1980年ルーマニア製作。古代ダキア族の王であり、現在のルーマニアに相当する版図を初めて
統一したブレビスタ王(前111-44年)の話。今回も、少し時代が戻ります。日本語Wikiにも記事があります。 トラヤヌス軍が陥落させた、デケバルス王の
拠点サルミゼゲトゥサを建設した人物なんだそうですね。全然知りませんでした。映画
は、冒頭と最後が同じ場面。下記のなんとなく人の横顔のような岩が映ります。恐らくルーマニアでは、ブレビスタ王の顔として有名
な場所なのかも知れませんね。 映画のラストは、ブレビスタ王の横顔が映り、この岩がオーバーラップしていって終わります。 これを視たのは先週日曜(記事を書いたのも日曜)なのですが、ひょっとしたら今日検索すれば、またロシア語版とか英語版が上 がっているのかも知れませんが、本作品は台詞が無くても十分分かりやすい映画なので、今日は検索はやめました。 さて、冒頭では更に、現在のサルミゼゲトゥサの遺跡の空撮映像が出てきます。 映画のおしまいの方では、サルミゲトゥサ要塞の再現映像も出てくるのでした。嬉しい限り。 物語は前半と後半に分かれていて、前半は、ローマの進出に対抗する為の、ローマ都市(正確にはギリシア都市)デュオニソスポリス のローマ軍の追放、後半 は、ケルト族との抗争となっています。今回ルーマニア語だったので、筋は映像から把握した部分に限られますが、画面ショットをも とにご紹介したいと思いま す。ご興味のある方は、「More」をクリックしてください。 IMDbの映画紹介はこちら。 ルーマニア映画を紹介している方のブログ(歴史ジャンルがあって有用) 古代ローマ歴史映画一覧 (1)前半 ローマ人との戦い 戦闘訓練中のダキア人兵士達を見て回り、自分でも教官を務めるブレビスタ王。 ダキア族の鍛冶屋と鍛冶屋その他が入っている集合施設。村の中心部でもあるようである。 ブレビスタの王宮は地下にある。やたらと大きな皿に火が焚かれていて一見拝火教徒かと思ってしまう。ローマ人のようななりの情報 提供者が来て、ローマの情 勢をあれこれ伝えてゆく。スパルタクス、クラッサス、ポンペイ(ポンペイユス)、地名としてトラチア(トラキア)などの言葉が出 てくる。周辺の政治情勢の 情報収集をきちんと行っている様子が良くわかる。ブレビスタがダキアを統一できたのは、情報収集能力に優れていたことも一因なの だろう。 王の娘。なんか中世風装束。何故か会議をこっそり聞いている。 周辺族長達を交えた部族長会議が開かれる。場所はブレビスタ王の宮殿。石造の円卓テーブルと椅子がある。ゲタエ族とは同盟関係 のようである。 この議論では、ポンペイ、将軍シラ(スラ)、プロコンスル・マケドニ(マケドニア総督)という言葉が出てくる。 沼地を行く船。なんとなくヴァイキング船風。森の中に白い天幕があり、神官風の女性がいる。お伺いを立てる面々。帰りの船の中 でギリシア・ローマ都市デュオニソポリスの名が出ている。 そのデュオニソポリス(現ブルガリア。ヴァルナ市の北、バルチック市(日露戦争で有名なバルチック艦隊の停留地)のあたり)の 町の様子。 総督と思われるローマ人とその妻リディア。妻は元、スパルタクス軍にいた兵士の恋人。その恋人が現れ、密会するようになる。こ の場面は、剣闘士競技が行われ、総督と妻が観戦しているところ。 上画像は闘技場。まだ共和政時代だし、ローマからすると相当な辺境地帯なので、この程度なのでしょう。この競技場は円形ではな く、写真に写っている半円の 部分しかない。反対側は海である。つまり、海岸の浜辺に作られているのである。ここで、ローマから来た剣闘士と地元の剣闘士の戦 いとなり、ローマから来た 剣闘士が勝利する。そして、その勝利した剣闘士が兜を脱ぐと、総督は驚愕し、「スパルタクス!」と叫ぶ(実際にはこの男の名は、 カロポール)。槍を総督に 向かって投げると、何故か元恋人の妻リディアが総督を庇って槍の的となり、死んでしまう。その後、カロポールは総督席に駆け上が り、総督を仕留める。これ と同時に、剣闘士、地元民が蜂起し、更にダキア・ゲタエ族も加わって、ローマ軍を町から追い出す。ここまでが前半。 (2)後半 ケルト人との戦い 今度は野原で部族長会議が開かれている。今回も、ポンペイ、チェーツァル(カエサル)、ガイウス・アントニウス・ヒベイダ、など の名前が出ている。広場で は闘犬が催されている。観戦する部族長達。ブレビスタ王は、もう一匹入れることを提案する。どうやら、チェーザル、ポンペイ、ク ラッサスを象徴させている ようだ。ローマ内の勢力均衡や勢力争いをよく分析している王の様子がわかる。 ダキア・ゲタエ族の村を荒らしまわるケルト軍。下記はその親玉。ケルト族は、二本角の生えた兜が特徴。 ブレビスタ王、夕食の席。娘と母(左に少し出ている。装束的には娘と同じ。紫のベールを被っている)。そこに伝令が来る。どうや らヴェルキンゲトリクスと チェーザールの戦いのことを言っているらしい。更に族長会議(?)で、「ガーリー(ガリア)、ゲルマーニー、バスターリー(不 明)」という名称が出てい る。非常に広い地域にわたる情報を収集していることが分かる。 一方のケルト族。怪しいのは二本角だけではなかった。地下の洞窟神殿には、いたるところに頭骨が置いてある女王らしき人がいて (レジーナ・レーベーとか呼 ばれていた。レーベーが名前だとすると、レーベー女王ということになる)、高いところに一人座り、ケルト族長に指令しているの だった。この洞窟の女王もス ゴイ。自分では一言もしゃべらず、族長の話を聞いた後、手をわずかに差し出すだけで、数メートル下の家臣が「通訳」して族長に女 王の意図を伝えるのだっ た。 下が指導を請うケルト族長。背後の木の上には頭蓋骨が並んでいる。「悪魔族」という名称が相応しい。どうやら、ダキア・ゲタエ 軍との全面戦争を行うことが決まったらしい。 ダキア・ゲタエ族も儀式を行い、戦闘準備に入る。この火の器が拝火教っぽいんですよね。 サルミゼゲトゥサ城門。出発するダキア軍。 サルミゼゲトゥサ全景。 戦闘開始。悪魔軍は騎兵主体。ブレビスタ軍は歩兵主体。道を木切や藁で塞ぎ、それを焼いて、ケルト騎兵が通行できないようにし、 丘陵地帯へ誘い出し、騎馬 と歩兵の戦いに持ち込む。そしてケルト騎兵はあっという間に敗れるのだった。他の戦線でもケルト騎兵はあっさり敗退し、自軍の砦 に逃げ込むのだった。この 砦は木柵で囲まれた、建築的にはあまり特徴の無い作りだったが、頭蓋骨が数珠のように木柵の上に延々と連なっているのが不気味 だった。そして、ケルトの砦 に向かい、奇妙な塔から交渉するブレビスタと祭司長Deceneu(前 70頃-44頃)。攻城兵器ではなく、ただのお立ち台。そして、その時日食が起こる。ブレビスタ王の隣にいる祭司Deceneu は、「カレンダール」(カ レンダー)とか言っているから、予想していたのだろう。ダキア・ゲタエ軍は動揺していないが、悪魔軍(ケルト軍)の陣内にいる一 般人からは悲鳴があがり大 変な動揺が走る。そして、日食後、砦は開城し、ダキア・ゲタエ軍がなだれ込むのだった。 ケルトの陣営の奥には、下記のような、横穴式の施設があった。何の施設だかわからなかったが、こういう映像を出すからには、遺 跡でも残っているのかも知れない。 戦闘はダキア・ゲタエの勝利に終わった。 サルミゼゲトゥサは、祝祭の儀式が行われる。女性達がしゃなりしゃなりと直径 40cmくらいのパンみたいなものを持って宮殿から出てくるところ。 最後にユリウス・カエサル氏登場。ダキアに来ていたというのは史実なのだろうか。ローマ軍を前に演説をするカエサル。ローマ軍の 鬨の声が、サルミゼゲトゥ サのブレビスタ王のところまで聞こえてくる。相当近くまで来ているようである。カエサルは、進軍するというより、進軍取りやめを 演説しているらしい。 ラスト、ブレビスタ王の横顔が、人面岩の映像へと変わる。 〜Sfărsit〜 |