14世紀イスラーム歴史映画「イブン・バットゥータ:メッカへの旅」

  2009年米国・カナダ製作。「三大陸周遊記」で有名なイブン・バットゥータ (1304-68年)の生誕地であるモロッコのタンジールからメッカ迄の旅 (1325-26年)を描く短編映画。45分。全体的にBBC製作の再現歴史ドラマに似た感じです。モロッコとサウジアラビアで ロケしているとのことで、 本格的な映像となっています。

 私は、どういうわけかファーティマ朝とマムルーク朝時、オスマン朝時代のカイロの都市景観に興味があります。そんな私にとって の見所は、マムルーク朝の都カイロ。左が一瞬登場したカイロの俯瞰再現映像。右はナイル川の河くだりを楽しむバッツゥータ。

  カイロ市街の様子は中世イスラームを扱った他の作品とあまり変わらない感じ(布地屋や金物屋があり、雑踏がある)で、特徴的な建 築物(高層建築とか)は出 てこなかったので特に画面ショットは取らなかったのですが、カイロ市街地の様子で一点目についたのが下右画像左手の赤いトップの 帽子の人物。このような特 徴的な帽子の人物が結構街路を歩いていて、どういう人たちなのかと気になりました。そのうち調べる予定。因みに中央左の人物が バットゥータ。中央右手の人 物にダマスカス経由でメッカに行くことを奨められるが、バットゥータはナイル河を南に下り、紅海を横断して対岸の町ジェッダから メッカに渡ることに執着す る。しかし、紅海沿岸に出てみると、かつて紅海貿易で繁栄を誇ったアイザーブの港は破壊されていた(ブジャー族のスルタン・ハド ラビーはマムルーク朝と戦 争状態にあり、ハドラビーが船を破壊したため)。絶望するバットゥータ(1348年にアジアからモロッコへの帰路でもわざわざカ イロからアイザーブ経由で 航海を渡りジッダ->メッカと訪問していることから、彼はどうしてもアイザーブ->ジッダのルートを旅したかったよ うである)。

  結局引き返してシリア経由でメッカに向かうことになる。途中で山賊に襲われたり、護衛付き巡礼旅団による集団の旅とはいえ砂漠の 横断は大変な厳しさだった 様子が描かれます。バットゥータ本人のナレーションが入りながら進み、その言によれば、18ヶ月で3000マイルを走破しメッカ に到着したとのことです。 下がそのメッカの様子。

  メッカ市街の様子は上左の画面しか登場しなかったのが残念。右上のカーバ神殿の映像の直後に、現在の高層ビルに囲まれたカーバ神 殿の映像がかぶり、その後 は現在のメッカと巡礼の様子が登場します。超モダンなガラス張りのショッピングモールや広大なバラック的な造りの巡礼者用宿泊施 設には圧倒されます。「三 大陸周遊記」(前嶋信次版)の記載では、当時のメッカは大厦高楼が林立していたとのこと。本映画では、一瞬ミナレットとドームが 映ったものの、カイロの映 像と比べるとあまり高楼があるとは思えませんが、メッカに高層建築があるのは当時からのメッカ景観の特徴だった模様。
 
 これはアブラハ ムの石柱。左がイブン・バットゥータの訪問時、右が現在の様子。イスラームではアブラハムはメッカにいたことがあるということに なっていて、アブラハムが 悪魔の誘惑を退けたことを記念して、巡礼者はこの石柱に石を投げるとのこと。メッカ巡礼のメニューなどまったく知らなかったので 参考になりました。

 こちらはムハンマドが最後の説教を行ったとされるアラファト山(慈悲の山)巡礼の現在の様子。白く見えるのが巡礼者達。こんな風に 巡礼者の方々が密集しているとは知りませんでした。これは勝手に登山できるものではなく、巡礼メニューの儀式に則って巡礼9日目 登山にするものらしい)

 というわけで、本作は、イブン・バットゥータの旅路を描くのみならず、メッカでの巡礼者のメニュー紹介ともなっている感じで す。

 それにしてもどういう意図で米国でこういう作品が作られたのか、知りたくなります。公式サイトの紹介文に よれば、非イスラーム教徒にとっては、メッカ巡礼という特別なイベントを目撃することで、身近になるということ。イスラーム教徒 にとっては、巡礼の重要性 をより深めること、と記載されており、視聴した印象でも、多分それ以上でも以下でも無いのだと感じられました。とはいえ。現在の メッカの高層ビルやガラス ばりのショッピングモールには、オイルマネーで潤ってるなあ。。。と思ってしまいますが。。。

 基本的に自由に個人旅行できない国には興味が無いのですが、映像の力は凄い。サウジアラビア政府お仕着せの観光ツアーでもいい から、一度くらいはメッカに行ってみたい(カーバ神殿以外はイスラーム教徒以外でも観光できるらしい)と思った次第です。

  それにしても、米国で作られた(18世紀以前を扱った)イスラーム歴史関連映画は、これまで「アラビアン・ナイト」や「シンド バッド」などファンタジーも のばかりだったように思うのですが、もしかしたら本作が米国制作の初めての(18世紀以前の)イスラーム歴史映画かも。

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