ウマイヤ朝歴史ドラマ「クライシュの鷹」(3)750年から754年まで(第11話から第16 話)


  今回から本格的なアブド・アッラフマーンの話となります。この作品は、音楽もいいんですよ ね。名作ドラマや映画には、名曲も重要な貢献要因だと思うので すが、本作に流れる主要な幾つかのテーマ曲は、場面場面を盛り上げ、哀愁感ただようメインテーマは口笛を吹く程なじんでしまいま した。


十一話


  ラフマンに、ウマイヤ朝軍の敗戦報告が来たところから開始。心配する友人・家臣に対して、あまり動じていないラフマン。が、結局 逃亡することに。名残惜し そうな友人とラフマン。以下は、ラフマンの家の門を入ったところの中廊。中央がラフマン。ラフマンの背後が玄関で表の街路に通じ ている。中廊の両側の建物 が家屋。ラフマンが友人に別れを告げているところ。ラフマンは家族と奴隷とともにダマスクスを後にする。

 132年ラマダン月(750年)、革命軍ダマスクス入城。虐殺が行われ、子供が死んだ親の上に泣伏せる光景に埋め尽くされる市 街。死体と流血の山。

 革命軍は、捕縛したウマイヤ一族をロバに乗せ、太鼓を叩いて市中引き回す。

 ラフマン一行が隠れる田舎の村。

 これはその家の室内。右端が赤子を抱えて泣く妻。その左二人はラフマンの弟。その左の二人は、ラフマンの親戚親子のウマイヤ一 族だと思われる。これにバドルとサーリムの奴隷2人、計9人の一行。

 アッバース新政権は、各地にウマイヤ一門の追っ手を放つ。夜明け、ラフマン一行が隠れる村にもアッバース政府の捜索隊がやって きて、「ウマイヤ一族を見かけた者は必ず当局に知らせるべし」と宣告してゆくのだった。

  こうして各地で摘発されたウマイヤ一門は集められ、アッバース軍の用意した宴会に招かれる。主催者は前回ザーブ川の決戦での司令 官アブドゥッラー・ア リー。宴会中にウマイヤ一門を虐殺するというエピソードかと思ったが(750年6月25日、アウジャー川岸のアル・フトルス(古 代のアンティパトリス)で ウマイヤ一門80名を宴会中に虐殺し、死者や瀕死の者の上に皮を被せて、その上で宴会を続けたという逸話)、そこに別のアッバー ス軍の高官がやってきて宴 会をやめさせるのだった。渋い顔のアブドゥッラー。アッバース政府内権力を確立したいアブー・アッバースと叔父アブドゥッラーと の確執だと思われる。

  アブー・アッバースは、兄のアブー・ジャアファルをホラサーン(現東北イランからトゥルクメニスタン東部・アフガニスタン北西部 にまたがる地域)に派遣す る。アブー・ムスリムは街道途中まで出迎えるが、アブー・ジャアファルがにらみつけるまで馬から下りようとしない。ジャアファル が険しい目つきをしてよう やく、馬から下りて膝まづき、ジャアファルの手の甲にキスをする。ここもまた、アブー・ムスリムとアッバース政権の間の確執を印 象づける場面である。

  更にメルブの総督府では、アブー・ムスリムの座は階段の上にあり、ジャアファルが入ってくると、アブー・ムスリムは、階段下の椅 子をジャアファルに薦め る。気を悪くしたジャアファルは座ろうとせず、結局会談は、アブー・ムスリムが階段の下まで降りて行われるのだった。これはジャ アファルには何事かと映っ ただろう。もはやあからさまな挑発であり、アブー・ムスリムの権威の誇示に他ならない。

  しかし、本作の話の流れからすれば、アッバース家は殆ど何もしておらず、ホラサーンで組織を確立し、軍隊を建設して反乱を起こ し、遠征軍を派遣してウマイ ヤ朝を倒したのはアブー・ムスリムやアブドッゥラーの功績としてしか見えない描かれ振りなので、このアブー・ムスリムの尊大な振 る舞いもわからなくもな い。 

 アブー・ムスリムは、ホラサーン潜入時の最初の仲間を処罰する。ジャアファルがそれに抗議にやって来るが、アブー・ムスリム は、 アブー・ジャアファルと呼び捨て。アブー・ムスリムの奥さんは亭主の尊大さに気づいているので、食事中夫に忠告するが、アブー・ ムスリムは聞く耳持たな い。思い余った夫人は父親に相談する。

 クーファに戻ったジャアファルはアブー・アッバースに状況を報告。かなり切羽詰った話し方をして いるので、アブー・ムスリムのあり方に相当危険を嗅ぎ取ったと言えそうである。 次いで、アビー・サラマという人物を宮廷でア ブー・アッバスが家臣に紹介 する。ジャアファルが仰天したので、ひょっとしたらウマイヤ政府の高官で、寝返ってアッバース側についたのかも知れない。という のも、。その夜、サラマは 夜の市街を一人歩いていて刺殺されるからである。味方にして油断したことろで誅殺するのはアッバース朝のウマイヤ一門殲滅の基本 的なやり方なので、この場 合もそれなのかも知れない。

 逃亡中のウマイヤ一門、特にカリフ・マルワーンの追跡は強力におこなわれ、追跡するアッバース軍はエジプト に入る(ヒジュラ暦133年)。野営地の焚き火の跡をチェックし、付近の農民に目撃者を尋ね、遂にマルワーンと配下の軍隊の野営 地を突き止めて深夜襲撃。 下着姿で応戦したウマイヤ朝最後のカリフ・マルワーンは討ち死にするのだった。


 年が明けて134年。ラフマンの隠れ家での暮らしの場面でこの回は終わる。



第十二話

  狩に出るラフマンとバドル。二人が狩りに出ている時に、ラフマンの家族が隠れている村の隣村にも、アッバース政府の使者がやって きて広場で「ウマイヤ一門 のものを見かけたら当局に通知せよ。匿えば同罪」と布告する。ラフマンの家臣は郊外に出て、アッバース軍が、捉えたウアイヤ一族 を一箇所に集めて虐殺して いる場面を遠めから目撃する。奴隷サーリムは狩から戻ってくる途中のラフマンとバドルを、アッバース軍が来ている村の郊外に迎え 出て、村に入るのは危険だ と告げる。ラフマンとバドルはその村には入らず、バドルと自分の村に戻ってゆく。逃亡の準備中、ラフマンの右目が腫れ上がってく るのだった。以下はラフマ ンが潜伏している村の市場。

  アッバース追跡軍一向はヒシャームの孫のアブド・アッラフマーンと口にしているから、近郊の村に現れた追跡部隊は明らかにラフマ ンを追跡しているようであ る。バドルが市場に買い物に出ると、そこにアッバース黒騎士一行の追跡隊が来る。ラフマンは遂に家族それぞれ別行動して脱出する 決意をする。子供に別れを 言ラフマン。遂にラフマンの隠れ家にアッバース黒騎士一行がやって来る。間一髪だった。ラフマンは年長の弟と二人で、妻と年少の 子供は別方向へと脱出す る。バドルは黒騎士がラフマンの家を調べたのを見届けてから村を後にする。ラフマンと弟は夜、葦の林で眠るのだった。アッバース 追跡隊は松明を持って夜通 し捜索を続ける。翌日バドルがラフマンの元に逃走資金を持って来る。バドルは一度村の様子を見に戻る。村ではラフマン妻子が泣い ていた。バドルが雇った二 人の逃亡協力者を連れて戻る。ラフマンはスレイマーンという偽名を名乗る。ラフマンは協力者に金の入った袋を渡す。眼の調子がお かしいらしくしきりと眼を 拭くラフマン。しかしこの二人はそのまま追跡軍の元にゆきあっさり裏切る。弟ヒシャームは葦の原の端で追跡軍一行を見つけ、ラフ マンとヒシャームは馬を捨 てて葦の林の中に逃げるのだった。川を泳いで渡る二人。

 川岸に四人の黒騎士がきて泳いでゆく二人を発見するが、腰までつかったところで 追うのをやめ、「アミール・ムウミニーン(カリフの別称)の慈悲がある。戻れ」みたいなことを呼びかける。戻りそうになるヒ シャームを激励するラフマン。 その後新たに八旗の騎兵がやって来る。力尽きたヒシャームは、途中で引き返してしまう。追跡部隊は、ヒシャームを人質とし、泳ぎ 切って対岸へ渡ることに成 功したラフマンに、戻るようにいう。100m程の川を挟んで泣いて見詰め合うヒシャームとラフマン。ヒシャームは斬首されるの だった。

 ラフマンが一人とぼとぼと歩いていると、追跡軍の黒騎士達(7人くらい)がやってくる。危機一髪のとこでバドルがやってきて、 こいつ(ラフマン)は自分の奴隷だと言って、一芝居打つのだった。義経と弁慶の勧進帳のようなエピソード。



第十三話

 追跡者が、そいつはアミール・ムアウィアの子孫ヒシャームの孫のラフマンだろう?というと、バドルは「こいつが?こいつがだっ て?」という感じで笑い転げる。一芝居打ってなんとか追跡者を追い返す。

 なんとか追ってから逃れたラフマンとバドルは、連日野宿しながら逃亡を続ける。
 翌日馬を連れた奴隷サーリムと落ち合う。下左画像の背景にあるのはローマ遺跡。ラフマンは目を押さえている。かなり痛い様子。 街道の両側(下右画像)は、石垣となっている。

 ラフマンは、バドルにセイディと呼ばれるようになる。ニュアンス的には”ご主人””先生”という感じなのだろう。ラフマンは遂 に両目目隠しとなっている。だいぶ眼の症状が悪くなってきたらしい。この日は石灰岩の山岳地帯の洞窟で野宿。

 一行は更に旅を続け、古代の遺構のようなところで雨宿り。

 そこに黒騎士一行6名が通過する。咄嗟に身を隠す三人。

 野宿の夜、夢に川で殺された弟ヒシャームの恨みがましい顔が出てきてうなされるラフマン。

 どこかの町に入る三人。隊商宿に宿泊する。

  しかし会話を宿屋の主人に聞かれてしまい、主人はアッバース追跡軍に密告にゆき、黒騎士一行が部屋を襲撃するがもぬけの空。三人 は既に脱出していて、先の 道を急いでいたのだった。途中休憩でバドルが水をラフマンに差し出すと、サーリムが、奴隷が飲んだ水筒から飲むなんて何て失礼 な、と別の水筒(羊皮製)を 差し出すが、ラフマンはバドルのものをそのまま飲むのだった。

 結構大きな町に着く。

  この町で目医者に行くのだった。ラフマンの片目のまぶたは大きく腫れ上がってて涙が止まらなくなっていた。この夜の医者と、医者 の助手との会話でアンダル スの話が出る。そこの庭でマンドリン(琵琶のようなもの)を弾いている人がいて、バドルも参加して弾いてみるが、非常に上手い! のだった。しばらくこの町 に逗留し、ある日包帯を外すと、ラフマンの目は治っていた。
 
 都市近郊の農園の様子。ロバに引かせた鍬がクローズアップされる。こういう日常生活を描く映像は大変参考になる(史実かどうか はともかく、史実はどうだったのかと興味を持たせてくれる)。
 

そしてその農場にも、追跡軍が来るのだった。


第十四話


  医者のところにも捜索隊が来る。住民はとぼける。街路の壁に山と詰まれた藁草の山までつついて、藁山の中に隠れていないか確かめ る徹底した捜索隊。しかし 実は、その中にラフマンとバドルは隠れていたのだった(この時バドルは足を刺されて軽く怪我した模様)。捜索隊が去った後、医者 に、「あんたはヒシャーム の孫なのか?」と聞かれ、そうだとうなずくラフマン。金を受け取らない医者。その代り、ここでは匿えません。すみません。と謝る のだった。ラフマンは医者 と抱きしめあい、そして出発する。

 荒野、オアシスを通過し、あるオアシスで地元民の青年に道案内を頼む。ラフマン一行はどうやらアンダ ルス(イベリア半島)を目指しているようだ。夕暮れの空、風の強い峠、様々な困難な逃避行のカットが流れ、いい感じ。しかし道案 内の青年は野宿で寝ている 間にラフマンを刺そうとし、気づいたラフマンに反撃され刺されて死亡。血のついた短剣を珍しいものでも見るように当惑している様 子のラフマン。過酷な旅に 疲れ、当初無口だった奴隷サーリムもだんだん口うるさくなってくる。

  井戸を見つけても枯れ井戸だったり。水に困っている時に隊商かと思ってバドルが喜んで近づいてゆくと、ベルベル人の盗賊団だった り。そして資金である装飾 品を盗られてしまう。更に念入りな身体検査をされ小銭袋も盗られる。ラフマンの袋は宝石が入っていた。身代金が取れると思われた のか三人ともそのまま盗賊 団に連行されるのだった。

 見張りの一人を置いて、三人を岩場に残して残りの盗賊団7名(黒人とベルベル人の混成軍)は去る。一人残った 黒人の見張りに、バドルが声をかけ、ラフマンの身分を明かし、「実はまだ、あの男は宝石を隠し持っているんだよ」とでも告げたよ うで、見張りの男がラフマ ンの体を検査しようとする。その瞬間、バドルが近寄ってきた見張りの剣を抜いて殺す。

 盗賊団から逃げ出した三人の苦しい砂砂漠の横断行 が続く。遂に馬一頭が砂漠で息絶えてしまう。続いてバドルが底なし砂にはまってしまう。ラフマンとサーリムが紐を投げて、馬に引 かせてバドルを引っ張りあ げる。バドルは助かるが、引っ張った馬は力尽きて絶命。遂に馬は一頭だけとなり、三人は歩いて砂砂漠を歩き続ける。苦しい場面が 続く。遂にはもう老人であ るサーリムは倒れてしまう。助け起こす二人。しかし三人はやがて力尽き、とうとう砂漠で寝ていると、そこに隊商が通りかかる。通 りがかりの隊商に救われる のだった。

 どこかのオアシスに辿り着いてこの回は終わる。いつの間にか隊商から馬をもらっているバドルとラフマン。その金はどこから?ど うやらまだ宝石の類を衣服のどこかに隠し持っていたようである。

 この回は、アブド・アッラフマーンの逃亡生活の最も苦しい時が描かれていたように思われます。



第十五話

  町についたところで、サーリムが金はどこから?とバドルに聞くところが出てくるが、彼はパンツと思わしき場所から金袋を取り出し て見せたのだった。町の市 場を見て歩く三人。市場で子供に小銭を恵んでいる女に宿を紹介してもらう。と・こ・ろ・が。夜中に誰何されて起こされる、お前ら は勝手に泊まっているとい われ、追い出されてしまうのだった。女にいっぱい食わされたらしい。左画像が夜中にたたき起こされたところ。右側は、その後移っ た宿で湯浴みしているとこ ろ。といっても、画像中央奥の料理用かまどでお湯を沸かし、沸いたところを一杯づつ掬って手前の風呂釜に湯を出していくので、実 際のところ湯船に入るどこ ろではなく、ラフマンは半分冷たいぬるま湯で体を拭くことになり、寒そうなのだった。

  翌日市場でパンを買うバドル。すると昨日の女が市場でトラブっているのに出くわす。が、バドルは女の与えた損害を支払ってやり、 女を助けて解放してやるの だった。その後ラフマン、バドル、サーリムの三人が食事していると、女が助けてくれた礼金(+昨日の騙し代かな?)を支払いに来 る。下左はバドルがパンを 買っているところ。右下は宿で食事をしている三人。

  女を追いかけて色々聞くバドル。女の名はラビーア(らしい)。その後、いつの間にか絨毯を駱駝に乗せたりして人足として働いてい るバドルが登場し、その間 になんとラビーアとデートなどしている。貯水池や古道具屋を見て周り、小道具屋に置いてあったタンバリンをたたいてみせ女を楽し ませるバドル。突然バドル の青春となって少し驚く。バドルは髭に白髪が混じっている年齢なんだが。。。バドルと一日デートして最後に涙を流すラビーア。や んごとない事情があるらし い。左下が貯水池。右下が布地屋。

 この女優さん、なんとなく日本人の女優にいそうな感じな顔つき。誰かに似ている気がするのだけれど思いつかない。

  ラフマンが町を散歩していると、広場で黒尽くめのアッバース騎士が太鼓を鳴らして衆目を集め、ラフマンの指名手配を告げる。その 後、誰かにつけられている と気づくフラフマン。途中から走る。追跡者も走りだす。ラフマンは男を待ち伏せ、背中から羽交い絞めにする。すると男は、アブ ル・ムーサと名乗り、カ フィーラー、アブドゥル・マリク・マルワーンとか口にし、彼の主人の家にラフマンを連れてゆくのだった。
 これがラフマンが連れて行かれた家。垣根の内側に駱駝がいる。街中の住宅の場合、こんな感じだったのだろうか。

  その家をバドル、サーリムと供に再度訪れたラフマンは、その家の主人から「アバー・スレイマーン」と呼ばれる(彼の父親はムアー ウィアなので、何故スレイ マンと呼ばれるのかよくわからない)。その家の主人とラフマンとは昔なじみらしい。主人とラフマンの会話には、フスタートとか、 カイロワーンとか、アル・ アンダルスとか地名が出ている。最近の各地の政情の情報を仕入れたのだろう。ひととおり主人と会話した後、夕食となり、ラフマン はサーリムとバドルも席に 招く。戸惑う二人(通常奴隷が主人と一緒の席に着くことはないから)。しかしラフマンは、流浪生活中にすっかり二人と食事をする ことに慣れてしまっていた ので、かまわず食べよう、というのだった。下左端が主人。その右がラフマン。右がその家の中庭。中央に噴水がある典型的アラブ式 邸宅。


  三人が夜中自宅に戻ってみると、アッバース捜索隊が待ち構えていた。夜の町を走り逃げる三人。バドルは偶然にもラビーアの家に逃 げ込む。ラビーアはラフマ ンの正体を知っているので、最初からラフマンをアミール(太守・知事くらいの意味)と呼ぶ。とりあえず三人は女のところに匿われ るのだった。


第十六話

  翌朝ラビーアは町の様子を見に行く。町の城門では検問が敷かれている。女性の行き来はノータッチなのを確認したラビーアは、女性 用のチャドルをラフマンに 着せる。背が高すぎるので身を縮めさせる。首尾よく通過。左下中央の三人のうち、中央がラフマン。右手が検閲兵。左が、ラフマン の顔の覆いをめくろうとし た検閲兵の手をすかさずラビーアが制止するところ。右下画像は、一足先に城壁の外で荷物と馬とともに待っているサーリムとバド ル。

  ラビーアとバドル、涙の別れ。連れてってやれないのだろうか?ラビーアは天涯孤独のようだし。サーリムがせかそうとするのをシー と止めるラフマン。サーリ ムはロバ。ラフマンとバドルは馬、それに荷物用の駱駝も一頭つけてもらった。それでも街道は危険なので、宿には止まらず野宿を続 ける一行。指名手配中だか ら仕方がないのかも。旅の途中のBGMをそのままバドルが口笛を吹いているのが笑えた。現リビアの砂漠地帯を抜けて現チュニジア に入ったのだろう。第十四 話の旅と比べると、緑地の多い地帯を旅する一行。

 夜、野宿しながら、バドルに口笛を習うラフマン。真剣な練習に思わずサーリムも起きだして練習に加わる。いい場面だった。 

 135年(753-4年)カイラワン(現チュニジアのケルアン)の町に着く。知人の貴族の元に行き、翌日カイロワン政庁に赴く ラフマン。一見、まだここまではアッバース政府の支配が及んでいないように思えるが、ラフマンと知事イブン・ハビーブが 会談した後、知事は黒いフードの老人(多分アッバース政権の人間)と会話し、ラフマンがアンダルシアに向かおうとしていることを 教えるのだった。一方今回 ラフマンの宿泊している宿はプール付の高級宿。これまでとは大違い。ラフマンはここで手と顔を洗ったりしている。下左、ラフマン 一行の宿の部屋。壁は漆喰 で覆われ、絨毯も敷かれている。右下は知人の貴族の家。

 左下はカイロアンの政庁の城門。右下は政庁の中庭にあるプール。

 左下はカイロアン政庁の広間。中央の白地に青刺繍の人物が知事イブン・ハビーブ。対面して左手に立つのがラフマン。右下はラフ マンが帰った後面会した黒フードの老人。

 左下、ラフマンの宿にあるプール。

  久々にアッバース政庁登場(上右画像)。突然登場すると暗く感じる。悪魔の巣窟のよう。アッバース、ジャアファル、アブー・ムス リムの三人がいる。ザーバ 川の戦い時の司令官(アブー・アッバースの叔父アブドゥッラー)もいる。この四名が最高幹部ということらしい。咳が続くアッバー ス。アブー・ムスリムはホ ラサーンに戻る。メルブ市に戻り、市民の喝采を浴びるが自宅に戻ると妻の批判を浴びる。背をそらし、顎をしゃくりあげて、「まさ かあんた、ハリーファ(カ リフ)になるつもり?そんなことしてると、イマーム・イブラヒームの二の舞よ」と馬鹿にするかのようでいて、実は夫を心配して諌 める妻なのだが、アブー・ ムスリムは、説得口調で妻に反論するのだった。左下の左、アブー。その右、妻。右下は、メルブ政庁でアブー・ムスリムと幹部。間 接照明が博物館のような美 しさ。

  再びアッバース朝王宮(アブー・アッバースが即位後南イラクに建設したアル・アンバールだと思われる)。ジャアファルはアブー・ ムスリムの危険性を説いて いる。ジャアファルはアブー・ムスリムをホラサンに追い払っただけでは危険が去ったとは言えない、と主張している模様。

 ラフマンの宿 (もはや家のような感じだが)では、サーリムの体調が悪そうである。気づかないラフマンは仕事ぶりが鈍くさいサーリムを怒鳴りつ けたりしている。サーリム は登場当初から老齢だったし、過酷な旅が相当堪えたようで、明らかに衰弱し、仕事への集中力も落ちている。バドルは、サーリムの 名誉を挽回させようと、地 元の支援者がラフマンに会いに着た時に、自分に代えてサーリムを給仕に任せるが、サーリムは客に水を零してしまう。続いて、客が 歓談中にも関わらず、柱の 影で給仕待ちをしている最中に大鼾をかいて寝てしまう。鼾が客にも聞こえてきて客も話を止める。激怒したラフマンはサーリムの頭 から水をかけるのだった。

 次回第十七回が、物語前半の山場できりも良かったのですが、文字数オーバーとなってしまったので第十七回は次回。

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