ソード・サンダル映画であり、限りなく歴史映画とはいい難く、ローマの伝説的英雄ガイウス・ムキウスが
主人公であるとは言うものの、一応前500年前後の、追放された最後のローマ王タルクィニウス・スペルブスと、エトルリア王ポル
センナのローマ侵攻という
史実をネタにしており、恐らく日本では未公開作品で、日本語版dvd/vhsもなさそうで、ネット上に日本語情報が殆ど無い作品
ということ、更には結構面
白かったので、今回ご紹介いたします。イタリア映画に恐らく吹き替えで英語をつけてある為、英語は比較的聞き取りやすく、歴史映
画ということで、時代に依
存した英語の流行語や方言が出てこないのでわかりやすく、英語の学習にも丁度いいのではないかと思います。後者の作品は、つけた
しです。理由は後ほど。 〜「Hero of Rome/1963年)(原題Il colosso di Roma)〜 長い包囲に物資が不足し、ローマ市民は不満を募らせていた。補給部隊がローマから半マイルの地点で敵に襲われる。護衛の兵士が切 られる間際火矢を放って市 内に知らせる。それを見た隊長ムルシャスは、「門を開けろ!助けにいく!」と言うが、門兵は「執政官の命令が無いと兵隊は通せま せん」と言われ、単身城壁 を乗り越え補給部隊を助けに行く。一人で敵兵全部を退治してしまうムルシャス。そして道をふさぐ木をどける。すごい怪力である (この時一瞬、「これはあれ か。ヘラクレスものの一種か?」との予感がよぎったものの、そのまま見続ける)。 補給物資無事が市内に到着するも、人々が荷馬車に押しかけ、防ごうとする護衛兵ともみ合いになる。「まるでけだものだ!」とは き捨てるムルシャス。 執政官と、その娘のバレリアが市内を歩いていると、穀物を盗んだ男を兵士が追っているのに出くわす。執政官は、穀物は直ぐに配給 する!と民衆に宣言する。 一方、無事に帰還したムルシャスは恋人のクレリアに向かい、「敵王を暗殺するつもりだ」という。「私はどうなるの?」というクレ リアに、「人々は飢えてい る。兵士も物資も不足している。ローマは消耗している。タークアンが戻ってしまったら自由が失われる。フレスコ王を殺さねばなら ない。そして共和政を守ら ねばならない」と言う(あえて「フレスコ王」と書きました。この時点ではそう聞き取れてしまったから))。「いつ?どこで?」と すがる恋人に「今夜だ。さ よなら」と思い切るように言い残して去ってゆく。 敵陣地に忍び込むムルシャス。この時の敵の武装が下記。なんとな古代ギリシアかくエトルリアな感じ。 敵兵2人を気絶させ、一人の鎧を奪い兜を被り、それを着て敵王のテントに赴く(都合よく顔を隠す兜になっているが、これが登場し たのはこの場面だけ。いい 感じなご都合主義に泣ける)。王のテント前の護衛も気絶させ王の天幕に入る。そして机に座っていた男が「誰だ?」と誰何するも、 いきなりを殺す。しかしそ れは影武者だった。直ぐに衛兵、王子、王に囲まれるムルシャス。天幕の奥から姿を現した老人を見て、「おまえがポーセナーか!」 と叫ぶムルシャス(この時 点でやっと、王がポルセンナであり、前500年頃のエトルリアのローマ攻囲の話だとわかる)。お前は誰だ?と問いかける王に、ム ルシャスは兜を取る。「お 前・・・ムルシャス!」と叫ぶ衛兵のひとり。王子も「ああ、私も知っている、最強のローマ兵士で現司令官だ」と同意する。王は 「犠牲を買って出るとは。今 はローマに司令官はいないわけか。お前を待っているだろうな。ローマ攻撃の絶好のチャンスだな。処刑しろ」と命ずる。しかし王子 は「ローマ軍の状況を知る チャンスです」と提案する。「お前はローマ人を知らない」と応ずるムルシャスに、王子は篝火で剣先を焼き、「それを知るには拷問 簡単な方法だ」と剣を差し 出す。ところがムルシャスは、「この右手が暗殺に失敗したのだ。右手を罰しなければならない」と、自ら篝火に右手を突っ込み、長 い間黙って耐える。驚く王 と王子。やがて王自らが、「もういい!」と右手を火から取り出す。 その後、手当てを受け、王とムルシャスは会談となる。ポルセンナの言 い分は、元老院が彼の領土について、その権利を認めないことにあり、ムルシャスは、「それは交渉可能だと思う。ただ1つだけ条件 がある」と答える。その条 件とは、王がタークアン(前ローマ王のタルクィニウス)と手を切ること。ここで王子に席を外させる王。天幕を出た王子が陣営内を 歩いているとタークアンと 出くわす。「まだ生きているのか」と聞くタークアンに王は交渉していることを伝える。なんということだ!と天幕に乗り込むターク アン。天幕に乗り込んだ タークアンは散々に交渉の無意味さを説くが、「何年も援助してきたが、もう十分だ」とポルセンナ王もついに切れる。怒り狂った タークアンは「そういえば、 クレリアという美女がいたな」と口走る。思わず顔色を変えて立ち上がったムルシャスに対し、「ほほう。クレリアがヒットすると は。お前の弱点を見つけた ぞ」と笑うタークアン。タークアンの品の無い言動に嫌気が指したようなポルセンナは、明日朝、ルンテを派遣し元老院と交渉する、 という。タークアンは、 「大失態(テリブル・ミス)だ!」と悪態をついて退場する。下記左がタークアン、右がポルセンナ王。 翌朝単身ルンテ王子がローマへ向かうと、タークアンと配下の兵士が郊外で待ち構えていて、ルンテの行く手をさえぎる。そしてあ れこれと王子を説得し、遂には王子も納得してしまう。そして配下の兵士も一人監視として伴につけられてしまう。 ローマに戻る使者とムルシアス(あれ?ルンテは一人で出発したのでは?まあいいか。見直すのも面倒だし)。元老院で条件を出すル ンテ。それは、和睦の保証 として人質を出す、ということだった。クレリアを含む、10名の高貴な血筋の若い女性という条件で。バレリア(執政官の娘)がム ルシャスの部屋にいき、父 から聞いた元老院決議を告げる。人質の条件を知らなかったムルシャスは怒るが、クレリアは、「私いくわ」と告げる(この時のクレ リアはけなげな様子で、自 分を捨ててまで暗殺に赴いたムルシャスへの報復というわけではなさそうである)。 さて、ルンテ王子が人質とともにエトルリア軍営に帰還 すると、王が驚く。これは何だ?いった誰のアドバイスだ?と詰問する王。王子は、「これはクレリアです。彼女が人質であること で、ムルシャスをコントロー ルできます。そしてこちらはバレリア。執政官ファブリカの娘です」。納得せざるを得ない王。そして王と人質たちの夕食会となる。 人格の高い王に、クレリア もバレシアも感心する。夕食後、二人を散歩に誘う王子。一方、タークアンが私兵とともに森の中に集まっている。散歩の途中で足を 止め、王子に琴を弾くバレ リア。二人は気があるようである。クレリアとはぐれてしまう。「クレリアが消えたわ」 探す王子とバレリア。クレリアは、ターク アンの陰謀を聞いてしま う。平和条約を破るつもりだ。そしてあっさり気取られてつかまってしまうクレリア。「バレリア!バレリア!」と叫ぶ声に王子とバ レリアが駆けつける。間一 髪でクレリアを救う。しかしことはこれだけでは終わらなかった。人質のいる天幕に戻ると、兵士が残っていた人質に手を出そうとし ていた。王子が止めに入る が、不安げな人質を残したまま天幕を去らざるを得ない王子。クレリアは、耳にしたタークアンの陰謀をバレシアに告げ、人質はもう 無意味だから、脱出しま しょう、と主張する。この時点では、ポルセンナも和睦を破ったとクリシアは考えていたので、「何で王子に言わなかったのよ」とな じるバレシアに対して、 「私たちはもう不要なのよ。王子も何もできないわ」と主張するクレリア。 場面は変わって、ローマに侵入する賊が登場。どうやらタークアン派遣のムルシャスを狙った暗殺者だったようだが、ローマの夜回 り隊と鉢合わせし乱闘になる。執政官率いる隊もきてなんとか撃退。 バレリアとクレリア達は、散歩に出た時に、川辺から丸太につかまり泳いで脱走してしまう。護衛兵がラッパで脱走を通知し、駆けつ けたタークアンとその配下 の兵士が弓で射る。そしてバレリア含めた何人かにあたってしまう(ここは結構ハラハラドキドキしました)。ルンテもやってきて脱 走を知るが、娘たちは下流 へ向かい、やがて見えなくなる。 天幕に戻ったタークアンは、ムルシャス暗殺失敗の報告を受ける。しかし使者はもうひとつの情報をもたら していた。それは、人質の娘達から連絡をうけたムルシャスが、人質を引き取りに兵隊を率いてローマを出る、という知らせだった。 翌日、クレリア、バレリア 達をつれて、兵士に囲ませて警戒しながらローマへの行進を開始するムルシャス(あれ?バレリア、川で撃たれたのでは?まあいい か)。しかし待ち構えていた タークアン達が矢を射掛ける。亀甲陣で人質を囲み応戦。そして護衛の一人にローマへ通報させる。 ついに兵士同士が激突。逃げる人質達。タークアンと兵士がバレリアとクレリアを追う。女を狙うなど、どこまでも卑怯な奴ら。そし てついにバレリアの背中に ナイフが刺さり、バレリアは死んでしまう。映画に飲まれてしまっているので、結構衝撃的だった。駆けつけたムルシャスとタークア ンの対決となるが、左手だ けで応戦するムルシャスは、剣を飛ばされてしまい、ついには崖から落とされてしまう。そこに王子の軍が到着。タークアンはクレリ アを馬に乗せて逃げる。到 着した王子はバレリアの遺体をみて愕然とし、「来るのが遅すぎた」と何度もつぶやく。やったのはタークアンだ、と告げるローマ 兵。王子はタークアンに復讐 を誓う。 感動的な場面の筈なのだが、王子のこの仮面には感情移入を阻まれてしまうのであった。どうみても仮面なんとか。本当にこういう 遺物が残っていて、これを使うしかなかった、ということなのかも知れないけど、イタリアの人はどう見たのだろうか。。。。 王子が軍営に戻ってみると、王の幕営にある王座にはタークワンが座っていて、王は捕虜になっていた。 一方、ローマ執政官であるバレリアの父は、バレリアの遺体を郊外まで出迎える、兵士から首謀者はタークアンだと知らさせる。同 時にその兵士は、ムルシャスも死んだと思う、と伝える。「平和は破れた」と激怒する執政官。 タークアンが祝杯を挙げている頃、なんとムルシャスは生きていた。崖下の途中の岩棚に落ちたのである(とはいえかなりな高さの断 崖から落ちたので、普通な ら絶対に助からない筈なのだが、そこは伝説の主人公。でも崖の木に引っかかっているとかの方がリアルだと思うんだけど)。しか し、そこはまだ崖の中間。下 には断崖が続く。そこで、木を倒して橋にして、向かいの崖に渡るムルシャス。そして落ちそうになるムルシャス。揺れる両足が印象 的。 さて、ローマでは元老院が紛糾していた。各々お前が裏切り者だ!と罵り合い何も決まらない。そこにムルシャスが戻って来るのだ が、彼が帰還しとたんに元老 院は好戦論で一致するのであった。そしてカイアス・ムルシャスを指揮官に任命する執政官。更にはルンテ(ここで漸く「アルンテ」 が正しい発音だとわか る))が脱走してローマに。歓迎するムルシャスに、「左手だけでどうするのだ。私が力になろう」というルンテ。そして左手での剣 の練習を相手を務めるルン テ。ある程度上達した後は一般兵士と手合わせ。遂に誰もかなわない程の使い手になるムルシャス。更には王子が、右手に金属カバー して盾として用いることを 発案。無敵のムルシャス復活である。そして出兵する。下記はその時の王子(左側)。。。。。。 SS映画にしては結構まともだったりするのに、どうしてこの王子は、日本のなんとか仮面みたいな仮装をするのだろうか。本作は、 ギャグでもコメディでもパ ロディでもなく、いたってまともなSS映画である(まともなSSって何?といわても困るが。。。因みに右側がムルシャス)。 その頃ター クアン王の御前では、レスリングが行われている(SS映画一般ではここはベリーダンスか神殿の巫女の踊りな場面なのだけど、珍し くレスリング)。続いて タークアンはクレリアと結婚しようとする。軍営で結婚式が行われ、婚前の誓いを強制されるクレリア。しかし、タークアンから差し 伸ばされた手に、手をのば したクレリアは、あっという間にタークアンの腰の剣を抜く。その時、ローマ軍が軍営を襲撃する。 その後、(どういうわけか)野戦での決戦となる。ローマ側は、歩兵が進軍した後、騎士が攻撃。最後は執政官も突撃する。この場 面も結構な数のエキストラを使っていて、そこそこまともである。 タークアン軍は破れ、タークアンと数名の兵士は森でローマ軍に包囲される。しかしクレリアを人質にするタークアン達。ムルシャス はタークアンとのシング ル・コンバット(一対一の戦い)を提案する。戦いが始まる。結構互角。タークアン、意外とやるじゃん、と思っていたら、倒れた拍 子に、「人質を殺せ!」と 命じ、ムルシャスの動揺を誘う。本当に最後の最後まで汚いキャラであった。しかしムルシャスは逆にタークアンが命じる隙を突いて タークアンを刺す。人質を 殺そうとした兵士は、「バレシアの仇!」とルンテ王子に殺される。解放されたクレリアと抱き合い、めでたしめでたしのジ・エン ド。 というわけで映画の紹介は終わりです。あらすじを書きながら、最初から登場人物の名前がわかっていたような書き方をしています が、そんなにちゃんと聞き取 れているわけではないのでした。ムルシャスなんて、最初は、この前に見ていた作品の主人公がルーシャスだったので、それが耳に 残っていたからか、最初は ルーシャス、と聞こえ、そのうちマーシャルと聞こえ出し、やがてムルシアスとなり、最後、執政官に、司令官に任命される時に「カ イアス・ムルシャス」と聞 こえたのでした。そして、見終わった後、IMDbの登場人物リストを見てみると、「Mucius」となっているのでし た。。。。。因みにクレリアは、最初 はプリシアとかエクレシア、プレシア、クレシアと聞こえていて、途中からクレリアに。IMDbではCleliaなので、これはあ たり。ルンテも Arunte(途中で一回アルンテ、と聞こえた時はあった)。執政官はIMDbで見るとプブリコラとなっているけど、あまり名前 が登場せず、コンスルと呼 ばれていた為か、ずっと「ファブリカ」だと思ってました。因みにこの前に見ていた作品では、マルクス・アウレリウスが、ずっと 「マーカス・ウィリアス」と 聞こえていて、誰のことかなかなかわからなかった。まあ、私の英語力なんてこんな程度なのですが、だからというわけではないので すが、誰のことかなかなか わからないと、どの時代の話なのかを見ながら推理する楽しさがあり、結構楽しめるのでした。 最後に。本作が歴史映画と言えるのかど うか、ですが、タルクィニウスとポルセンナのローマ侵攻は一応歴史的事実とされている話なので、塩野七生氏の「ローマ人の物語」 とか、リヴィウスの「ロー マ建国史」を読むきっかけとなったり、読むときにイメージ画像として理解の促進に役立つなどの効果はありそうに思えます。 IMDbの映画紹介はこちら。 英語版DVDはこちら。(パッケージを見ると、まるでアメリカン・コミック・ヒー ローものみたいな絵となっています。これは誤解を招きやすいのではないでしょうか。。。。) 〜マラトンの戦い(原題La battaglia di Maratona/英語題名The Giant of Marathon・1959年)〜 あらすじは、Goo映画紹介にありますが、やっぱこれも大分印象が違うんですよね。。。。で、 こちらの田亀源五郎氏の「田亀源五郎's Blog」の「『マラソンの戦い』+ "War of the Trojans" 新盤DVD」 の記事に詳細なあらすじがありますので、あらすじはそちらをご覧ください。田亀氏は、見所についても詳述していますが、私の印象 もほぼ同じです(ただし、 私は男性の肉体美に興味はありませんが。。。)。カメラワークや、撮影の工夫など、戦闘場面は迫力があり、かなり見ごたえがあり ます。私は現実の戦争も映 画の戦争も好きではないのですが、それでも低予算なSS映画でここまでの迫力は見事なものだと感心しました。GC合成に頼りすぎ て安っぽさがでてしまって いる最近の歴史映画と比べると遜色がないどころか、はるかに凌ぐものがあります。カメラワークの工夫など、凡百な歴史映画の戦闘 場面より見ごたえがありま す。なので、物語中盤のマラトンの戦いの場面と、ラストの海戦の場面については、日本語版dvdを出す価値はあると思うのです が、歴史映画としては、かな りどうでもいい内容なので、どうでしょうね。戦闘場面だけ見るなら日本語不要ですし。なによりも、本作は、スティーブ・リーヴス のためのスティーヴ・リー ヴスの映画なのですから。前述の田亀氏も、これを歴史映画として見ているわけではなく、スティーヴ・リーヴスの作品として見てい るのでした。以下、カット をいくつかご紹介。 マラトンの戦いのダレイオス軍の進軍太鼓。大きさにちょっとびっくり。 アケメネス軍の司令官とペルシア軍。スキタイ風な兜。 ペルシア騎兵(右)が、ギリシア軍(左)に突撃するところ。これは凄かった。 主演のスティーヴ・リーヴスが、戦場から単身アテネに走る場面。この、数秒間の画面ショットだけが、「マラトンの戦い」のイメー ジ通り。しかし、田亀氏のBlogを見れば明らかなように、これ以外の走る場面は私的にはちょっと。。。 アテネ市目前のスティーヴ・リーヴス。 ギリシア軍の戦艦。船倉の中で漕いでいるのではなく、漕ぎ手が甲板にいることがわかります。なかなか説得力のある特撮。 でも、一隻だけおかしな戦艦が。。。。。その船首には、海老のはさみのような武器が。。。 上から見ると、下記の通り。船内で兵隊がクランクをまわして鋏で敵船の船首を砕いて沈没させるという兵器。突飛なようですが、現 実的に当時の技術力で可能な仕掛けで、製作者たちのアイデアとしてはよく考えたものだと感心ものです。 ちらりと映る海辺の古代ギリシアの町 IMDBの映画紹介はこちら。 英語版DVDはこちら。 関連情報:古代ローマ映画一覧 |