ビザンツ歴史映画「戦車を駆る女王テオドラ」

1954年フランス・イタリア製作・原題「Teodora, imperatrice di Bisanzio」。本作については、Weblioの映画情報に簡単なあらすじが 記載されていますし、他でも若干日本語のあらすじが記載されているサイトもあるようですが、vhsもdvdも英語版はなく、イタ リア語版のvhsが辛うじ て出回っている程度のようです。私は長らく、ソード・サンダル映画に偏見と先入観を持ってきましたが、本作で覆されてしまいまし た。今回ネットで見つけた 映画のうち、もっとも気に入った作品の一つなので、少し詳細を記載したいと思います。これは日本語字幕版dvdが出たら、 3000円程度以下なら絶対買い ますし、英語版dvdも再版して欲しいところです(ひょっとしたら、ヘラクレス映画のように、数十本まとめて20ドルくらいの dvd-boxに入って売ら れているのかも知れませんが。。。この内容でイタリア語版さえdvdが出ていないということは、版権が切れているのかも知れませ ん。他のGianna Maria Canale出演作はdvdやvhsが出ているのですから。あくまで推測ですが。)

 本作は、1時間半程度ですが、二部構成となっています。第一部は后妃となるまで、第二部は、ニカの乱を鎮めて安定した治世を出 発させる迄。下記は前半後半それぞれの、テオドラの活躍場面のカット。
 戦車競技に出場してしまうテオドラ。

 ニカの乱を鎮めるべく、バルコニーから反乱軍に演説するテオドラ。

 以下詳細なあらすじです。
 
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 教会で、壁画に埋め込まれたテオドラのモザイク画を見上げるユスティニアヌスの回想から始まる。

 場所は戦車競技場の周囲。次回開催される戦車競技を巡って、緑・青組の賭け師、賭けに参加する人々、競技場前の市場など、所狭 しと店が並び、人々でにぎわっている。

 ローマ将校アンドレイはスリの女を捕まえる。彼女を追って屋内飲み屋へ入るが見失ってしまう。酒場ではダンスの時間となり、踊 り子としてテオドラが登場する。

  それを食い入るように見ている一人の男がいた。それがユスティニアヌスだった。踊りの後、二階の納屋のようなところに上がるテオ ドラを追ってユスティニア ヌスも上がってくる。そうして多少言葉を交わしただけで、抱き締めあうのだった。踊り子として、金持ちそうな乗客をつかまえてお くためのサービスのよう だ。私はおなかがすいていて、父はサーカスに出てくる猛獣のトレーナー、など身の上話を始めるテオドラ。ユスティニアヌスはメダ ルをプレゼントする。とこ ろが、いきなり女は去る。ユスティニアヌスが追いかけると、酒場では小熊が酒を飲んでいたり、煙で占う女がいたりして、テオドラ の姿は見つからないのだっ た。その酒場では、占い師がテオドラの妹を前に、「お前の姉を占ってやる」と言って占いをしている。妹は、手を汚してでもチャン スをつかもうとする上昇志 向の姉に反感を持っているようである。

 宮殿に戻ったユスティニアヌスは王座に座る。下記が宮廷の様子。一番奥に皇帝の王座がある。

 その皇帝の座。結構な高さである。転げ落ちたらただでは済まない高さ。側近を買収すれば簡単に暗殺ができそうである。

 大上段の王座の皇帝。接近すると、こんな感じ。

  その後のある日、テオドラがいつものように街をぶらついていると(スリ稼業に出ていたのかも知れない)戦車がきて、テオドラを乗 せて連れて行くのだが、ど うやら警備隊将校アンドレイに見つかったようで、逃げ出す。とうとうサーカスの地下の奥まで追い詰められ、猛獣(熊)を入れてあ る檻に入ってやり過ごそう とする。女を逮捕しろ、とアンドレイアと兵士が入ってくる。アンドレアは熊などものともせずに檻に入る。とうとう捕まってしまう テオドラ。アンドレイア は、地下にいる人々に、この競技は違法だ、といって去る。

 宮殿。酒場で捕らえられた男が裁判を受けている。男の裁判が終わり、続いて入ってきたのはテオドラだった。
皇 帝もテオドラも、以前会ったことを思い出し、両者驚く。とはいえ、判決はどうにもならない「レジーナの長女。メダリオンの盗みで 逮捕」。と、ユスティニア ヌスが贈ったメダルまで盗みということにされ、有罪となって牢獄に入れられることになるのだが、見苦しくいつまでも抵抗するテオ ドラ。牢屋につれてこられ てもまだ騒いでいるのであった。

  裁判で、メダルを誰からもらったかは言わないのはえらかったが、この後見ていると、やっぱり悪女なテオドラなのだった。牢屋は個 室で、わらぶきのベッドも ある。一応女性だから特別扱いの模様。一方、テオドラの情人が、釈放を願い出る。そして地下牢へ行くと、テオドラは既に脱走して いたと判明した。買収され た牢番が逃がしたのだった。情人が家に戻ると、既にテオドラがいて、「お前とアジアに逃げるつもりだったのに、もう自殺しなく ちゃならない」という情人に 一服盛るテオドラ。「毒を盛ったな」と崩れ落ちる男を前に高笑い。。。ひたすら悪女な感じのテオドラなのだった。。。(下記は嘆 いているのではなく、高笑 いしているところ)


 一方戦車競技場では、皇帝が次回の競技に出走すると宣言。練習を始めていた。この戦車競技場は、実物大セットのようで、群集も 多く、迫力があった。

 練習する皇帝。

 戦車競技の当日。競技場の全景。結構よくできている。

 満員の観客席。カメラが観客席を端から端まで追いかける場面がある。かなりなエキストラを雇った模様で、なかなかの臨場感。

 皇帝自ら出場。このときはちゃんとユニフォーム着ている。ところが、競技開始直後、なんと戦車に乗ったテオドラが競技場に乱入 に、競争に参加してしまうのだった。

 観戦席で見ていた母親。「あら、私の娘よ!」と叫ぶ。そしてあろうことか、デット・ヒートを続けた末、皇帝を抜いてトップで ゴールインしていまう。そのゴールインの瞬間。 優勝に母は大喜び。妹もまあまあ喜んでいる様子。

 優勝したテオドラ。二位の皇帝に不適に微笑みかけるのだった。

 皇帝からの夜会の招待を「明日にして」と、どこまでもずうずうしいテオドラ。そして宮殿でヘンな風呂に入っている。 こんな シーンは今後ユスティニアヌス時代の映画が作られるとしても空前絶後かも。

 妹と母も宮殿に招待されており、笑顔。どんな手口を使って出場したかはともかく、レースではこずるいことをせずに勝ったので、 妹も少しは姉を見直したようである。


 
  夜会で、「褒美はダンサー達にあげて」というテオドラ。そこに戦車旗手の、テオドラの元情人が陳情にやってくる。殺したのではな かったらしい。どうやら情 人から逃げる為の眠り薬だったようだ。ユスティニアヌスが規定通り罰するように、というと、何も言わずに引き下がる元情人。高官 が「テオドラのリアクショ ンは何だったのですか」と指摘する。罰ってなにをするの、とテオドラ。すると、高官は、短剣をかざして黙って床に落とす。「何も そこまでしなくても」と案 外やさしいテオドラなのであった。心配なテオドラは、一人、バルコニーへでて物思いにふける。

 そこにやってくる皇帝。衣装が見所。

 罰するのをやめた、という皇帝に笑顔で答えるテオドラ。

  でも「アナトリアでの過去は忘れるように」と言われ、またもすました表情になるテオドラ。私も家族もキリスト教徒よ。 united とは一緒になれない(テオドラ)。何?ははっははははははは(皇帝)。気を悪くするテオドラ(テオドラは若い頃、一時期結婚していて、アレキサンドリアに いたため、単性派に同情を寄せる傾向があったとされており、unitedが単性派を意味するのだとすると、辻褄が合わないのです が、このあたり、よく聞き 取れませんでした)。


 ベリサリオス登場。奴隷を解放して蛮人にあてましょう、と提案する。

 その頃既に、テオドラは皇帝と結婚していて、王座の横に座っているのであった。

 宮殿の様子も結構リアルっぽい。数人の家臣だけしか登場しない作品もあるが、本作では、大ホールの2階席にも、元老院議員と思 われる姿の人々や、妙な髪形をした女性達までが、見学しているのである。


 テオドラの髪型も、日本髪のようで結構ヘンである。スターウォーズのアミダラ姫みたい。

ちなみに、戦車競争の時の、この観客の帽子も凄い。

 夜。御者の元カレ。短剣をもってテオドラの寝室に侵入してくる。そのテオドラの寝室。このセットも見もの。

 元カレはアーガーという名前らしい。自信満々で「ここを刺して」と胸をつきだすテオドラ。
 

  腰を手にあてて啖呵を切るところが結構イイ。更にのうのうと、運命は変えられないのよ。などとのたまう。お前の目的は贅沢な暮ら しだろう。と言われてそれ で?と開き直って啖呵を切る。私は民衆の声を代弁しているの。天なる父がいうの。あんたのことは兄のように思っているのよ。とい うところは本音そうでかわ いい。いいかんじで凌げると思ったところに、偶然にもユスティニアヌスが部屋に入ってきてしまう。信じられん!と突き放す皇帝。 床に泣き崩れるテオドラ。 かなり本気に見える(とはいえ、この時点では、あまりの豹変振りに、分裂症なのか?とも思えなくもないのであった)。
 下記は宮殿内。壁画の感じがいかにもビザンツ。

 ところが宮廷内では陰謀が進行していた。そして、テオドラの妹は、いつもまにか、その陰謀者の愛人かなにかになってしまってい たのだった。

  反乱はまず、戦車競技場で元カレが民衆煽動を起こしたところから始まる。彼も陰謀者に利用されたよである。そして同時に宮殿でも クーデターが起こる。反乱 の知らせに、「お前が正しかった」「ここに残れ」というユスティニアヌス。しかし、皇帝がテオドラの寝室にゆくと、テオドラはど こかにいってしまっている のだった。

 競技場に集まる人々。カッパドキアのジョバンニ(恐らく財務官ヨハネスのこと)の名前が出ているので、陰謀の首謀者はジョバ ンニだと知れる。ただし、この反乱の規模は少し期待外れ。戦車競争の前の日のイベントの時の方が群集が集まっていた。戦車競争前 日の場面でそのままニカの 乱を撮影してしまえばよかったのに。。。
 まあとにかく、競技場の巨大像の下で先導しているのは元カレのアーガー。主に緑組の人々が集まっている。

 そこに、皇帝のバルコニーに駆けつけたテオドラが、集まった群衆に向かい演説を始める(当時の宮殿と戦車競技場はつながってい たのである。皇帝と家臣が宮殿から競技場の皇帝席と貴賓席に出れるようになっていた)。

 こぶしを打ちつけて説得するのはなかなかの迫力。この手のドラマの大仰な演技とは少し異なって、必死な感じが良く伝わってき た。
 反乱軍を説得し、「ベリサリオス将軍が待機している。煙をあげたら合図になる」と、戦車競技場で木を燃やして狼煙を上げ、民衆 とともに剣を持って宮殿になだれ込むテオドラ。「私についてきて!」とカッコいい。

  郊外で待機していて将軍は、合図の狼煙を見て宮殿に突入する。テオドラ達は、競技場の地下の檻にいる猛獣も馬も逃がして、クーデ ター軍を混乱させる作戦に でる。更に地下を走り回る四頭立ての戦車。テオドラも剣を持って戦う(えっ?死んだらどうする)。アーガーが討たれて駆けつけ、 涙を見せるテオドラ。あな たのことは忘れない。と遺体の唇にキスしているところに、またも偶然にユスティニアヌスがジョバンニらと現れる。ユスティニアヌ スは去り、以前テオドラが 買収した牢番が現れる。彼は、テオドラを逃がした責任を取らされ、両目を潰されていた。ゾンビのように、両手を広げて、テオドラ の居場所を探りながら近づ いてくる。一方、漸くベリサリオス将軍の隊が競技場に到着する。「誰の命令で動いているのだ」と問う皇帝に「后妃の命令で」と答 える将軍。競技場の地下を 逃げ続けるテオドラ。ベリサシオスに全てを聞き、ジョバンニを問い詰める皇帝。その間にも一刻と追い詰められるテオドラ。行く手 を兵士が取り巻き、兵士が 盾と槍で袋小路を作る。そこに迫ってくる牢番。殆ど(古きよき)ホラー映画である。

 しかし、地上ではジョバンニがとうとう告白し(というか、これまで腹にたまっていたことをぶちまけ)、皇帝はテオドラを助けに 向かう。間一髪!皇帝の槍が牢番を突き刺す。

大団円という言葉がふさわしい幕切れだった。

  冒頭、皇帝の回想場面に戻る。皇帝の髪にも白いものが混じっている。そして、てっきり死去したテオドラを偲んでいるのかと思って いたら、後ろからテオドラ が近づいてきて、皇帝の肩を抱きしめるのであった。テオドラの髪にも白いものが混ざっている。そうして、2人して、完成した、2 人のモザイク(ラヴェンナのサン・ヴィターレ聖堂の有名なモザイク)を眺めるのだった。

〜END〜

 見ているうちにSS映画の魅力に洗脳されました。楽しめました。
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