イラン製モーセ時代映画「Nasepas」(2007年)

  以前にも記載したことがあるのですが、字幕が無く、その言語がわからない歴史映画も、結構楽 しめるものです。字幕も説明も無い歴史映画は、聞き取れる単 語や人物名、地名、事件、風景、建築物、生活用具、装身具、衣装などから、どの時代・地域の話なのか推理してゆくのが結構面白 く、自分の歴史知識の実力 (?)も試される感じもして結構楽しめます。

 今回は、注意深く聞いていれば、結構早い段階でわかった筈なのですが、ペルシア語は数語の 単語しかわからず、最初から聞くことにはあまり集中していなかった為、古代ユダヤものじゃないかとだいたい当たりは付いていたの ですが、途中まで見て、モ ンゴルまたはトルコ人のような人物が登場した為迷ってしまい、再度最初から見てみて、「ムーサー」という言葉が出てきた為、漸く モーセものだとわかった次 第。題名のNasepasは、ペルシア語発音そのままのようで、ペルシア語題名「ناسپاس
」の意味は、英語でdeserter、逃亡者、とい う意味のようです。エジプトから脱出し、40年間放浪したとされることを示しているのではないかと推測しています(物語の冒頭で 主人公が何者かに追われて いるところから始まるので、逃亡する主人公そのものを示しているのかも知れません)。

 今回少々わかりにくかったのは、大都市が登場せ ず、牧畜民と思われる荒野が舞台ことにあります。田舎の農民や遊牧民の生活は、数千年間たいして変化も無い部分もあるので、衣装 や道具、家屋などにあまり 大きな特徴が見られないことがあるからです。時代と地域を特定する有力な特徴は、宗教、武具にあり、田舎の生活でも、銃が登場す れば、15世紀以降だと判 断できます。ところで、本来なら、馬具、特に鐙は時代特定ができる筈なのですが、モンゴル人エキストラでもない限り、鐙無しの乗 馬・撮影は難しく、比較的 リアルな映画でさえ、鐙がまだ存在していなかった時代でも、鐙をつけていたりするので、鐙は時代特定に使えないんですよね。で、 今回は、モーセの時代なの に鐙が使われていました。

 さて、今回の作品は、物語の冒頭部分で、下記のような独特な宗教衣装とペンダントが登場したので、古代ユダヤか、ローマ時代以 降のシリア教会かアルメニア教会、ギリシア正教会あたりの話ではないかと思いました。

武 具は革の鎧で、剣は鉄か青銅か判断しがたいところ。生活用具に銅器は出てこず、家は切石で作ったというよりも、レンガ大の石を集 めて作ったような家。銅器 は宗教指導者達の集会所くらいでしか登場せず、その建物も、下記のような粗末な石作りのもの。町らしきものは、丘の上にある下記 集会所の麓にある市場くら い。日干し煉瓦も出てきませんでした。

更に下記のような放牧民の住居と、ゾロアスター教の拝火塔のようなものが見えたりするので、アルメニアからアゼルバイジャンや南 部エラム地方まで可能性がありそうな感じ。ただしらくだが登場しているので、あまり北部ではなさそうです。

と、このあたりまでは絞り込めつつあったのですが、開始後1時間くらいの地点で、下記モンゴルまたはトルコ人のような風俗の人物 が登場してしまい、混乱してしまいました。結局今もってこれが何人なのかわからない状況なのでした。

そ こで最初から見直したら、下記宗教指導者と思わしき人物がムーサーと呼ばれていたので、漸くモーセの話だと判明した次第。話はよ くわからなかったのです が、ラストはモーセが死んだ主人公を蘇らせ、蘇った死者(ゾンビのような白塗りで、眼孔だけがどす黒く、少し気味が悪かった) が、自分を殺した人物を指摘 して幕。

きっ と、旧約聖書にあるエピソードの映画化なのでしょうが、そのあたりはあまり詳しくないので、正直映画としてはあまり面白くはあり ませんでした。ただ、本作 は、80分程度と短いわりに、映画本編終了後、30分程メイキングが入っていて、イラン映画界としては結構力を入れて製作した作 品だったようです。下記は そのメイキング部分ででてきた祭りの部分。青銅製のお盆のような楽器が登場していました。

 本作は、ペルシアンハブその他で視聴することができますが、何箇所か確認しましたが、字幕 つきのサイトはなさそうです。

古代エジプト・ユダヤ映画一覧表はこちら。 

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