浙江省博物館 2008年秋企画展示 「芸術精品 系列特展 - 中国出土歴代建築明器 <中国屋檐下>」

三進院落庄園明器(三進陶荘園模型

 

 前方の楼閣と回廊。4階建て

 回廊から本館への渡り廊下

 楼閣を背後から見たところ

 城壁の上に楼閣が3個乗っている

 中庭に皿のような ものが置かれている

 

 後部の状況

正面の門の先に階段があり、 人が座っている

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 1981年に河南省淮陽于庄(淮阳于庄)にて出土した三 進陶庄園(中国語では、”汉代陶庄园””河南淮阳于庄汉墓”で表記されているようです。今回の展示会では、「三進陶庄園」というプレートがありましたが、この用語で検索し てもヒットしないようです)。三進とは、南牆(南側垣根の建築物)、北牆(北側垣根の建築物)、主院(中央の建築物)の三つから構成されるため、三進と呼ぶようで す(出典:資料2)。主楼の高さは84cm、幅130cm、奥行き114cm。66の部品から構 成されている。左側は田園となっていて、右 側は庭院となっている。前方楼閣の瓦には、巻雲纹がついている。門は両開きで、大門の外側の左右の壁には絵が描かれ ていた。右側には、赤色の衣装を着た夫人が描かれていて、その両側には侍者がはべっている。右側の男性は更に両側に 侍者がいる。門内の右側に長方形の槽があり、門庭の両側には、厩がある。門の上の楼閣には巻雲纹の瓦当があり、 壁には菱形、三角形格子窓がある。両側の2つの楼閣は、回廊で通じていて、三層と四層の角楼の上には廡殿*1が頂に あり、四方の壁には長方形の窓がある。この厢房*2は、硬山式建築といい、右側厢房の下には廊房がある。左側の厢房 の下には倉房がある。

 中庭のメインとなる建築は一座重檐廡殿を頂く高楼で、バ ルコニーを上に持ち、両側に楼内に入る階段があり、楼内右側に一組の楽俑と、五女一男(弹琴、吹笙、合掌等を演じる 形をしている)があり、一人の俑は手に捧陶匝を持ち、楽俑前と傍には、耳杯、陶盘、紡などの物がある。楼外 右侧にはひとつの門があり、後院に入ることができる。門の右側にも楼の階段があり、厢房に入ることができる。厢房よ り後ろにむかって左に入り、高楼の上層に入ることができる。上層前面に二つの出入り口があり、門前に欄干台がある。 上の階の後ろには、長方形の窓がある。

 後院は悬山式*3建築と言い、右側を猪圈、内側に一頭の 猪と食槽があり、猪圈と厕所が連なっている。後院中部は厨房があり、内に灶、釜、案があり、左側に厠がある。庭院に 左側には田園があり、田の前半部は、旱田、後半部は水田をなし、中間に一つの井戸がある。田園の左右の城壁の上に は、六幅人物の画像が描かれ、赤色の衣を着ている。 
   三進陶庄園は西漢前期に作られた、最も大きく、最も豊富な内容をもつ建築模型。高楼があり、農田を有し、壁には壁 画があった。当時の地主の庄園経済の発展の証拠であると言える。同時に、前漢前期における休養政策による太平盛世の 景観を現しているといえる。西漢前期の建筑芸術と社会生活についての資料を提供する典型的実物資料と言える。

参考・関連文献
1.
代 民居建築の缩影——河南博物院藏漢代建築明器 から紹介文を要約(2017/Aug リンク切れ確認)
2.【有 料歷史】圍屋圍村 家世淵源 (この記事では客家の圍屋建築に連なる形式として論じています)。
3.中 国国家博物馆藏汉代陶明器简论 (漢代の建築明器に関する写真と解説)
4.河南文物珍 品展——“天地之中” (この明器の写真多数)

*1 廡殿頂 屋根の建築様式として廡殿頂と歇山頂があるとのこと。2階層の屋根を持 つものを、重檐といい、それぞれ、重檐庑殿頂、重檐歇山頂 というとのこと。これが高級な建築様式で、1重屋根は、単檐庑殿頂、単檐歇山頂 と言う。廡殿頂とは、四方に屋根が広がっている様式のこと。本邸宅の母屋は、一見単 檐庑殿頂に見えるが、よく見ると2重になっていて、重檐庑殿頂ということになる。庑殿頂に対して、歇山頂とは、日本でいうところの入母屋造とのこと。建築学上の正確な表現 はわからないが、四方に屋根の広がる庑殿頂の上に、本を伏せたような2面の切り妻造りの屋根が乗っている形式のことのよ うである。詳細はこちら。重檐庑殿頂歇山入 母屋造切 り妻造

*2 厢房 四合院造りの用語。 北面を正房,東と西は厢房、南面は倒座、東西南北四面を皆房子といい、中間を天井、お互いに廊下で繋がっている造りをしている。

*3 悬山式 切り妻造りのこと

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