南国は、夏が風邪の季節。夏は一晩中エアコンをつけないと眠れない状況なのですが、酔ってそ
のまま寝込んだら、風邪をひいてしまいました。一時は国境か香港で新型インフルエンザを仕込まれたかと心配したのですが、一応完
治。 少し間が空いてしまいましたが、今回は、2005年のインド映画「タージマハル」 の紹介です。本作は、どこかのブログに、その過剰な衣装の豪華さを、「スターウォーズ」と揶揄されていた作品。どんなものかとこ わごわ見たのですが、中世 インドの史実を知らないので、ひょっとしたらこんな感じだったのかも、とあまり違和感無く見終わってしまいました。とはいえ、有 名デザイナーのコレクショ ン発表でも見るような衣装ではありました。 下の写真は、ムムタズ・マハル。碧色の綺麗な衣装。この程度なら現在のインドでも普通に見れそう。 ところが次の2つはさすがにファッションショーという感じ。左はジャハンギール妃ヌールジャハーン。右はムムタズ・マハル。 ショーというより、SF映画に 登場する悪の帝国の女王様、という感じ。まあ、スターウォーズというのも遠からず。それにしてもヌールジャハーン若いと思って調 べてみたら、シャー・ジャ ハーンとムムタズ・ハマルが出会った頃(1607年)は、まだ30歳(1577年生)。つまり、マハル14歳(1593年生)。 シャー・ジャハーン15歳 (1592年生)だったわけですが、とてもそうは見えず、どちらも20歳以上という感じ。 豪奢さは衣装だけではなく、宮殿の部屋の内装や家具にまで及んでます。下左はくつろぐヌール・ジャハーン。真珠でも敷き詰められ たかのような部屋の壁。下 右はジャハーンギールの宮廷の様子。本当にこんなだっかは判断し難いのですが、「ジョダーとアクバル」でのアクバル宮廷や、中国 ドラマの宮廷と比べてみる の参考になるかも知れないのでここで掲載。 更に下左は政務を執る玉座のジャハーンギール。下右はそのターバン。うーん。エイリアンみたい。。。時代考証に興味が出てきます ね。本当はどうだったんで しょう。そういえば、中世インドの王の装束なら、博物館に展示されていそうだし、写真集なども出ていておかしくないかも。今度調 べてみようと思います。 さて、肝心のストーリ。 冒頭は、シャー・ジャハーンの晩年、既に幽閉されているところから始まります。息子のダーラー・シコーとアウランゼーブの戦闘が 行われ、ダーラーの首が シャー・ジャハーンの元に届けられる場面はちょっとビックリ。娘のジャハナラ・ベグム・サヒブと一緒の夕餉。幽閉の中のなごやか な団欒場面。鍋の蓋を開け たところ、長男の首が。。。。。下は、幽閉されているアグラ城から、白壁が月明かりに浮かぶタージ・マハルを眺める長髪白髪の シャー・ジャハーン。マハル の霊廟を眺めながら若かりし日ムムタズ・マハルとの出会いとロマンスの回想をはじめるのでした。。。。。 ロマンス場面ではインド映画お得意のミュージカルとMTVばりの映像の連続。突然チベット高原の湖のようなところにテレポート し、まるで旅行会社の海外旅 行CM。「二人の世界」の脳内世界の映像ということなのでしょう。ミュージカル映画になってしまわない程度に、うまく嵌め込まれ ていたよう思えました。言 葉がまったくわからない(ヒンディー語かウルドゥ語かさえ)ので、間違っているかも知れませんが、史実ではムムタズ・マハルは、 ヌール・ジャハーンの姪な のですが、本作では、最初から、とても姪と叔母とは思えない、まったく他人な様子。ヌール・ジャハーンがシャー・ジャハーンに薦 めて、無理やり結婚させた 女性は、マハルよりも先に結婚した、恐らくKandahari Mahal (1594年生、1609年結婚)なのではないかと推測されるのですが、結局その後、ムムタズ・マハルと結婚しているので、本作の筋からすれば、ヌール・ ジャハーンとシャー・ジャハーンの仲の悪さの芽は、ムムタズ・マハルとヌール・ジャハーンが最初から仲が悪かったから、というこ とになってしまうのです が、Wikiの記事によれば、 ヌール・ジャハーンがジャハンギールと出会ったのは、1611年の3月。つまり、ムムタズ・マハルとシャー・ジャハーンが出会っ てから4年後。 Kandahari Mahal と結婚してから2年後(カンダハールというと、ペルシア人かしら)。あれ?そうすると、ヌール・ジャハーンだと思い込んでいた人は別人なのか!?とまぁ、 関係者の氏名をきちんと覚えてから再度見れば、もう少し正確な記載ができるかとも思うのですが、そこまでする程史実を追った作品 でも無いので、まぁいいか な。 肝心の主人公、シャー・ジャハーンの写真が全然出てきませんが、なんか、NHK大河ドラマ「太平記」に登場した時の、長髪を振 り乱 した真田広之みたいな人なので、そう形容すれば十分かなという感じ。下記は、戦闘場面で、ムムタズ・マハルを乗せて血路を切り開 くシャー・ジャハーン。こ のまま宮廷内メロドラマで終わるのかと思っていたところ、突然勇壮な戦場場面になったもの。かっこよすぎ。白馬の王子様映画驀 進。 その後、子供達に囲まれた幸せ一杯の場面が出てきて、ここでめでたしめでたし、で終われば、少女向け御伽噺なわけですが、最後に ムムタズが死ぬ場面で回想 終了。幽閉中のシャー・ジャハーンに戻って幻影を見ながら死去。見ている最中はあまり意識しなかったのですが、よくよく考えてみ ると、幸せの絶頂で終わる ロマンス映画を、惨めな晩年を迎えた老人が回想する、という枠に入れただけ、と言えなくも無い筋立て。 とはいえ、164分、特に長く感じられず、結構楽しめました。 ところで、幽閉された王の世話をした娘のジャハナラ・ベグムは、映画ではどうみても20代。しかし史実は1614年生まれなの で、幽閉期間中は、44歳か ら52歳に相当することになりますね。。。。史実にもある宮廷バザールの場面が再現されていたのは興味深かったですが、この史実 を知るまでは、夜のディズ ニーランドのレストラン周辺のような場所が出てきてなんじゃこりゃ、と思いましたが。。。 総じて、ケイト・ブランシェット版「エリザベス」のようなノリで見れば楽しめるのではないかと思います。もっともこっちは恋愛 映画ですが。。。ヘレンミレン版「エリザベス」に相当するようなインド映画も、そのうち見てみたいものです。そういう意味では、マイケ ル・ラザフォードが製作中らしい「タージ」に興味がわきますが、これも恋愛映画とのことなので、歴史劇を期待するの は無理かも知れませんが。。。。。 近世インド歴史映画一覧表はこちら。 |