中世ロシア映画「フランス王妃 ヤロスラヴナ」(1048年)

  アンリ一世の2度目の妻、キエフ大公ヤロスラフ(在1019-1054年)の娘、アンナの 輿入れの旅を描いた作品。原題「Ярославна, королева Франции」1978年ソ連作。題材自体が珍しいものと思いますが、意外に面白く、拾い物でした。当時は、西北東欧は辺境地帯、王女といえど、そこを 旅することが如何に困難であったかが、よく描かれていると思います。フランス王家からヤロスラフの元に使者が来て、アンナが輿入 れの旅に出て、様々な困難 の末にようやくフランス側の受け入れ使節に会うまでの話です。筋は単純なので、あらすじという程のものではありませんが、画面 ショットとともに記載しまし た。単純な筋ではありますが、苦しい旅を経て、ようやく峠の上で、たった3人に減ってしまったアンナ一行が、遥か遠くから向かっ て来るフランス側使節を遠 めに認めたラストは感動ものでした。詳しくは、「More」をクリックしてください。


  Wikiのアンナ・ヤロスラヴナの記載では、生年は1024から1032年の間となっていて、本作の1048年当時は16歳から 24歳の間となるのです が、ヤロスラヴァを演じた女優さんは微妙な感じで、16歳とも24歳とも見える印象。24歳くらいの女優さんが、16歳を演じて いる、という感じでしょう か。そのアンナ。おかしな衣装をして、髪もメッシュとは言いがたい妙な感じに染めていて、ヘンな歌を口ずさみながら長いこと鏡を 見ていて飽きない、ちょっ と変わった少女。


 乗馬に出るとか、侍女とふざけるとか、あまりそんな感じではなく、自分の世界を楽しんでいる感じ。そんな日々を過ごしていたと ころに、フランスから使者が。下記は父親のヤロスラフ。部屋の模様もちょっとへんではありますが。。。

 手紙に返事を書く書記。ヤロスラフは総主教と賭け事をしながら、どうでもいい感じ。

 変な場面は他にもあって、フランスへの一行に加わる従者の一人なのですが、聖堂で祈っているところ。こんなカットばかり載せて いるので変な映画と受け取られそうで心配ですが、インパクトのあるカットが多いのは事実です。

 一行が旅に出たところの映像に何気なく登場する石人。以前ご紹介した「原初時代のロシア」にも登場しており、突厥の石人に似て いるので、トルコ系民族の遺物なのかな?と想像したりしています。

 そして旅に出る一行。王女の輿入れだというのに、馬車2頭で護衛も十人くらい。その馬車もみすぼらしい。

  アンナ本人は、自分で馬を運転、じゃなくて馬に乗りながらの旅。キエフ公国は史上で有名だったとはいえ、そんなにお金持ちでもな い当時としては田舎の国 だったので、こんなものだったのかも知れません。それにしても、最初は、もう少しシンデレラ的な馬車を想像していたので、この旅 装もインパクトがありまし た。

  道中、上記首だけが浮かび上がった画像の青年(だと思うのですが)、フランス語を教えてもらったりしているアンナ。旅団一行退屈 してくるのか、皆で歌を歌 う場面も出てくる。しかも旅の途中は危険が一杯。きこりが木を切っていたところ、大木が偶然に一行の前に倒れてきて危うく大惨事 になりそうになったり、カ トリックっぽい騎士団と鉢合わせて戦闘になってしまったり。宿泊場所も、貴族と思わしき城館に宿泊することもあれば、商人が利用 するような汚い宿場宿に宿 泊したり。戦闘や病気でお供の人数もどんどん減ってしまう。下記は、騎士団に襲われ、馬車で逃げるところ。大半の荷物がこの時失 われたと思われる。

 かなりボロボロになりながらも、川にでたところ、今度はヴァイキングに騙され、王女がさらわれてしまう。しかも、単身川に飛び 込んで、泳いで脱出に成功する王女。もう命がけの旅。

 そのヴァイキング船の船長。西暦1000年を過ぎても、ヴァイキングはこんな感じだったんでしょうか。

  当初は馬車二台分あった荷物(フランス王への引き出物)も、今では馬で運べるくらいに減っており、更に季節も冬に突入。その引き 出物の毛皮さえ、病気のお 供の為に引き出すアンナ。別にわがまま娘とか、世間知らずとか、そういう感じではありませんでしたが、それでも旅を通して成長し ているように見えました。

 雪の峠を越えたところで、反対側を見下ろす一行。とうとう人数は三人に減ってしまっている。その峠の反対側は雪が無く、フラン ス領土のようである。

  そして、遠くから、フランス側の迎え入れの一団が走ってくるのを見つける三人(下記写真、左下の、森の手前あたりに出迎えのフラ ンス騎士隊が見えてい る)。漸く困難な旅は終わりを告げる。こちに向かっているとはいえ、まだまだ遠いフランス一団を静かに見下ろすアンナの表情に は、ほっとしたというより も、力強さで満ちているようでした。

 王家の間の輿入れといえど、中世欧州の中期くらいまでの長距離の旅は、命がけだったことを伺わせる作品でした。

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