古代ローマ歴史映画「聖アウグスティヌス」(2010年)


 2010年イタリア・ドイツ製作。古代ローマ末期のキリスト教大思想家アウグスティヌス (354-430年)の生涯 を描いたテレビドラマ。二話構成。第一話97分・第二話103分合計200分。

 一応アウグスティヌスの誕生から死に渡る全生涯を描いています。紀元430年、1万のヴァンダル族軍に攻囲され、陥落寸前の ヒッポ・レ ギウス(現アルジェリア東部チュニジア国境付近の海岸の町ア ンナバ)の町で、アウグスティヌスが、著作「告白」をめくりながら過去を回想する、という形で進みます。この時代の 古代ローマ映画映像としては、アレキサンドリアのヒュパティアを描いたスペイン映画「ア ゴラ(邦題「アレキサンン ドリア)」と概ね似たような感じです。衣装や風俗・建築・生活用品など、この時代の再現 映像としてよく出来ているように思えます が、映画「アレキサンドリア」を見ておけば十分という感じです。映画「アレキサンドリア」と大きく異なっている点もあり、そのひ とつはキリスト教への視点です。別の一つは、ローマ宮廷の衣装です。アウグスティヌス若き日の4世紀末の風俗が、古代のモザイク 画に登場する、ビザンティン風の装束になっている点です。いつ頃を境に、服装の変化が起こったのか、興味が出て来ました。




 第一話

 第一話は冒頭と末尾だけ430年で、その間は誕生(354年)からミラノ勤務となる383年までを描いています。冒頭、ヒッポ の町の城壁上からはるかに見えるヴァンダル族の陣営を姪のルシラとともに見つめるアウグスティヌス(以下アウグ)。CGは割と上 手く出来ていると思います。




 右側がアウグ。演ずるはフランコ・ネロ。この人は変わった歴史映画に良く出てい る印象があります(1388年のオスマン帝国による征服前夜のセルビアを扱った映画「Banovic Strahinja」や、建国期のハンガリーを描いた映画「Honfoglalás」やレ ジェンド・オブ・ザ・キング 聖なる王冠伝説」、ロシアのエカテリーナ女王の若き日 を描いたドラマ「Young Catharine」など)。イメージ通りという感じ。 中央と左はヒッポ知事のヴァレリウス。アウグとは青年時代に出会って以来の友人ですが、対ヴァンダル防衛政策を巡っ てアウグと対立します。



 ヒッポの町の水道がヴァンダル族によって止められ、パニックとなった民衆を前に広場 でアウグは、ヴァンダルとの和平工作を提唱し、ヴァンダル王ガイセリックへの平和協約使節を提案、知事は徹底抗戦を主 張。そこにローマから援軍が到着するが、来援中ヴァンダル族の攻撃を受け、辛うじて2つの百人隊のみ生き残って到着し た。傷病兵で溢れかえる教会。ローマからアウグの元に手紙がきた。アウグの諸著作を救うためにローマへ送るための 使者が数日中に到着するとの連絡だった。書棚の元に向かい、旧友ポシディウスが筆写した「告白」を取り上げ、思わず知ら ず読み返し始めるアウグスティヌス。彼の回想が始まる。

 354年タガステ(Thagaste)の町(ヒッポ・レギウスの南50km。現ス−ク・アハラ ス付近)。没落した都市参 事会員の父パト リキウスは毎晩酒場で仲間と賭け事に興じるすさんだ生活を送っていた(下左。酒場でサイコロ賭博をしているところ)。左 がパトリキウスの家があるタガステの下町の路地。



 妻モニカが産気づいたと聞き、あわてて家に戻る。逆子で難産となり、一時は産婦が帝 王切開を決意するが、難産の末切開せずに誕生した。その長男を父はコンスタンティウスと名付けるよう提案するが、母は、 コンスタンティウスという名前は多いから、皇帝オーガスタス(アウグストゥス)由来のオーガスティン(アウグスティヌ ス)と名付けるよう提案し、アウグスティヌスという名前に決まる(79分時点でアウレリウス・オウガスティンと紹介され ている場面がある)。

15年後(369年)、15歳となったアウグは、ある日、タガステの酒場でカルタゴから来た法律家が弁舌を振るうのを覗 き見し、夕食時父親に法律家になりたいのでカルタゴで学びたいと願いでるが、ウチには金がないと拒否される。下左がその 時の食卓の場面。中央が父、右側がアウグ。左奥が弟(その娘が冒頭に登場した姪ルシア)、左手前が妹。下右画像は、回想 中のアウグスティヌスのいる教会の書庫。おくの書棚の前でアウグスティヌスは「告白」を手に回想している。手前は写本を 筆写中の写字生。大量の蝋燭が印象的。



 鬱屈した日々を送るアウグスティヌスは、ある日友人達と、障碍者(右脚が無い)の老人が番をしている果樹園から果物を盗み、そ の番人を押し倒して逃げる。顔を見られてしまったので、老人が実家を訪れ、弁償させられる。番人は、母モニカから弁償金をうけと るが、問題は金ではない、と言って去る。老人が去った後、母親に「こんなところに留まっていては絶対親父のようになる」、といい おいて去るアウグ。鬱屈しての犯行だった。

 モニカは思い余り、郊外で荘園を経営する富裕な参事会員ロマニアヌスの元に相談出向く。左がロマニアヌスの荘園のヴィラ。ぶど う園を経営していると思われ、左側にワインを入れる大きなアンフォラが並んでいて、庭の中央には圧搾機が置いてある。右画像はタ ガステの町の下町にある、二階建ての長屋のアウグの家。庇と、庇を支える柱は木造。右奥で妹が机に座って穀物を選り分る作業を行 なっている。



 ロマニアヌスの斡旋と資金援助で、カルタゴの資産家プリスコの家と法律家クローヴィアスの学校へと斡旋され、アウグはカルタゴ に向かうことになる。父親とは喧嘩中なので、見送りは母モニカと妹だけだったが、町の門の影からそっと父親が密かに見送るのだっ た。元気に出発するアウグ(左端が母モニカ、厳しそうなイタリア女という感じ。その右は父パトリキウス、その右がロマニアヌス、 右端は冒頭で登場したヒッポ知事ヴァレリウス・プリスコの25歳の頃。



 371年カルタゴ。市街には隊商の駱駝や富者の駕籠、多くの人びとでにぎわっている。



 17歳となったアウグは寄宿先として紹介された資産家ヴァレリアス・プリスコを訪ねるが、豪奢な邸宅では、16歳で父親と同姓 同名のヴァレリウス・プリスコが退嬰的で自堕落な生活を送っていた。父親のヴァレリウス・プリスコは実は2年前に他界していた が、資産を守る為に父親の死去を隠して、息子のヴァレリウスが父親の名を名乗って暮らしていたのだった(二段上画像右端が25歳 のヴァレ リウス、下右が16歳のヴァレリウス)。




 荒んだヴァレリウスの生活に呆然としたものの、ヴァレリウスの家に寄宿したアウグは、早速法律家クローヴィスの元に弟子入りを 願いに向かうが、タガステのロマニアヌスから紹介されていたものの、クローヴィアスは、「私を論破すれば弟子にしてやる」といわ れ、まったく論破できず、田舎へ帰れ、と冷たくあしらわれるアウグ。失望したアウグスティヌスは、ヴァレリウスと一緒になって宴 会三昧の自堕落な日々を過ごすが、ある日、ヴァレリウスから父親の死を隠して資産を守っている、と告白され、この一件で少し思う ところがあったのか、気を取り直してクローヴィスの元に向かい、議論を吹っかけ遂に論破し、弟子入りすることになる。上左端画像 がクローヴィス。その右が25歳になったアウグ。

 勉学に励み、順調に法律家としての知識と経験をつんでゆくアウグは、ヴァレリウス家の奴隷娘 カリーダと恋に落ちる(上右から 二番目)。

 裁判で弁護を担当するまでになったアウグは、今日も颯爽とした弁舌で裁判に勝利し、夜は富裕層が集まる宴会三昧の日々を送る。 現代ニューヨークのヤッピーの日々のような描かれぶり。

 ある日の裁判。得意の弁論である家庭での妻の殺害容疑で告発された父親ジュリアスを弁護し勝利したアウグ。ところが後日、法律 事務所前で、ジュリアスの息子カミュルスが、母は殺された!お前は間違っていた!父は母の殺害に成功した!と、涙ながらにアウグ スティヌスを詰りに来る。愕然とするアウグスティヌス。「真実とは、幸せをもたらすことである筈なのに!」と師に詰め寄るアウグ スティヌスは、師クローヴィスに、「偉大な弁論家と平凡な弁論家を分けるのは勇気だ。勇気は真実が無くても良い。お前はその勇気 があるのか」と諭される。

(ヴァレリウス の)家に戻る道すがら悩むアウグ。この時のスローモーションの画像は良かった。



 クローヴィウスは夜な夜な豪勢な富裕者パーティー三昧の日々を送る。宴会で複数の女性と戯れながら「我々は真実など必要として いない」と色狂いじじいな感じのクローヴィウスを無感動に眺めるアウグ。
 
 ある日家に戻ると、父危篤の知らせが来ていた。これを機会にひとまず故郷タガステに戻ることを決意するアウグは、恋人のカリー ダ に、一緒にいこうと告げるのだった。

 アウグとカリーダが実家に戻った時、丁度父親が臨終の床で洗礼を受けていた(母親は既にキリスト教徒である)。カリーダを妻で はなく、友人として母に紹介するアウグ。失望した表情を見せるカリーダ。とはいえ、事実上妻であることには代わりは無いので、母 モニカは、落剥したとはいえ、都市参事会家系の跡取り息子が奴隷娘を妻に迎えるなどとは、と機嫌が悪い。下は機嫌が悪いながらも 料理を用意するモニカ。台所のコンロの構造がわかる珍しい画像。



 父親の葬式を終え、ロマニアヌスの幼年の息子の修辞学教師として生活の糧を得ながら、ロマニアノスは、アウグスティヌスにマニ 教を教える。アウグはマニ教の儀式に参加するようになる。以下は非常に珍しいマニ教の儀式の映像。マニ教の秘儀の映像化は本作が 初めてかも知れません。残念なことにマニ教寺院の概観はでてきませんでしたが。。。右はタガステの町のキリスト教会。屋根は木造 で小さい。



 マニ教の教義に感化されつつあったアウグは、ある日、キリスト教の教会からの前で、キリスト教徒の司祭を公衆の面前で罵倒す る。キリスト教の神には科学的説明がない。洗礼など非科学的だ、司祭は福祉を施すことで民衆に権力を持とうとしているだけだ、と 非難するアウグ。それを聞いていた母モニカは、「あんたには弁論の才能はあるけど、それを無駄に浪費している」と罵るのだった。

 更にロマニアヌスとマニ教の司祭は、アウグを正式にマニ教の共同体の上級階級に迎え入れるよう提案する。偉大なことを一緒に成 し遂げよう。ただしそれには一つの条件がある。その条件とは、マニ教の上級階級では妻帯が許されないため、妻と別れろ、というこ とだった。

 家に戻り、妻に離縁を告げようとしたところ、妻から子供ができたの、といわれ、アウグはマニ教の話は忘れたことにするのだっ た。

 381年、アウグスティヌス27歳。子供が誕生している。子供の泣き声に集中できない家の中で執筆するアウグ。そこにロマニア ヌスが訪ねてる。カルタゴ時代に世話になったヴァレリウス・プリスクスが来ているという。数年ぶりに再会したヴァレリアヌスは、 ダキア(現ルーマニア)、トリア(現ドイツ)、アクィレイア(現イタリアのアクィレイア)、ローマ等帝国各地に滞在し、今はミラ ノ宮廷で親衛隊長(プラエフェクトゥス)クイントス・ アウレリウス・セネカに仕えている、という。「セネカと皇帝は統治業務に容易で はない、一方帝国の最高位の僧侶アンブロシウスは政治力があり、彼は現在修辞家を探している、そこで君を招聘しようというわけ だ」 ロマニアヌスも、アウグがローマの宮廷で勤務することは、マニ教共同体にとってよいことだと、ミラノ行きを奨める。アウグ は、ここには家族がいて、ここは故郷だというが、ロマニアヌスに、「これが最後の野心実現のチャンスだ」と説得され、夜明け、妻 子を残して密かに旅立つのだった。出発時、母親にみつかるが、2,3日後に戻ると嘘をついてミラノに向かうのだった。

 ローマに到着したアウグは、口頭試問試験を受け、試験官にアフリカ方言を修正するように指摘された上で合格し、ミラノの新宮廷 の宮廷修辞家に任命される。

 384年ミラノ(当時ミラノには西ローマ皇帝の宮廷があった)。

 いよいよ皇帝に謁見することになる。「皇帝のおでましだ」 見上げてみると、皇帝とは、皇帝とは名ばかりの、12歳の少年が玉 座に鎮座し、母后ユスティナが隣に座っているのだった。



 装束はもうビザンティン風という感じです。
 ヴァレリアヌスからアウグ推薦理由が語られる。「彼は皇帝の声を、皇帝に代わって代弁します。それはアンブロシウスの声より も、民衆に皇帝の声を正確に届けるでしょう」 つまり、皇帝(母后ユスティナとその側近)の側に立つ、煙たいアンブロシウスに対 抗する弁舌家として働く、ということだった。皇帝に忠誠を誓うアウグ。

  後日、宮廷でサーカスが催された後、アンブロシウスがやってきて不正が行なわれ人権が損なわれていると訴える。母后は、苦々 しげにそれが法律だと答えるが、アンブロシウスは取り合わない。ここでアウグスティヌスはアンブロシウスに紹介され、言葉を交わ す。

 アンブロシウスは非難する 「どうだ。この宮廷にはマニ教徒、キリスト教徒、伝統的異教徒、ミスラ教徒、となんでもござれだ」

 アウグスティヌスは答える「人が自分自身(にとっての真理)を見付けるためです」

 アンブロシウス 「いいや、アウグスティヌスよ、違う。人は真理を見つけることはできない。人は、自分自身と戦って真理に導か れないといけ ないのだ」



 「人は、自分自身と戦って真理に導かれないといけ ないのだ」 という言葉は、アウグスティヌスに強い印象を与えるのだった。上左から、母后 ユスティナ、ヴァレンティアヌス二世、アンブロシウス、右端ドゥナトゥス派の司祭シドニウス(後出)。

現在(430年)に戻る。

 百人隊長ファヴィウス・ドミキウスは、知事から攻城戦ではなく、出撃を命じられる。無謀なことはわかっているが、知事は、古 代以来、ローマは少数の軍隊で大軍を破ってきた、ヒッポで時間を稼いでいる間にカルタゴから援軍が来る、君たち兵士は全滅するか も知れないが、ヒッポ市民は生き残り、君たちは市民達の名誉となるだろう、と説得させる(下左画像が知事の部屋。左がファヴィウ ス、右手座っているのが知事。右画像はアンブロシウス。鉄製の杖・帽子・服装いづれも特徴的)



 百人隊長は教会(バシリカ)で傷病兵を看護するルシアに告げる。ルシアは瀕死の兵士に出撃させるの、生きている者に死ねという の、と難色を示すが、ファヴィウスは、その質問は、死なな きゃならないものを活かして町は死ね、さもなくば、我々の10人だけが死ねば町は生きる、といっているようなものだ、と答える。返答に窮するルシアをよそ に、ファヴィウスは傷病兵を隊に戻す。気を取り直したルシアは負傷兵をバシリカに戻してとファヴィウス隊長にかけあうが、隊長 は、これだからキリスト教の人命について軽々しく語る悲観的な奴隷根性がいやだ、お前は沈み行く太陽に照らされた戦場を知らん、 泉の水を飲んだこともない、砂漠の中を行軍したこともない。。。。と詰るが、哀しげにファヴィウスを見詰めるルシアの目に、ファ ヴィウスは言葉を失う。

 ルシアが港側の城壁に戻ると、叔父アウグスティヌスの書籍を乗せてローマへ向かう予定のローマからの船が入港するところだっ た。一緒に行かないのですか!と迫るルシアに、アウグスティヌスは私は自分の運命を行くよ。と答えるのだった。。。。



 第二話

 385年ミラノ。アウグスティヌスの母モニカと妻カリーダ、赤ん坊の息子アデオダトゥスがミラノにやってくる。以下左がミラノ 市街。カルタゴ市 のセットを流用している模様。右はキリスト教大聖堂の天井ドームにモザイク画を製作している職人達。



 ミラノ大聖堂。タガステの木造屋根の小教会と異なり、堂々とした巨大な大聖堂。



 ある日、アウグは教会を訪れ、アンブロシウスの説教を見る。聴衆への説教が終わった 後、アンブロシウスの部屋に行くと、アンブロシウスは新プラトン主義学者プロティノスの著作を読んでいた。驚くアウグ スティヌス。キリスト教の教義など非科学的なものだと考えていたため、アンブロシウスがプラトン哲学を読んでいることに 驚いたのだった。

 別の日。アウグは皇帝と大衆の前で演説する。伝令が宮殿の中のアウグの言葉を廊下の先にいるほかの伝令に伝え、その伝令が宮殿 前広場に集まった聴衆に伝える、という方式でミラノ市民に皇帝の意向をアウグが加工した弁論で伝えるのだった。その内容は、アン ブロシウスの考えに反する、皇帝にとって都合のよい教義にキリスト教を解釈した内容だったから、宮廷で聴衆として参加していたモ ニカは退出してしまう。アウグの成果にまずは満足するユスティナ。

 またある日。アウグスティヌスとヴァレリウスは、キリスト教会として無断で使われている施設の明け渡しの件でアンブロシウスの もとを訪ねるが、話の経緯から、真理の話となり、アウグは、アンブロシウスの口にした以下の内容に反論できないまま終わる。

 「真理を見付けるのは人ではない。真理が人を見付けるのだ。何故ならば、真理とはある人物、イエス・キリスト-神の子-なのだ から」

 ところで、アウグは、カリーダを正式の妻にはしておらず、内縁扱いのようで、ミラノの有力者達の間で顔が売れ出したアウグに、 有力者から、娘の妻に、という話が出始める。ある日アウグを迎えにいった妻カリーダは、アウグと有力者が、有力者の娘との縁談話 を立ち聞きしてしまい、カリーダは身を引き、家を出てゆくのだった。アウグは再び宴会三昧退廃的な女性にのめり込む生活に入って しまう。

 遂にある夜、皇帝側は、軍隊を率いて強制的にキリスト教会(バシリカ)明け渡しに出向く。教会前でローマ軍と信徒達が対峙し、 アンブロシウスが出てきて、「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に」と一歩も譲らない。遂にローマ軍による強制撤去となり、信徒 達に死傷者が出てバシリカは皇帝側に占拠される。翌日状況を宮廷に報告する為立ち会っていたアウグは、話し合いで解決できず流血 となった惨事を見る。軍と対峙した信徒達の中には母モニカもおり、負傷者の手当てをするモニカの前で呆然と立ちすくむのだった。
 
 翌日宮廷でアウグスティヌスは昨晩の事件に関して報告する。しかし、単なる報告を越えて、アウグスティヌスの信条があふれ出る 演説となる。

 皆平和を愛し、戦争は愛さない。戦争を防ぐために国境があり、市を守る為には力が必要で、皇帝は力をつかう用意をしている必要 がある。ところが一部のひとびとはこれらの美徳を力で貶めるひとびとがいる。例えばバルトーネ将軍(昨晩強制排除を率いた皇帝側 近の老将軍)、例えば我々に反抗する人びと、カトリック勢力のような。かれらは賞賛されるべきなのか?ローマの名誉が盗まれてし まったのではないだろうか。無実の人びとを殺してしまったことは。

 宮廷を飛び出したアウグは、家では母親にあたり散らす。母親から、道は自分で探しなさい、自分が何を目指していたのかよく考え なさい、とたしなめられ、母が読んでいた本(恐らく聖書)を押し付けられる。家を飛び出したアウグは街をさまよいながら走馬灯の ように自らの過去に思いを馳せる。昨夜の事件、クローヴィスが「我々は真理など必要としていない」と口にしたこと、弁護した人物 がその後殺人を引き起こしてその息子に糾弾されたこと、アンブシウスに「お前は何も信じていない」と一喝されたこと、享楽的な生 活、妻の愛、母の教え。。。様々な記憶に圧倒され、思わず走り出し、翌朝気がつくと野原で眠り込んでいた。そこに、どこからか (神の)声がして、風で母に渡された本が開いてページがめくれる(当時このように風でめくれるような書籍があったのだろうか?ま だ羊皮紙だったのではなかろうか)。そのままむさぼる様に聖書を読み、気がつくと教会に赴き、今はもう完成しているドームのイエ スのモザイク画に向かって跪く。それを見ていたアンブロシウスに神の声を聞いたと告白するのだった。

 こうして、アウグスティヌスは遂にキリスト教徒として洗礼を受ける。それと同時に、宮廷から追放され、家族とともにアフリカに 戻ることにする。アウグを皇帝に紹介したヴァレリアヌスも少年皇帝にほほをはたかれ地方に左遷させられるのだった。



 430年ヒッポ。戦場に向かうファヴィオスに、帝国は衰退している、無駄な戦いは避けるべきだとアウグティヌスが説く が、ファヴィオスはローマのために戦うとつげ、アウグスティヌスに、「俺のことを覚えているか。俺はお前が殺した男の息子なの だ!」と強く詰る。アウグスティヌスは「よく覚えている。。。。」と、405年におきた出来事の回想を始めるのだった。

 405年、カルタゴの教会で殺人事件が発生した。カトリックとドナトゥス派の分派抗争による殺人事件だった。両者の角逐は暗殺 事件が発生するまでに深刻化していた。

 キリスト教徒同士の諍いを憂慮したアウグスティヌス(51歳時のアウグスティヌスを演ずるのは引き続き20代のアウグを演じたア レッサンドロ・プレツィオージ。丁度この頃「神の国」を執筆中)は、ドナトゥス派のリーダー・シドニウスに公開討論 会にて白黒つけようと頼み込む。シドニウ スは論争の条件に、中立な立場の人物を判事に起用することを指定する。そこで二人は、法務官のドミシウスに判事を依頼する。ドミ シウスは犯罪の審判はするが、宗教はできない、と難色を示すが、アウグとドナトゥスは彼を説得する。以下な説得の場面で登場した ドミシウスの家の中庭のプール。柱の影で柱廊を歩くアウグ達を見る少年時代のファヴィウス。



 いよいよ公開討論会が始まる。最初にシドニウスが演説する。原罪やキリストの 聖性について論議したい、と論じ始めながら、途中からアウグスティヌスの個人的な過去を攻撃する戦略に出る。 曰く、野心の奴 隷、メトリックのスキルの奴隷、自分より偉い神は存在しないと主張する、等々。最後に、アウグスティヌスより罪深い者はいないと 断ずる。以下右がドナトゥス派、左がカトリック。



 これに対するアウグスティヌスは、神は私を母に与え、神は妻を与えてくれ、愛を教えてくれた、神は子供を与えてくれた、野心は 本能ではなく、それは学ぶことをもたらし、神は友人と愛をもたらすものだ、と弁明する。

 討論は終了し、判決は翌日に持ち越される。夜、自宅で書類を読んでいるドミシウスの傍にメモが結ばれている矢射こまれる。メモ には「次はドミシウス、即ち矢がお前の心臓を圧迫する」と書かれていた。暗殺を仄めかすメモだったが、どちらの側からのものか はわからない。ドミシウスはメモの件を一切隠したまま判決に向かい、カトリック側(アウグスティヌス側)に勝利を宣告する。

 翌日、自宅のプールで息子と遊んでいたドミシウスは矢で心臓を射抜かれ暗殺されるのだった。


 再び430年ヒッポ。全ての回想が終わり、以降はアウグスティヌスの死までが現在進行形で描かれる。

 アウグスティヌスは、ファヴィウスに向かって、お前の父は真実を守って死んだ。帝国の終わりを守った と告げるが、ファヴィウ スは、父は無意味に死に、帝国は終わる と言い捨てて兵を率いて出撃するのだった(左がファヴィウス、右がアウグの姪ルシア)。



 老獪な知事ヴァレリウスは、ファヴィウスがもし成功すれば、それは自分の成功となり、もしファヴィウスが失敗すれば、和平交渉 の余地 などなくなるのだから、自分が正しく、 アウグスティヌスが間違っていたことになる、と部下に語るのだった。

 ファヴィウスに率いられたローマ軍は夜密かに攻撃に出るが、翌日戻ってきたのは馬一頭。背嚢の中は沢山の首。大半の兵士は捕虜 となった。ヒッポのローマ軍の攻撃は失敗したのだった。

 一人説得に出向くアウグスティヌス。右下画像は、ヴァンダル族の陣地に向かうアウグ。馬ではなくロバにのっている。大柄なアウ グスティヌスの体と小さいロバのアンバランスな感じがなんともいえない。ヴァンダル族の陣営に着くと、ファヴィウス他多くのロー マ兵が捕虜になっていた(下左はヴァンダル陣地から見た丘の上のヒッポ・レギウスの町)。



 ヴァンダル王ガイセリックにも名が轟いていたアウグスティヌスは、ガイセリックの帷幕に招かれる。遊牧民のテントという感じ。 実際右から二番目の兵士は辮髪していてアジア系遊牧民に見える。左下画像中央奥の人物がガイセリック。




 偉大な王になるチャンスを提案する、とアウグ。暴力や法なしでは民衆は統合できず強権による支配になる、慈悲やヴィジョンを もっ て統治することが必要だ、とガイセリックを説得にかかる。捕虜を解放してくれ、代わりに私を人質にして欲しいと願い出る。以下がヴァンダル王ガイセリッ ク。映像で見るのは初めてかも。



 会談を終えたアウグスティヌスは、捕虜を連れて町に戻る。そうして市民に告げて曰く、ガイセリックだした条件は無血開城だっ た。知事ヴァレリウスは、開門したら財産を全て奪われるぞ、と警告する。アウグティヌスは市とは市民のことで財産のことじゃない (ここでアウグスティヌスが市(City=キウィタス)と言っているのが「神の国」のことである)。 生きていてこそだと、翌朝の脱出を提案する。ファヴィウスが、ガイセリックからの自由ではなく、ローマからの自由について聞きたい、と声をあげる。知事は あくまで残って戦わないと全てを奪われる、明日の朝、残りたいものは残れ、去りたい者は去れ、と告げて散会となる。

翌朝、姪ルシアやファヴィウスなど多くの市民が船で脱出した後、入れ替わりに支援に来たローマ軍船がヴァンダル族に沈没させられ る。最終攻城戦が始まり、残った市民と兵士による最後の攻防戦が始まる。城内に打ち込まれる火炎弾の炎の中にアウグスティヌスの 姿は消える。ヒッポ市は陥落し、略奪のさなか、ガイセリックは本を燃やすな!と指令するのだった(ヴァンダル族がアウグスティヌ スの書籍に手を出さなかったのは史実の模様)。

〜終わり〜


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Created  2013/Dec/28

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