2020/June/07 created

ビザンツ料理について


 【1】ビザンツ料理&食の文化史本『Taste Of Byzantium』の紹介

Andrew Darby著『Taste Of Byzantium: The Cuisine of a Legendary Empire』(2010年、Tauris Parke)
2003年にProspect Books社からハードカバーで出版された『Flavours of Byzantium』が2010年にTauris Parke社からソフトカバー化された第二版です。2019年に重版が出ていてamazonで検索すると、2010年版とは異なったページとなっているた め、注意が必要です(2019 年版はこちら2010 年版はこちら)。このあたりの説明が一切なく、序章の冒頭で『Flavours of Byzantimu』と著者の1995年の前著『Siren feasts』がいきなり言及されている為、著者とその作品になじみのない私はちょっと戸惑ってしまいました。前著『Siren feasts』(1997年)で、先史時代からビザンツ時代にかけてのギリシア料理を扱い、こ の本でビザンツの食文化に興味を持った人のために著したのが2003年版とのことです。著者ア ンドリュー・ドルビー(1947-)は、日本でも何冊か翻訳が出されている、古典古代の地中海 を中心に、西アジア、スパイスの世界史までを扱う方ということを今回初めて知りました(現在中古の日本語版 が高くて手が出ない『古 代ギリシアとローマの料理とレシピ』(原著1996年)や大カトー『農業論』10世紀の農書 『ゲオポニカ』英訳新訳者の人だということも今回知りました)。
あまり厚くなく、比較的軽めの読み物的な体裁ですが、巻末の用語出典元索引が非常に有用で、少ない史料を 網羅的に用いていて、ビザンツ食物大全、或いはビザンツ食の文化史、といった内容となっています。以下目次で す。

序章(7)
第一章 An Introduction to Byzantium(11)
第二章 Tastes and Smells of the City(33)
第三章 Foods and Markets of Constantinople (57)
第四章 Water and Wine, Monk and Traveller(83)
第五章 Rulers of the World(105)
第六章 The Texts(125)
  The Eight Flavours(129)
  Categories of Foods(132)
  Humoral and Dietary Qualities of Foods(147)
  A Dietary Calender(161)
第七章 Instructions and Recipes(171)
第八章 A Phase-Book of Byzantine Foods and Aromas(183)
文献一覧(239)
索引(257)

出典史料ごとの英訳(6章)、用語出典索引(8章)、料理レシピ毎の 史料翻訳(7章)、1-4章はビザンツ社会の食文化を巡る各種局面の風物誌となっています。
以下内容の解説です。

本書は、順番通りに読むよりも、各章の概要を予め把握した上で、順番 を決めて読むと読みやすいのではないかと思います。「ビザンツ料理本」だと思って読み始めたのですが、「ビ ザンツの食の文化史」といった方が適当な内容でした。ビザンツ料理について手っ取り早く知りたい方は、以下 の順番で読むと良いかも知れません。

1)7章 ビザンツ料理

まず、ずばりビザンツ料理について手早く知るためにはレシピが書かれ た第七章「Instructions and Recipes(171)」を最初に読むことがお奨めです。主要なメニュー形式、肉料理、各種ソース、パ ン、ワインなどの各種史料からの抜粋集です。約10頁なので長くはありません。難解な単語もそれほど登場し ないため、読みやすい方ではないかと思います。全部の食物が記載されているわけではなく、果物や野菜など、 加工しない食物は他の章で記載されていますが、ビザンツ料理のイメージを掴むには本書は有用です。しかし、 ビザンツ料理と一口にいっても、貴族や僧侶、庶民で食べるものは異なる筈であり、更にビザンツ1000年間 の間での変化もある筈なので、このあたりについて知るには1〜4章をあたることになります。
焼肉はなく、肉はシチューのような煮込みかソーセージのような加工品 で、各種ソースとスパイスを用いた魚料理の比重が多く、各種スパイスを様々な組み合わせでふんだんにブレン ドしたワインの三本柱です。ざっくりいえば、セルジューク朝やオスマン朝の統治下において浸透したテュルク 系の焼肉料理を現代のギリシア料理から差し引いたものがビザンツ料理という印象でした(個人的に)。

日本にあるギリシア料理のお店にもタベルナ(大衆居酒屋/定食屋)的 なものがあるかも知れませんが、私が実見した少ない範囲では、比較的中級以上の雰囲気の店構えと価格帯と料 理(きれいな皿にフランス料理のようにちんまりと出てくる感じ)という印象があり、ギリシア現地にあるタベ ルナな雰囲気の店は、日本ではあまり多くはないような印象があります(日本で5,600円の天丼/牛丼/カ レーライスを欧米の店舗では10ドル以上で食べるというようなパターンと同じ感じ)。最近ではギリシア料理 の本場レシピがネットや書籍で出回っていて、自宅で現地大衆料理が再現できるため、ギリシア料理屋にいった り、自宅でギリシア料理を作ることでビザンツ料理の味とイメージを知ることができるのではないかと思いま す。

2)6章 2節 食材

本書は難易度の高い用語が大量に 登場します。読了間際になってからWeblioの単語レベルをチェックするようになって気が付いたので すが、Maxのレベル30の単語が1つ、レベル27-8は頻出していました。Weblioのレベルは全 部で30あり、レベル30は「全知全能」、27-8は「賢者」レベルとのことです(レベル9-10が日 本での大学院レベル)。本書を辞書なしで読める人もいるでしょうが、多くの人は辞書を引く回数が多くな ると思われますので、難解用語がもっとも頻出する「第六章 The Texts」の「Categories of Foods」の節を早い段階で読み、単語リストを作っておくと効率的に読めるのではないかと思います。「Categories of Foods」の節は、食材の羅列となっているため、私の場合、読むというより延々と辞書を引くだけの節でした。最初にここを読んできちんと単語帳を作って おけば、もう少し効率的に読めたのではないかと思います。地中海原生の香辛料が意外と多いことを知り、香辛 料というとアラビア半島〜インド〜東南アジアという先入観が改められました。

3)6章 4-5節 ビザンツ人の食材と健康に関する解釈

史料の章にある、以下の二節は後回しでいいかも知れません。

  Humoral and Dietary Qualities of Foods(147)
  A Dietary Calender(161)

「Humoral and Dietary Qualities of Foods」は、食材と健康の関係を列挙していて、ビザンツ人が、食事・食物・食材を どのように捉えていたのかが伺える史料です。食材と健康の関係は、現代人でも日々考えるところですが、我々現代 人があまり健康との関連で考えない食材(私の場合、味覚だけでしか捉えていない香辛料など)を、ビザンツ人は、 健康の関連で細かく考えていたのだ、ということがくどいほどよくわかり少々疲れました。この節は、「Categories of Foods」の節と並んで難易語が頻出する節ですので、料理の解釈について知りたい場合に読むことにして、料理そのものについて知りたい場合はまずは「 Instructions and Recipes」と「Categories of Foods」を読んで、本節は後回しでいいかも知れません。

「A Dietary Calender」は、1年12か月の各月ごとに、健康面から推奨される食事と食材を列挙しています。「Humoral and Dietary Qualities of Foods」の節を月毎に分類し直したような節ですので、ここも食の文化的解釈に興味がなければ後回しでいいかも知れません。難易語は、 「Categories of Foods」の章で登場する用語でほぼカバーできるため、「Categories of Foods」で用語を調べておけば比較的サクサク読める節です。面白いのは、「この月は性交は推奨されない」「性交が推奨される」とあったりして、ビザン ツ人がこの養生法を厳守していれば、ビザンツ人は特定の月の出生に偏っている、ということになるわけです が、このあたり、調べてみたら面白いかも知れません(厳守している人なんてそんなにいなかった筈なので、 データを集めても徒労に終わるような気もします)。養生法ですから、フロに入る回数やマッサージ、石鹸等に ついても語られています。

少なくとも本書で語られている史料の範囲では、ビザンツ人にとって料 理とその味は、健康維持のためのもので、あまり味を追求しているような印象は受けませんでした。修道院での断食のくだりでは、「断食期間は血のでる魚を食べて はいけないが、(血が出ないので)貝は食べていもいい」とあったりして 「パンがなければお菓子を食べ ればいい」みたいな記述があったりするわけですが、これも美食というより、断食回避のための裏技的なも のに過ぎないようにも解釈できるかも知れません。

4)6 章 1節 ビザンツ人の味覚/風味

「The Eight Flavours」の節で簡単に紹介されています。2頁程ですのですぐ読めます。ビザンツ人がどのような風味を好むのかが書かれているのですが、正直味覚 という、感覚的なものを、2頁という具体性の少ない記述量では伝えきれていません。この部分は、その後 の節の具体例を読んだ後の方がわかりやすいかも知れません。

5)1−4 章 ビザンツにおける食の流通、食文化

第一章 An Introduction to Byzantium(11)

 The emperors at Constantinople(16)
 Peoples, languages and 'ethnic foos' of Constantinople(25)
 Greeks and others: some travellers to Byzantium(28)

第一章は、本書を読むにあたって前提となるビザンツ帝国やコンス タンティノープルに関する情報です。といっても概説書にあるような一般的な内容ではなく、食物の名称に ラテン語由来のものも多いなど、食に関係する内容となっています。
二−五章は、各食材のパートと首都や帝国を構成する初階層(皇帝 /宗教者/旅行者/兵士等)の話が交互に登場しています。

第二章 Tastes and Smells of the City(33)

 Constantinople and its environs(35) -都の外観
 The aromas of the city(38) -香料
 Some Byzantine spices(43) -香辛料
 Humoral theory and the need for spices(47) -香辛料と養生法
 The calendar and the Byzantine diet(52) -月々の養生法

第三章 Foods and Markets of Constantinople (57)

 The markets of Constantinople(59) -都の市場
 Fish and fish source(66) -魚と魚醤
 Meat eggs , milk and cheese(69) -肉、卵と乳製品
 Fruits and vegetable(74) -果物と野菜
 Bread, grains and legumes(77) -パンと穀物

第四章 Water and Wine, Monk and Traveller(83)

 water and wine (83) −ワインと水
 Monotreries,monks and their food(93) −修道院の食
 Food for travellers and soldiers(97) −旅行者と兵士の食
 Fairs of the Byzantine Empire(100) −お祭りと食について

6)5章  Rulers of the World

皇 帝の食卓の話。外国人訪問者の旅行記などからの出典が多く、料理そのものよりも、宮殿の接待用宴会室の 解説などの部分が多い。

7)八章 A Phase-Book of Byzantine Foods and Aromas

ここは読み物ではなく、約630程の用語の史料出典索引です。
史料が1世紀のアピキウスや4世紀の皇帝ユリアヌスの侍医オリバシウスの書から16世紀のロシアの旅行者 に至るまで、長期間のものに散在しているため、時代を超越した相対的なビザンツ食のコラージュとなってしまって いる面もありますが、だいたい後期ビザンツ(11‐15世紀)の情報が多い内容となっています。

ササン朝の料理史料である小著『ホスローと小姓』の日本語参考訳を作成した時(こ ちら)、料理書史料翻訳はレア用語が頻出する可能性がある、ということを認識ましたので、難易語の 羅列部分はまだ未訳のままなのですが、その恐れの通り、本書も難易語頻出で難儀しました。なんとか読了した今、 『ホストーと小姓』の未訳部分などたいした分量ではないため、そのうち残りの部分も訳そうと思います。

学生時代、古代の貿易品を読んでも謎の記号にしか見えず、交易物資の歴史にあまり興味が持てなかった理由 の一つは、よく登場する没薬、乳香、龍涎香、麝香などがイメージできなかったからなのですが、今アマゾンで見る とどれも廉価で簡単に入手できると判明。凄い時代になりました。


余禄:
本書は珍しくJPアマゾンで新刊で購入した洋書です。2/1日に 発注し、1934円でした。送料無料だったので、JPアマゾンに在庫があるので送料が無料だと思い込ん で発注したのですが、実際にはロンドンの会社からの発送でした。しかもパッケージに記載されていた住所 で検索すると、英国中部の郊外地にある大規模な配送センター集積倉庫群からの発送でした。驚くべきこと です。USやUKアマゾンで発注すれば、JPと殆ど同額であってもちゃんと送料がとられます。しかもこ れまでは最低でも5ポンド-10ドル程度だったので、それと比べるとJPアマゾン経由で購入するだけで 実際の発送地が英国であっても送料分安く買えてしまうという、、、、 これまでも洋書を買う時は、最低 でもUS/UK/JPで比較してから最安のものを選ぶようにしていたのですが、JPでの比較は念のため という程度で、実際にJPで洋書を買ったのは(記憶の上では)2回だけで、それはアマゾンJP直送でし た。

現在本書は若干値上がりしていて、送料無料で英国書店発送の最低 価格が2148円、アマゾン以外の新刊は2233円となっています。書籍は21ドルなので、2233÷21=106円となり、為替レートと一致し ます。送料有料の業者の新刊でも驚くべきことに、英国の業者からの発送であるのにも関わらず、送料が 250円とか257円とかになっています。JPアマゾンで購入すれば、国際送料ではなく、日本国内送料 が適用されているという、、、、驚きです。
ちなみにUKアマゾンでは現在アマゾン直販は品切れで、書店新刊 価格は14.99ポンド、現在1ポンド131円ですから、1963円となり、これに送料257円を加算 すると2220円、≒2233円です。

本書のおかげでこういう状況がわかってしまいましたので、すぐに 読みたいわけでもなく、そのうち買おうと思っていた洋書について、送料無料か国内送料での購入可否を調 べて、もし以上のような状況が適用されるのであれば、さっさと購入してしまおうと思っています。なんと いうか、英国離脱投票で離脱の結果が出てからポンドは急落し、現在では、投票直前のレートの2/3に落 ちているので、それなりの送料を指定しても、そこそこ安値で替えるわけですが、そうならない動きをして いる点に興味をそそられます。

ところで、2/1のレートを見ますと1ドル109円となるため、 2289円となるはずなのですが、実際は1934円でした。アマゾンのレートがどういう風に決まっているのか不思議です。USアマゾンと JPアマゾンで決済レートの日付や決め方が異なっているのかも知れません(そんなことがあるのだろう か?)。そこで少し調べてみたところ、昨年10月のJPの新刊価格は1643円、年末年始に1930円 になっていました。USアマゾンの昨年10月の価格は14.5ドル、年末年始にかけて新刊は21ドルに 値上がりし、一方新古書は13.3ドルと、若干値下がりしています。私が購入した2/1のUS価格は、 アマゾン直送の新刊で15.17(今と同じ)、出品新刊で13.69ドルと、あまり変わりはありませ ん。USでは現在直送がなく、出品者の新刊が送料18ドルと高額となっていますが、USに出品されてい る商品には英国書店の商品があり、これも英国からの発送となっているのにも関わらず18ドルの送料と なっています。つまりUSとUK、JPの新刊価格は連動しておらず、しかもJPに出品されている新刊 も、為替レートとあまり連関なく独自に価格変動していることもわかりました。英国の書店で英国の同じ倉庫からの発送なのに、同じ商品がJPと UKとUSで為替と連動していないような感じで別別 に価格変動しているとは驚きです。

というようなことを調べて何か明確なことがわかったかというとそ ういうわけではないのですが、これまでの知見では、UKよりUSの方が送料が高く、書籍本体価格はUS の方が低い傾向があるため、高額書籍の購入はUS、廉価書籍の購入はUK、というおおよその使い分けが あったわけがあり、その点は現在も変わりはないわけですが、現在ではJPも一応の確認というわけではな く真面目に選択肢に入れる、ということになりました。


【2】自作フェタチーズモドキで作るオスマン末期田舎風サラダと自宅で作る ビザンツ料理風ライスプディング

 
@オスマン末期の田舎風サラダ


現在のギリシア、ブルガリア、トルコでよく食べられている庶民的な冷製サラダです。基本的に、どれも白チーズ(フェ タチーズ)+キュウリ+トマト+タマネギ+オリーブオイルからできている簡素なサラダです。夏場のお昼にギ リシアの地酒レツィーナ(ブルガリアではマスティカ)やワインをちびちび飲みながら食べるのに最適です。

現在のギリシア料理では、ホ リアティキサラダ(ギリシア語で田舎風サラダの意味、英語ではGreek Salad)、ブルガリア料理では、ショッ プスカサラダ、トルコ料理ではア クデニスサラダ(地中海風サラダ) or チョ バンサラタス(羊飼いサラダ)に相当します。こ ちらの記事によると、トマトがギリシアに入ったのは1818年とのことで、19世紀末になるまではポピュ ラーではなかったそうです。もしかしたらオスマン帝国で全体でのトマトの浸透も同じ頃かも知れません。個人的経験の範囲 では、チュニジア、イタリア、シリア、レバノン料理で遭遇した記憶がないため、仮にこれらの地域でもこの種のサラダがあ るとしても、レアな方なのではないかと勝手に推測しています。というわけで、フェタのサラダは、とりあえずオスマン末期 に庶民サラダとして広まったのではないかと思うわけです。このあたりの正確な歴史についてはいずれ別途調べることとし て、今回の記事の目的は、モドキ自作です。

ブルガリアのショップスカサラダは、ショップ地方(西 部ブルガリア地方)のサラダという意味で、1955年に観光用に開発されたサラダということですが、下敷きとなったサラ ダは、ホリアティキやアクデニスと同様のものだったのではないかと推測しています。

ざっくりいってこれらの違いは、ギリシアのホリアティキはトーフ大の白チーズが一枚サラダの上に置かれているところ、ホ リアティキとトルコのアクデニスはピーマンが入っている、チョバンは白チーズが入っていない、の相違程度でチョバン以外 はほぼ同じです(白チーズがないチョパンは大きく違うかも知れませんが)。

フェタチーズは、羊か山羊の乳から作る白チーズです。ギリシア以外でも作られていて、ブルガリアではシーレネと言いま す。日本ではギリシア製のフェタ以外輸入されている製品を見たことがありません。現在は日本のアマゾンでも買えますが、 安いものは結構入手が難しいので、早くEUとの関税協定が発効されて価格が下がるのを待っているわけですが、最近日本の 牛乳で似たものを自作できることに気が付いたため、この記事を書くことにした次第です。

フェタは、私の把握している範囲では、日本国内ではだいたい200g800円くらいです(Amazon はこちら)。高級食材価格です。ブルガリアではボリュームゾーンの安チーズですし、フェタサラダは、日本で いえばファミレスで定番においてあるサラダのような位置づけなので、200gを800円で買ってしまうと、高級サラダを 食べている気がしてきてしまいます。そこでこれまでは、賞味期限が近付いて値引きしているものを半額で購入したり、トル コ料理屋と直接交渉して2kg5000円とかでタッパー持参で小分けしてもらったりしていましたが、そうそう半額値引き 商品に出くわすわけではなく、トルコ料理屋では、頻繁に通っていないと安く買うわけにもいかないし、そもそもキロ単位で 買う場合は、ホームパーティでもしない限り消費しきれません。そんなこんなで食べる機会が限られていました。

そこでカッテージチーズでの代用と、カッテージチーズの自作に思い至ったというわけです。ネットで調べると、実際 カッテージチーズを代用して作成している日本語レシピ記事が結構見つかりました。今回自作してみて、ブルガリアで食べて いたものとだいたい同じ味が再現できましたので、この記事を書くことにした次第です。実際のフェタは固いため、まぜると ボロボロになってしまうカッテージとは食感が異なりますが、味はだいたい同じです。フェタチーズのサラダは、バラバラに 切ったチーズ+トマト+キュウリ+タマネギをざっくり混ぜるだけで作るのは簡単です。
↓が完成画像です(ほとんど残飯にしか見えませんが・・・おいしそうな画像は他のサイトで検索してください)。


以下手順です。

用意するもの(分量は、↑画像のもの)
・カッテージチーズ(牛乳500ml,酢少々、塩少々)
・トマト(中)一個、キュウリ(中)一本、タマネギ(中)一個、オリーブオイル少々

所用時間30分くらい(ただしカッテージチーズは作成後、冷蔵庫で冷やす。トマトときゅうりも冷蔵庫で冷やしておいた方 が良い)

予算は実質2-300円くらいで3-4人分です(トマトやキュウリは一個づつ売ってないため、総出費は600円くらいか かる。オリーブオイルと酢を瓶で購入するとこれらも500円以上かかる)。

1)カッテージチーズの作り方

こ ちらのサイトを参照しました。500mlの牛乳から約80gのチーズができます。牛乳一パック200円くら いですから、500mlで100円です。これで80gのチーズができることになります。200gなら250円相当です。 市販のフェタが200g800円ですから、1/3以下なのでリーズナブルです。詳細な手順は前掲リンクの通りですが、一 応記載します。
1-1)牛乳500mlを沸騰近くまで沸かし、火を止めて酢を大サジ二杯いれ、かき回す(こちらの記事によ ると酢ではなく、レモン汁でもできるそうです。レモン汁で分離すれば、残余の乳清が飲みやすくなるかも知れません)。
1-2)数分かき回していると凝固してくるので、卵白色の水分(乳清(ホエイ))とチーズ部分が分離してきたら、 ザルを用いてチーズと乳清を分ける。ザルに入れた後、キンチンペーパーで包んで強く絞り、水分を取り除く。
1-3)ザルにとったチーズに塩を少々まぜる。あまり多いと塩辛くなりすぎるので少しづつ味を見ながら混ぜる(焼 き鳥の塩味くらいの塩味レベル。チーズ自体は多少塩っぽくても、他の食材と混ぜるので全体としては緩和される)
1-4)2-3時間冷ました後冷蔵庫で冷やす
※乳清は、酢が混ざっている味なので飲みにくいが、はちみつ等と入れると飲みやすくなるので、もったいないと思っ たら冷やして冷蔵庫に保存しておいてあとで飲む。

2)サラダの作り方

1-1)トマト、キュウリ一センチ各に切る。トマトの水分をザルで取り除く
1-2)タマネギをみじん切りにする
1-3)カッテージチーズ、トマト、キュウリ、タマネギをざっくり混ぜて、上からオリーブオイルを軽くかける(お 好みでブラックペッパー等香辛料を軽くかける)

シャキシャキとしてさわやかな食感を得るためには、トマトとチーズの水分を取り除くことがポイントです。水分が多いと全 体的に水っぽくなってしまうためです。

以上です。細かく言えば、ギリシアのホリアティキやトルコのアクデニスは、もう少し素材や作成方法に異同がありま すし、ブルガリアのショップスカも、レシピ記事により細かい異同がありますが、手順が複雑だとやる気がなくなる方もいる かも知れないので、この記事では最低限の手順だけを記載しました。もし、作ってみて気に入った方は、もう少し複雑な手順 の他のレシピを参考にしてみると良いかと考える次第です(例えばこ れとか。結構食材が多いので、最初にこれだとハードルが高く感じる人も多いかも知れません)。これまで二度 作ったわけですが、次回はレモン汁で分離してみたいと思います。
個人的には、↑のサラダからトマトを差し引いたサラダがビザンツ時代にあってもよさそうな気がしているのですが、 最近読んだビザンツ食の風物誌本『Taste of Byzantium』では登場していなかったような気がしています(見落としかも知れませんが)。


Aビザンツ料理風ライスプディング

ビザンツ料理本『Taste of Byzantium』p80に出ていました(ただしレアなデザートと書いてある)。現在のブルガリアでの類似の料理がありますので、連綿と受け継がれてき た料理という可能性があります。調べてみたら、これも簡単に作れるので作ってみました。

最低限準備するもの

・牛乳500ml、ご飯(残り物の冷や飯でOK)一杯分、砂糖50g(大サジ6杯程度)、卵一個、バター大さじ一杯

20分くらいでできます。ただし、完成したものを冷まして冷やすのに数時間かかります。

手順はこ ちらのサイトのレシピを利用しましたが、手順が一部わかりにくいところがあるため、以下に補足します。

1)牛乳500mlを沸かす
2)沸いた牛乳にご飯、砂糖を入れてかき回す。この時、牛乳の量に対して米の量が少ないように感じるかも知れない が、最終的には以下のように問題なく固まります


3)卵を別の椀に入れて溶く。↑の牛乳をサジで取り出し、少しづつ卵に混ぜてゆく。突然大量に入れると卵が固まってしま うので、少量づつ↑の牛乳を卵に加えて混ぜる。分量が当初の卵の倍くらいになっても固まらないことを確認したら、その卵 を2)の鍋に全部入れて2-3分かき回す。その後2-3時間放置すると、↑の画像のように、固まります。数時間後、鍋が 冷めたら冷蔵庫に入れて数時間冷やして完成。特にバニラエッセンスとかを入れたわけではありませんが、アイスクリームの ような感じで食べれました。

『Taste of Byzantium』p80によると、砂糖の代わりにはちみつでも良いそうです(ビザンツ時代は牛乳ではなく、山羊か羊の乳だったと思われます)。
(3)終わりに

多くの人はとっくに気づいている話だと思うのですが、私は最近気づきました。従来エスニック料理や歴史料理を自作 しようとすると、いろいろと不都合がありました。

1)あまり使いもしない食材や、特に香辛料等の調味料を購入しなくてはならなくなり、一人暮らしでは購入した食材 を消費しきれない事態を招く
2)余分に作ってしまった場合、翌日或いはその週毎日自宅で夕食が取れるとは限らないため、気づいたら消費期限の 切れた料理が一か月後の冷蔵庫で発見される、という事態を招いていた
3)専門店でしか食材が購入できないものが多く、買い出しに行くだけでも面倒で交通費もかかる(料理の地元の国で は庶民的な料理の筈が、日本で自作しようとすると高級料理並みのコストがかかる)
4)レシピがわからないのでわざわざ本を買う
5)以上を総合すると、人数集めてパーティー形式にしないと消化が難しくなり、大ごとになって面倒

等々多くのハードルがありました。しかしここ数年少しづつ気づいたことがあります。例えば

1)羊肉など日本ではレア食材が、比較的廉価でその辺のスーパーでも売っているようになってきた
2)ネットで自宅の一般的な調理用具と具材を用いての自作レシピが簡単に見つかるようになった
3)特に、日本で手に入りずらい食材について、代替食材を提案するレシピも簡単に見つかるようになった
4)入手困難な、或いは高額な食材の場合、代替食材を自作する方法がネットで簡単に見つかるようになった
5)あまった食材や香辛料を処分するための別料理も簡単にネットで見つかるようになった

そして最近では、

6)在宅勤務が普及することになったおかげで、二日分以上の量を作ってしまっても、翌日翌々日も自宅で夕食が食べ れる確率が非常に高くなり、夕食の予定が立てられるようになったため、冷蔵庫で死蔵してしまうリスクが最小化された(こ れは結構でかい)

30年くらい前、自宅に住んでいた頃たまにエスニック料理を作っていましたが、当時は多くの食材を入手に広尾のナショナ ル麻布や銀座か青山の紀ノ国屋、明治屋等に行かなくてはなりませんでした。価格も高く、時間も交通費も、書籍代もかかり ました。海外の地元では庶民的な料理でさえ、日本で再現すると高級料理並みのコストがかかりました。そうして普段ほとん ど使いもしない、その料理のためだけに購入した、少ししか使わない香辛料が何本もあまってしまい、親に近所の人にあげた りしてもらいました。

というようなもろもろのハードルが、いつの間にか解決してしまっていることに気が付き感慨深いものがあります。今後も気 が向いたら、めぼしい料理の自作にトライしてみたいと思います。

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