山田長政の若き日を描くタイ歴史活劇映画「アユタヤのサムライ」

 2010年タイ製作。原題「Yamada The Samurai of Ayothaya」。

 せっかくタイが日本人を主役とした映画 を作ってくれたのに、日本では公開していないし、dvdも出ていないのは残念だ、と思っていたのですが、視聴してみたところ、日 本公開は微妙だと思いまし た。決してつまらないわけではないのですが、少なくとも歴史映画では無い感じ。本作のポイントは以下の三点となるように思えまし た。

1.ニンジャやサムライとムエタイを戦わせてみたかった
2.ムエタイと武道の交流・融合
3.日本とタイの友情

 主演はタイを拠点に活動している大関正義。なので、主人公の独白部分は日本語です。

  理由はよくわからないのですが、タイの日本人村に住めなくなり、日本人の現地ニンジャ組織に追われる身となった山田長政が、現地 住民に助けられ、介抱して くれた家の美女と恋に落ち、助けてくれたムエタイ集団との友情を育む。当初、日本の武道(柔道の前身のなにか)でムエタイ集団と 試合をした長政は、簡単に 叩きのめされ、ムエタイ修業に入る。ノリはベスト・キッドのような感じ。修業して再度ムエタイ集団に試合を望み、今度は互角とな る(タイ人が少し手を抜い てくれたものと思われるが)。一方ムエタイ集団の方も日本刀を学ぶ。双方の武道を尊敬し合うという筋(しかしタイ人の日本刀の扱 い方はヌンチャックな感 じ)。刺青をしてもらいすっかりタイ人となってゆく長政。

 アユタヤーの町並み。

長政が介抱されている家。

 その家の屋根。真ん中が吹き抜けとなっているのが特徴的。


 ナレスワン王の御前試合となり、長政も出場。下記はナレスワン王(在1590-1605年)。

今回は長政が勝利する。国王に礼をする長政(右)と親友(左)。

最後に王が訓示して終わり。続いて長政が日本刀を僧侶から貰い受ける。

  続いて長政はアユタヤー軍・ムエタイ集団と一緒に蛮族を襲っている場面が出てくる。長政もムエタイ軍団も刀使っている。ムエタイ と日本刀という2つの武道 文化の融合を象徴しているかのようだ。長政はナレスワン王に労われる(どうやら蛮族はビルマ軍だった可能性があるそうですが、本 当にビルマ軍だとすると少 し物議を醸しそうな描きぶり)。

 介抱してくれた家の家族や村民と一緒にタイ伝統劇を見る主長政。

そして武士の服装をして小舟で日本ニンジャ暗殺組織との対決に至る。しかしムエタイ集団の同僚が、暗殺集団のリーダーに短筒で撃 ちぬかれ死んでしまうという悲劇が起こるが、最後は暗殺集団を撃滅させて終わる。

 最後に長政は以下のようにつぶやく(日本語だったので、聞き取れた部分だけ記載してみます)。

--- 友よ、拙者はそなたが望んだとおりアユタヤの、、、、、、そなたの剣を使おう。
こ の地で真の友であったそなたが生まれ、そして死んでいった。勇敢な者は命を惜しまない。拙者は、、、化してこの地を守って見せよ う。拙者は同じ国から来た ものたちの手によって殺されるところであった。しかし運命は真の友を、、、遥か彼方大海でさえ、その妨げにならない程、、、、、 (異なる?)町を持つ身で あっても友として、、、を拙者に教えた。誠の友情に終わりは無い。永遠に強い絆で結ばれることを願ったのだ、。、、、、アユアヤ の人々の友情をたっとび、 出生でないこの地が魂の安息の地であると信ずる。---

かなりくさいセリフですが、本作のテーマが集約されていると思います。他にも途中いくつか、ステレオタイプなセリフが出てきま す。

笛を吹きながら、「日本人としての評判は断じて落とせない」、とか。
この地は拙者の心にとどまるだろう。アユタヤの民のナレスワン王に対する忠誠心は、、、、拙者はこの地に(とどまることに?)誇 りを感じている。

など。

大人向けというより、少年少女向けとしては、良い作品かも。一般うけはしないかもしれませんが、小中学校生向けの映画と考えれ ば、日本でも発売しても良いように思いました。

  最近は、中国映画「戦国」(2011年)の中井貴一さん、中国テレビドラマ楊貴妃(2010年)で孝謙天皇を演じた麻生祐未さ ん、中国で活動中の矢野浩二 さん、韓国で活動中の笛木 優子さんなど、日本で公開されていない作品で活躍する日本人の方が増えてきているように思えます。また、英蘭合作「ムカデ人間」の北村昭博さん、アイスラ ンド映画「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」の裕木奈江さんなど、米国以外の映画でも、日本出身の日本人が意 外なところに出演されてい て驚きます。日本国内の経済力が頭打ちとなっている以上、活躍の場を海外に移したり、広げたりすることは一つの選択肢であると思 うので、応援しています。

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なお、山田長政を扱った作品としては1959年日タイ合作のアクション娯楽映画「山田長政 王者の剣」があります。
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