2019/Dec/7 created

ビザンツ歴史小説映画『騎士道物語』(2000年)


2000年ロシア製作135分。19世紀のスコットランド人作家ウォ ルター・スコット (1771‐1832年)の小説の映画化。第一回十字軍時代を描く。ア レクシオス一世が登場しています。ロシア語版のDVDさえ出ていないようなので、あまり評価が高い作品とは言え ないのかも知れません(IMDbの評点は6.4でそれほど悪くはありません)。スコットの原作『パリのロベルト伯』は、ギボ ン『ローマ帝国衰亡史』とフランスのルイ・クーザ ン『コンスタンティノープルの歴史、ユスティヌスから帝国の最後まで』に含まれている、アンナ・コムネナの『ア レクシオス一世伝』を下敷きにしているとのことです。『アレクシオス一世伝』は今月日本語版が出たところなのでタイムリーで した。

最初に書いてしまいますと、この作品がダメなのは、主人公がパッとしないからではないかと思います。外見的に。ア レクサンドル・インシャコフというこの俳優さん(上左から二番目)は、だいぶ額の部分が後退していて、映画公開 時点で既に53歳なんですね。『ウォータワールド』当時のケビン・コスナーを彷彿とさせます。お相手のヒロインさん(左上:ヴェ ラ・ソトニコワ)も、公開時40歳なので年齢的には釣り合っているのですが、ヒロインの方は30歳くらいに見 え、この点あまり問題ではないのですが、とにかく主人公(の容貌の一部)がイマイチなので、dvdすらでていない状況なので はないかと思われてしまったりするわけです。

右から二番目がアレクシオス帝(1048-1118年)、右上が父帝の伝記を書いたアンナ・コムネナ(カーリーヘア?)。父 帝は雰囲気がよく出ていた配役だったのではないかと思います。




左下はアンナ・コムネナの夫、権臣ブリュエンニオス。その右賢者アゲラスト。下中央アレクシオス妃イレーネ・ドゥーカイナ。 その右、ヴァイキング傭兵隊長タティウス、右下十字軍司令官。

冒頭、冬、雪に覆われたパリで、伯爵令嬢とその両親が観覧する剣闘試合で勝利した主役のパリ伯ロベルトを、令嬢ブリギッタが 見初め、そのままロベルトについて十字軍一行に加わる。十字軍参加に至る背景や事情などの場面はまったくなし。場面は直ぐに コンスタンティノープルに移動。

ロケは、イスタンブールのハギア・ソフィアとルメリヒサールだけで行われた模様。ルメリヒサールの庭に張ったテントのもと で、アンナ・コムネナが、執筆中の皇帝伝を、皇帝夫妻に読み聞かせているところに、十字軍がやってきました、とブリュエンニ オスが報告に来る。

ハギア・ソフィアでの皇帝一家に閲覧する十字軍一行の場面となる。左奥が皇帝一家の玉座。手前が十字軍。右中央が甲冑をつけ たブリギッタ。右はロベルト。全然主人公に見えません(準主役くらいの存在感)。




十字軍一行と玉座はこんな感じ。かなりしょぼい感じです。予算の関係でこうなっているのだと思われますが、当時のビザンツ帝 国も落ち目の時だったので、実際こんなもんだったのかも知れません。そう思えばリアルに見えないこともないかも。



柱の陰から十字軍の面々を品定めする侍女たち(アシュタルテとヴィオランテというらしい)。右は皇帝夫妻。



ロベルトは、玉座の前に座り込んでしまったりして、一応先進地帯であったビザンツ世界では無礼な感じ。
(このエピソードは、『アレクシアス』日本語訳p342-43に登場している。訳注p218の註10-123でパリのロベー ルと比定されている)。

その後、ロベルトとブリギッタは海岸に散歩に出て、トルコ人に誘拐されそ うになるが、ブリギッテは自ら撃退する。かっこいい。ブリギッタは、こんな感じでいつでも剣闘できる服装。志穂美悦子に似た感じの人です。腕に覚えがある のか、十字軍の陣営で、ロベルトに剣闘試合を申し込んだりしているが、あっさり負ける。志穂美悦子ほどアクションはできなさ そうなのが残念。下右の黄色の服装の胸についているペンダントの場所がちょっと気になる。なんでそんなところにつけているの か。



本作は、中世の年代記作者が写本を朗読している、という設定で物語が進行していて、戦闘場面は映像では登場せず、年代記作者 の語りと写本の絵でごまかす演出。まあ低予算映画なのだろうから仕方がない(スコットの原作がそもそもそうなのかも知れない が)。アゲラストに引率されてコンスタンティノープル市街を見学するロベルトとブリギッタ。下左は、コンスタンティノープル 市街の城門。ビザンツ映画で、CGとか書割ではなく、実際のイスタンブールの遺跡をロケに使った映像ははじめてみました。右 はルメリヒサールでロケした場面。



アゲラストに人気のない場所におびき寄せられ、またも誘拐団に襲われた二人は、今回も不審者集団を撃退する。アゲラストは知 らん顔して戻ってくる。その後も散歩を続け、皇后の輿に遭遇する一行(左が皇后、右が輿。護衛はノルマンバイキング傭兵 隊)。



城壁の上で賢者タティウスと皇帝が会話。恐らく誘拐失敗を報告し、次の策を練っていると思われる。どういう陰謀なのかは不 明。ブリュエンニオスは、侍女の一人に抱き着いたりしていて、あまり品がない。

皇帝一家との宴会。真っ白な部屋。これは原作にあるのでしょうか。なんか現代のホテルのようです。右画像がロベルトとアン ナ・コムネナ、その左がブリュエンニオスとブリギッタ。その左画像は皇帝夫妻。




ブリュエンニオスがブリギッタに首飾りを送ったりしているが、宴会自体はまったく盛り上がらない。誰も一言も話さない。茫然 としている風の皇帝。一服盛られてロベルトとブルギッタは眠ってしまう。二人とも、狭い小部屋に別別に幽閉され、ロベルトの 方には、ブリュエンニオスが誘惑しようとしていた侍女が夜伽にやってきて、ブリギッタの方はブリュエンニオス本人が夜這いに やってくる。ブリギッタは激しく抵抗し、力尽きたブリュエンニオスは、ブリギッタに、秘密の小窓から隣の部屋を覗くようにい う。ブリギッタがのぞくと、誘惑に来た侍女を説得中のロベルトが見えるのだった。ということでブリュエンニオスの陰謀はまた も失敗する。再度ブリギッタに迫るが、そこに矢をつがえたアンナがやってきて、ベッドの上の枕に矢を打ち込むのだった。

 
ブリュエンニオスは作戦を変更し、バイキング傭兵隊長のタティウスとともにロベルトを叩きのめし、地下牢に軟禁する。一方監 禁部屋に残されたブリギッテは、手紙?を書き始める。ブリギッテはこの後映画の終わりまで延々と手紙を書き続けるのだった。

ロベルトが放り込まれた地下牢は、実際には円筒形の建物の底で、ルメリヒサールの塔の内部だと思われるが、ルメリヒサールの 内部の塔の内部画像があまり出回っておらず、どの塔に監禁されたのか、或いはセットなのかどうかは不明。

ルメリ・ヒサールの塔の内部画像 写 真1写真2写 真3


超人的な力を発揮し、監視兵を倒し、ロープで城壁をよじ登って地下牢から脱出したロベルトは、バイキングで構成された皇帝親 衛隊と戦うルメリヒサール城で戦い、映画はアクションヒーロー活劇となる。途中で(以前誘惑に来た)侍女の手引きもあり、地 下通路からルメリヒサールを脱出し宮殿に戻ったロベルトはブリギッタを救出に向かう。ずっと部屋で手紙を書いていたブリギッ タは、助けに来たロベルトに感動。ロベルトは、逃亡途中で侍女に剣を渡して、ブリギッタと二人で逃げるが、侍女はその件で自 殺してしまう。そこに隊長タティウスに率いられたノルマン親衛隊がやってくる。

郊外の森に逃げ込んだ二人をノルマン騎兵隊が追撃してくるが、このノルマン騎兵は、どうみてもアジアの遊牧民族にしか見えな い。あっさりロベルトの射撃の的となり壊滅するノルマン騎兵隊。しょぼすぎる。二人は十字軍の陣営に逃げ込む。

一方、ブリギッタの置手紙を読むブリュエンニオス。何が書いてあったのかは不明。

結局どういう陰謀があったのかよくわからないのですが、親衛隊長タティウスが亡くなった侍女の指輪を持っていたことから、彼 が殺害したということになり、皇帝の命令で、タティウスに誘拐されたロベルトと決闘をすることになったようである。現在にも 残るビザンツ時代の地下貯水池の遺跡で決闘が行われる。以下左は貯水池にきた十字軍一行。右は観戦する皇帝の台座。





 左がロベルト、右がタティウス。




結構互角に戦った後、最終的にロベルトがタティウスの首を切り落として勝つ。ロベルトとブリギッテも元通り。こうして十字軍 はエルサレム攻略に旅立ち、面倒ごとはビザンツ帝国から去ったのであった。

最後に物語の進行役を務めていた、年代記の写本をめくる手だけしか登場していなかった語り手の顔が登場するのですが、これは 一体誰なのか、よくわかりませんでした。もったいぶって顔を出したので、重要な人物のようなのですが、、、、エライ貫禄があ ります(チャールトンヘストンに似ています)。はっきりいってこの人にアレクシオスをやってもらった方が良かった。




一応それなりに雰囲気は出ている感じはしましたが、皇帝一家以外はほとんどビザンツ人が登場せず、ノルマン親衛隊と十字軍ば かりが目立ったビザンツ帝国でした。

それにしても、第一回十字軍については、セルジューク朝の英主(とされているが実際はどうだったかよくわからない)マリク シャーと鉄腕宰相ニザーム・アル・ムルクが生きていたら、第一回十字軍はどうなったのか興味があります。マリクシャーは 1055年生まれで、1057年生まれのアレクシオスとほぼ同年代です。マリクシャーが長生きしていれば英邁ライバル君主同 士の対決が見られたかもしれません(マリクシャーはニザームアルムルクに丸投げしていただけのような気もしているのですが、 どうなのでしょうか)。

IMDbの映画紹介は こちら

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