古代中国歴史ドラマ「夜郎王」


   最近、だいたいDVDも一通りあさり尽しただろう、となんとなく思い始めていたのですが、どういうわけだか、ふと、いつも通り過ぎている露頭のDVD売 り場に足を止めてみると、無造作に重ねられているDVDの一番上に、「夜郎王」の文字が。なんと前漢代の夜郎王国のドラマのDVDが。夜郎国とは、現在の貴州省にあたる地域にあった、武 帝により滅ぼされた異民族の古代王国のひとつです。

 なんてレアな。

  パッケージの中央に構えている主人公の装束が、ウルトラセブンに登場する着ぐるみみたいなヘンな衣装であろうと、パッケージ裏の 写真に、シルバー仮面(知 らない人はググッてください)や槍をもって仮面をつけたマオリ族のみたいな現地人集団が登場していようが、即購入。 夜郎国の遺 跡は出土していないような ので、主人公の衣装が想像だけで作られてしまい、その結果、古代エジプトファラオの衣装みたいになってしまったと思えば、そんな におかしくもない感じ、と 無理やり思い込むことにしてOK。

 パッケージの後ろの解説を読むと、司馬相如が登場しているので、実はレアでは無く、結局武帝関連作品 ということで、メジャーなんじゃないの、という気がするのですが、やはり、夜郎国という、比較的知名度の低い僻地を扱った作品と しては貴重かも。こんなの 作るんだったら、雲南省の古代王国である滇王国の作品も作ってくれればいいのに。こっちの方が夜郎王国よりもはるかにエキゾチッ クな感じ。

 しかし、こんなDVDが出るなんて。油断も隙もない感じ。やはり今後もチェックは怠れません。

  この作品は、24集という比較的短い作品なので、わりと近いうちに見れそう。なんせ、「漢武大帝」は、まだ第29集目。残り28 集の丁度中間点。最初に見 始めたのは10月頃だった筈なのに、なかなか進まないのでした。面白くなったのは、24集目から。はっきり言って、脚本が面白く ない。古装劇場の 紹介コメントは、実に的を得ている感じ。この作品最大の売りは、かなりリアルに復元された漢代世界のセット。漢代の出土文物をよ く消化していて、足りない 部分はちょっと行き過ぎかもしれないが、こんな感じだったのかも、と思わせる想像力で補って、リアルな漢代建築物や室内装飾を再 現しています。欧米の古代 ローマ作品並みに、漢代の風景映像をよみがえらせた功績は大きいと思います。そのうち見ようと思っています。いつになるかわかり ませんが。

-----後日追記---

  やっと見終わりました。ヘンな衣装は、ドラマが進むにつれてだいぶ慣れましたが、それでも目を剥くような衣装がこれでもか、と最 後まで登場し続けました。 面白いので代表的なものの画像を掲載したいところですが、ブログだとスペースも限られることから、いづれサイトの方にでも掲載し たいと思います。そのサイ トの更新も、ついにネットスケープのサポートが3/1日で終了してしまったため、新規ダウンドードができません。Vistaの再 インストールとともに、ネ スケのインストールモジュールも消えてしまいました。現在よいHtml編集ソフトを探しているところです。本日HeTeCreと いうフリーソフトをインス トールしてみたのですが、これは、テキストでの編集しかできないようなのですね。そんなわけで、しばらくサイトの方の更新はお預 け状態です。



  とりあえず夜郎王の若いときの装束。中世西欧の悪魔崇拝の宴会でご神体として登場しそうな山羊の被り物。これが一番目すごい衣装 かというと、もっとアバン ギャルドな衣装がこれでもか、と登場していました。夜郎王国の遺跡は見つかっていないようなので、空想の限りを尽くしたデザイ ナーの創作を取り入れた感 じ。デザイナーの人も、冥利に尽きるのではないでしょうか。現代ミャオ族の衣装もでてきていたので、ひょっとしたら独創的なデザ インと思っていたものも、 現代の少数民族の装束なのかも知れません。

 なんでこんマイナーな地域の作品が作られたのだろうと思っていたら、やはり地方の町おこし、 という色彩があるようですね。エンディングクレジットによると、貴州省の西部の六盤市(正確には盤の上が「舟」)の共産党や、人 民政府が協力しています。 貴州ロケがふんだんに取り込まれていて、下記王宮のセットなどは、こんな感じだったのかも、という往時の雰囲気が出ているような 気分に浸れます。(画面は 暗くなっていてみづらいですが、手前の林の中に最下段の写真の王宮のセットがあります。



  話の筋は、西南夷に道路を建築し、交易を発展させるという建前で、その実南越王国侵略ルートを開拓する使命を帯びた蒙唐将軍が、 夜郎国に至ったところから 始まり、夜郎国の保守派と革新派が対立する、というよくあるパターン。保守派が、夜王国の一部族である君長部族の族長。蒙唐将軍 と仲良くなり、お忍びで長 安に旅した多同王子が革新派。対立する両者がやがて内戦に至るのですが、漢の侵略的側面はまったく描かれず、ひたすら人間関係に 終始した感じ。君長国から 嫁いできた正妃が、実家と夫の間で悩んだり、夜王国辺境を放浪していた老人と孫娘が、実は呉楚七国の乱で滅んだ呉王の孫と家臣と いうことが判明し、漢の安 南公主ととなって、第2夫人として嫁いできて、王妃一派ともめたり、3兄弟の契りを結んだ王子の義兄弟が、保守派部族の側につく ことになり双方苦悩した り。文明化と侵略などと大上段に構えることなく、程よく合戦シーンがちりばめられた娯楽作品に仕上がっています。もとより、これ が政府肝いりで製作された ことを思えば、文明化、帝国の支配下に入ることについてそもそも疑問を持つような展開は許されるはずはないのですが。

 もっとも印象に 残った場面は、お忍びで長安に来た王子が、百官を前にした朝議の場で、武帝に謁見した場面。儀礼を知らない王子に戸惑う武帝。そ こで、いやみな臣下が、 「漢の使者に夜郎国と漢とどちらが大きいか聞いたそうな?」と小話を披露したところ、「はて何のことですかな」と切り返す王子。 苦渋の表情を浮かべる蒙唐 将軍。礼節に富んだ蒙唐将軍でさえ、都の社交界向けに面白おかしい話をこしらえてしまい、そうした話が聞き伝えられる、辺境地帯 への差別意識のある当時の 都のムードがよく出ていた一場面だと思います。
 また、この直後、故郷の酒を武帝に献じる場面では、王子の側近の一人が、酒甕を落としてしまう。 どうなることかと、百官含め一同驚愕するなか、「なんといい香りだ。酒甕が割れなかったら、これほどの香りと知らないままになっ てしまったかも知れない」 ととっさに助け舟を出す武帝。全回通じてたった2度しか出てきませんでしたが、この武帝は存在感があり、結構気に入りました。

 長安の宮殿は、「始皇帝暗殺」で出てきた宮殿のセット。下は夜郎国の宮殿です。田舎の王国という雰囲気がよく出ていました。



 ところで、貴州省の夜郎国ですが、遺跡は無いと思っていたら、それらしき 遺跡は発掘されているとのこと。場所は貴州西北部、赫章県可楽という場所とのこと。2001年に墓が発見されたとのこ と。こちらに、遺跡の案内板の石碑の写真があります。

  遺構は出ていないようですが、遺物は出土しているようで、雲南の滇王国や日本の奴国同様、漢朝から授与された金印の出土 が期待されているようです。

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