古代エジプト映画「砂漠の剣(The Pharaohs Woman)」

  今回ご紹介する「砂漠の剣」は、1960年米国作。邦題がついているので、日本でも公開され たものと思いますが、USアマゾンにさえvhs、dvdは出ていないようです。典型的なSS映画かと思って見ていたのですが、 SS映画にしては、少し意外な結末でした。あらすじは、goo映画に掲載されているのですが、2点程重要な点に誤りがありま す(まあ、歴史マニアの人以外にはどうでもいいことだろうけど)。

まず、gooの映画紹介では、紀元前2世紀となっていますが、正しくは前20世紀です。エジプト史に詳しく無いとはいえ、歴史マ ニアにとっては大きな違い です。因みに題名の「The Pharaohs Woman」ですが、日本語で言えば、「俺の女」的な使い方なのでしょうか?ちょっとニュアンスがわかりませんでした。うまい翻訳題名 を思いつけなかったので、「砂漠の剣」などと、どうでもいいような邦題がつけられたのかも知れません。

 さて内容は、前20世紀、テーベ を都とする上エジプトとBubastis(ブバステス、実際に存在したのは前16世紀以降の18王朝以降)を都とする下エジプト に分裂していたが、 上エジプトの王によって統一され、下エジプトには王の弟が封じられた。しかし、下エジプトは独立を望んでいた。

 と、ここまでが冒頭地図入りで語られるナレーション。

  上下エジプト王それぞれの子供は従兄弟関係にあり、上エジプト王の子がラムセス、下エジプト王の子はサバク。物語は、両者とラム セスの家臣モーセ(goo 解説にはアモシ、とあるが、私にはモーシと聞こえた)が、川くだりをして遊興する場面から始まる。王子達を乗せた船を沿岸から声 援を送って観覧する付近の 住民達。「乗せてよー」と船にむけて声をかける黄色服の娘。「いいよー」と返すと、ナイル川に飛び込んで船に向かって泳ぐ娘。こ れが主人公の「The Pharaohs Woman」、バキス。船まで100m近くあり、そこに、鰐が接近。王子達は射掛けるがあたらない。モーセがが飛び込んで鰐と格闘し刺 し殺す。この場面は、なかなかはらはらどきどきしました。

 バキスにネックレスをプレゼントする王子サバク。船の中で賭けをして遊ぶ三人 の男。しかし一夜明けてみると、女はどこか消えていた。舟にのっている乗員クドーサカ(中年の太ったおっさん。商人を想像すると よい)が娘を隠したのだっ た。しかしモーセに見つかってしまい、「私はブバステスの神殿で踊子になりたいの。私をここにおいて、とモーゼに懇願する。下エ ジプトの都バスティスの沿 岸ショットが一瞬映るが、恐らくルクソールの遺跡だと思われる。ルクソールもカルナック神殿も18王朝のものなので、前20世紀 には無いが、まあなんとな くリアルな感じ。ついでにギザの3ピラミッドも一瞬映る。上陸し、神殿にバキスを案内するモーゼ。テンプルダンスを教えて欲しい とモーセが神殿の人に金を 渡してバキスは採用される。そしていつの間にか恋に落ちている二人。モーセは、必ず迎えに来る、と言い置いて上エジプトに去る。

 一方、 ラムセスは、上王から召還され、サバクとの別れ際、「次に会うときは私は統一ファラオだ」と発言し、サバクは機嫌を損ねる。場面 は神殿に戻り、バキスを嫉 んだ他の踊子(巫女かも)が、サバクに贈られたネックレスを、バキスが寝ている間に奪ってしまう。その後この巫女は、王子に会い に行き、王子に気に入られ ようと、奪った首飾りをしてゆくが、王子はそのネックレスに気づき、その巫女を相手にしない。その後、バキスが王子に会いに来た 時、ネックレスの話に及 び、バキスは「彼女が盗んだ」、とくだんの巫女を指摘し、王子は裁きを下す。王子の正当で公正な裁きに感激し、王と結婚してしま うバキス。

  その頃上エジプトでは、ラムセスが、部下に対して、「統一は王の意思だ」と演説し、下エジプトへ使者を送ったにも関わらず回答が 無い、とのことから、開戦 を決意するものの、今一度モーセを使者として送る。派遣されたモーセは宴会でサバク王子に面会したところ、なんとバキスが王の横 にいるのを見つける。更に サバクは、戦死した父王が残していた、下エジプト王の王冠を被っていた(ちゃんと下王の王冠だった)。バキスにも王妃冠をさず け、クイーンと呼ぶ。「戻っ て報告するがいい。私はファラオだ!」とモーセに通告するサバク。 クドーサカ(船の上でバキスを助けた人)を介して、モーセと 隠れて会うバキス。

 モーセ 「何で結婚した」

 バキス 「だって戻ってこなかったじゃないの」

 モーセ 「王は俺だけしか信じてないんだ。離れられないんだよ」

 バキス 「戻ってきてよ。でも王妃(の座)はあきらめ切れないの。だってサバクは地位と王位(王冠)をくれたのよ。許してね」

 。。。。。。なんちゅう女だ。

  で、この場面のモーセは下のような兜をつけているのですが、古代エジプトには詳しく無いのですが、こんなの本当にあったのでしょ うか。。。。他の役人や王 は、ちゃんと頭巾だし、ラムセスもサバクの髪の毛はそっていてつるっぱけ。結構リアルな感じなのですが、この時のモーセの装束は ちょっと疑問がありまし た。そもそもモーセには髪があるのも疑問なのですがまあいいや。

  サバク王は、モニュメントを作り2日後に進軍すると家臣に宣言。しかし、既にラムセス軍が、都から2日の距離のところでまで来て いることがわかり、遅すぎ たか、と椅子に沈み込む。モーセに居丈高に宣言した割には準備不足すぎる下王。その時、ラムセス軍は、黄金の像(下エジプトの王 冠をしている。下写真)を もって進軍している。胴体部分はSF映画「地球が停止する日(旧版)」に登場したロボットみたいである。

 両軍激突。騎馬が登場していますが、前20世紀のエジプトに騎馬があったのでしたっけ?そもそも前20世紀にエジプトに戦車が あったんだったっけ?

  と色々疑問があるものの、下王は敗北し、王は王宮に戻り、逃げるように王妃にいうが、王妃はとどまるという。とどまっていたら死 ぬぞ、といい王は逃げる。 ラムセスが王宮に入ると、王座にバキスが座っている。下王がつかまりつれて来られる。寺院でバキスをいじめた女の家に隠れていた のだった。案外情けなかっ たサバク王。王座に座らされ、射られるサバク。そして奴隷にされるバキス。脅しかと思っていたら、本当に、彫像(上写真)を引く 一奴隷にされてしまう。ま あもともと王女でもなんでもない庶民の出だからあまり悲惨な感じはしない。

 夜、野営地にバキスを助けに来るモーセ。しかし捉えられて、 王の前に引き出される。しかし何故か王は許してくれ、出て行くように、という。そして砂漠の真ん中に置き去りにされる二人。そし て二人を送った兵隊がモー ゼの背中を矢で討つ。意外に寛大だと思っていたらラムセスもやっぱり心が狭い王だった。とはいえ、その日の自分の伝記に、「勝利 を積み重ねてきた。最愛の 親友と愛する人を失った」と書記に書かせるラムセス。

 ラスト、遠くに隊商をみつけて手を振るバキス。しかしモーゼはもう死んでいる(ように見える)。どうやら隊商がそのまま行って しまったような印象を残して終わる。。。。。。
(あくまで私の印象で、ひょっととしたら、助けに来てくれたのかも知れない、という解釈の余地を残したラストでしたが、この点 も、「助かった」と書いているgoo映画紹介の記載と異なる点です)。

  ハッピーエンドの多いSS映画にしては珍しい結末だと思います。かなり終わりになるまで、ちっとも共感できないヒロインでした が、最後、もう死んでいるか もしれないモーセを抱えて、彼を励ますように隊商に明るく叫ぶヒロインの姿には、少しホロリと来ました。SS映画としては、まあ まあなのではないかと思い ました。

関連情報:古代エジプト映画 一覧
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