ローランド・エメリッヒ監督。2011年英独製作。エメリッヒ作品は、彼が製作を担当した
「13階段」しか見ていないのですが、「13階段」がわりと気に入っ
ていたので、予告編を見て本編も期待しておりました。なにやらミステリアスなサスペンスという感じでしたので期待していたのです
が、よかったのは陰謀蠢く
エリザベス時代末期のロンドンの雰囲気のよく出た映像だけでした。本作は「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2012(2/23ー27)」で日本公開さ
れてたばかりで、今後日本語版dvdが発売されるかも知れないので、ここではネタバレ無しに映像中心に作品の紹介と感想を記載し
たいと思います(2021/12/22日本公開予定)。 1595年頃(エリザベス62歳頃)から1605年頃の10年間の話と、それよりも40年前の回想が交互に入る構成。エリザベス 一世晩年を迎え、後継者を 巡る貴族達の暗闘にシェークスピアという名の役者の演じる劇が利用される。その劇は政治的意図があり、脚本を書いていたのは実は 時の権力者ウィリアム・セ シルとロバート・セシル一派に反対する貴族の一人だった。後世シェークスピアとして信じられている男は飲んだくれで民衆受け狙い のアジを飛ばす下品な役 者。脚本家の貴族がこの男に渡した脚本が当たりまくり、やがてそれに気を良くしたシェークスピアは暴走を始め、予定していた政治 的陰謀は思わぬ方向へと展 開してゆく。。。。。 というような筋を期待していたのですが、話はかなり違う方向へ行ってしまい、40年前の過去のエ ピソードが頻繁に挿入され、思わぬ人間関係が明らかになる、という話になって終わり。その思わぬ人間関係にもっと説得力があれば いいのですが、なんだかな あ。NHK大河ドラマ「時宗」で、渡部篤郎演じる時輔が実は生きていました。みたいな感じ。シェークスピア別人説については殆ど 何も知らなかったので、本 作をきっかけに興味を持つ効果はありましたが、本作が特に斬新な説を出しているわけでもなく、しかもかなり破綻気味なので、何も 知らなかった私でも、「こ れは無理がありそう」と思ってしまいましたので、シェークスピア別人説に少し詳しい方が見たら、今更な上に穴だらけな説を見せつけ られてがっかりしてしまうかも知れません。 そういうわけで、見所は、陰鬱としたロンドンの宮殿と町並みをCGをうまく合成して再現したところでしょうか。陰鬱なロンドン の再現映画は他にも沢山あるので、特に本作ならではというものはあまり無いかも知れませんが、一応ご紹介します。 最初のこれはエリザベスの宮殿。 右下は宮殿を上空から見たところ。左下はアイルランドに出兵したエセックス伯の軍隊。 右下は冬の宮殿の上空からの映像。左下は凍結したテムズ川。多数の船を並べた船橋の上に、家屋が立ち込めている様子がよくわかり ます。 右下は、橋の上に立ち込める家屋。結構高い建物もあります。左下はロンドンの城門。1601年2月の反乱軍がロンドンに突入する 場面。 これもテムズ川にかかる船橋。左下は真上から。右下は町の側から。画面ショットでは暗くて見にくいのですが、群衆が橋に向かって 走ってゆく映像です。CGとの合成がうまくできていました。 右下の画面の右側にテムズ川の船橋が見えており、左下隅にグローブ座の一端が見えています。画面はそのまま左に向い、グローブ座 の全貌(左下画面)が映ります。中国の客家の円屋に似ています。(こんなの) そのグローブ座。演目により相当舞台に手を入れている様子がよく出ていました。大掛かりな舞台背景を建設したり、外周の壁まで補 強工事を行ったり。”粗末な木造の芝居小屋”程度の認識でいましたが、かなり手が込んだ建築物だったのですね。 街角の様子。 晩 年のヴァネッサ・レッドグレイヴ演じるエリザベス。宮殿で「真夏の夜の夢」を見ているところ。晩年のアルツハイマーっぽい症状が 目立ってきていた様子がう まく演じられていました。ケイト・ウィンスレットが「エリザベス」「ゴールデンエイジ」で演じた毅然として立派なエリザベス女王 も、晩年はこんな感じだっ たのかも。 その「真夏の夜の夢」の役者。白塗りの化粧がなんとなく「サテリコン」風で不気味。 劇場そばの居酒屋。マーメイドの看板。左奥に一部見えているのは劇場。 これは「ジュリアス・シーザー」の舞台。結構ちゃんとローマ風建築の舞台背景となってます。 これはなんの劇だったか忘れてしまいましたが、舞台全部を建築し直した程の大掛かりなセット。 映 画「恋に落ちたシェークスピア」で一端を見ることができた当時の劇場を、更に詳しく見ることができ、参考になりました。というと ころが本作で得られた点で しょうか。せっかくの面白そうな題材をうまく生かしきれていないように思えました。単館ロードショーは難しいかも知れませんが、 他の作品、例えば以前ご紹 介した、血の伯爵夫人バートリー・エルジェーベトを描いた「The Countess(伯爵夫人)」などと二本立てで公開するといいかも知れ ません。この二本、いずれも英国が製作に噛んでいて、まったく同じ時期(1595-1605頃)を描いているので、併映してみる のも面白いかも。 IMDbの映画情報はこちら。 英国歴史映画一覧表はこちら。 |