2011年掲載
欧州中世歴史映画「Black Death(黒死病)」(1348年)

   2010年ドイツ製作。ドイツ製作なのに、何故英国が舞台なのか、必然性がよくわかりませ んでしたが、あまり知識の無い私にとっては、ドイツでも英国で もどちらでもあっても、面白く観れました。本作は、日本語情報は結構ありそうです。内容的に、映画館上映には向いていないように 思えましたが、日本語版 dvdは出て欲しい作品です。同じ1348年の英国を扱った作品に、2002年英国製作の「Anazapta」と いう作品があります。どちらも、黒死病が流行した村落の状況が良く描かれ、14世紀中頃に黒死病が大流行した欧州の様子の参考映 像としてお奨めです。 「Anazapta」も、本作「Black Death」も、ミステリー的な作品で似ている点がありますが、ラストの落ちはまったく異なります。個人的には、「Anazapta」は散々期待させとい てこの落ちは何?という感じですが、本作は、ドイツ風味なのか、合理的な終わり方です。

 せっかくの作品なので今回はネタバレ無しで、あらすじも2/3くらいまでにしたいと思います。ご



 冒頭の、黒死病の死体が無造作に重ねて放置してある映像は大迫力なのですが、映画で、遺体役のエキストラが努めているとはい え、遺体の映像の画面ショットは撮りたくないので、省きます。

  主人公オスマンは、少年修道士。でも恋人がいて、アヴェリルを、ペストが大流行している街から、感染を避けるために、単身森へと 避難させる。その後、騎士 ウルリスが、修道院総会議で、「ペストにかかっていない村があるという噂がある。今や非常時で、一刻を争っている場合ではない。 確認隊を出したいので、沼 地の案内を出して欲しい」と提案する。院長らは難色を示すが、アヴェリルに会いに行く機会をうかがっていたオスマンは志願する。

 一行 は、ウルリス以下5,6名の騎士から構成され、荷馬車には多くの武具とともに、拷問用具「鉄の処女」が搭載されている。何故こん なものを、と問うオスマン に、騎士の一人が答える。「死者を蘇らせるという話もある。ネクロマンサー(死霊魔術師)である可能性もある。だとしたら、神に 背く連中ということにな る」。

 一行は旅の途中様々な出来事に遭遇する。
最初は、下記のような、自分の体を痛めつけて旅をして回る巡礼者達。川(もしかしたら湿地帯)の中を行進してるのが印象的。

  続いて、森の中で、女性(30-40歳程度)がまさに火炙りに処せられるところに出くわす。オスマンは助命を願い出るが、村民に 跳ね除けられてしまう。と ころが、隊長のウルヒスが、村民を脅して女性を処刑台から解放するも、直後に女性を刺殺してしまう。どうして、と問うオスマン に、「我々は、こんなことに 費やしている時間は無い。それに、ここであの女性を解放しても、結局村民に処刑されてしまう運命でしかない。そうであれば、苦し まずに逝かせてやるしかな い」と言うのだった。
 
 森深く、積雪地帯に入ったところでは、森の略奪団に襲撃され、隊の一人が死亡してしまう。しかし、その場で、オスマンは、ア ヴェリルの乗った馬と、出発時に彼女に着せた、血の付いたコートが捨てられているのを見つけるのだった。

  ようやく、沼地に囲まれた目指す村と思しきところに到着する。村は周囲が湿地帯に囲まれていて、完全に孤立しているところにあっ た。隊長がオスマンに言 う、「今まで四人が送り込まれて、誰も帰ってこなかった」。そして一行は村に入る。村は周囲を2m程の木柵で囲まれており、下記 が村の入り口から内部を見 たところ。

 下記は、入り口のゲートを通過した一行を、村の内側から見たところ。

 村に入ってゆくと、人々が家のドアを閉め、警戒していることがわかる。しかし、村の中心部の広場に到達したところで、村長らし き、ホープと名乗る壮年の男が出迎える。村の人々も出てきて、一行は歓迎されるのだった。

  オスマンは、森で襲撃された時に負傷していたため、薬師の女性に手当てをしてもらう。下記はその薬師の部屋の中。様々な薬品瓶が 並ぶ。これだけのガラス器 具が当時の英国の一般村に普及していたかどうかは興味があるが、オスマンは特に違和感を感じたようではないので、既に普及してい たのかも知れない。それに しても、当時これだけの薬品を扱う女性は、それだkで魔女扱いされてしまったのではないか、と思える程の充実ぶりである。更にオ スマンは、遺体安置所に寝 かされているアヴェイルの遺体に案内され、悲しみに暮れるのだった。

 一行は、村から、川で隔てられている、教会を与えられる。下記はその教会側から見た村。右側に、差し入れを持ってきていた女性 が、小船を、川に渡したロープを伝って渡ってきている。川向こうの場所を与えられたことで、村側も一応警戒していることがわか る。

  ところが、その教会は、既に使われておらず、十字架も倒れ、埃だらけ。そして、夜には、村民総出と思われる、宴会が開かれるが、 主への祈り(ラテン語のよ うであった。結構リアル)をしたのは、騎士団一行だけで、村民の方は、杯を上げて歓迎の乾杯をしただけ。このあたりから雲行きが 怪しくなる。一方宴会を途 中で抜け出したオスマンは、森の中で、10名程の巫女に囲まれて、薬師がアヴェイルを土の中から蘇らせる現場を目撃してしまうの だった。。。。彼女は本当 の魔女なのだろうか。この村は一体。。。。


 という感じで、サスペンス風味で引っ張ってくれます。落ちが合理的、ということは、 見方によっては、なんだぁ、と思われる方もおられるかも知れませんし、「Anazapta」みたいな落ちの方が、意外性があって 面白い、という方もいらっ しゃるかも知れません。なので、絶対に面白い!とは言い切りませんが、結構お奨めかと思えます。信仰とは何なのか、信仰に殉ずる とは何なのか、修道士に とっての棄教とは何なのか、などなど、色々な観点を描いており、それらも参考になりました。是非、日本語版dvdを出して欲しい ものです(2017年『ゴッ ド・オブ・ウォー 導かれし勇者たち』との題名で日本語版DVDが発売されました)。

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