ポーランド歴史映画「バルバラ・ラジヴィウヴナのための墓碑銘」(16世紀)

原題「Epitafium dla Barbary Radziwiłówny」1981年ポーランド作。バルバラ・ラジヴィウヴナ(ラジヴィウーヴナと、二番目のウにアクセントがある)はポーランド王ジグ ムント二世(在1548-72年)の二番目の妃(王妃在位1550-51年)。31歳の若さで死去。王は王妃を愛するあまり、そ の後(政治的に)再婚した 三番目の妻との間に子はできず、側室との間にも子ができなかったので、ヤギェウォ王家が断絶してしまった、と言ってしまってよい のかはともかく、本作で は、子孫断絶もやむなし、と思える程のアウグスト王の嘆きが描かれる。

 筋は簡単で、リトアニア貴族出身のバルバラ・ラジヴィウヴナが死 去し、本人の遺言で、当時のポーランドの都、クラクフから、リトアニアの都、ヴィリニュスまで棺が、葬列をなして運ばれる。その 道中、王が、王妃を回想す る、という話。アウグスト一世、王妃ボナ、アウグスト二世、バルバラなど出演俳優が、1980年から81年にかけて放映されたテ レビシリーズの「王妃ボ ナ」と同一人物であることから、「王妃ボナ」のスピンオフ映画ともいえる。美しい映像ながら、どこか異様な雰囲気があり、いかに も共産主義時代の東欧映画 という感じ。私は非常に気に入りましたので、英語版dvdが出るようなことがあれば是非購入したいと考えています。

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  絵師が王妃の肖像画を描いている場面から始まるが、王妃の葬儀の鐘の音が鳴り響く。続いて遺体安置室で王妃の遺体の保存処理が行 われる、全身洗われ、恐ら く薬品の入った薬づけの包帯で全身をミイラのように巻かれてゆく。アウグスト二世王はそれを見つめながら、生前の王妃の回想を始 める。
 全身が包 帯で巻かれたところで、5名の司教達が入ってきて弔辞を述べる。王が遺体に口付けした後、顔面にも包帯が巻かれる。そして王妃は 棺に入れられ、馬車に乗せ られ、早朝王宮の庭から、ヴィリニュスへの葬列の隊列が出発するのだった。下記は朝まだき、薄暗い、美しい山間を移動する葬列。

 陽が上った頃の葬列。

  ヴィリニュスとクラコフの間は500km程もあるので、何泊もかかる。途中宿泊(教会だと思われる)する毎に棺を馬車から下ろ し、教会の中に安置する。そ の夜、王はバルバラの幻影を見る。白いもやが立ち込め、異様な雰囲気の空間に王妃はいる。そして突然王妃に泥を投げつけられた 後、男が現れ王に水を与え る。「ゆっくり飲め、ゆっくり飲め」といいながら去ってゆく男は悪魔のようにも見える。

 そこで夢から目覚める王。翌日も葬列は続く。王は、最初の王妃、オーストリア・ハプスブルク家の当主フェルディナンドの娘エリ ザベートが始めて母親ボナと、父王アウグスト一世と会った時の事を思い出す。

 アウグスト一世は普通だが、ボナは機嫌が悪そうである。続いて結婚式を回想する王。エリザベートは冠を授けられ(下記)、王の 隣の玉座に座る。

 その夜、初夜を前に、エリザベートは寝室で突然癲癇を起こす。驚く王。侍女がやってきて対応する。下記はその時の侍女カタジー ナの衣装。

 臣下に話しかけられ、再び葬列の現実に戻る王。しかしすぐに回想に戻ってしまう。下記は少年の声楽を宮廷で聴くアウグスト王と 王妃(アウグスト二世が母ボナに話しかけたところ。それを不安気に見るエリザベート)。

 その後、アウグスト二世とボナが部屋で会話している場面となる。恐らく、ボナがアウグストとエリザベートの間のことを心配して いるらしいが、アウグストは妻の癲癇という理由もあり、あまり妻のことが好きではない様子。アウグスト二世の衣装がすてき。

 そして、リトアニアに赴任したアウグストは、運命の人バルバラ・ラジヴウーヴナと、ヴィリュニスと思われる城で出会うのだっ た。ヴィリュニスの城の外を散歩しながら、バルバラと初めて出会ったアウグスト二世。王とバルバラの衣装は素晴らしい。

 アウグストとバルバラが、バルバラの兄と従兄弟のミコワイと晩餐をとっている場面。ここでも衣装が目を惹く。このあたりは前回 ご紹介したテレビシリーズの部分である。

 葬列の場面に戻る。下記兵士の甲冑のデザインが目に付いた。

 しかし直ぐに王の回想に戻ってしまう。今度はヴィリュニス城外の川に船を浮かべ、なにやら深刻そうな会話をしているアウグスト 二世とバルバラ。ここの衣装も素晴らしい。アウグストに正妃がいて、愛人として秘密裏につきあっている、不安定な立場に不安なバ ルバラ。

 続いてエリザベートが侍女カタジーナと自室で会話している場面。ポーランド語はわからないので衣装ばかりの解説となってしまう が、いちいち衣装が目を惹くのである。下記は侍女カタジーナ・フェルツェリン。

 エリザベートの衣装も、実はシックで、何気に宝石がちりばめられており素晴らしい。この場面は、アウグスト二世は登場していな いので王の回想に出てくるのは不自然だとはいえ。

 衣装が変わっているので後日だと思われるが、エリザベートの部屋にアウグスト二世が入ってくる。そして、愛人バルバラのことを 告げる。王妃は、ヒューっと後ろに倒れ、またも癲癇を起こすのだった。

  王は再び母ボナとの会話を回想する。ここでは王の衣装が目を惹く。会話は決裂したようで、最後にボナが憤然と「否!否!」と叫ん で終わる。恐らくエリザ ベートとの離婚とバルバラとの結婚の話をしたのだろう。本映画では、エリザベート死去の場面が登場しなかったようだが、恐らくナ レーションで解説されたも のと思われる。テレビ版では、このあたりでエリザベートは死去している。

 父王アウグスト一世は死の床についている。見舞うボナ、アウグスト二世、家臣達。

 現在に戻る。

 葬列を見送る沿道の農民達。とりあえず農作業を中止し、沿道に出てきて葬列に跪く。

 葬列の先頭付近で旗を持つ一隊。正教徒だと普通ここではイコンを掲げている筈だが、カトリックやプロテスタントでもこうした習 慣があるのだろうか(バルバラはカルヴァン派のプロテスタントだったらしい)。

 棺の後ろにバルバラの肖像画がくくりつけられている。

回想に戻る。
 輝くばかりのバルバラ(実際には宝石が輝いているのだが)。

  アウグストとバルバラが密会していると、バルバラの兄と従兄弟が、突然剣を抜いて部屋に入って来る。密会の現場を差し押さえられ たことで、結婚を誓わされ ることになるのである。兄と従兄弟が別の扉をあけると、そこには巨大な十字架を持った僧侶達と、リトアニア貴族達が控えているの だった。十字架に結婚を忠 誠を誓え、という兄と従兄弟。そしてバルバラとアウグストは秘密裏に結婚するのだった。この時のバルバラの兄と従兄弟の衣装は ルーマニア風というか、オス マン風という感じ。

 十字架の前に跪くアウグスト二世とバルバラ。そして国王アウグスト一世が崩御し、アウグスト二世が国王戴冠となる。甲冑を身に つけ戴冠式に臨むアウグスト二世。

  しかし王宮の中庭に集まった家臣は下記の程度。しかも夜。これは恐らくエキストラが少ないとか、実際にこんな程度だった、という よりも、エリザベートが正 妃になることへの反感を持つ臣下が多く、不参加者が多かったからではなかろうか。国王崩御直後の王を見舞ったアウグスト二世はボ ナとまたも意見が合わな かったようだし、そもそもアウグストの戴冠式にボナは参加していなかったようだし。まったくの推測ですけど。

 この衣装のバルバラは二度目ですが、華がありますね。再度画面ショット取ってしまう。ここでは珍しく、罵り口調で激しい側面を 見せる。このときのバルバラは、兄と従兄弟と王妃戴冠について会話しているものと思われる。

 議会で激しく論争する某貴族。このピンクと紫の衣装も凄い。

  ピンクの貴族の弾劾に対応していたのは、下記、サンタ風衣装の貴族(クラコフスキー=クラクフ知事)。左背後にいるのがアウグス ト二世。ハプスブルクとい う名前が出ており、次の正妃を再びハプスブルクから迎えるかどうか、という議論だと思われる。その後、バルバラの兄と従兄弟を初 めとするリトアニア貴族達 が議会に入場してきて主張をしているので、バルバラを正妃迎えることが提案されたのだろう。バルバラを王妃とするか、ハプスブル クから迎えるか、という話 だったと思われる。


 -現在

 恐らく遺体が腐敗し始めたのであろう、こじんまりした教会で棺を開け、石膏が流し込まれる。

 腐敗で包帯の一部が灰色になっている。それを見て立ちくらみを起こす王。

これを見学していた村娘の中にバルバラに似ている少女を見つけ衝撃を受ける王。そして少女にバルバラの服を着せて無理やり帰路の 葬列隊に参加させる。戸惑っている少女。

 その娘を見ながら、王は、バルバラの王妃戴冠を回想する。


 卒倒しそうになりながらも、式を終える王妃。

 -現在

 途中で村娘は父親と思しき男と隊列を離れてゆく。棺を載せた馬車が川を渡るとき、川底に車輪が嵌り、棺を運び出した後、車輪を 押していた家臣が、誤って車輪の下敷きとなって死亡してしまう。無理な行軍への批判だろうか、無言で王を見つめる家臣。

 王の回想は更に続き、臨終の夜を迎える。王妃は眠るように亡くなる。王は、全身を包帯で巻かれ、顔だけを出している王妃の幻影 を川べりの葦の原で見る。少女がやってきて、王妃の包帯を外す。そして白い霧に彼方に少女と王妃は遠のいてゆく。

 王は、王妃の肖像画を川に流す。これで王妃のことを吹っ切れたのであろうか。その後の隊列をゆく王は、喪服ではなく、甲冑姿で ある。

しかし葬列の旅はまだ続く。

〜KONIEC〜

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