ポーランド歴史ドラマ「王家の夢」(1420年頃-1434年)

   ポーランド王ヴワディスワフ・ヤギェウォ王晩年(69歳頃から84歳/1420年頃から 1434年)を描いた作品。1988年ポーランド製作。一話約68分、全8話、合計約550分。

  ヤギェウォ家は中世末期から近世にかけてのポーランド全盛期の前半(1386-1572年)を担ったポーランド史上だけではな く、東欧史上の輝ける王朝で す。本ドラマは、貴族の力が強力になり、国王は、外国との縁戚関係による外交交渉力を重要視されていて、王位は貴族の選出によ り、その時の国際情勢によ り、有意の人物に与えられる風潮が強まった時代に、子孫に王朝を継がせて安定を図ろうとした、ヴラディスワフ晩年の王家の努力を 描いています。これが、題 名の「王家の夢」の意味です。

 外交関係重視で起用された、まるで外務大臣のような国王。こうした風潮は、当時ポーランドだけではなく、 東欧には一般的なものでした。この風潮のお陰で、チェコのプシェミスル家は1306年、ハンガリーのアルパード家は1301年、 ポーランドのピヤスト家は 1370年と、建国以来400年程続いた各王朝は、ほぼ同じ時期に断絶します。外務大臣的扱いなので、同君連合といっても、国王 が強力に国内を把握できた わけではないので、近世ハプスブルクの、ハンガリー王兼オーストリア大公、というものとは大分性質が異なるものの、勢力のある王 家だからこそ、各国に迎え られた点は間違いありません。その、くるくる変わるこの時期の同君連合を、地図を用いて整理してみたいと思います。下記の2枚の 地図は、ハンガリーの 「TŐRTÉNELMI VILÁGATLASZ」(歴史アトラス)KALTOGRÁFIAI VÁLLALAT(ワールドビジネス地図出版社 1991年、ブダペスト)」のp33と40頁から引用したものです。

 最初のものは、14世紀の状況です。この世紀は、フランスのアンジュー家とルクセンブルク家がもっとも成功を収めていたと言そ うです。地図中、色 の部分が、アンジュー家。フランスにある本拠、南イタリアのナポリ王国、ポーランドとハンガリーがアンジュー家の支配下にあり、 1246年には南仏、 1265年にはシチリア島も支配化においています。その後、シチリア島とサルディーニァ島はスペインのアラゴン家に渡ります。ス ペインのレコンキスタは、 最終的には1492年にグラナダ王国が消滅して終了しますが、グラナダ王国の領土は、13世紀中ごろには、グラナダ周辺の一部だ けに縮小しており、13世 紀中頃にはスペインの統一はほぼ終了していました。後にカスティーリャ国と合併するアラゴン国が、この時期、既に地中海に勢力を 伸ばしていた様子もわかり ます。

 14世紀後半にはルクセンブルク家(が 台頭し(本拠は濃いピンク、薄いピンクが国王に即位して支配を拡大した部分)が、1310年チェコ、1327年(現ポーランド領 の)シロンスク(シュレー ジェン)、1373年ブランデンブルグ、1387年ハンガリー王位を手にし、アンジュー家に変わり一気に勢力を拡大します。

そのルクセンブルク家も、下記地図では、ハプスブルク家の台頭(がスペインハプスブルク家(南イタリア含 む)、がオーストリアハプスブルク 家。なお、ブルゴーニュ公国の一部は、ピンク色に見えるが、この部分はオーストリアハプスブルク家領)により、15世紀はハプス ブルクとヤギェウォ家(部分)が勢 力を伸ばします。人口はともかく、面積で言えば、この時期のヤギェウォ家は、欧州では大変な大国だったと言えそうです。

  しかし、このように、ころころ王家が入れ変わる中、ハプスブルク家が領土保全に大変な努力を傾注したように、ヤギェウォ家もま た、王家存続について、大変 な努力を行っているのです。そうした背景があっての、本作の題名「王家の夢」。それは、晩年(69歳)になったヴラディスワフに は10代の娘しかおらず、 ラヨシュ1世時代のように、娘の夫の王家に、王朝を明け渡す可能性が濃厚となってきた時期のヴラディスワフと娘ヤドヴィカ、4度 目の妻となったゾフィアそ れぞれの夢からなる「王家の夢」を意味しているのでした。本作は、そんなヴラディスワフ晩年に、苦難を乗り越え、何度も起こる危 機を乗り越え、遂に長男を 後継者にすることに成功する王家を描いた作品です。

 私は本作を大変気に入りました。残念な事に、本作を観てから一ヶ月もたたないうちにネットから削除されてしまいましたが、英語 字幕版dvdが出たら、是非購入したいと思います(視聴したのも英語字幕版)。

 特に、本作で毎話冒頭で流れるオープニングは、本作全体のトーンの雰囲気が良く出ていて、好きな場面です。蝋を溶かして印章を 作るというだけの場面なのですが、優しげな音楽とともに、印章が作られてゆく場面は、印象的です。

 この部分を含めた第一話の最初の10分間は、削除されずに残っている為、番組宣伝の為に残されたのだと解釈しています。そこ で、この部分についてはリンクしますので、ご興味があればご覧ください(こちらです)。
 以下あらすじをご紹介いたします。


 各話の題は、私が勝手につけた内容の要約です。

第一話 偉大な王の晩年の悩み

  冒頭、ヴワディスラフ三番目の王妃、エルジュビエタの崩御の鐘の音に喝采する貴族たちの姿から始まる(エルジュビエタは45歳で 65歳のヴワディスワフと 結婚した為、貴族に批判されていた)。13歳の一人娘ヤドヴィカは、父に、「私女王になりたい」と告げる。この時王が、「そうだ ね」と答えてしまったこと から、この後の諍いの種の一つが蒔かれることになるのであった。王は議会を開き、後継者を審議する。下記はその議会に出席してい る貴族達。この時代のポー ランド貴族の装束は初めて目にしたので興味深い。

 真ん中が王ヴワディスワフ。右が従兄弟のリトアニア大公ヴィトルド。字幕に出てきた称号は下記。

 Rex Polonia et Supremus Dux Lituanie , Vladislavus Jagiello(ポーランド王兼最高のリトアニア大公)
Magnus Dux Litanie , Alexander Vitold(リトアニア大公)
 議会では、王女の結婚の協議がなされる。議会開始とともに王冠を取る王。重いのだろう。様々な意見が出る。
  ブランデンブルクのフレデリックが良いだろう。そこでフレデリックはポーランドに来て、習慣と言語を学ぶべし。
  王は王座をおり、リトアニアに戻るつもりなのではないか。
  ドイツ人はポーランドの王座にはいらん。

など意見が出る。

  王の意見。
   「ブランデンブルグはポーランドにとって危険であるとともに、騎士団にとっても危険だ。ポーランドーブランデンブルク同盟 は有用だ。ブランデンブルグをドイツ騎士団から切り離すことができよう」

 家臣:他の提案もあります。再婚することです。
 王:わしはもう年だ。王女の婿候補は他にあげてみよ。
 家臣:ジギスムント(ルクセンブルク家の。当時ローマ王(=当時のドイツ王の正式称号)の宮廷から来た男がいる。
 王:ジギスムントは法皇マルティンの戴冠をしていない。彼は皇帝ではなく王である。
 
 そこに皇帝ジギスムントからの使者が入廷してくる。
 使者が皇帝、と口にすると、ヴラディスワフは「まだ王だ」と訂正する。
 使者:ジギスムントの娘エリザベスにはハンガリーとチェコの王冠と多くの州を与える予定である。
 王;王女は11歳だ。私との間に子供ができるとお思いか?
 使者:(どもりながら)3,4年以内には。。。 
 王:そんなには待てない!そもそも年長の従姉妹が(娘ヤドヴィカの)義母なんてありか?
 使者:ローマ、ハンガリー、チェコではある。王には別の提案もある。
     Ofkaはどうでしょう。ヴァーツラフ王の夫人は未亡人です。
 家臣:子供の地位にある年寄り女か?
 王:誰が彼女の愛人だったか知っていれば。。。。 
 使者:シレジアは彼女の領地の一部だ。
 議会;ルクセンブルクは信用できない!シレジアは欲しい!
 王:私のいとこたちとシレジア王妃は「ライヒ」に共感している。

以 上の結果、家臣をシレジア王妃の面通しにいかせる。変装していないかどうか確かめに。ヴァーツラフはアル中でひどい男だった。水 しか飲まない王が彼女には いいかもな。(王は水ばかり飲んでいる。これは全編通して出てきて、ポーランドを訪問したジギスムントにも皮肉られている)

 当初は王女の花婿候補を探す筈だったのが、国王の再婚が決定され、シレジア王妃に候補は決まった。

 夜職人小屋で職人達と飲む王。皆はビールで王は水(下記右側が小屋の寝台に倒れこむ王)。

  職人の中に、英国人の設計者がいた。そこで王は、我々the Giedymins は英国王ハロルドの子孫だ、という。William Bstard(1066年のノルマンによる英国征服)によって英国を追われた。という王。続いてジグムントはプラハを攻撃しているという話題となる(言語 によってシギスムントやジグムントと使い分けている凝った演出となっている)。 家臣は、シレジア王妃を見たことがある、とい い、家臣は、「王はきっと彼 女が気に入りますよ」という。ため息をつく王。いったん職人小屋はお開きになり、ひとりで別の小屋に行く王。そこには英国人の ウィクリフ派(清教徒)と思 われる人が王に考えを説く。アニミズムや偶像崇拝を否定する。王は溜息まじりに十字を切る。私の母は正教徒だったという王。母が 十字を切るのを思い出した らしい。私もイコンは好きだ。父は異教徒だった。十字軍は法皇に払う金を持っているが、うちは借金ばかりだ(冒頭の方で、法王の 借金催促を延期するよう口 述筆記させる場面が出てくる)。
 職人:5千人のリトアニア人がチェコに侵攻してますよ。Korybutが報告している筈です。korybutはチェコの宗教に 改宗したとか。
  王:読んどらん!ヴィトルド(リトアニア大公)の責任だ!そういえば、英国人よ、煉獄は無いといったか?リトアニアではそんなこ と話したことも無い。職人 小屋を後にし、隣の王用の小屋の王の部屋でそのまま寝る王。イエスキリストよ、私にも慈悲を、といって小屋で寝る王は親しみがあ る。というわけで、晩年の 王の悩みと背景がわかった第一話だった。しかし、偉大な王の晩年は大変だなぁ、と思った次第。


第二話 結婚式

 第一話に引き続き、王は小屋で寝ている。ルクセンブルクがチェコによって破られた(フス戦争の勃発)、という報告が来る。飛び 起きる王。チェコの王冠はあきらめなきゃいかん。
  そこにシレジア王妃やリトアニア大公の姪ソンカなど、候補者を見てきた宰相格の司教ズビシュコが帰国。ソンカはOfkaとは比べ 物にならないというズビ シュコに、お前はどっちを望んでいるのだ。シレジアと寝る事か?女と寝ることか?と返す王(シレジアを手に入れることか?後継者 を得ることか?という意 味)。家臣たちは、美しい方が我々もやる気がでるし、王も若返る、とかいう。

 王:リトアニアに狩にゆくぞ。
 一同:議会は?
 王:お前達だけでやっとけ。

  そこに娘がやってきて、「一緒に狩にいっていい?」「私が将来女王になるっていったでしょ?」とすがる娘に、王「忙しいのだ」と 取り合わない。娘ヤドヴィ カの「女王になりたい病」は、番組の進行とともに、エスカレートし、遂には「王妃は私に毒を持っている」と、食事も取らなくな り、衰弱して亡くなってしま うのだった(第七話)
 
 結局最終候補となったのはリトアニア大公夫婦の家で育てられてる姪のソンカ(ゾフィア)。いい年して(この時1422年、17歳くらい)雪の城でブラ ンコ遊びをしていたら、育ての叔母(大公妃)に尻を叩かれるのだった。

  老人(ヴラディスラワはこの時71歳)との結婚をソンカが渋ると、「もう処女じゃないでしょ?」という叔母。「私、バージンよ」 と答えるソンカ。聖書を 持ってきて誓わせる叔母。あっさり誓う娘。リトアニアは公だけど、直ぐ王になるわ。ポーランドは女性が尊敬されるわ?奴隷ではな く、ladyとして。とソ ンカを説得し、結婚にこぎつけるのだった。実はソンカには親しいお付の青年ニノシュがいた。彼は連れてゆくな、と言う周囲こ声を スルーして連れてゆくソン カ。

  王が初めてソンカにあった時、ソンカはアレクサンドル・ネフスキーの本を読んでいた。ヤドヴィカ(最初の妃)は32冊の本を 読んでいた、という。突然キスする王。なあんだ。美人には弱いんじゃないの。
 
 そのソンカとヴラディスラワの結婚式。屋内の映像は、このような間接光中心のものが多い。映像的にはリアルな感じ。

 結婚式でのリトアニア大公ヴィトルドとその妻(ソンカの叔母)。

 
 王とソンカの初夜。薔薇が敷き詰められている。部屋の外では家臣たちが聞いているので、ソンカは緊張しっぱなし。そこで王は、 特になにもしないまま、叫び声を挙げろという。で、あげてみると、ドアの外の臣下が杯を持って待っていて、みんなで祝うのであっ た。

 またブランコで遊ぶソンカ。それを押す王。年は大丈夫なのか!?


第三話 ドイツ騎士団との戦争

 娘ヤドヴィカは8歳のブランデンブルグのフレデリック・ホーエンツォレルンと婚約することになった。王子がクラクフに来る。以 下がクラクフ城。

 この時はドイツ語の通訳が入っていた。いきなり「裸を見たい」「まだ好きかどうかわからない」と正直な少年王子。通訳は、「気 に入りました」と訳すのだった。更に王子は王に向かって、「いつ死ぬんですか?」と聞く。王 「そのうち。結構直ぐ」 「待てな いよ」と王子。

 ついで、ドイツ騎士団との戦争になる。下記がその騎士団。

  ソンカの従者ニノシュも従軍し、初めて人を殺し、激しく動揺する。王は陣営で、現地の捕虜の娘を世話係りに使っているが、色々う るさい娘。王が水くれと いっとるのに、捨ててしまい自分はワインを飲んでいる。水をくれといっている王に、毒が入っていたらどうするの?という娘。王 は、3,40年ワインを飲ん でなかった、と答える。そして、世話係から、戦争でワイン畑が荒廃し、夫達は戦死し、もう生活できない、という話を聞き、王は一 帯の未亡人を捕虜として、 クラクフに連行し、土地を与えてワイン畑を作らせるのだった。その後、クラクフに戦場から使者が来て、騎士団が平和条約を結ぶと のこと。調印式(1422 年ミェルノ湖の講和)。税金なしの旅行・通商の自由が取り決められる。下記は、条約文書に添付する、暖めた蠟が封泥入れに注がれ るところ。

  一方、王が戦場にいるうちに、クワカウでは過激な原理主義的司祭(フス派)が王宮で講義。王妃に、真珠・宝石を捨てよ!と迫る が、一人の中年家臣が反対す る。「今は世の終わりではない。王国は繁栄に向かっている。キリストが笑わなかったとは思わない。着飾っている王妃を見るのは喜 びだ。神でなかったら、誰 が作ったというのだ。この家臣、ヒンツェは、熱烈は中世的騎士道ロマンスの愛好者で、実際は王妃の愛人になりたいわけではなく、 「王妃へ身も心も捧げる騎 士」に憧れているだけなのだが、同様に王妃に横恋慕するスタンツェという家臣の嫉妬に会い、後々酷い目にあうのであった(第五 話)。

 本回の最後で、王の元を訪れた王妃と、初めて初夜を迎えるのであった。

第四話 王妃の戴冠と懐妊

  王妃戴冠をしに、ジギスムントとバーバラがハンガリーから到着する。シギスムントはまだ皇帝戴冠(1433年)していないので、 正確はローマ王兼ハンガ リー王なのだが、ポーランド側は、事実上の皇帝扱いすることで、王妃の戴冠と交換条件にしたようである。両方の家臣達が、歓迎セ レモニーについて細かく打 ち合わせをする場面が面白かった。間違えると無礼になってしまう。王は皇帝を迎え、王妃は皇后を迎え、会食での座席の位置や、鐘 を鳴らして歓迎する、など 事細かに手順が決められる。更に、皇帝側は人質を要求。皇帝夫妻の滞在期間中、王女ヤドヴィカをPreszburgへ移して欲し い、とドイツ側が提案。対 案として、デンマーク・スウェーデン・ノルウェー王のエリックがこの時クラコフに滞在中だったので、彼を人質扱いとすることで妥 結するのだった。

   馬車で会話するジギスムントと王。我々は二重に縁戚関係なのだ、ということを、どういう経路で縁戚なのかを懸命に王に説明しつ つ、たまに沿道の人々に手 を振る皇帝。一方夫人の馬車には王妃が乗り、王妃は、トスカーナからのイケメン騎士など、いい男どこかにいないかしらぁ、と始終 ハイな感じ。駆け引きの緊 張感のある皇帝馬車と比べると、こっちは気楽な感じ。以下が王と皇帝。

 こちらは王妃と皇后。

 (事実上の)皇帝シギスムントに戴冠される王妃ソンカ。

  その後の祝宴。ヴラディスラフに向かって、あんたが私を望めば、ジグムントに毒を盛るわよ、など、皇帝の前でいい男探しな皇后。 皇帝は乾杯し、「いつも水 ばかり飲んでいる王に」と杯を掲げる。旦那を時々取り替えましょうかという皇后。(いつまでその話題を続けるんだ、皇后)。王妃 が二ヶ月毎に取り替えま しょうか、というと、一ヶ月よ。などと皇帝の前ではしゃぎまくる后妃。ヴラディスラワとソンカは眉を顰め、皇帝夫婦の冗談につい ていけない感じなのだが、 皇帝夫妻はおしどり夫婦といった感じである。

  ダンスの時間。一人だけ踊らない王。王妃に向かって、覚えるには遅すぎた。という。ヒンツェが緑の服を着ている。スタンツェが、 あれは愛の証ですと王に告 げ口すると、王は、臣下が王妃を愛するのはよいことだ、と答えるのだった。皇帝が帰国した後、式典にいくらかかったのか王妃が聞 くと、王は2万グロシュと 答える。そして「息子欲しいわ」という王妃とベッドイン。次の場面では息子が生まれているのであった。

 写本室の王の机。王女の婚約者・ 王子フレデリックがやってくる。ポーランド語を学ぶのは嫌だという。私はどうせここでは(ソンカに息子が生まれたことで)王にな れないし。という王子。王 は、フレデリックととヤドヴィカには代償として10万ズロチを与えるというが、彼女は美人じゃないし、僕より年上だ、と告げ、ヤ ドヴィカのところに行き、 国に戻ると告げる。ヤドヴィカもあっさり、「よいご旅行を」で婚約は解消されるのだった。

  王妃とブランコのところで話す王。「おまえじゃこのばかっぴろい国を治めるのは無理だ。中国の国王は首都を去らずに治めることが できるそうだ。ペルシア王 はサトラップに任せている」などと、統治の方法を王妃に教える王。「昨日の敵は今日の同盟者。誰かを競わせる」とも。これが段々 効いてきて、ソンカは政治 家としての顔を見せ始めるのだった。


第五話 陰謀

 王妃に相手にされないスタンテェは、遂に王妃の取り巻きを告 発する陰謀を開始する。王妃は二人目の子供を懐妊していたが、これは取り巻きの誰かの子供だ、という風評を流し、陰謀者のリスト を王に渡す。全員ズビシュ コの政敵だな、と指摘する王。とりあえず一斉検挙を行わざるを得なくなる王(黒という証拠はないが、白という証拠もない)。

  床屋に散 髪してもらっている時に、人々は何と言ってるか?と床屋に聞く王。床屋曰く、「嫉妬でしょう。王妃は慕われてますからねぇ」。続 いて、司教と、亡き王妃ヤ ドヴィカの列聖について会話する。「今ヤドヴィカを列聖したら、王妃への嫌がらせと人は見るだろう。不安と悩みは何時まで続くの だ?」と司教に列聖延期を 提案するのだった。そしてついに王妃の筆頭侍女2人が拷問の上、王妃の密通を告白する。しかしこれには少し経緯があり、筆頭侍女 カタリーナは、不義の子を 身ごもり、従者ニノシュと結婚させされた挙句、流産し、真面目なニノシュは、胎児の頭骨を前に祈り続ける、信仰ノイローゼになっ ていたのだった。調査員が 王の元に来る。調査員曰く、ヒンツェは逮捕された時、王妃の部屋で、王妃と侍女達を前に、「薔薇のロマンス」という本を読んでい たが、これは密通を賛美す る文学です。しかしヒンツェが実際に密通を意図していたとしても、こんな本を読んでる段階では、まだ密通などしていなかった筈だ と告げる。王は町の様子を 見て歩いた後、牢獄のヒンツェを訪ね、拷問されていることに怒り、ヒンツェを釈放(軟禁)させるよう指示し、クラカウ市内に、ヒ ンツェに詫びるという布告 を出させる。更に、王妃の7人のメイドが、スタンツェが王妃の名誉毀損したと宣誓したとの報告が来る。こうして、ズビシュコと司 教主催で、メイド達とヒン ツェが、十字架に宣誓する儀式が行われ、全員が王妃に落ち度が無いと宣誓。そしてスタンツェも宣誓してこの事件は終わるのだっ た。

 さ て、いよいよノイローゼが深くなった娘ヤドヴィカは、王妃が毒を持ったと騒ぎ出す。なだめる王。そこに侍女ケイトが、ニノシュが 自殺したと告げに来る。部 屋に向かい遺体を目にし、「この世界は狂ってる!」とうめく王。ニノシュは信心深いあまり、アンチクリストの到来を強く信じてい て、自分の中にアンチクリ ストがいると思っていた。世界を救うために自殺したのだった。

 この回は、王妃に2人目の男の子が生まれたところで終わる。

第六話 リトアニア大公ヴィトルドの野望

 今回の王家の苦難の種は、リトアニア大公ヴィトルドである。
 大公ヴィトルドはノヴゴロドを攻撃していた。ノブゴロドの使者が来て荷物二台分の貢納品を贈られ、休戦する。以下はその使者。

  自宅に戻ると、妻のアンナは不満たらたら。こんなに貢献しているのに、大公と国王という差がありすぎる。王として戴冠すべきだ と。ところが、それをポーラ ンド側の間諜がちゃんと聞いていて、ヴラディスラワは先手を打って、皇帝と王と大公の会議を開く。大公は皇帝の買収に800シル バー片(100数村分との こと)を贈る(ヴィトルドの母はモスクワ大公妃で、娘もモスクワ大公ワリシー一世妃とのこと)。ヴラディスラフという邪魔
が入ってしまったので、 皇帝夫妻に、大公の戴冠について、ポーランド国王夫妻を説得に訪問してもらう。ポーランド議会ではヴラディスラワが、「皇帝は ポーランドとリトアニアを分 裂させる為に来たが、われわれの統合を促しただけである。、ヴィトルドはヴラディスラワよりも5歳年上で、男子がいない。王冠は 王妃とその息子に戻り、両 国は統合される。フス派への支援を行う」など方針を提案し、議会で検討される。下記はリトアニア大公ヴィトルド(右)と、リトア ニア兵士。軍装が参考にな る。



第七話 リトアニア大公シュヴィトリガイラの野望(1)

 今回の王家の苦難は、ヴィトルドの野望の続きと、彼の死後、大公位を継いだ、ヴラディスラワの弟、シュヴィトリガイラの野望。

  ヴィトルドは、既に王冠を祝うための諸侯へ招待状を出してしまっていた。そこにポーランドから、ポーランド王位継承の話を伝えに 使節が来る。続いて皇帝の 使者が来るが、この使者はみすぼらしい姿。ポーランド国境の護衛兵に身包み剥がれてしまったとのこと。剣、靴、衣服を剥ぎ取り、 ぼろを着せられた。羊皮紙 も盗られた、という。その場にいたポーランド使節は、「彼らは使節だといわなかったので法律に従って対処した。彼らは逮捕され、 罰を受けた」と主張する。 (事実上の)皇帝の使節は、王冠は持っていないが、密輸を手配した。皇帝からはこの、”Dragon Society”のペンダ ントを送る、と使者が差し 出す。ポーランドの使者が、それをつけると皇帝への忠誠とみなす。皇帝との条約の羊皮紙も見たいか?と、殆ど力づくで大公を脅す ポーランド使節に、断らざ るを得ないヴィトルド。交換条件に、大公からは、リトアニア市民に、王子を見せて欲しいとの要求が来る。ヴィトルドはヴラティス ラワの元を訪問して、もう 皇帝にも招待状を出していたのに、と苦情を言うが、結局丸め込まれてしまうのだった。

 そこで今度は、王弟シュヴィトリガイラを買収しよ うとするがここでも失敗。そのまま寝込んでしまう。見舞うヴラディスラワ王。昔話(まだ彼がヤドヴィガと結婚する前、リトアニア がポーランドに侵攻した時 の話など)をして懐かしむ。そしてヴィトルド死去(1430年)。大公位には、ヴィトルドとヴラディスラワに9年間も投獄され鎖 につながれた、ヴラディス ラワの弟スキルガイラが即位した。シュヴィトリガイラは、誰かがお前を憎んでいるかも知れないと、と護衛をつけ、事実上王を軟禁 する。帰りたいんだ が。。。という王に、弟は、何故そう早く帰りたがるのだ?王がいなくちゃ何も進まないのか?王妃がおまえを恋しがるのか?と惚け る。私は逮捕されたのか? どこのくらい監禁するのだ?9年間かな?ととぼけたように言う王。

 クラコフの王宮では王妃中心に会議が開かれる。王は帰還する気がある のか?リトアニアでハッピーなのでは、と言う臣下に、王の飾りを見せて、これは戻ってくるサインです。という王妃。「獅子の穴」 に送る使者が議論される。 ヒンツェが使者に選ばれ、国境まで軍を送ることに。しかしヒンツェはリトアニア軍に捕まってしまう。板に縛り付けられ、大公に拷 問されるヒンツェ。股の間 に火であぶった鉄の棒をあてられる。またしても苦難を味会うヒンツェなのだった。そして大公は、王はいつでも好きなときに出て行 けるという。雪の中、国境 まできている王妃の軍のところに、王の軍がやってくる。担架で運ばれるヒンツェ。こうして、軍事的圧力でもって王を解放させたの だった。

 帰還後、病床の王女を訪ねる王。王妃に毒殺されるノイローゼかと思っていたら、最後には、「誰もは毒なんかもってない。王妃を 憎んでいる」と告白する。「完全な人間はいない。私は忘れるようにしてきた」、という王。

  王が娘の部屋を出たところで、王妃に振られた腹いせに、これまで散々嫌がらせをしてきたスタンツェが、王妃の命令で塔に連れてゆ かれるところに出くわす。 王は、20日間塔に閉じ込めた後、ドイツ十字軍との国境に配置されている軍隊に復帰させるよう告げる。名誉を回復するかも知れな いし、戦死するかも知れな い、とチャンスを与えるのだった。そしてこの回は、ヤドヴィカの死で終わる(1431年。ヤドヴィカは23歳だった)。下記は、 王妃の好きなブランコ遊び をする王と王妃。



第八話 リトアニア大公シュヴィトリガイラの野望(2)

  ポーランドの軍事的圧力でヴラディスラワを返還せざるを得なかったシュヴィトリガイラは、ドイツ騎士団や皇帝シギスムントと結 び、ポーランド攻撃を検討す る*1。しかし、またもポーランドが機先を制し、ポーランド軍の陣営では、開戦論を主張する家臣たちが、開戦状をラテン語で書い て、シュヴィトリガイラに 送りつける。ところが、開戦状を持ってきたのは王付の道化師だったことに愕然とする大公。ポーランドの陣営には、伝令が河を大公 の軍が渡っていると報告に 来る。町を焼き、住民が避難していると伝える斥候。王は、「兄弟の争いなのに。無駄なコストだ」と口にする。更に伝令は、リトア ニアの都ビリュニスを包囲 し、食料と水の供給も止めた、と告げると、王は、「和約を結べ、水と食料は与えろ」、という。そこにまた家臣が来てドイツ十字軍 がベリコ・ポルスカ地方に 侵入したと告げに来る、王は、何を驚いているのだ。予想してなかったのか?さっさと和睦しろ、という。そして、白旗を持って出て きた住民に言い値で食料を 売りつけている家臣たちに、恥を知れ!騎士が商人のまねをしてどうする!と怒りを顕にするのだった。

*1 会話の中でジャンヌ・ダルクが登場する。噂が広まっていたのかも。

  ポーランドはチェコと同盟し、ドイツ騎士団に反撃。連合軍はバルト海に到達する。裏切り者を火あぶりにするポーランド軍。それを 見るチェコ軍。しかしそれ はスタンツェの独走だった。逮捕されるスタンツェ。漸く和約となるが、長年苦楽をともにしてきたクラクフ市長官は死去し、更に死 の床にある姉を見舞う王。 そして、クリスマス後に、マゾフシェ地方への狩りを計画するのだった。

 一方王妃はクラコフにあって、モルダヴィア公(称号はヒスポダール)シュテファン夫妻と面会していた。もう政治の中心は王妃と 王妃に忠実な家臣達で廻っていた。王家の夢は、遂に達成されたのだった。

 王は狩の他にナイチンゲールの声を聞くのも趣味で、リトアニアのLvov(リュボフ)に、道化と侍女の2人だけをつれて隠棲す る。そして、彼の人生は終わる。ドラマは葬式の場面で幕を閉じるのだった。

IMDbにはエントリーがないようです(Wikipedia はこちら)。
中世欧州・ポーランド歴史映画一覧表はこち ら
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