越えて彼らを 罰することにはあまりしないようにしてきたし、彼らがアロマのハーブの芳香を楽しんだり、ワインを飲んだり、食事を得られないようなこともないようにしてきた。我々が、与えな いで置くもののどれにも、安逸な環境や、楽しく人生を暮らすことから、死を与えられるにふさわしい人を維持し続けることに関 して、宗教的な指針にあることを越えてまで、我々がしていることはない。(反対に)我等は、彼らに、食事や飲み物、その他彼 らの健康を維持するために必要なものを彼らに割り当て、彼らの女性家族に会うことから彼らを遠ざけ続けたわけでもなく、彼ら が牢獄に入っている間、子供を生んだり、妊娠したりするような交渉の可能性から遠ざけ続けたわけではない。今、お前は、これ らの害悪をなす人々を自由にすること、死にふさわしい害悪をなそうとしている人々を自由にすること、それらの最期を取りやめ にするための指令を与えることに決めたという知らせが我々のもとに届いた。もし、お前が彼らを解放するのなら、お前が、お前 の支配者である神に対して罪を負うことになろう。お前自身に憎しみを齎すことになり、お前自身の信頼と、差し止め命令と、処刑にふさわしい人々の 為の慈悲や許しを拒否するような内容を含む法的規制について、誤って傷つけることになる。これに加えて、(事実であるが)王の敵は、 まず権力を愛さない、王に対して反乱する人々は、彼らを服従させようとしない。賢人は、警句を与えている、「罰にふさわしい人々を罰することを思いとど まってはいけない。そのようなためらいは、公正さを欠くことになり、王国の統治に悪い効果を齎す」お前が、これら害悪をなし た人々や害 悪を望む人々、反乱者、処刑されるにふさわしい人々を自由にするとき、それはお前に喜びを感じさせるだろうが、お前は政府の指揮において、(惨めな)結果 を必ず経験することになるだろう。また、お前の宗教組織の人々のために災難と酷く苦しい苦痛が齎されるであろう。

(第5に*7)等 が獲得し、集めた、積み重ねた宝石、富、日用品、装備、もっとも過酷な徴税方法によって王国各地から集めた穀物、臣下の上に 需要を押し付け、彼らに戦争を課して、敵から徴収するよりも暴力的な専制によって、彼らの所有物を力づくで没収することによって集めたこれらの品々についてお前が主張している ことに関し、われわれの回答は、次の通りだ。徹底的な無視と愚行について話すいかなる声明にとって、もっともよい回答とは、 なにも答えないことだ。しかし、等は、これを格別回答せずに残しておこう とは思わない。回答しないということは、(その最初の声明について)真実であると確約することと同じとなる。等に対してなされてい る告発への等 の答弁は、それらの強い反証である。等の明白な無罪証明は、お前がそれに 関して、等のうちに探していることを明らかにすることだからだ。

 知れ、無知なるものよ。神の支配の後の時代では、富と軍隊だ けが、君主の王の権威を保持することができ、これは特にペルシアの王国によく当てはまることなのだ。この王国は、王国が保持する も のを飲み込もうと待ち構えている大きく避けた口をもった敵達に囲まれている。彼ら自身のために略奪することに熱中しているこれらの土地を守り、保持するこ とができるのは、ひとえに巨大な軍隊と大量の軍需物資と兵器なのだ。まさに巨大な軍隊とこのためのあらゆる必要物は、莫大な富と その量によって齎されることができるのだ。富こそが、起こりうるいかなる不測の事態や、土地税を集めることに集中し、多大な努力 によって蓄積され、とも に集められることができるものなのだ。等は、富を集めた最初のものどもではな い。反対に、等は、過去の時代における先駆者や、祖先を模倣しているに過ぎな いのだ。彼らは、等が持つような財産を集め莫大な量を集めることは、彼らの軍 隊の強化や、権威を確立することの為に、財産がなんとしてでも蓄積されなくてはならないその他のものをなんとかするために、それ らにとっての裏づけとなり続けるもといえるのだ。しかし、背信者バフラームは、彼のような人々の集団や死ぬしかないような絶望的 な人々とともに、等の宝物庫にある宝石と財産を襲撃したのだ。彼らは、それら を撒き散らし、分散させ、それらを扱うことを辞め、われ等の財宝と財産の格納庫の背後に、等 のわずかの武器だけを残したのだ。その武器は、彼らが風に向かって撒き散らすことのできない、取り除くことも、それらに対して他 にどうしようもない物だったのだ。等が―神よ称えたまえ―王権を回復し、権威 が再建されたとき、臣下達が等のもとに参集し、服従を示し、彼らが陥った災難 を取り除いたとき、等は等 のイスババードの地のはずれの一部を分割し、これらの地域にある彼らを、ファードゥースバーンスに任命し、等は辺境地区をマルズバーン(辺境総督)や、勇気があり、エネルギッシュでタフな高級 役人に推挙したのだった。等が任命したものは全て、これら役人どもが、敵対す る王や、彼らの領域に面した土地に敵対するものたちに対する強力な戦略をもてるように、巨大な軍隊の支えを与えたということなのだ。等の13年目の支配の終わりから、敵 に対する襲撃や、彼らがなした虐殺や、彼らが捕まえた捕虜は、(そのような範囲のうちで 行われていたのだ)。これらの敵対する支配者の誰一人として、あえて脅かされているために防衛上支配下にあったり、等からの防衛の許可を与えられていたりする以外は、彼らの王国の中心にあって、彼らの 頭をもたげようとする者はいなかった。等の土地のどのようなところについて も、襲撃させるようなことはなく、等が受け入れられない何事にも関与させるよ うなことはなかった。これらの年の全ての期間にわたって、等の財産と宝物の格 納庫に、等の敵から略奪した略奪物、金銀、あらゆる種類の宝石、銅、鉄、絹、 絹の 織物、織られた外套、馬、武器、捕虜となった女性、子供、男の囚人などを含む略奪物がしまいまれたのだった。囚人達の大部分は隠されることなく、その価値は誰にでも知れ渡ってい た。

 我々の支配の13年目の終わりには、貨幣を新しく鋳造するように定めた。その目的のために、新しい銀の貨幣の鋳造所をはじめるように命した。そこで我々は、宝物庫にある鋳造処理の最終工 程のところで、そこに至った銀を数える任務を持った人々によって我々に報告された内容によれば、我々が、軍隊の給料として支 払うために準備するよう指示した額とは遠く離れた、20 万の財布の銀貨、これは8億ミスカール*9の重さに相当する銀貨を見い出したのだった。

 我々は、我々の国境の安全を保ってきており、我々の臣 属国や、国境からやってきた敵を撃退し、ツバメを捕獲しようと大きく開けていた口に轡をつけ、臣下の安全を確保し、災難や襲 撃から国土の四方の居住地を保護してきたとき、これまでの年で滞納された税金を集めるよう、富の宝物庫から運んできた金銀の すべてを元の場所に戻し、我々の財宝から銅製品と宝石を戻すように指示した。そうして、30年目の末には、我々は、銀貨を 打って、新しい形の貨幣を鋳造するよう指示し、そうして、我々の宝物庫に は、既に我々のため に数えてあった額とはかけ離れた、軍隊の給料として支払準備するよう指示した額とは遠く離れた、40万の財布の銀貨、これは 16億ミスカールの重さに相当する銀貨を見い出したのだった。これらが、神が我々に贈ったものに追加された。神が我々のた め、略奪品として 贈ったこれらの金と、神 の寛容と我々に対する気前の良さの総額が追加された。更に、ビザンツの支配者の富から抜けだし、風が船に齎したもの、我等が、風の略奪品と呼ぶもの、これらが全てだった。

 支配の30年目から38年の間、それは今年のことだ が、我々の宝物庫は、拡大と富裕化が終わることなく成長を続け、国土は繁栄に満ち、臣下は安全で、平穏にあり、辺境と従属地 は難攻不落であり、強度な防衛の元にあった。我々は今、死にする害悪をなすものどものささやきによって、お 前の底知れぬ徳の低さがために、お前が、これらすべての富を外国に撒き散らし、滅ぼそうとしていると聞いている。我々は、ま さにお前に言おう、しかしこれらの宝物と富とは、危険へと生命を荒らされそうな人を通じて集められたものであり、努力とやる 気のある意思をもって、それらの方法で撃退する為に集められたものなのだ。この王国の土地を降伏させようとしている敵、彼らが獲得したものを 全て支配しようとする目的をもって推し進め敵を撃退する為に集められたものなのだ。神 からの支援を受けた後で、富と軍隊によって、これらのような敵は、全ての時と時代で撃退することができる。軍隊は富によって維持することができる。 富は、莫大に蓄積されていて、使えるようになっている場合に、使うことができる。だから富を分割することを目論んではいけな い。性急に分割するようなこともしてはいけない。富は、王の権力とお前の土地とお前の敵に対するお前のための力の源泉を守る ためにあるのだ。

 アスファード・ジュスナスはシールーヤの元に戻り、ホ スローが 彼に言った事を話した。一言を除いて。ペルシア人の間の国家の貴顕は、戻ってきて、シールーヤに言った、


 「2人の王を持つ事は、ふさわしくありません。あなたがホスローに死を賜るように命令して、我等があなたの召使となってあ なたに服従するか、我等があなたを退位させて、もう一度彼に服従するか、いづれかです」

これらの言葉は、シールーヤの心に恐ろしく響き、彼を打 ちのめし た。彼はホスローを殺すように命じた。ホスローに対して復讐のす ることを義務であるとしている何人かの男が彼を殺す呼びかけに応じた。しかし、ホスローの元にやってきた彼らのうちの一人が やってくると、常に侮辱の多く言葉を吐き、強く嫌悪感を抱いた。誰もホスローを殺すという任務を実行することはできなかっ た。最終的にミフル・ホルミズドと呼ばれる若者彼はマルダーンシャーの息 子だった−が彼を殺しに行くまでは。マルダーンシャーは、ホスローのニームルーズ*1州のファドゥスバーン*2であり、ホス ローのもっとも従順で信頼している家来だった。

 彼が王座を追われる約2年前、ホスローは占星術師と占 い師達に、彼の最期がどうなるかを尋ねた。彼らは、彼の定めである死が、ニームルーズの方角から訪れると告げた。彼はマル ダーン・シャーへの疑念がつのりだした。彼の偉大な特権という理由で、彼の近しい地位に恐れを抱き、強さと権力の点で彼と等 しい者は、その地域では他に誰もいないという理由で。ホスローは、彼に、直ぐに彼の元へとやってくるように、指示を書き送っ て、マルダーンシャーが彼のもとに到着するまでに、彼をどう殺すべきかの口実を探すことへと気が変わってしまった。しかし、 どんな落ち度もマルダーンシャーに見出すことはできなかった。ホスローは、マルダーンシャーの、誠実に彼に従うさまと、王へ のよき助言、王を喜ばせる熱意について知りうると、だんだん殺すことを躊躇するようになった。だから、彼は、命をとることは 容赦することにし、右手を切るようにと指示した、その右手の償いとして、莫大な額の金と過大な富を与えることにしたのだっ た。そうして、マルダーンシャーの右手を切断するように至った口実を探したのだった。

 手と足と頭は、王宮前の広場で切られるのが常 だった。  彼がマルダー ンシャーの右手を切断するよう指示した日に、ホスローは偵察し観察する者を送り、その者は、ホスローのに戻り、マルダーンシャーについて聞いたことや、野次馬が今言っていることを教え る手筈となっていた。マルダーンシャーの右手が切られた時、彼は左手で、切られた右手を取り上げ、それに口付けをし、胸に置 いて、涙を流しながら嘆き始めて、言った。 「ああ、穏やかで我慢強い手のために、それは撃ち、書き、打撃を与え、運動をし、気前よく施しをした手よ」マルダーンシャーを偵察し、観察するように送ら れた男は、ホスローの前に戻り、彼が見て聞いた、マルダーンシャーがやって言ったことを伝えた。ここでホスローは、彼への同 情と悲痛に満たされ、マルダーンシャーについて猛烈に悔やんだ。彼は、マルダーンシャーにしてしまったことを後悔しているの だ。彼の力の及ぶ限り、マルダーンシャーがしたかもしれな い、彼の為にこれを支援するために、必要な要望を満たすものを伝えるようにと、貴顕の一人を使者として送った。マルダーンシャーは、ホスローに同 じ使者を送り返し、王を称えて言った、「恐れながら王よ、私は常にあなたの、私への慈悲をわかっています。感謝いたします。 あなたが私に負わせたことは、気が進まなかったことだと十分確信するようになりました。こうなったのも運命のひとつ でしょう。とはいえ、お願いが ございます。必ず実行する誓いを立てて欲しいのです。つまり、私の心は、安息を望んでいます。誓いを実行するおごぞかな、神の慈悲のある男を送ってくださ い。そうして、あなたと対話し、私の要望をお伝えしましょう」ホスローの使者は。この伝言を 持って、彼の主のへと 戻った。ホスローは、マルダーンシャーの要求を実施することをためらい、この最後の ものが、彼の王の権力の構造を弱めることになるものを伴うようなことが 無い限り、彼の要求を損なうことなく従うよう誓ったのだった。ホスローは、聖職者の長(murmurersの長)を経由して、このメッセージをマルダーン シャーへと送り届けたのだっ た。マルダーンシャーは、彼を処刑するようにと、ホスローに使者を送り返した。この拭い去ることができない、彼につけられた不名誉のために。ホスローは、 マルダーンシャーの頭を切断するよう指示をした。彼が主張したように、誓いを破ることは気が進まないために。

 ミフル・ホルミズドマ ルダーンシャーの息子がホスローの面前 に来たとき、ホスローはミフル・ホルミズドに名前と彼の父と、国における彼の地位を尋ねた。彼はマルダーンシャー、ニームルーズのファドゥースバーンの息 子のミフル・ホルミズドと言った。ホスローは、「お前が貴族の息子か。非常に高い能力を持ち、われわれが望む信頼に答え、よ き助言者であり我々にとっても有能で能力があり、身に余る作法を持っていた男の。さあ、お前が指示されたことをやれ」よってミフル・ホルミズ ドは彼が手に持っていた斧で一撃を加え、ホスローの肩へと打ち下ろし、首の筋に数回打ち付けた。しかしこれはホスローには何 の効果も与えなかった。肩が調べられ、上腕にくくりつけられた魔よけの形をした宝石がなっただけだった(彼は上腕に護符をくくりつけていた)。護 符が剣の効果を弱めてて保護していた。護符はだんだんとホスローから脱げ、その後、ミフル・ホルミズドが彼を殺す一撃を見 舞った。

 知らせが シールーヤのもとにもたらされた。彼は彼の外套の前の部分を裂いて、酷く嘆 き悲しんだ。彼はホスローの遺体を埋葬する場所へと運ぶよう指示し、そうされた。国家の貴顕と、その下の上層階級の人々は、 遺体を埋める場所へと伴った。彼はミフル・ホルミズドを処刑するよう指示した。ホスローの王座での在位は、38年間続いた。 彼は、アダーの月のマーの日(2月29日)に殺された。シールーヤは彼の兄弟を17人殺した。その中には、宰相ファイルー ズ*4の指導により、よき教育を受けたものもいれば、勇気があるもの、主に美徳を持つものなどがいた。ヤズィーンの息子の一 人の呼びかけによって、彼は、ホスロ−のために国土から税金(「ティセス」という)を徴収する役目を持つ役人であり、シャム ターと呼ばれていたが、彼が彼らに死をもたらした。

 シールーヤは病弱で苦しんでおり、現世を楽しむことが なかった。彼はダスタラット・アル・マリクで死んだ。彼はサーサーン王家の不吉な影となった。彼が彼の兄弟を殺した時、恐ろ しい悲嘆を示した。彼が兄弟を殺した後の日に、彼の2人の姉妹、ブーラーンと、アーザルミードゥクトが彼の前にやってきて、 「まだ確立もしていない権力にとって、強欲さが、父親と兄弟を殺すことをお前にもたらした。お前は不名誉なことをしでかした のだ」とったとされている。彼がこれらの言葉を聞いたとき、彼は 少しばかり嘆いて、頭から王冠をむしりとった。彼のすべての日々は心労に苦しめられ、病気に苦しめられた。彼は、彼が手中にあった王家の家系のものをすべ て根絶やしにし、彼の時代、多くのペルシア人が滅びる程のペストが広まっ た。彼の王位への在位は、8ヶ月だった。

 *1 ニームルーズは南方
 *2 官職名
 *3 N/A
 *4 バルアミーのペルシア語版によれば、シーローエの宰相は、フィールーズの息子のバルマクとなっていて、これは、アッ バース朝時代のバルマク家の祖先である。
  *5 チャールキヤ朝プラケシン2世(在609-42)とされる。
 *6 シールーヤは、伝染病で、短い在位で終わった。しかも後述にあるように、予言されていた。ホスローはその予言を言っているのである。
 *7 シールーヤの告発数と番号には対応していないようである。また、ホスローの弁明の第4は無い。
 *8 マルメロの写真と解 説はこちら
  *9  ミスカールは重さの単位。7ミスカールが、10ドラクマ銀貨相当の重さとなる。このため、7:10の比率で換算する。

   -「アルタバリーの歴史」第5巻「最後のサーサーン人達の王達」 の章 通番1046から1061頁より  -
 

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