古代ローマ歴史ドラマ「ローマン・ミステリーズ(オスティア物語)」(1) オスティアの 紹介


 2007-2008年英国BBC製作による少年少女向け古代ローマの都市オスティアを舞台とし た連続テレビドラマ。全10話。一話54分全540分(dvdでは1話が2回に分かれ、一話28分全20回構成)。 2007年に第一シーズンの5話、2008 年に第二シーズンの5話が放映されています。日本でも翻訳が出ている児童向け小説「オ スティア物語―古代ローマの謎ときアドベンチャー 」のドラマ化です。この作品は、日本では一作しか翻訳されていないようですが、本編17作・続編3作のシリーズもので、派生作品も何篇か出ているようです (こ ちらのWikiの記事に本編続編及び派生作品に一覧表があります)。邦訳は、シリーズ第一作目の『オ スティアの盗賊たち』の邦訳です。

 小説では、主人公のフラビアは10歳の少女ですが、ドラマではもう少し年長になっていて、第一シーズンでは13-14歳、第二 シーズンでは15-16歳くらいに見えます(主演のフラビア役の女優が1991年生まれ、ヌビア役が1992年生まれ)。塩野七 生氏の一連の作品で日本でも古代ローマの映画やドラマの視聴者層は大きく増えましたが、BBCの連続ドラマ「ROMA」 や「ス パルタカス」は、アダルトな描写が多く、小中学生には見せがたい映像です。高校生でも親と一緒に見るのは難しいので はないかと思います。小中学生を持つ古代ローマ・ファンの親御さんで、お子さんと一緒に古代ローマ映画やドラマを楽しみたいと 思っている方は多いのではないでしょうか。本作は、まさにそうしたニーズに応える内容です。凄く面白いかというと微妙なところが ありますが、そこそこ面白く、舞台もオスティアだけに留まらず、ポンペイやロードス島が登場するなど、バラエティに富んでいま す。もちろん、オスティアの日常生活や冠婚葬祭(実際には冠は無く、婚葬祭だけど)もじっくり描かれ、歴史の知識の無い小中学生 でも楽しめる少年少女アドベンチャーとなっています。実際の歴史的事件や実在の人物(ヴェスヴィオス火山の噴火や疫病、ローマの 大火、ユダヤ戦争、学者プリ ニウス、皇帝 ティトスなど)も登場するので大人も十分楽しめる内容です。主役の少年少女たちがあまり美男美女でないけれど、元気で魅力的で、 そのへんにいそうなところは、日本の少年少女も入り込みやすいのではないでしょうか。そうした側面の顕れからか、ハイティーンの 登場人物には美青年が登場し(多分視聴者層の少女のちょっと年上)、大人の登場人物も、「子供にとっての大人」であって、あまり 大 人から見て魅力的に見える人物は登場しない、という側面もあるものの、親子揃って安心して観れる古代ローマ娯楽作品なので、是非 是非日本語吹き替 え版が出て欲しい作品です。

 以下ドラマ各話のタイトル、放映日と見所です。邦訳のある第一作目(『オスティアの盗賊たち』)は入っていません。恐らく、 『オスティアの盗賊たち』は、切り取られた犬の首が頻発する為に子供向けドラマの映像としては敬遠されたためではないでしょう か。犬の群れの演出も難しそうです。ドラマは原作の2作目から10作目と13作目に相当しています。第一シリーズのみ、番組冒頭 で西暦と月が表示されます。

第一シリーズ(2007年)

    第一話 ヴェスヴィオスの秘密 (2007年5月8日) 79年8月:ヴェスヴィオスの噴火と学者プリニウス
    第二話 ポンペイの海賊 (2007年7月3日) ヴェスヴィオスの噴火から4日後
    第三話 ローマの暗殺者(2007年7月17日) 79年9月:ローマと黄金宮殿:皇帝ティトス
    第四話 ラウレントゥムのイルカ (2007年7月31日) 79年10月:小プリニウスの別荘
    第五話 ユビテル神の敵 (2007年8月14日) 80年2月:ローマの疫病、結婚式

第二シリーズ(2008年)

    第一話: カプアの剣闘士 (2008年7月8日) 剣闘士と養成所・剣闘試合
    第二話 フラビア・ジェミナの12の試練(2008年7月15日) サトゥルヌス祭
    第三話 ロードス島のコロッソス (2008年7月29日) ロードス島
    第四話 コリントスから来た逃亡者 (2008年8月19日)
    第五話 エルサレムから来た奴隷少女 (2008年9月2日) 裁判・葬儀

 あらすじの紹介は次回以降とし、今回は、主要登場人物の紹介と、今もほぼ完全に近い都市遺構の残る古代都市オスティアの再現ぶ りを紹介したいと思います(以下、各回の番号は、第一、第二シーズン通して第一・・・第十話、と通番で記載します)。

 まず主要登場人物。左上が主人公のフラビア・ジェミナ。原作では推理を行なう探偵ですが、ドラマでは推理そのものがあまり登場 せず、原作邦題の「謎ときアドベンチャー」のうちの「アドベンチャー」の部分に比重があります。フラビアの右の二人は父親のマー カス・ジェミナスと叔父のガイウス・ジェミナス。よく似ていますが、一人二役で、双子の設定です。父親は商船を運営する商人なの で、父マーカス は半 分くらい商旅に出ていて、二人がかぶる場面はあまり無いように工夫されています。以下の画面ショットは、二人が一役だったことに 気づかない時に採ったもので、合成だと思うのですがうまく出来ています。叔父さんはポンペイ近郊で小規模農場を経営し ています。右端は大プリニウス(22年頃-79年)。第一話の最後でヴェスヴィオスの噴火に巻き込まれ亡くなってしまうので、主 要登場人物というわけでは無いのですが、以下の画像を編集した時点ではそんなに早くお亡くなりになってしまうとは予想していな かったので、主要登場人物ショットに入ってしまいました。左下がフラビア家の隣に引っ越してきたユダヤ人でキリスト教徒・職業医 者のモルデカイとその娘ミリアム。年齢はフラビアより2-3歳上のようですが、もう落ち着いていて、「私はもうそんなお転婆はし ない年頃なのよ」という感じ。性格もおとなしそうです。下中央はモルデカイの息子でミリアムの弟ジョナサン。邦訳ではフラビアの いい相棒という感じですが、ドラマでは若干影が薄く、登場しない回もあった。喘息があるので活躍の幅が狭くなってしまったのかも 知 れない。その隣が影の主役ルーパス。年齢は八歳前後。邦訳原作で はフラビアがまごうことなき主役なのですが、ドラマではフラビアは段々活躍しなくなり、無茶もせずに「お嬢様」の枠内に収まってしまう。一 方ルーパスは回を追うごとに大活躍するようになります。フラビアの場合、段々大人になり、おしとやかな女性に成長していった、と いうことなのかも知れません。一応富裕層なので、令嬢化が進んだということでもあるのかも。



 影の主役ルーパス君(とヌビア)拡大写真。

 
 
 彼を通じて小学生の視聴者も 惹きつける ことができるかも。こういう子供が欲しいとか、こういう弟が欲しいとかいう年齢層もゲットできるかも。ルーパスは孤児の ストリートキッズで、原作では舌を切り取られてしまっているのですが、ドラマでは舌はちゃんとあって、声が出せない設定のようで す。このため、常に筆記用具である蠟盤とペンを持ち歩き、ここぞというところで重要なメッセージを伝えます。黄色い服の少女はフ ラビアの親友・元奴隷のアフリカのヌビア出身の黒人少女ヌビア。ヌビア(エジプトの南、現在のスーダン・エチオピアのあたり)出 身だからヌ ビアと呼ばれるようになった模様。第二シーズンでの活躍順からすると、ルーパス→ヌビア→フラビア→ジョナサンなので、画像のサ イズのドラマ の存在感に合わせればよかったのですが、最初の方ではルーパスとヌビアがそんなに活躍するとは予想していなかったため、原作での 存在感に準じた画像サイズとなってしまいました。

 主にシーズン2のみの主要登場人物。左から、フラビアの家庭教師のギリシア人アリスト、その右がプリクラ(シーズン1の第二話 でも登場)、フラビア家の家内奴隷コーデックス、詩人フラックス、右端が法律家バトー。



 他にも複数回に跨って登場する人物が若干いるのですが、彼らはそれぞれの回の紹介のところで画像を出す予定です。

 さて、ローマの外港として栄えた古代オスティアの再現映像。ローマから10km程西のテヴェレ川の河口にあり、ローマへ搬入す る輸入品の荷揚げ町として繁栄しました。現在でも建築物の土台や街路の遺跡がきれいに残っています(以下はGoogle Mapの41.756059,12.289635)。東西1km強、南北500m程で城壁に囲まれています。邦訳では冒頭に、小説の中の町の平面図にフラ ビアの家や要所が書き込まれた地図が掲載されているのですが、ドラマではなし。ドラマでも復元地図を出しても面白かったかも。



 復元画像です。右がオスティアの港。左が中央通りのようです。恐らく町の中央を東西に走 るメインストリートという想定かも知れません(第一話の画像)。



 第三話で登場した中央広場に面した大建築物(左)。右下は左上と同じ中央通りだと思 われます。



 第十話で登場する裁判所などの公的機関の入った建築物(左側)。広場は市場となって いる。



上画像の広場の反対側(第十話)。



 古代ローマのアパートインスラ。木造の廊下や階段が張り出しています。これは三階建 て(第十話)。



 第八話でロードス島の町の描写が出てきて、坂のある市街路となっています。これに対 してオスティアは坂の無い、平らな町なので、市街には坂は出てきません。ロードスの町の描き方は芸が細かいように思えま した。

 第五話で登場した町の東側、ローマへ向かう街道に面したローマ門。



第七話で登場したローマ門全景



円形闘技場(第六話)



 オスティア遺跡には円形闘技場の遺跡は無いので、これは作者のまったくの創作か、或 いは文献にかつて円形闘技場があったことが記載されているか、或いは円形闘技場の痕跡遺構が発見されているのかも知れな い。下左がその内部。あまり大きくはなく、見たところアリーナ部分は横径15m x 縦径25m程度だろうか。オスティ アからローマは歩いて日帰りできる距離なので、円形闘技場での見世物はローマまで出向いたのではなかろうか(ドラマでは 登場していないが、オスティアには半円形型の劇場遺跡は残っている)。右下は月明かりに照らされるフラビアの家。ブラビ アの家は、第四話で差し押さえにあい、その後別の家となったようである。下右は新しい家。前の家の概観映像は無いが、屋 内映像からすると、前の家よりも、後の家の方が大きくて豪華に見える。

 

 左下は最初の家の玄関を入ったところ。正面の扉が玄関。壁じゅう果樹園のフレスコ画 が描かれている。右下 は最初の家の通りに面したところ。記憶ではこれが最初の家の唯一の概観(並びの一番奥の扉がフラビアの家の玄関で、そこからヌビアが出てきたところ)。明 らかにアパートに入っている家の一つという感じ。並びの家の窓や入り口にはカーテンがかかっている。

 

 最初の家の居間。寝椅子ではなく、現代の応接セットに見える。右下はフラビアの父の 持ち舟デルフィーナ号(これ一艘だけ)。実のところ、邦訳『オスティア物語』を読んだ時には、もう少し質素で、それ程裕 福ではなさそう に思えたのですが、ドラマの方の富裕度は、現代でいえば、年商5千万くらいの個人輸入業の自営業者というところでしょう か。



 二番目の家の居間。テーブルを囲んでいるのは寝椅子であり、最初の家の居間より広い。邦訳では、「子供は寝椅子で食事 をするには早いので、普通に腰掛ける」というような台詞がでてきます。下画像では、その通り、中央奥で父親は横になって いますが、子供達は寝椅子に腰掛けています。





シリーズ1とシリーズ2を収録した全 540分盤がUKアマゾンで9.99ポンドで出ています
IMDbのドラマ紹介はこち ら
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