中世チェコ歴史映画「ヤン・フス」

   チェコの宗教改革者ヤン・フス(1469-1415年)の人生のうち、1412年から15 年までを描いた作品。1954年チェコ製作。チェコ宗教改革を 描いた三部作の第一作。正統派フス映画という感じ。最後は、フスの処刑を痛む人々が、プラハの教会に集まり、信者の中のヤン・ジ シュカが、剣を差し上げて 抵抗を訴える場面で終わる。映画「ヤン・ジシュカ」に続くものと思われます。フスを演じた役者はイメージ通り。
 

 ロシア語版を見たので、簡単なあらすじしかわかりませんでしたが、画面ショットとともにあらすじを記載しました。

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 冒頭、時代背景説明のテロップが入る。最後に「1412年プラハ」とでて、書割のプラハ市街の遠望が映る。

  教会の建設現場で働く労働者達。奴隷労働という程ではないが、過労で死者が出る。何事も無かったように建設続行を促す現場監督。 そこに兵隊を連れた下級聖 職者らしき人物がやってきて労働者の一人から斧を取り上げて去ってゆく(反乱の武器となるからだろうか?よくわからない場面だっ た)。続いてこの下級聖職 者が広場で免罪符を売る場面が出てくる。反感を持つ人々(主に下層民)はフスの名を口にし、都市の中流層と思われる人々と乱闘に なりかける(下記がその中 流層。トランプのジョーカーのような服装で大真面目に演じているのが少し可笑しい)。

  そこ頃フスは自分の部屋で自説に聞き入る人々を相手に説教していた。そこに神学生と思われる人々が来て、フスに、民衆への説教を 依頼する。あまり乗り気で はなかった様子のフスが説得された時、部屋の外を見ると、大勢の群衆が押しかけていてみなは大喜び。下記はそのフスの部屋。

 民衆の前で説教をするフス。相当大きな建築物だが、柱と天井が木造なことがわかる。

 そのフスの説教壇。熱意ある説教をするフス。

 教会の壁画も、正教会のような、物語形式の壁画が描かれているのが特徴的だった。後段には貴族の人々の特別席がある。おそらく その中の一人は、王妃ゾフィーだと思われる。

 説教が終わると、民衆は呆然としてフスを見つめる。貴婦人の中には、腕にしているブレスレットを隠す者も(フスが贅沢を戒める 話をしたのだと思われる)。最後は聖歌の合唱となるが、その中にヤン・ジシュカの姿もあった。
  王妃などからフスの説教の話を聞いたヴェンツェル王(在位1378-1419年)は、司教を集めて検討する。下記はその王と王 妃。フスも呼び出される。多 分説教の内容に意見をされたのだと思われるが、よくわかりませんでした。最後の方は、ヴェンツェル王はかなり激高してました。

  フスの説教に感動した教会建築作業員の若い男女のささやか結婚式が行われる(妻の名はヨハンナ)。この場面では、離れたところの 酒屋の席に座っていた、以 前乱闘になりかけた中流層の男数人がいて、乾杯をしてくれる。ついでに式にやってきた下級聖職者が何を言ったのか知らないが、中 流騎士たちが聖職者を追い 払う。その後、下層民と中流騎士はともに踊り明かすのだった。

 下記はプラハ市内を散歩するフス。

 プラハの町では改革派の人々が大司教の御輿を模した山車を作って町を練り歩き、教会批判を進めていた。

  騒然とするプラハ市内。人々は教会派の説教にまで押しかけ、司祭をつるし上げにする。騒乱は遂に暴動に発展し、兵士が出動し、鎮 圧する騒ぎとなる。首謀者 は逮捕され、王城につれてゆかれて拷問される。ヨハンナはフスに交渉を依頼し、フスは王城に出向き、首謀者3名を処罰すること で、他の市民は無罪とする交 渉と取り付けたようである。しかし、結婚したばかりの娘の夫はその三名のうちに入っており、市の広場で公開斬首となるのだった。 処刑後、遺体は市民が葬列 をなし、フスの教会に運ばれる。三人の魂を慰める説教を行うフス。一方教会側はフスを糾弾する声明を公式に出し(破門(アナテ マ)!と叫んでいた)、再び 町は、フス派と教会派に分裂し、乱闘騒ぎが起こりそうになるのだった。フスの部屋にも、窓からものが投げ込まれる。

 その後フスを信奉する人々は、税金と称した略奪や、暴力を受けるようになる。教会で説教ができなくなったフスは、野原で説教を 行うようになる。

そんなおり、国王ヴェンツェルの元に、弟で、神聖ローマ皇帝ジグムントから、コンスタンツ宗教会議にフスを出席させるよう依頼が 来る。下記はプラハ城を出るフス一行。この場面は、書割ではなく、実物だった。

 下記は、コンスタンツに向かって出発するフス。プラハ城郊外で、花道を作ってフスを見送る人々。

フスが途中立ち寄った村。フス一行が通りがかると、予め村に通達が出され、みだりに接触しないように通達が出されていたようであ るが、フスの宿屋に村民がやってきてフスの話を聞いたりしているから、完全に護送という感じではなかったようである。

 コンスタンツの町。

 皇帝ジギスムント。

 宗教会議で自説を主張するフス(右下に黒服姿のフスが見える)。左の王座に皇帝ジギスムントが見えている。

 そのジギスムントの立派なマント。

 会議場の全景。

 フスの著作が燃やされる。
 処刑場に向かう、フスを護送する隊列と、取り巻く人々。左上にコンスタンスの町が見えている。

 フスの処刑場。左側に、火炙り台が見えている。

 フスの処刑を痛む人々が、プラハの教会に集まり、信者の中のヤン・ジシュカが、剣を差し上げて抵抗を訴える。

 その後、フス火炙りの場面となって映画は終わる。

〜KONEC〜

 封建支配層(教会)に対してチェコ民衆が立ち上がる、という、いかにも旧共産主義時代のイデオロギー色の強い民族主義映画でし たが、悪くはありませんでした。次回は、本作ラストで立ち上がったヤン・ジシュカの反乱を描く「ヤン・ジシュカ」。
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