2017/Aug/27 created

中世インドの女王を扱ったファンタジー的歴史映画『ルドラマ・デーヴィ』(2015年)

 2015年インド製作。インド史上数少ない女王ルドラマ・ デーヴィの若き日を描いた作品です。
 本作は、基本的に2世紀のサータヴァーハナ朝の栄主を描いた『ガウタミープトラ・シャータカルニ』と同様歴史に題材をとっ たファンタジー作品です。しかし歴史映画とも呼ぶことができます。理由は、ヴェネツィア(と思われる場所で)マルコ・ポーロ が貴族を前に語る物語だからです。時は中世で、マルコが大げさに物語っているエピソードとしてのルドラマ・デーヴィの話だか らです。マルコの法螺混じりの話だと思えば、なんでもアリ、といえます。そういう意味で、かなり無理やりですが、「歴史映 画」一覧に含めることにしました。これは日本で上映もDVDもないと思われるので、あらすじを全部書きます。dvdくらいは 出て欲しい気がします。


 ルドラマ・デーヴィは、その版図が現在のテルグ語圏に相当する領土を持った中 世カーカティーヤ朝(1000年頃-1323年)の第八代目と考えられている女王です(在1261-1296年 頃)。マルコ・ポーロの『東方見聞録』にも言及されているそうです。本作は、マルコ・ポーロがヴェネツィア貴族に語る経験談 という構成をとっています。扱う時代は女王の誕生から25歳までです。生年は不明ですが、本作は1262年頃の話だと思われ ます(父王と共同統治をしていた時期が1261-62年と思われるため。この頃25歳として描かれているので、逆算すると生 年は1237年頃となる)。
 王家に女の子が生まれると、政争になることから、王家以外には隠して、男装させて男の子として育てる、しかし王位を狙う王 弟たちが疑いはじめる。王女は隠しおおせるのか!という話です(だいたい)。

主要登場人物

 以下の左二枚が幼年時代の王女。左端が女装、その右が男装の王女。同じ子役のはずなのですが、なんとなくあごのラインとか が違う人のように見えます。子供の頃の男装の顔と青年役の男装の顔が似ていて同一人物のような気がするのですが、気のせいで しょうか。右二枚は同一の役者です。映画中では男性名「ルドラ・デーヴァ」を名乗っています(実名は女性名のルドラマ・デー ヴィ)。



 上右二枚が成人後の王女。左が男装、右が女装。下画像の左端の二人は、王位を狙 う国王の 弟の二人組、ハリハラ・デーヴァ(たぶん右)とムライ・デーヴァ(たぶん左)。どっちがどっちでも構いません。常に 二人一組で登場するからです。中央はルドラマデーヴィの母親ソマンマ・デーヴィ(あまり登場しない)。その右は妹 (あまり登場しない)。右端は少女時代の男装ルドラマ。



 下画像左端が宰相シヴァ・デーヴァ。はっきりいって一番存在感がありかっこよかっ た。その 右はドゥルジャヤ王家の父王ガナパティ・デーヴァ(在1199-1262年)。シヴァ・デーヴァと父王は途中から(ルド ラマが成年役になった時点で)白髪になる。中央は王弟ムライ・デーヴァ。その右は長年交戦中の西方の隣国ヤー ダヴァ朝(王都デーヴァギリ)の国王(冒頭しか登場しない)、その右も冒頭しか登場しないデーヴァギリの将 軍。将軍はみ んなこんな顔と装備だということで、代表して載せました。



 左端は、上の老王の孫のデーヴァギリの国王マ ハーデーヴァ(ラーマチャンドラ)(在1271-1311年)。本作品はルドラマデーヴァの共同統治時代 (1261-2年)なので、若干時代錯誤ですが、在位中に女王と領土争いを繰り広げたことは事実なので、それほど大きな間違 いではありません。中央は義賊コータイ・サンディヴェラ(実名はゴンナ・ガンナ・レディで貴族。架空の人物かも知れない)。 右端は一応ルドラマ王女の恋人ポジションの貴族ニディヤヴァルタプラム家のヴェーラバドゥラ(Virabhadra/実在の 人物)。むさいおっさん の登場率の大きいテルグ映画ではイケメン揃いです。




背景

 当時の南インドは封建領主が主流で、中央権力の力は弱かったようです。王位は不安定で、王の兄弟は王位を狙 い、王に権威と能力がないと各地の封建領主は離反し、常に攻め込む隙をうかがう近隣大国国がありました。当時の 南インドでは東にルドラマ女王のカーカティーヤ朝、西にマハーデーヴァのヤーダヴァ朝、南に後期パーンディヤ朝 があり、抗争していた。


本作の特徴

 売上げ額は5つの言語でリメイクされたミステリー映画の大ヒット作 『Dryshyam』とほぼ同額の18億円のヒット作です(インドの所得は日本の約1/20)。テルグ 語圏は約7000万人ですから、日本で言えば『君の名』くらいの観客動員数はありそうな規模のヒットと いえそうです。とはいえ、CGがNHKのドキュメンタリーと同程度の安っぽいCGなのが少し残念です。 液晶画面で見てもありありとわかるので、映画館の大画面で見たら、ゲーム画像にしか見えないような気も します。場所によっては登場人物の顔さえCGに見えてしまい、マハーデーヴィ王や義賊のサンディヴェラ などは配役表を見て人間だとわかったくらいです。もしかしたらアクションの出来ない俳優さんで、アク ションシーンはフルCGだったのかも知れません。
 (もしかしたら実際にあったか、またはありえたのかも知れませんが)100mくらいの塔の上で会議が あったりして、王都や王宮の景観もかなりファンタジー的です。ただしこのあたりはマルコの法螺話だと思 えば納得できる内容です。更に本作の場合、水彩画のような絵やその絵を少し動かすアニメ的な映像も登場 します。CGのコストカットのために絵にしたように思えてしまいます。しかし、この作品の場合、ある意 味、CGアニメと実写の融合を目指した、意図的で実験的な映像だと思えばいいのかも知れません。


あらすじ

 マルコ・ポーロが、ヴェネツィアと思わしき都市国家の貴族議会で旅の経験を語っている。




 マルコは、その王国(カーカティーヤ朝)の広大さ、領土、首都について語り、地図が画面に登場する。版図は現 在のテルグ語圏に相当している。こうしてマルコが語る物語として女王の半生がはじまる。下右は、王宮の場外に設 けられた円形闘技場。民衆は、王妃の出産を向え、王子誕生を期待して集まっている。かなりファンタジーだが、ぎ りぎり異次元にならない範囲ではある。奥に貴族用の観覧席があり、観覧席の下には滝が流れている(中央奥の建物 が観覧席で、その下の少し横長の白いものが滝)。





 左下が闘技場のアリーナから見上げた王家と貴族席。中央が王家の席で、左右の屋 根付席が封建諸侯たちの席。王の弟ハリハラ・ラージャとムライ・ラージャは、占い師を呼んで誕生してくる子供が男か 女gか占わせる。女であれば、弟である自分たちが王位後継者になれる、と期待しているのである。しかし占い師は、仮 に女の子が誕生した場合、王国全体は保全さる、と予言する。そうして女の子が生まれてしまう。国王と王妃と宰相シ ヴァ・デーヴァは、王女を男の子として発表し、王子として育てることに決めるのだった。下右は、円形闘技場で民衆の 前に披露された王子(以下王子と表記する)。



 円形闘技場は、以下左のように、王宮の内城の城壁と堀の外側にあり、王城とは橋 で結ばれている。下右は王城。右画像の左上の灰色の山が、左画像の右上に小さく見えている。右下の王城内にある黒い 寺院のようなものは、実際に南インドに現存する中世の遺跡にある建物の様式となっている。奥の王宮については後述。


 下左はカーカティーヤ朝の王宮の全貌。ぱっと見半径500mくらいの円城。この 外にのちに7重の同心円形の城壁で囲まれる広大な首都ワランガルが形成されている。このあたりはリアルとは程遠そう (しかし遺跡などの裏づけがあるのかも知れません。そのうち調べてみたいと思います)。右下は、カーカティーヤ朝を 征服することを虎視眈々と狙っている西隣のヤーダヴァ朝の首都デーヴァギリに聳える布告塔。100mくらいありそう で、これもファンタジー感甚だしいのですが、100mくらいの塔はこの時期他の地域でも見られたので、これも一概に ファンタジーと言い切れないかも知れません(本作では、ヤーダヴァの名前はほとんど登場せず、ずっとデーヴァギリ王 国と表現されています。史実ではデーヴァギリは首都の名前)。老王は、孫と兵士とともに展望台にいて、「ガバナ ティ・デーヴァ(ルドラマの父)に娘が生まれたら、国民は失望するだろう。その隙を突いて侵略するのだ!」と塔の下 に集まった国民に演説する。慎重にと忠告する将軍は、子供のマハーデーヴァにその場で刺殺されてしまう。





 下右画像が、カーカティーヤ朝の首都ワランゲルの全体俯瞰映像(後述する、王子 が七つの城壁の建設を提案する時の模型)。王城を中心に同心円的に広まっています。下左は、町の様子。少女時代の王 子が友達と町に散策に出たところ。両側の市街の様子は遺跡から見られる建築物風でリアルな感じ。道の途中にヒン ドゥー神像があるのも、史料的根拠があるのかも知れません。



 下左が夜ライトアップした王宮。現代高級リゾートホテルという感じのライトアップ感。ルドラマ王子は王宮から出さ れ(男子であることがばれる可能性があるため)、郊外の森で男子として育てられ、剣の練習、結構厳しい基礎体力作り などに励む(訓練部分は絵で表示される)。14年後、王宮に戻った王子は諸侯の前で戴冠されるのだった(下右画像は 王子の結婚式の様子(後述))。特に画面ショットを撮りたい特異な部分はなく、普通でした。



 下左は、少年時代の王子。馬を駆って颯爽と走る。右下はワランガル王宮の宮廷。手前に玉座があり、これは 玉座から見た広間の風景。両側に諸侯や王弟などの椅子がある。
 


 都に戻った王子に二人の少年が友人として紹介される。一人は滅亡したチャールキ ア王国(973-1189年)の王家の家系の貴族ゴンナ・ガンナ・レディ、もう一人は貴族ニディヤヴァルタプラム家 のヴェーラバドゥラ。早速二人の王子と闘技場で剣の試合をする王女。しかしゴンナは父親の逝去により直ぐに領地に 帰ってしまい、ヴェラバドゥラは王子にこっそり町にでかけようと提案する。ヴェラバドゥラ少年は、川へ出て、泳ご う!と誘う、当然王子は逃げる。一人宮殿に戻り、服とその下の甲冑を脱ぎ、庭の池にうつった自分の姿を見るのだっ た。そして母親のところへ行き、ママ、あなたとわたしは同じなの?なんで私をこんな風にしたの?と嘆くのだった。見 ると、王女は出血していた。どうやらこの時点まで王子は自分が女性であることを知らなかったようで、次の場面で父王 と大臣が国の状況を語る。ここに現在のテルグ語圏のテルグ民族主義的視点が垣間見えて興味深い。

 「我々の王国は、サータヴァーハナ朝、イシュヴァーク朝、ヴィ シュヌクンディナス朝のように敵を恐れさせなくてはならない。我が国は4面を敵に囲まれている、即ち、 デーヴァギリのヤーダヴァ朝、セーナ朝、パーンディヤ朝、ホイサラ朝だ。女性だと敵に知られてしまったら、とっくの 昔に併合されていただろう」

 カーカティーヤ朝はサーラヴァーハナ朝やイシュヴァーク朝の継承国だとの認識は興味深いものがあります。とりあえ ず、王子は目的を達成するまではルドラ・デーヴァのままでいる、と宣言するのだった。そして剣の練習に迫力が増すよ うになる。

 10年後。王と宰相は白髪になっている。王と王弟が代表者を出して円形闘技場で競わせている。王弟たちに挑発さ れ、ルドラデーヴァは象との一騎打ちに臨み、象を打ち倒し手なずけてしまうのだった(この部分、国王が、「王子がラ イオンに見えるぞよ」と発言したところから、王子がライオンの映像となり、完全にCG画像のライオンVS象の戦いと なる)。貴族の若い女性たちの注目を集める王子。

 さて一方、デーヴァギリではマハーデーヴァが即位しており、家臣に、敵国の都ワランガルの上流の川にダムを作って 堰き止めるよう命じ、ルドラ・デーヴァの彫像を叩き割るのであった。下右がデーヴァギリ王宮の屋上。会議の場面は毎 回ここ。下左は王宮にある王弟の部屋。やはり王弟たちは毎回ここで国王と王子に対する陰謀を画策する。双方とも、見 える景色が100mくらいのビルの屋上から見えるような景色となっていて、標高が高すぎるのがファンタジー。




 デーヴァギリに川を堰き止められ農地が干上がるワランゲル周辺。農地が干上がる 様子は水彩風アニメで表現。村の視察にいった王女は農民に窮状を訴えられるが、農民の間にデーヴァギリの間者が数人 紛れ込んでいて、あやうく暗殺されそうになる。間者を鎮圧したところで雨が降ってくるのだった。
 王子は都の防衛のために七つの城壁を築くことを提案する。王弟たちは反対するに対し、王子は、城壁ごとに竹や砂 利、と材料を変えて民衆の負担を軽減する、と退け建設する。建設場面も水彩アニメ絵。

 さて、封建貴族ゴナ・ヴァラダ・レディと、同族のアナミカ・デーヴィの結婚式が円形闘技場で行なわれる。円形闘技 場の中央に塔が立ち、塔の上には銅像が設置されている。塔に登りきった者は”勇者の心、勇者中の勇者の称号を与え る”と王は布告する。まず結婚相手のゴナ・ヴァルナが挑戦するが、無理。花嫁のアナミカにはこれが不満で、「誰か登 れる人はいないの?」と闘技場に呼びかける。そこに覆面をした謎の黒尽くめの騎馬の騎士が入ってくる。ロープを柱に まきつけながら登るといううまい方法で登頂に成功し、アナミカ姫が花輪を投げると、騎士の首にかかる。彼はコータ イ・サンディヴェラだ!と子供が指摘する。そう、彼は村々で人気の義賊だったのだ。この時なぜか王女はゴンナ・ガン ナ・レディとの昔の剣の試合を思い出す。家臣は王に、彼は義賊に変わってしまった、という。義賊がいう。「叔父が父 を裏切り殺した。嫁の姫はアナミカだ!」 そうしてアナミカは駆け下りてサンディヴィエラのもとに向かう。護衛隊長 がひっとっらえろ!と命じるが、子供たちが僕たちが守る!と叫び、パチンコを兵士達に向ける。アナミカ姫は、私を連 れ去りたければ、彼と勝負しろ!という。誰も勝負しないので、サンディヴィエラは、塔頂の賞金である宝物の入った箱 と結婚相手の男(ゴナ・ヴァラダ・レディ)をさらってあっという間に去ってゆくのだった。以下が塔上に立つコータ イ・サンディヴェラ。フルCGのように見えます。



 それからというもの後宮の女性たちの間ではサンディヴィエラが大人気。そして王 子は、こっそり女装して後宮の女性たちにまぎれて遊んでいるのだった。ここで後宮女性陣によるミュージカルシーン。 その後王子が川で泳いでいると、子供の頃一緒に遊んだニディヤヴァルタプラム家のヴェーラバドゥラと出会う(彼は貴 族の娘ぐらいの認識で、王子とは気づかない)。以降女装した王子は秘密の通路を通って宮廷外に抜け出し、たびだび ヴェーラバドゥラと会い、恋仲のようになってゆくのであった。

 ワランゲル王宮では、王弟たちが、もうとっくに王子は成人しているのに、なぜ結婚しないんだ!と王と宰相に詰め寄 る。すると宰相は、「とうの昔に婚約しておる」と涼しい顔。そうしてムタンバという貴族の娘との結婚式となるので あった(上の方に結婚式の画像あります)。驚愕した王弟のもとに、甥のナーガデーヴァが、宮廷への秘密のトンネルを 発見したと告げに来る。王弟たちは、結婚式までに王子を殺せ!とナーガデーヴァに命じる。「ふっふっふ、これで俺が 皇帝で王国は俺のものだ!」。
 結婚式の日。秘密トンネルから後宮に侵入したナーガデーヴァは王子が男装する場面を見てしまう。気づいた王子は ナーガデーヴァを追いトンネルに飛び込む。

 結婚式に遅れて登場した王子。王弟たちは舌打ち。すると贈り物の象の像の内部から数名の暗殺者が出現。彼らに火矢 を放ったのが、義賊コータイ・サンディヴェラだった。王子を助けたものの、サンディヴェラは、、「俺の戦いはルドラ デーヴァだけだ!」と宣言して去る。王子は、ヴェーラバドゥラに命じてサンディヴェラを追わせる。

□インターミッション

 冒頭ヴェネツィアでマルコ・ポーロが貴族にインドの女王の話を語っている。

 王子は、初夜で花嫁のムダンバに、「人民の平和と正義を実現するまで女性にふれないと誓ったのだ」、と嫁にいって 納得してもらう。納得するか?と疑問に思ったものの、実は嫁は王子が女性であることに気づいていたらしい(あとでわ かる)。マハーデーヴァ王が差し向けたスパイが後宮の姫たちの布選びの会に侵入してくるが、スパイと気づかれ毒を飲 んで自殺する。しかし彼は別の女スパイ・マデリカに情報を渡していたのだった・・・・(このあたりで女装した王子が ヴェーラバドゥラと密会するミュージカル場面が入る)。

 一方王子は貯水池を作り、豊作となり、富強政策は成功する。その頃サンディヴェラは大商人や封建領主を襲撃し、惨 殺し、更に西方コタギリの王、南方ムスクルの王、北方ナガノールスの王、東方カリンガの王と同盟を結ぶ。
 ある日王子がヴェーラバドゥラと剣の試合をしていたところ、王子の服が裂け、ブラが落ちてしまい、女性ということ がばれてしまう。女性であるにも関わらず男性として生きる王子の気持ちはヴェーラバドゥラには理解できず、彼は領地 に戻ってしまうのだった。後宮に戻った王子は妻に秘密を明かすが、妻は、「武具を外したら、秘密がすべてばれてしま うでしょ?その武具の重さを一緒に支えてあげたいと思ったの」と名台詞を残す。しかし、妻との会話は女スパイマダニ カにきかれていたのだった。マダニカは王弟に報告する。「25年間も欺かれたいたとは!」と驚く王弟たち。しかし女 スパイは、マハーデーヴァのスパイだと既に知られていて、王弟たちに殺されるのだった。

次の宮廷会議。王弟たちは王子の秘密を暴くつもりで臨むが、宰相は落ち着いて王子は女子だと告げる。諸君が王子ルド ラデーヴァだと考えていた人物は、男子ではなく、女子である!と告げ、女王として戴冠することを宣言し、会議は散会 する。王弟たちは、彼らの横を通って退席する宰相に、すれ違いざま「これで終わったと思うなよ、シヴァ・デーヴァ」 と告げるが、 それを無視して去るシヴァ・デーヴァ(下)。シヴァデーヴァ、かっこいいーーーーー!!!この記事はずいぶん長文に なってきてしまいましたが、この場面が書きたくて今回熱が入ってしまいました。




 後宮ミュージカル場面の後、競技場での戴冠式。しかし、集まった民衆の女性が「女の支配者はいらない」と叫ぶと民 衆は皆立ち会って一斉に反対を叫ぶ。しかし宰相は、「シヴァ神はシャクティと体を共有している。女性はシヴァ神の半 身だと考えられているのだ。ランカ国との戦争の原因はシーターではなく、ラーヴァナ神であり、ク ルクシェートラ戦争の原因は、ドラウパディーではなく、カウラヴァであった。女性を尊敬しない男は墓穴 を掘る。サータヴァーハナのシャータカルニ王を思い出せ。ガウタミーは母の名で治世を安定させたのだ。彼女の支配を 見た後で信じられぬというのか?農業のための貯水池や施設をつくり、出産のための学校を作り、平和と繁栄をもたらし た ヴィ クラマルカシャリ ヴァハナ時代のように」

 しかし民衆は納得しない。封建諸侯は勝手に自領地を治める、といいだす。王子は、皆が望まないなら王位を去り、罰 をうけると告げる。裁定に入ったバラモンは、本来死刑のところだが、女性なので追放に処す、と告げる。こうして王子 は女性に戻り、王家とは無関係となり、一般庶民となり、闘技場を後にする。王女に一匹の象がついてゆく(以前王女に 負けた象だと思われる)。

 王子が女性だったとの報告がラージャギリのマハーデーヴァ王のもとに届く。以下右がラージャギリの都 (Google 画像検索をかけると、実際こんな感じの小山がある場所だとわかりました)。山の手前に塔が見えています。左下が小山の上に聳え立つ王宮。かなりファンタ ジー入ってそうですが、ぎりぎりありえそうな感じ。狂喜した王は、カーカティーヤ侵攻の軍を起こす。




 
 隣国軍が攻めてくるさなか、王弟たちが兵士を率いて王宮を襲撃。もう終わりだ観念しろ、と剣を抜くと、宰相シ ヴァ・デーヴァは心臓発作で死んでしまう。王弟たちは王宮を牛耳り、封建諸侯はお互いに争い、義賊サンディヴェーラ もまだ国内を荒らしていた。王国は騒乱となった。ルドラマ・デーヴァを追い出した人々は、彼女が母のように王国を 守ってくれることに気づいたのだった。川に投げこまれたシヴァ・デーヴァは死んでなかった。歌を歌いながら王子のも とへ向かう。王国を救うよう、歌う。

 民衆たちが寺院に住んでいた王女のもとにやってきて、女王になるよう懇願する。王女は象に乗って出陣する(以下ほ とんどファンタージー映画かファンタジーゲーム映像です)。



 王女はまず王弟たちにクーデターを起こされた王宮を攻撃する。民衆が協力してい ると思ったら、数千(数万?)の兵士相手に王女が一人で戦っている。七つの城壁の材質を知っているため、王女は城壁 の弱点を突いて次々に攻め落とす。



 王宮を前に、王女は大量の兵士に囲まれ進退窮まるが、そこにサンディヴェーラ軍 が駆けつけ王女を救出。王宮を攻め落とす。サンディヴェーラは土地を収奪する封建諸侯をみな殺したという。アナミカ の結婚式を妨害したのも、宝物を盗んだのも、封建諸侯が独自の軍隊を持つのを阻止するためだった。ナーガデーヴァを 殺したのも俺だ。ナーガデーヴァが王女の秘密を知ったことを知っていたからだ。と王女に告げる。王弟二人は王女の矢 に倒れる。

 次にマハーデーヴァの軍隊と戦い、粉砕。マハー・デーヴァを捕らえるのだった。

 最後、ヴェネツィアに戻る。マルコポーロは、このように女王でも有能で国をまとめることができる事例がある、と結 び、その結果諸貴族は少女の戴冠することに決定するのだった(この少女が誰かは不明)。



〜おしまい〜

 ルドラマデーヴァは、インドにおいてさえメジャーでは無さそうなので、こういう作品ができてしまうと、神話化し、女神化し てしまうような気がしなくもありませんが、面白い作品でした。

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