中世ロシア歴史伝説映画「アナスタシア・スルツカヤ」

 2003年ベラルーシ製作。ベラルーシの伝説の女公で、クリム汗の遠征軍を破ったとされるアナ スタシア・スルツカヤの話。ソ連崩壊後の独立後にあって、ベ ラルーシ民族主義を鼓舞する目的で製作されたようです。映像が美しく、「この手の作品の常道だからこんなもの」と思ってみれば、 悪くない作品です。私は結 構気に入っています。

 アナスタシアと夫の結婚式の場面から始まる。

 宴たけなわ時、背中に矢を撃たれた使者が入ってくる。すぐ息絶える。直後に敵が攻めてくる。家の中に避難する女性と子供。その 当時の町の城壁と櫓。

教会の中に避難したアナスタシアと女性・子供達。

子供たちは壁の隙間から戦況を伺っている(この後、突然平和な場面に変わるので、敵は撃退したようである)。 

 アナスタシアと兄は野原で剣の練習をしている。更にナイフ投げも練習。結構腕が良いアナスタシア。その後一人で森へ散策にで て、小熊を見かける。この作品は、逆光の使い方が上手い。小熊に見入るアナスタシアの映像は美しい。

  ところが、急に母熊が現れ咆哮を上げたため、アナスタシアの乗る馬が驚き、暴走を始めてしまう。遂に落馬して気絶してしまう。森 の住民二人(青年と小人) が通りかかり、森の呪い師のところに連れてゆかれ蘇生する。一方、馬だけが森から戻ってきた為、家族達が探しに森に入ってゆく。 家族達はアナスタシアのこ とをクニャジーニャ(公女)と呼んでいる。アナスタシアは意識を取り戻し、森の長老と会談した後、夜、白夜の森にでかけてさ迷う ことになる。薄明かりの 中、森の中はフクロウなど鳥獣の声が鳴り響き、古代異教の石像などがあり。ふらふらしているうちに川にはまったりする。朝になっ て池で泳いでいると、助け てくれた森青年が来る。この時の湖面に照り映える陽光を背景に泳ぐアナスタシアの映像も美しかった。

 青年も裸になり飛び込み、二人して泳ぐのだった。 それを覗き見る呪術師(どうやらこの呪術師の女性は森の青年が好きらし い)。湖からあがり、森の中で青年が鳩笛を吹いて見せるところに、兄がやってきて、アナスタシアは無事森の外に帰還することがで きたのだった。

  続いて市場の様子が映る。森の青年が町まで出てきて市場を覗いているが、公と一緒に歩いているアナスタシアを見てしまう。森で あった女性が公妃であること を知り、森の青年は足早に去るのだった。ところで下記は農家。雪が深いからか、屋根は地上すれるれまで貼りだり、恐らく内部は地 面を掘り下げた半地下の土 間となっているものと推測されます。

 
タタール人の奴隷商人のテントでの奴隷商売が行われている。イスタンブルという言葉が出ていたので紫色の衣装の男はトルコ人のよ うである。この男はタター ル人の王(クリム汗)のようだ。この場に、公国の皇族とウラジーミルと貴族と思われる人物が同席しているのだった。どうやら、内 通らしい。


 娘のアレキサンドラがどこへゆくのか、荷馬車に乗って城を出てゆく。出発を見送るアナスタシアと公夫妻。

と ころが、道中アレキサンドラはさらわれ、タタール汗(クリム汗)の天幕に連れて来られてしまうのだった。一方、荷台を失い、お供 の者の遺体を載せた馬車が 城の城門へと戻ってくる。娘がさらわれたと知り、夫に告げると、夫はイスタンブールに売られるだろう、と返答する。アナスタシア は森に探しにでて、笛を吹 いて森の住人を呼び出すのだった。この時の木漏れ日の中で笛を吹くアナスタシアの映像も美しかった。

首 尾よく森の長老と青年の元に到着し、長老に娘の救出を支援してくれるよう頼む公妃。その良、森の住民が出撃の儀式を執り行う。石 のトーテムの周囲を踊ると いう、古代ロシア映画でよく登場する儀式。その夜、森のゲリラ部隊は、奴隷商人のテントを夜討し、アレキサンドラを取り戻すこと に成功するのだった。助け だした娘を抱き寄せるアナスタシア。白夜の光が輪郭を縁取るこの映像も素晴らしい。

  娘か息子の誕生日らしき日のパーティ。公の親族が集まっている。小さな木の小屋の窓ごしに白いクローゼットをかぶせたテーブルが 並べられ、楽師が音楽を奏 で、アナスタシアを好きなウラジーミル(公族と思われる。公の有力者の息子か、公の弟か甥、という感じ)がアナスタシアにダンス を申し出る。

 ウラジーミルは、侍女を垂らしこんで、王の食事に毒を盛らせるのだった。

 さて、作戦会議中、王は病で倒れる。

  そこに森の呪術師がやってきて王を診察したところ、毒をもったことがばれ、侍女は拷問にあい、ウラジーミル・ドルツキーがやった と白状する。臨終の床の王 は、クニャージストボにアナスタシアを命じる。どよめく家臣。クニャージストボとは摂政のことだろうか?家臣の一部はウラジーミ ルが適任では?という。王 は繰り返す。既に言ったようにせよ。と。下記左からアナスタシア、公子、公。

 こうして王は息を引き取った。

一方、籠の中に奴隷狩りで入手した子供達を入れて隊商作って移動する奴隷商人一行が映る。どうやらこれは、公国へ遠征に向かう途 上のタタールの汗の進軍のようである。

  葬儀中アナスタシアに手紙が届く。葬儀が行われている公の館の前にウラジーミルと、ウラジーミルに扇動された民衆が押しかけてい る。手紙はどうやら、タ タールの汗からのものだったようで、司祭が読み上げる手紙の内容は、アナスタシアを退け、ウラジーミルとタタールの汗が内通して いることを明らかにすると ともに、タタールの汗が公に進撃して来るという内容だったようだ。激怒する民衆。アナスタシアは館の入り口から冷ややかにウラ ジーミルを見下ろす。

 ウラジーミルは、跪き、アナスタシアに「愛しているのだ」と告げる。アナスタシアは冷たく一瞥して家の中に戻る。民衆はウラ ジーミルを担ぎ上げ、処刑場へと運び、処刑するのだった(叫び声しか出てこない)。

 公国の鍛冶屋は大車輪で武器を製造する。有力者の総会を開き、徹底抗戦を訴えるアナスタシア。

 城壁の外に、杭を埋めてある落とし穴を掘る。鎖帷子で武装するアナスタシアと息子。


 夜、一人自室でアナスタシアが地図を見て作戦を検討していると、森の青年がやってくる。公妃は思わず青年に抱きついてしまう が、キリストの肖像をみて思いとどまるのだった。青年は公妃にペンダントを渡して去るのだった。

 ついにタタール軍がやってくる。左は城門の格子扉を下ろす仕掛け。右は格子扉が下りた城門と城壁の上で弓を構える兵士。

 ミール・クリム汗と言っている。アナスタシアは城壁外の橋での交渉に持ち込むが橋の交渉は決裂してしまう。下記は武装したクリ ム汗。

  交渉を終えたアナスタシアが城内に引き上げたところで、城内は緊急戦闘配置につく。大砲が城塞の上に乗せられ、城門外に兵士が出 撃する。タタール騎兵が攻 め寄せて来るが城壁に近づいたところで、いきなり落とし穴にはまるのだった。続いて歩兵同士の白兵戦となるが、敵歩兵は地面に埋 めた火薬で撃破されてしま う。


 タ タール側についているロシア人もいる。予想以上の反撃に、タタール軍の帷幕でクリム汗や他の隊長に攻められ、しどろもどろに額に 汗して言い訳するロシア人 隊長。その夜、タタールは火矢で攻撃してくる。城内は消化で大わらわ。更にタタール側のロシア隊は大砲を打ち込むが、何故か汗は ロシア人隊長を絞首刑にし てしまうのだった。

 翌朝城内を見まわるアナスタシア。焼け落ちている建物が目立つ。そこで、アナスタシアは救援に伝書鳩を放つがあっさ りタタールに気づかれてしまう。続いてアナスタシアは、森の青年からもらったペンダントを使者に託す。使者は、タタール騎兵に追 われるが、森まで逃げき り、ペンダントを森の少年に投げる。その直後、使者はタタールに捉えられてしまうが、ペンダンドは敵に気づかれることなく、森の 住人のもとにもたらされる のだった。一方、タタールの陣営に引っ立てられた使者は、城の近くで、アナスタシア達が見ている前まで連れてこられ、馬で両足 引っ張られ、股を裂かれる刑 に処されるのだった。それを目にして、民衆に一層の徹底抗戦を説くアナスタシア。一方クリム汗も全軍を前に演説し、アッラーアク バル!!と鬨の声があが る。そして突撃開始。

 住民のおばちゃんまで城壁から石や煮えたぎる熱湯を落として防戦に務めるが、遂にタタール軍は城壁を乗り越え、城内に突入す る。

負傷兵を応急処置する女性。

  戦闘は夜まで続く。夜、森の軍団が救援に来る。城門を開け、森の軍団を城内に引き入れることには成功するが、森の青年は夜で胸を 射ぬかれていて、駆けつけ たアナスタシアの腕の中で眠りにつくのだった。アナスタシアは残った兵士を率いて城外に打って出る。それを見たクリム汗は、戦闘 を中止させ、自らアナスタ シアとの一騎打ちに出るのだった。

もちろん、クリム汗はアナスタシアを女と侮っての行動で、アナスタシアも多少は剣ができるものの、汗の敵ではなく、子供のように 翻弄され、遂には馬から叩き落とされてしまう。余裕で高笑いのクリム汗。
 ところが、アナスタシアは油断させた後、振り向きざまに投げつけた短剣は、クリム汗の眼を射ぬくのだった。

 アナスタシア軍は勢いづき、一方大将を失ったタタール軍は総崩れとなる。

翌日、かなりが焼け落ちた城内。民衆はアナスタシアの勝利を称えるのだった。

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