古代ローマ・ポエニ戦争映画「シラクサの攻囲」

   前214年から前212年の、ローマ軍による、シラクサ攻囲の模様を扱った映画。原題 「L'assedio di Siracusa」1960年作。日本語情報がネット上に無く、dvdもイタリア語版(英語字幕なし)しか出ていないようです。現在恐らく、ネッ ト上しか英語字幕版が見られない作品です。日本語版、せめて英語字幕版がネット有料公開で100円くらいで視聴できるようになる と嬉しいかも。以下あらすじです。


 舞台はシチリア島のシラクサ。冒頭、兵士2人が浜辺の襲撃跡と軍船をみかける。
 翌日、シラクサ政府では、ローマ人とカルタゴとっちにつくかで揉めていたが、ヒエロン王主導の作戦会議でローマにつくことに決 める。作戦会議で使われた地図と駒。イタリア半島と比べ、シチリア島が実物より巨大に描かれていることがわかる。

  以前はカルタゴとローマの勢力均衡下でシチリアは安泰だったが、海戦でローマが勝利したことから、均衡政策は難しくなった、と か、アルキメデスを呼ぼう、 という意見も出るが、彼は娯楽に生きる男だ、という意見が出る。そこに、突然ヒエロンの娘クリオがやってきて(単身戦車に乗るお てんば)、アルキメデスの 力を借りるべきよ、と提案する。君は恋人に役に立ってもらいたいだけだろ、といわれるが、ヒエロンに「私が説得するから」とねだ る。以下はシラクサ政府の 建物。

  一方、ローマの踊り子一座がシラクサに向かっていた。馬のたずなをとるディアナに、あれこれ話しかけてうるさい一座唯一の男性 (義理の兄)ゴルディアに嫌 気がさしたディアナは、馬車をとめて池で泳ぐ。すると、たまたま7つの鏡を組み合わせた太陽光線集積装置の実験をしていたアルキ メデスが、手前の樹木の葉 に焦点をあてていたところ、光線は通過し、池辺においてあったディアナの服を燃やしてしまう。岸に戻って燃えている服に気づいた ディアナは、木の葉で体を 隠し、アルキメデスを見つける。アルキメデスは、「これはこれは、神話の世界のニンフが実在するとは」と最初はのんきなことを 言っていたが、「服が燃えた のよ。どうしてくれるのよ」といわれ、実験の成功に気づき、そのまま洞窟の中にある工房へ走り、「ヘウレーカ!」と同僚たちに叫 ぶ。地上に戻って、「この 服が世界の歴史に加わったのだ」「私の服は誰が弁償してくれるのよ?歴史?」などと浮かれるアルキメデスと、服の弁償を迫るディ アナの間で話がまったくか み合わず、漫才風な展開が続く。漸く気づいたアルキメデスがローブをかけてあげる。ローブに映った自分の姿を集光装置の鏡に映し てみるディアナ。

  ようやく相手に関心をもって色々尋ねるアルキメデス(以下面倒なのでアルキ)。それによると、ディアナは本名をアルテミスとい い、シチリア島の南、セリヌ ンテの出身だったが、両親をなくして義理の兄にローマ風にディアナを用いるよう言われ、彼に従ってローマに行っていたのだ。義理 の兄ゴルディアはフェニキ ア人で、母はカルタゴ人に殺され、父もローマで死に、結局ローマでうまくいかなかったので故郷に戻ることにしたのだろうだ、。研 究馬鹿のはずのアルキは急 にロマンチストになり、「月を見てごらん。あのやわらかい光のように、少しずつ過去は薄れていくよ、君は月(アルテミス)ではな いか」などとキザなことを 口にする。兄の呼ぶ声に一座に戻るディアナ。

 入れ違いにヒエロンの娘クリオが単身戦車を駆ってやってくる。「今政府はローマに付こうと しているらしいの」というクリオに、「変わらないものなどないんだよ」と答えるアルキ。しかし基本的に反ローマのアルキは説得さ れ、クリオとともに戦車で シラクサに入場する。入場場面はさながら凱旋式で、歓声をあげる兵士の後ろでディアナも見ている。

 港にはローマの軍船が停泊していた。ヒエロンとともにアルキは軍船に乗り、ローマの司令官マルチェッロ(マルケリヌス)に紹介 される。マルチェロは、ローマがシラクサ側につくメリットを話し、シラクサ側の疑念に答える。
  ヒエロンは宮殿に去り、残ったアルキは、ローマの軍船の装備を見て回る。そこに、ディアナの兄が売り込んだため、船上でセリヌン テの踊子(主役はディア ナ)たちがベリーダンスを始める。終焉したところで、アルキメデスがディアナと声をかける。逃げようとするディアナの腕をつかん で引っ張り出す。
  「私はあなたがどんな人か知ってしまったわ。踊り子なんかと比較にならない、世界に知られた天才。そんなあなたが何を求めるの。 私はローマであなたのよう な男を見てきたわ。彼らはお富、宝石を語るの。で、あなたは私に何を求めるの?一晩?それとも一日?」 しかしアルキはさりげな く無く愛を語り、明日3 時、ゼウス神殿で待つよ、という。そしてその通りゼウス神殿に来たディアナはアルキと会い、口付けを交わす。急に雨となり、神殿 に入り藁草の上でまたキ ス。愛を語り合い続ける二人。

 その頃、宮殿では、兄ゴルディアが、メナンドロ・ティボルティーノ(ローマ司令官) 、マルチェッロ(マ ルケリヌス)などローマ軍の人物や、ローマの情勢をヒエロンに売り込んでいた。地図を用いて軍事的な施策まで提案する有様。その 後、ゴルディアは酒場に ローマ人を招き、踊り子と一緒に接待する。

 翌日、クリオはアルキの父ティジシアスを尋ねて、オリーブか果物かなにかを木から積みながら会話している。以下はティジシアス の家。

  そこにアルキがやってくて、父とアルキは家に入り、「実は別の娘を愛してしまったんだ」と切り出すアルキ。そして、どちらがクリ オに言うか話ているところ に、「もう聞いてしまったわ」とクリオが入ってくる。そして、「行って頂戴。彼女が待ってるわ」と辛そうに告げる。うーむ。辛そ うな表情からすると、やは り相当アルキを愛しているようである。普通はありえないくらい大人な対応である。

 一方、ディアナはアルキの洞窟工房を訪ねるが、同僚に 「一ヶ月くらい戻ってこないこともあるよ」と言われ、沈んだ面持ちで酒場の二階の自室に戻る。そこに兄がやってきてヒエロンの娘 の件を話す。ベッドに泣き 崩れるディアナ。アルキメデスが兄のところにいくと、娘はもういない、と言う。セリヌンテの娘たち(踊り子たち)はガレー船に 乗っていたのだった。薬で眠 らされているうちに乗せられてしまったのだ。戻りたい、と訴える彼女をローマ兵は足蹴り。気絶してしまう。何の騒ぎだ?とやって きたマルチェロ司令官に救 われる。そして気絶した時に、ディアナは記憶を失ってしまっていた。。。。そこでとりあえず司令官は、ルクレツィアと呼ぶことに する。

  ディアナが行方不明となり、いらだつアルキ。工房でうっかり改良型集光装置にぶつかり壊してしまった弟子を足蹴にし、放り出す。 それを見ていた父は、たま たま工房にやってきたクリオに、「君しか慰められる人はいない」といい、クリオに慰められて二人は結婚することになる。

 ルクレツィアと ともにローマに戻ったマルチェッロには子供が2人できていたが、シラクサのクリオは子供を流産したようで、病に伏していた。ヒエ ロン王も、寝込んではいな いものの病気になり、少々気難しくなっている。いまだにヒエロンの元に出入りしているゴルディアに、アルキは眉を顰めるが、「あ あいう男は支配にとっては 有用なのだ。君もいづれ私の後を継いだ時わかる」と、大分弱気になっているヒエロン。その王に頼まれ、ローマへ使者にゆくアルキ メデス。その年のコンスル はマチェッロ。マルチェッロの自宅に招かれたアルキは、庭でディアナを見つける。あっちへ行って!とアルキを振り払った時、日光 の光りで気絶してしまう。 そして目覚めた時、全て思い出していた。そして記憶の戻ったディアナに、アルキは一緒に戻ろう!というが、どうやら、ディアナの 長男マルクスはアルキの息 子なのだが、マルチェッロはマルコ(マルクス)を愛しているのよ、自分の子のように、と、戻ることは簡単ではない、と説明する ディアナ。しかし、物陰から マルチェッロは聞いていて、やがて物陰から姿を現し、子供はもう私を父と思っている、というマルチェッロと、子供は僕を父を感じ るようになる、と主張する アルキで議論となるが、最終的にはディアナが「2人の子供とは離れられないわ」といい、マルコも、アルキから逃げるようにマル チェッロにしがみつくのをみ て、あきらめて去るのだった(なお、ローマでは、アルキは、ディアナを始終本名の「アルテミス」で呼んでいた)。

 クリオは、なかなかア ルキがローマから戻ってこないので、ローマで何があったか気づく。どうやらディアナを追い払ったのは、クリオとアルキの父ティジ シアスも一枚かんでいたよ うである、何故彼は彼女を連れて戻ってこないの!そうすれば全て終わるわ!と叫ぶクリオに、アルキの父は、時間が必要だ、と注げ る。しかしクリオは、「運 命は許してくれないのね、私のためじゃなく、彼のためにローマへいくわ」といい、戦車を暴走させて海に飛び込んでしまう。
 
 10年後。

  ヒエロン死去をきっかけに、元老院でカルタゴを敵にすると演説するマルチェッロ。いまやシラクサは、ゴルチャ(ゴルディア)とア ルキメデスというカルタゴ 派の手に渡ってしまった。いままで何年も、ローマの開戦派とカルタゴの間で中立派としてシシリーの独立派だったあんたが、どうし て豹変したんだ?といぶか る元老院議員たちに、マルチェッロは、「これまでは確かに、シラクサはローマへの陰謀も、カルタゴへの接近も行わなかった。しか し、今、新しい情報提供者 が現れたのだ」。そして、更に情報を得る為に使者を送ることを提案する。じゃああんたの息子のマルコだ、周囲と言われ、マルコが シラクサ行くことになっ た。港でマルコを送り出すディアナとマルチェッロ。

 丁度その頃、シラクサでは、アルキメデスたちが、改良型集光装置の実験についに成功していた。下記がその改良型。

  シラクサに侵入したマルコはあっさり捕まり、次の月があがったら処刑する、と決定されてしまう。裁判で囚人のローマ人の名前が判 明し、驚くアルキメデス。 そこへ父のマルチェッロが艦隊を率いて来て、罪人を引き渡せという。条約を遵守せよというアルキ。息子はローマでスパイ罪で裁 く。返還されなければシラク サを滅ぼす、と通告してくる。結局開戦となる。 ローマ側の作戦は、一部の城壁に集中攻撃し、そのすきに2隻が壁に横付にし援 護、続いて最後の一隻も右側 から横付にし、上陸する、というもの。下記が城壁に向かうローマ軍艦。シラクサの城壁には、いくつもの太陽光集積装置が設置され ている。しかし、雲が出て いて、うまく機能できないうちに、ローマ軍船は計画通り接近する。

  桟橋つきのガレー船を城壁に横付することに成功し、上陸を開始。当初ローマが優勢だったが、その時空が晴れて集光機で船を焼きは じめる。船体に集光する と、船体に穴が開き、水が内部に入りだす。壊滅的打撃を受けるローマ軍。退却する。喜ぶアルキだが、やってきた父の顔が暗い。マ ルコは昨晩脱出した(実は ゴルディアが脱出させたのだった)、と継げる。すると、あの船の中にマルコが?私は息子を殺してしまったのか!と嘆くアルキ。下 記が実践配備された集光 器。

  ところがマルコは生きていた。艦隊が燃えたときはまだ島にいたのだ。その後艦隊に戻る。喜ぶ父と母(何故かディアナも戦場に来て いたのだった)。マルコは 悩んでいた。アルキは誰だ?あの深い秘密の知恵をもているような奇妙な感じ、裁判で私の名を知ったときの彼の目と態度。。。彼に 会いたい、話したい、と悩 む息子。父は、「大丈夫だ。彼の身は保全される。ゴルジャが守るはずだ」という。そして、地下からローマ軍がシラクサ場内に侵入 する。ゴルディアがローマ 兵をつれて執政室に来て、アルキに事情を説明する。君の身柄は保全される、というゴルジャに、黙って剣を渡すアルキ。そして対 決。アルキが勝つ。学者なわ りには随分とうまい剣の使い手である。まあ、相手がゴルジャだから勝てたのかもしれないが。。。そこにマルコがやってくる。マル コを射るシラクサ兵。幸い 射に肩にあたっただけだったが、そのままシラクサ兵が宮殿に突入し、(ゴルジャが引き入れていた)ローマ軍と乱戦になる。これで マルコとアルキが会話する 機会は失われてしまった。マルチェッロの(あれ?どこで死んだんだっけ?)死体を持って撤退するローマ軍。マルコは、父の遺体を 前に、ローマ軍に向かい演 説する。「彼は、シンボルとなる。ローマが、カルタゴからアレキサンドリアまで、ガリアからヘラクレスの柱までローマは進軍する 運命にあるということを」

 ラスト。どういうわけかアルテミス(ディアナ)とアルクが一緒にいて、マルチェッロの死を痛み、「まだ人生は続く」と言い、ア ルテミスは島に残りそうな余韻を残して終わる。

〜FINE〜


 基本的には、岩明均の「ヘウレーカ」と 同じ時期のシラクサを扱った話です。太陽集光器を使ってローマの軍船を焼くのや裏切りによってシラクサが陥落するのも同じ。時代 状況を知るには、「ヘウ レーカ」でも同じように役立つものと思いますが、違いの方もたくさんあります。たとえば、「ヘウレーカ」のアルキメデスは老人で すが、本作では、青年から 中年のアルキメデスが登場します。
 あまり画面ショットは取りませんでしたが、まあまあ面白い作品でした。英語か日本語字幕版dvdが販売されたら、購入するか も。

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