古代ローマ・中世イタリア歴史映画『ビザンチン大襲撃』(1961年)

  1961年イタリア製作。原題『ロザムンドとアルボイーナ』。1962年日本公開時の題名は『ビザンチン大襲撃』となっていて、東ゴート王国にベリサリオ ス率いるビザンツ軍が大襲撃をかけるのかと思しまうような題名ですが、まったくそんな内容ではありません。ビザンツ軍は登場 しないし、ビザンツ人も使節と兵士数名しか登場しません。ビザンツ帝国は陰謀を働きかける背景として登場しているだけで、物 語は、ゲピド王国と、それを滅ぼしたランゴバルド族の話です。簡単なあらすじは、Weblio映画紹介「ビ ザンチン大襲撃」にも記載されていますが、ここでは詳細なあらすじ紹介をしたいと思います。

主要登場人物。以下左からゲピド王クニムンド王(在 -567年)、その右ランゴバルドの将軍アマルキ(史料上の名はヘルミキス)、 王女ロ ザムンド、大臣ファリスコ、ランゴバルド王アルボイン


〜あらすじ〜
冒頭、566年ユスティニアヌスはゲピドとロンバルド族を恐れていて、両者を戦わせることで漁夫の利を得ようとして いた。そうしてそれに成功し、ゲピド王国はランゴバルド族に敗れ去った(ユスティニアヌスは565年には既に死去し ている筈なのですが、この話ではまだ生きているようです)。

 偽物の使者がもたらした情報によりランゴバルド族に敗れ去った将軍アマルキは、王宮に戻り弁解する。ロザムンドは 弁護するが、アマルキは指揮権を剥奪される。以下左がランゴバルド族。中央がアルボイン王。両側の兵士の姿にあるよ うに、いかにも蛮族風の装束です。右はゲピド王宮。当時の王宮は、ローマ時代からの属州州都シルミウムにあったよう なので、これは、シルミウムの復元映像ということになりそうです。右側が大臣ファリスコ、その左が国王クニムンド。 末期ローマ帝国装束であることがわかります。



 ロザムンドは馬を駆って森に出くが、大臣ファリスコの部下につけられてしまう。 そこはアマルキとロザムンダの赤子が育てられている家だった。数名の家人が管理している。アマルキは、家人に金を渡 してここを離れるようにいう。それを窓から伺うファリスコの部下。以下、古代ローマ時代の農村の家の感じが良く出て いる(ように思える)家屋となっています。ただ、鉄格子の窓にはガラスが。。。(当時このクラスの田舎の家にガラス 窓があったのでしょうか。。。。) 



 一方ファリスコは、寡兵を率いて来ていたユステシニアヌスからの使者と洞窟で密 かに密会していた。使者が持ってきたユスティニアヌスの羊皮紙の密書はあぶりだしとなっていた。ファリスコは、ビザ ンツと共謀してゲピド族を滅亡させようとしていたのだった(冒頭の戦場での偽の命令書を渡した使者もファリスコの陰 謀だと思われる)。左が使者の一人。右側画像の左二人と右端がビザンツ使者。座っているのがファリスコ。『ビザンチ ン大襲撃』という題名ながら、ビザンツが登場するのはこれだけなのですが、まあ、それなりの登場ぶり(陰謀といい服 装といい)だったので、取り合えず満足です。



 以下左側は、ランゴバルド族の拠点。都市ではなく、森の中に天幕が点在するだけ のもの。中央に広場がある(以下左)。以下右は、ゲピド族の王宮の門。簡素なセットだが一応雰囲気は出ている。



 ランゴバルドの王の天幕で幹部たちは、(一人を除いて)ゲピド滅ぼすべし、と勝利の酒盛りをしながら威勢がいい。 王は、奪った財宝と女どもと飲んで勝利を祝え楽しめ、と言ったあと、ビザンツが考えていることは、こうだ。と果物を ナイフで斬ったあと、その果物を手で握りつぶし、残った部分を最後に滅ぼすのが奴らの目的だ、と部下たちに示す(ば らばらに切った果物を異民族達に見立て、お互いにつぶれた後、最後の切り身をビザンツが滅ぼす、という意味)。そう して、ゲピデを攻撃はするが滅ぼさない、と宣言する。戦った後和平を結ぶと宣言。以下左中央が天幕の中の王座に座る アルボイン王。右が家臣達。蛮族装束なのがよくわかります。



 王弟アルドリコは滅ぼすことを主張し反対する。激怒した王は弟と天幕の中、家臣達の前で手打ちにしてくれる!と決 闘となる。しかし王弟の剣を叩き落して兄が勝つ。そして王弟アルドリコを使者にしてゲピドと和約し、ローマととも に、ビザンティウムの帝国を望むと宣言するのだった。

 ゲピド王宮にランゴバルドからの使者が到着する。王弟アルドリコは、金や奴隷や婦女子や牛を代償に求めないかわり に、和平の保証として、王女ロザムンダを兄王に娶りたいと条件にだす。王はロザムンドの意思に任せ、王女は承諾す る。双方徹底的に戦い滅亡することを目論んでいたあてが外れて悔しそうな大臣ファリスコ。平和条約締結を祝うために 馬上槍試合(トーナメント)の開催を王は決定する。以下左はゲピド王宮。中央右に、古代ローマ風の回廊が見えていま す。右は、右端からゲピド王クニムンド、その左は司教らしき人物、その左がロザムンド。左端は大臣ファリスコ。いか にも西欧中世風です。



 ロザムンドの部屋にアマルキがやってきて結婚を受諾した真意を問いただす。「民の平和のためよ!慈 悲ではない」と弁解するロザムンドに、ランゴバルドとの戦争の背後にはビザンツいて、両族の連合はビザンツへの共同防衛だとアマルキも気づいているため、 しぶしぶ引き下がる。以下は王女の部屋。石造の壁が布で覆われています。こういうのはあまり見た覚えがありません。 古代末期は実際こんな感じの内装もあったのでしょうか。興味がでます。



 さて、騎士槍試合が開催される。クニムンド王の命でアマルキが王弟アルドリコと対戦することになる。大臣ファリス コの部下が槍の先についている球形の防具をこっそり摩り替える。以下右画像の中央がトーナメント場の王家のテント。 左右に観衆がつめている。左は開始の合図のホルンを吹く役人。



 以下左画像は、武装するアルドリコとアルマキ。仮面だけは中世盛期のものと似ていますが、首から下は武具で武装し ておらず、こういうところに拘った考証にはなんとなく説得力を感じます。死す。この二人が馬に乗り、槍を持って激突 するわけですが、アルマキが勝利し、槍で突かれたアルボインは落馬し、アルマキの勝利となりますが、アルマキの槍先 は飾り物の防具だったため、槍で突かれたアルボインは死亡してしまいます。激怒したアルボイン王の命令により、アル マキは中世で有名な拷問具"鉄の処女"にいれられそうになる(以下右と中央画像。中央が閉じているところ、右が開い たところ。内側に刃が出ていることがわかります)。ロザムンドがとりなし、ランゴバルドは再侵攻してくるだろうか ら、司令官としてアマルキは必要だ、と王を説得し、死刑にはならず牢獄入りだけですむことになります。



 一方ランゴバルド族の集住地に戻されたアルドリコの遺体は荼毘にふされる。復讐 を誓うアルボイン王。
再度両軍による合戦が行なわれる。今回はクニムンド王が自ら出陣。歩兵や弓兵もい るが、基本は騎兵同士の激突。しかしついにクニムンド王はランゴバルド騎兵に包囲され、アルボイン王と一騎打ちにな り、クニムンド王は討ち取られる。その瞬間にやってきたロザムンドは父王の死を目撃してしまう。

 アルボインはランゴバルド王宮に入り、王都の住民は奴隷として連行されてゆく。ロザムンドを呼び出した王は、大臣 ファリスコからロザムンドの子供の存在を教えられていた。私を殺せというロザムンドの前に子供つれてきて妻になるよ う、強制するのだった。大臣は王の信頼を得るために、更にアルマキが生存していることも王に告げる。牢獄から出さ れ、死刑にされる直前、アマルキは 隙をみて兵士達を打ち据え王宮を取り巻く堀に飛び込み脱出に成功する。

 シルミウムの元ゲピド王宮は、ランゴバルドの蛮族が床に座って酒盛りし野蛮な宮廷となり果てていた。アルボイン王 は世界を征服したローマを征服するのだ、と口にするが、部下の一人に、王には破壊はできても征服はできない、と水を さされる。王はロザムンドと臥所をともにしようとするが、拒絶される。王はいう、「お前は氷のような女だ。だが、最 強の男を選ぶだろう。そして俺こそが最強の男だ」

 ある日、王は王宮に捕虜の住民を集め、ライオンのいる檻に放り込む。その中にはロズマンダの妹マティルダもいた。 ロズマンダは、三人の女性を助けさせてくれと王に願い、妹を救い出し、救いを求める他の女性達を見殺しにする選択を する。が、結局王は、捕虜全員を解放するのだった。こうしてロザムンダは冷酷な女王、アルボイナ王は慈悲深い王と なったのであった。

 さて、妹を救ったロザムンドは自室で妹マティルダに王の暗殺計画を告げる(アマルキの妹マチルダは子供のことも 知っていた)。

 アマルキは部族王ワルフォの部落に向かい、支援を申し出るが、ことは重大であるため、ワルフォは、神の審判をあお ぐため、アマルキに、多数の槍が立ててある谷を、金具の棘の仕込んであるロープにすがり付いて渡る試練を課す。成功 すれば神の加護があることになり、協力しよう、という。綱は途中で切れそうになっていたが、無事渡り終えたアマルキ は、神の運と勇気を証明し、部族の支援を得ることに成功する。



 穀物運送人として王宮に入り込んだアマルキの部下が、王宮前広場でマティルダに声をかけ地下の秘密の通路をロザム ンダから聞き出すように、と指示を出す。一方洞窟でビザンツの使節と面会したファリスケは、情勢が変わったことで計 画を再検討する。すべて任せろ、と強気な大臣ファリスケ。ところが王は大臣を信用せず監視していた。大臣が洞窟を 去った後、王の配下の兵士達が使節と護衛を襲撃し、三人の使節を捕獲する。その頃、王宮では、使役されていた元住民 の奴隷たちが反乱し、ロザムンドの子供とロザムンド、マティルダを地下通路から逃亡させることに成功する。王宮では 激怒した王が部下を拷問送りとし、逃亡を手助けした民衆を処罰しようとしたところにロスマンドが戻ってきて、「王た る者は忠誠心を尊重しなくてはならない。この者たちは私を守ろうとしたのです」と牢獄送りに済ますことに成功する。

 なぜ戻ってきたと問う王に、「子供は人質だった(から逃がしたが)あなたは最強の男を私が選ぶといった。私は自分 の意思を選んだ」と告げる。王はそれを婚姻の意思の証明だと見る。更に王はロザムンダに、ユスティニアヌスと通じて いた、と、鉄の処女にいれられ既に亡骸となったフェリスコを見せるのだった。

 結婚式を迎えた王に家臣ウォルファンゴは忠告する。ロザムンドは未だゲピド族の女王であり、ゲピド族は多数で、全 滅させることなどとてもできない。ゲピド族に使者を送り、女王への忠誠を誓わせるのだ。彼は冒頭でゲピド族を滅亡さ せることに唯一反対した家臣であり、今回も冷静な忠告を王に与える。しかしおうはゲピド族は滅亡したのだと、そのま ま結婚式を行なう。そうして、ロザムンドの忠誠心を確かめるため、(父王クニムンドの)頭骨の杯でワインを飲むよう 迫る。ロザムンダは顔色ひとつ変えずに飲み干のだった。こうしてロザムンドの忠誠の証を手にした王は、跪いたロザム ンドの頭に剣を置き、結婚を宣言する(キリスト司教が登場するわけでもなく、ゲルマン式の方法だと思われます)。



 新婚初夜。寝室へ入ってきたロザムンドは、大きな寝台を見てためらう。その頃、アマルキに率いられた軍隊が地下通 路から王宮に侵入し、正門の鍵をあけて全軍突入してきていた。ロザムンドは密かに短剣を手にし、ロザムンドを寝台に 押し倒してきた王を刺そうとするが、王は読んでいた。結局ロザムンドを信用していなかったのだ。そこにアマルキが突 入してきて、王と一騎打ちとなるが、戦いの最中背後からロザムンダに刺され倒れる。王宮内では両軍による戦闘が続け られていたが、形成が悪くなったところで、ロンバルディア側はあっさり降伏。そこに、まだ余命のあったアンボインが ふらふらと入ってくるが、王妃は冷たく見据え、王は王妃の前で崩れ落ちるのだった。アマルキとロザムンダは、ランゴ バルド族とゲピド族の人々の前で、新国王夫妻となったことを宣言するのだった。

〜Fine〜

 題名と異なり全然ビザンツが出てこない作品で、蛮族同士の戦いにはあまり興味が無かったのですが、意外に面白く見 れました。冒頭では普通の女性に見えたロザムンダがどんどん冷たい表情になってゆくのがよかった。ラスト、王国を取 り戻し、アマルキと正式に結ばれることになったときの彼女にも、どこか硬い冷たさが残り、史料上でのこの後の展開を 予想させるものがありました。というのは、史料上では、ロザムンダは、この数年後にビザンツの高官と共謀してアマル キを毒殺しようとし、毒杯を飲んだことに気づいたアマルキに、逆に自分が盛った杯を飲まされて毒殺させらてしまうか ら(同時にアマルキも毒死する)。 映画は娯楽作品として仕上がっていますが、(少なくとも史料上の史実とされている内容では)もっと陰湿でどろどろ だったようです(ただし、同時代史料で言及していないとか、後世の伝説とか、諸説あるそうです。このあたりの議論 は、アマルキのモデルとなった人物、ヘルミキス の項目でだらだら書かれています。本作のように、悲劇のヒロインにするか、狡賢い悪女とするかなど、贔 屓の人物に対するどこの国にでもある議論のようです)。

 ところで、この作品で登場した小物も面白いものがありました。中央は、王が家臣を呼ぶための鐘で、他でも結構目に するものですが、左は、四角の木枠につるされた鏡です。反射が鈍く銅色をしているなど、考証的に頑張っている感じが します。右は寝台。衣服やカーテンなどにはあまり華やかな織物が登場しませんでしたが、この寝台の布地だけはひとき わ目を引く華やかさでした。



 冒頭の人物紹介では紹介しませんでしたが、王と対等の口をきくランゴバルドの家臣ウォルファンゴの存在感がよかっ た。彼は、冒頭ゲピド族を滅ぼすことに反対した唯一の家臣であり、王が世界と征服したローマを征服すると宣言した時 にも水を差し、ゲピド族は既に滅び、ロザムンドと結婚すれば万事うまくゆくとの、実は彼の希望に過ぎない現実認識 を、「ゲピドは滅亡していない、全員抹殺することなどできない」と常に冷静な指摘をしてきた人物です。彼やアルボイ ン王と比べると、ヒーローの筈のアマルキはまったく薄っぺらい人物に見えてしまい、後年ロザムンドがアマルキを暗殺 するに至るのも納得できてしまうのでした。



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