オスマン朝歴史映画「Mahpeyker(月の影) Kösem Sultan 」 キョセム・スルターン作品

 2010年トルコ製作。アフメト一世(在 1603-1617年)妃、ムラト四世(在1623-1640年)、イブラヒム(在1640-1648年)の母后(ヴァリデ・ス ルターン)であるキョセ ム・スルターンを描いた作品。筋は簡単で、前半は、輿に揺られてトプカプ宮殿に向かうキョセムが、突然役人の訪問を受けて宮廷に 連れてこられ、アフメトの 後宮に入れられ、アフメトの祖母や母、正妃のいじめに合いながらも、やがて正妃の座に座り、子供を生み、アフメト死去までが回想 される。後半は、宮殿に着 いたキョセムが、トゥルハン・ハディジェの暗殺を計画し、逆にトゥルハンの放ったイェニチェリ軍に殺されるまでの数日間を描く。

 キョセム役は二人の役者さんが演じていて、下記が若き日のキョセム。当時の名はアナスタシア。1610年、アナスタシア20歳 の頃から1617年、アフメト死去までを演じている。若き日のエマニュエル・ベアールに少し似てます。

 こちらが老いたキョセム。

 アフメト一世。かなりな二枚目。


  題名のMahpeyker(月の影)とは、アナスタシアが後宮に入った後、アフメトにキョセムと命名される迄の後宮名だったそう です。正確には「月のかた ち」という意味のようですが、「月の影」とした方が赴きがあるので、この訳にしてみました。とはいえ、映画の中では、若き妃の キョセムは後宮でエミネと呼 ばれており、キョセムもMahpeykerという用語も登場しないのでした。本記事では面倒なので、一貫して「キョセム」と記載 しています。

全 体的には、映像が、「女王ファナ」に似ている印象があります。また、トルコ映画とは思えない音楽。音楽も印象に残りました。筋は 映画でやるには色々ありす ぎ、少し展開が急で、カットも多く、画面ショットを取るタイミングがつかないほど、登場人物達は細かく動くのですが(画面ショッ トを取ろうとしていなけれ ば気づかなかったと思います。微妙なところで、映画は様々なんだなあと思いました)、結構気に入りました。英語字幕版dvdが発 売されたら是非購入したい と思いますし、日本語版も是非出てほしいと思います。



 オープニング。イスタンブールの宮殿の夜明け。1651年イスタンブールから始まる。

 森をゆくキョセムの輿。キョセムは、通りがかった崩壊した家屋で止めさせる。輿を降りて、家屋に近づくキョセム。

 家の前で、埋まっている素焼きの壷を掘り返す。土を払い、大事に手にするキョセム。


 一方、宮殿では、アフメト一世の后、トゥルハン・ハディジェの息子、メフメト少年が足の治療を受けていた(メフメトはパディ シャーと呼ばれている)。下記がメフメトの部屋。下記右隅がトルハン。中央で跪いているのが医者。その前で侍従に抱えられている のが少年メフメト。

 後宮でベリーダンスが行われ、トゥルハン(左)とDilasup Sultan(右)の二人の妃が火花を散らしながら見入っている。
 

その時、メフメトの容態が悪化したとの知らせが来て、慌ててメフメトの部屋に駆けつけるトゥルハン(下記)。



 1651年。輿に戻ったキョセムは、壷を見ながら、過去の回想を始める。。。。回想場面では、時折輿の中の、下記現在の映像が 挿入される。

  1610年、キョセム21歳の頃。母Nimetと二人でイスタンブールで暮らしている。その夜も、壷を母親と見せ、壷の中にもの をいれて音を楽しんでいる キョセム。その時家の扉を役人が叩く。そのまま母娘は宮殿に連れてゆかれる。宮殿で母と娘は引き離され、そして廊下を歩いてきた アフメト一世と会う。下記 がその時のキョセムとアフメト。この時アフメト20歳。


 少し画像がぼけていますが、アフメトの衣装もなかなか。宦官に黒人が多いのもリアル。

 引き離された母は、宮廷から放り出され嘆く。この母親は本当に可哀相だった。

 翌日、宮殿で、祖母サフィエ・スルタンと母Handan Sultanに、新たに妃を迎え入れると告げるアフメド。驚き、抗 議するサフィエ。しかしアフメトの決意は固かった。下記がその時の広間。

 左がサフィエ。右がハンダン。

 翌日アフメトと、サフィエ、ハンダンに挨拶にゆく。

 下記は最高法官シェイヒュルイスラームらしい。サフィエはシェイヒュルイスラームに法的な問題を確認しているようであるが、ど うにもならない。

 諦めたサフィエはキョセムに腕輪をはめて、気が進まぬ感じで手を差し出す。キョセムはサフィエの手に口付けをして挨拶するの だった。

 その時のキョセム。伏し目がちなところが、「この私、クラウディウス」のメッサリーナ(こちら) に似ている。
 アフメドがハンカチを出し、キョセムに与える。それを見て憎憎しげなサフィエ。

 風呂の場面。歯を検査され、うつぶせにされて、モップでごしごし洗われるキョセム。

 キョセムの母親が宮殿に訪ねてくる。咳をしながらよろよろ歩いてくる。ものすごく可哀相。門番は一応話しは聞いてくれる が。。。

 ハーレムに放り込まれるキョッセム。文字、花押や楽器、コーラン独唱、礼拝などさまざまなことを学習する。後宮では慰めてくれ る同僚(?)もいるのだった。結構いい部屋である。

 指輪を研いでいるアフメト。それを見ながらまだアフメトに文句を言っているサフィエ(左)とハンダン(右)。

 実家で一人泣く母親が映る。可哀相でもらい泣きしそうになる。

 一方キョセムはコーランの勉強を続けたりしている。そして夜、豪華なベッドの中で一人涙を流すのだった。

 続いて側室Mahfiruz(下記)と床入りするアフメッド。あからさまに嫌そう。

 しかし翌日のMahfiruzの部屋でMahfiruzは得意絶頂な感じ。このMahfiruzの部屋は、実際のトプカプ宮殿 の後宮の部屋とサイズが近い。

  再びベリーダンスの場面。サフィエとハンダンが観覧している。キョセムは給仕している。そこにMahfiruzが数名の侍女を従 えて入ってくる。 Mahfiruzの行く先に真っ赤な花びらを侍女達が撒いて花道を作るのだった。さて、サフィエ、ハンダン、Mahfiruzの 三人が席に付いた後、サ フィエの嫌がらせで、キョセムはベリーダンスを踊らされる。ダンサー達の中に突き出され、なんとか回転してみたり、腕をひらひら させてみたりするが、全然 踊りになっておらず、踊れずにキョセムは部屋から逃げ出してしまうのだった。この場面のなんとも言えないキョセムの表情が良かっ た。幼稚園のお遊戯で、周 りについていけない幼児を見るような感じで、ほほえましくもある場面でもありました。

 その夜自室で一人泣くキョセム。

 遂に変装して逃亡を図るキョッセムだが、中庭であっという間に見つかってしまうのだった。
  その時アフメトは、地図を眺めてオーストリアがどーたらいって家臣と打ち合わせをしていた。廊下をキョセムが宦官に引きづられて 行く。なんだろうといぶか しむ宮中の侍女たち。その騒ぎに、なんだろうと、扉を開け、アフメドが騒ぎを知る。キョセムは部屋に監禁され、ヴァリデ達(サ フィエとハンダン)、アフメ トに報告される。ヴァリデ達の部屋に走りこむアフメト。どうやら、いじめを知ったらしい。アフメトは拳を握り締めてサフィエに激 怒してるのだった。これが その時サフィエとアフメトがあった部屋。結構広い。

 結局キョセムは諦めたらしい。次の場面は、豪華な衣装を着て肌に香水をつけてもらい、侍女にスルターンと呼ばれているキョセム が登場。

 そこにハンダンが来る。ハンダンが差し出す手にキスするキョセム。ハンダンが宝石箱から宝石をキョセムに渡す。嫌々ながら。

  漸くアフメドとの初夜。モノマフ帽子というか、クリスマス帽子が目に付いてしまう場面。アフメトと最初にあった時にもらったハン カチを取り出すキョセム。 ラブシーンは、驚いたことに、一瞬乳首が出ました。もちろん乳首にぼかしが入っていましたが。ぼかしなんか入れるくらいなら、 シーツとかで覆えばいいの に。却って不自然。まあ、他のトルコ映画は知りませんが、画期的かも。その夜、サフィエは輿で宮殿を後にするのだった。

 部屋で落ち着かないMahfiruz。泣きそうな感じで侍女に話しかけている。自分が呼ばれず、キョセムが呼ばれたので、自ら の地位の陥落を予想したのではないだろうか。

 そしてキョセムに次男イブラヒム誕生。

 現在の観光名所、スルタンアフメドモスク建築中の映像が映る。その2分後くらいに完成。美しいアザーンの声が響く。

 いつの間にか生まれていた長男ムラトもが出てくる。
 この、おどおどしたような上目遣いの表情が、この映画のキョセムの特徴。もっともこの場面は、部屋で腕白に遊ぶムラトをキョセ ムが子供目線で注意している場面なのですが。。。キョセムの帽子が素敵。

 粗末な礼拝室で、修道者のように、苦行のような礼拝していて体を壊してしまうアフメト。一方、あっという間に有閑マダムな感じ のキョセム。

 そのまま寝込んでしまうアフメド。そしてある夜、キョセムが気づくと隣に寝ているアフメトはベッドの上でご臨終になっているの だった。。。

  ここで回想場面は終わる。だいたいここまで70分。若き妃のキョセムの顔が、1651年、62歳のキョセムの顔オーバーラップし て、物語は後半に突入す る。若き日のキョセムと老境のキョセムは別の女優さんが演じているのですが、結構似ている感じがするんですよね。得に目のあたり が。このオーバーラップの 場面は違和感がありませんでした。

 宮殿に到着したキョセムの輿。

  到着したキョセムを見るなり逃げ出すBehiceという名の女 。Behiceは宮殿内を逃げ回るが、黒人宦官に取り押さえられる。髪を持って引きずられ、髪を切られる。更にムチ打たれる。イブラヒム(キョセムの次 男。在位1640-48年。暗殺された)云々といっているので、イブラヒムの死に深く関与した女性らしい。キョセムの前に突き出 されるBehice。ひた すらすすり泣くBehice。

 キョセムは9歳のスレイマンとその母Dilasup Sultan(1627-1689年:イブラヒムの妻)を呼び出 す。したたかそうなDilasup Sultan。

 恐らくトゥルハンを廃して、スレイマンを位につける、などと会話しているのではなかろうか。

 その夜、悪夢を見るキョセム。カフィスに放り込まれた少年イブラヒムと青年となった狂ったイブラヒムが映り、更に自分が斬首さ れる夢を見る。うなされて目覚めるキョセム。

 翌日大司教みたいな人(シェイヒュルイスラームか?)に相談してるキョセム。キョセムはアーミンと口にしている。もしかしてキ リスト教徒のまま?それともイスラム教徒もアーミンを口にするのだろうか。
 
 イェニチェリの司令官と思われる男と会話するキョセム。しかし、彼がキョセムに止めを刺す襲撃を率いることになるのだった。全 身が一瞬しか映らなかったが、この時の衣装も素敵。

 イェニチェリの控え室の場面。剣を研ぐイェニチェリ達。

  毒薬のような小瓶を老人に渡すキョセム。彼は医者だと思われる。しかし隣の部屋には足を怪我しているメフメトが寝ていて、会話を 聞いてしまうのだった。恐 らくトゥルハン暗殺を口にしてしまったのだろう。寝ていいるメフメト(実は寝たふり)に見入るキョセム。。この時の、黒い羽毛が 大きく後ろに伸びる衣装も 面白い。

 医者がグラスに小瓶の中のものを入れている。手が震えている。

 その夜。アフメトからもらったハンカチを取り出すキョセム。キリスト教の大司教かローマ法王、といった豪華な装束に着替える キョセム。


 泣きつくBehice(左)に、トゥルハン(右)は冷たい。

 そしてイェニチェリが立ち上がる。木槌で扉をあけ、宮殿に侵入。宦官も内側から秘密の扉を開けて導く。イェニチェリの司令官 は、この前の場面でキョセムと会話していたやつだ。逃げているのは女官たち。ある宦官は、Behiceを小部屋に逃がす。

 ローマ法王のような装束のキョセムは、自室で何かを待っている様子で落ち着かない。恐らくトゥルハンの暗殺成功の知らせを待っ ているものと思われる。しかし、トゥルハンは先手を打っていたのだった。

 宮殿に進入したイェニチェリが、キョセム配下の護衛兵との戦闘場面で、背後から体を貫かれた兵士の胸から剣が出るところもボカ シが入っていた。剣先は見えているのだし、暗いのではっきり見えないし、ここでボカシを入れても仕方が無いと思うのだけど。

  部屋の中をいきつもどりつするキョセム。キョセムの最も信頼する宦官Muhafiz Veysel が切られる。ついにキョセムの部屋の扉が打ち破られそうになる。クローゼットの中に隠れるキョセム。往生際が悪い。扉を打ち破って部屋になだれ込む数名の イェニチェリ。クローゼットからマントがはみ出ていて見つかってしまう。クローゼットから引きだされるキョセム。髪はほつれて、 革命にあったフランス王と か暗殺されるローマ法王という感じ。

 キョセムは二つのものを最期までもっていた。それは、実家の前で拾った壷と、アフメトからもらったハンカチである。クローゼッ トから引き出された拍子に壷が落ちて割れる。そして、ハンカチをもったまま首を絞められて果てるのだった。

〜The end〜

  小品ですが、結構気に入りました。最後、倒れたキョセムを写しながらエンドクレジットとともに流れる曲も気に入りました。是非英 語版、日本語版が出て欲し いものです。と思っていたら、英語字幕のdvd、出てますね。品切れなのが残念。入荷したら、購入したいと思います(値段にもよ るけど)。

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