中世イングランド映画『アルフレッド大王』(1969年)


1969年英国製作。中世前期にイングランドを統一したウェセックス王アルフレッド大王(在871-899年)の治世初期 (870年頃から878年頃)を描く。

〜あらすじ〜

 870年、のどかな英国の地方に2隻のヴァイキング船が到着。浜辺にいた若いカップルのうち、男性は刺し殺され、女性は連 れ去られる。続いて付近の民家が襲撃・焼き討ちにあう。



 修道院で祈祷中の修道士アルフレッドの元に、出撃するよう、家臣が説得に来る。僧侶になるべく修業中のアルフレッドは抵抗 するが、最終的に司祭に促される形でしぶしぶ軍営に向かう。左画像の左端の人物が説得に来た家臣で、衣装がトランプのジョー カーのような感じ。その右がアルフレッド。中央画像が軍装したアルフレッド。この頃のアルフレッドの頭はトンスラである。俳 優の中村俊介に似た方。右側は、王宮の様子(中央座っている人物が、兄の国王エ ゼルレッド)。王宮は木造。前回ご紹介した、『ヴァイキング〜 海の覇者達〜』に登場した、古代ローマのヴィラ建築に似たエグバート王の王宮より原始的。少し調べたところで は、木造建築だった可能性の方がありそうですが、判断がつきません。そのうち詳細を調べたいと思います。



 軍営地で作戦会議に出席したアルフレッドは、軍営に多数の篝火を立て、ヴァイキング軍がウェセックス軍営に向かって進撃し て来る隙に、ウェセックス軍は二手に分かれて、森の中からヴァイキング軍を襲撃する戦法を提案する。脚を負傷していて歩けな いエゼルレッド王は、囮のとして軍営に残ることになり、家臣は反対するが、説得して作戦決行となる。

 ヴァイキング軍は隊列を整え、装備も統一的である。海賊というより、軍隊である。気勢を上げるヴァイキング軍。ほとんど夜 通し気勢を上げ続けている。夜明け前、野原を進軍開始(以下のように整然とした隊列を組んでいる)。



 アルフレッド軍は野原の横の森に潜んで両サイドから奇襲をかけ、ヴァイキング撃退に成功。この戦いは、871年のアッ シュダウンの戦いとのこと。下左画像は王宮の様子(王宮というより、これがウェセックスの都そのものかも知れな い。この集落の中の一番大きな木造建築物だけが王宮かも。恐らくチップナムの王宮だと思われる)。下右は、この王宮集落の中 で殆ど唯一の石造建築物の教会)。



 戦後、もとの僧侶服に戻るアルフレッド。しかし、マーシア王女アルセウィ ス(史料上ではマーシア貴族の娘)が王ブルッド(架空の人物)と供にウェセックス王宮にやってきて結婚 させられることになる。アルフレドは当初結婚を渋っていたが、マーシアとウェセックスの同盟のためだと説得され、王 女の魅力にも惹かれてしまい、結局結婚することになる。以下左が結婚式。教会ではなく、王宮の模様。下右が結婚式の 宴会の様子。宴会は、野蛮なゲルマン人的な描き方。『ヴァイキング〜海の覇者達〜』よりも野蛮に描かれている。



 ところが、結婚式の宴会中、兄王の死去が伝えられる。そうして時期国王に即位するよう家臣やマーシア王ブルットら に説得されるが、アルフレッドはあくまでマーシアとの同盟のための結婚だと考えてて、そもそも兄王の死が近いことを 皆知っていて、最初からアルフレッドを次王候補と考えてマーシア王女と結婚させられたことも知り、激怒したアルフ レッドはアルセウィスを殴って僧侶に戻ると宣言する。、、、のだが、結局アルセウィスの魅力に負けて抱いてしまうの だった。。。

 しばらくして、ヴァイキング軍は再度襲撃をかけてきた。女子修道院を襲撃し、金製器具などを奪い、修道女達を強姦 する。アルフレッドは住民連れて石造の要塞に移動する。

 劣勢に発たされたアルフレッドは、ヴァイキング軍と協定を結ぶことにする。首領のグントゥラムと アルフレッドが城内で会談。銀貨15000枚と人質の交換で和約する。以下左が条約式の様子。塔の左側の黒い部隊が ヴァイキング軍、右側の赤い部隊がウェセックス。塔の前にテーブルを置いてグントゥラムとアルフレッドが文書に調印 する(右下はウェセックス王宮画像。砦の城門の外側から内部の木造の監視塔を見たところ)。



 人質は、アルフレッドとグントゥラムがそれぞれ指名するというもので、アルフ レッドはグントゥラムの弟オーラフを、グントゥラムはアルフレッドの妻アルセウィスを要求する。こうしてアルセウィ スと生まれたばかりの赤子は、ヴァイキングのもとで暮すことになるのだった(下左がヴァイキング軍。中央に座ってい るのが首領のグントゥラム。下右が王宮。木造の2階建てであることがわかる。右端がアルフレッド王。



 秋、収穫の季節。収穫の季節にも関わらず、民衆を軍事訓練に動員していた貴族を、アルフレッドは鞭打ちの刑にする が、これは貴族・民衆双方に受け入れられず、貴族や民衆は王の元から去ってしまう。

 878年冬。戦闘場面はないがアルフレッド王軍はヴァイキングに負けたらしい。雪の中、負傷して戻ってきた王。王 宮のあるチップナムはヴァイキング軍に占拠される。人質となっているアルフレッド王の妻アルセウィスは、結構あっさ りグントゥラムとできてしまうのだった。が、ある夜、ヴァイキングの、異教の人身御供の儀式を見た王妃(キリスト教 徒)は、受け入れられないものを感じる。

 山間部に拠点を移した王とその軍は、ある日森で山賊ロジャー一味(殆どロビンフッドです)に襲われ、これをきっか けにロジャー一味と融合する王一行。すっかりロジャー一味と同じ山賊風になった王たちは、ヴァイキングの幹部一人を 襲い、更にアルフレッドとロジャー一味は、元王宮に農作業員のふりしてもぐりこむ。王宮で暴動を起こし、馬と息子エ ドワード(4歳)と王妃とその侍女を奪って逃走する。

 当然グントゥラムとできてしまっていた王妃とは口論となるが、息子と乗馬に出て、森で転倒、怪我した息子をかかえ て雨の中戻った折、心配していた王妃と仲直りすることとなる。

 再起のときは来た、とロジャーに告げる王。アングロ・サクソン各国の軍隊を召集する。山賊一味になりさがっていた 王の召集に各国が軍隊を派遣するのはおかしな話だが、集まってきた一人(確かマーシア王)は、逆にアルフレッドに引 導を渡しに来たと告げる。しかし王の熱意ある説得により、団結してヴァイキング軍に当たることになった。こうしてエサンドゥーンの戦いとな る。

 王は、古代の書物に出てきたスパルタのファランクスを真似た陣形をとる。古代の書物を真似た戦法は、『ヴァイキン グ〜海の覇者達』にも出てきた、エドワードとノーサンブリア王がラグラル軍を破る時、カエサルのガリア戦記を真似た というところと似ている。以下がイングランド軍。盾は木の枝を組み合わせただけの粗末なもの。装備もばらばら。ヴァ イキング軍の方がよほど正規軍っぽい装備。




 ファランクス(ちょっと違うような気がするけど)の陣形(下左)を取り、ヴァイキング軍に向かってゆく(下右)。



 ファランクスというより一種の魚燐陣(下左)。何度も突撃してくるヴァイキング 軍に対して、結構もちこたえるが、やがてジリ貧になり、ロジャーと部下が抜け出して、仲間と付近の農民に支援を頼 む。修道僧たちも農機具などを武器に出撃(下右はヴァイキング軍と激突したところ)。



 山賊の首領ロジャーは戦死するが、ヴァキング軍を壊滅させる(ただし、グントゥ ラムは討ち取らず、敵旗を奪取したところで戦闘は終わる。「こうしてアルフレッド大王は、イングランドを統一し、大 王と呼ばれる唯一の君主となった」というテロップが出て終る。

〜The end〜

 まあ、なんというか、ワットタイラーの乱の映画を見ているような作品でした。私は、『ヴァイキング〜海の覇者 達〜』(の一部)を視聴した時、かなり時代考証に説得力があるような印象を受けたので、今回の映像を見て、考証的に 古い見解ではないか、という印象があったのですが、少し調べたところでは、必ずしも『ヴァイキング〜海の覇者達〜』 の方がより正確だとは言い切れないような気がしてきました。この時代のブリテン島の歴史や建築などは殆ど知らないの で、いづれ詳細を調べてみたいと思います。

IMDb の映画紹介はこちら

中世近世欧州歴史映画一覧へ戻る