古代ローマ歴史映画「Columna」(トラヤヌス時代のルーマニア)

  1968年ルーマニア製作。原題「Columna」で、列とか柱を意味する「カラム」という ことなのですが、意味は不明です(トラヤヌス円柱のことかも 知れません。しかしそうなら、「ダキア人」同様、映画のラストに円柱を登場させるとかしないとわからないのではないでしょう か)。映画の内容からすると、 戦争に勝利したローマ人の、ダキア植民を描いているので、植民(Colonia)という題名の方が良さそうに思えます。一応前回 ご紹介した「ダキア人(1966 年製作)」の続編という位置づけのようで、106年、トラヤヌスに率いられたローマ軍が、ダキア人の拠点、サルミゼゲトゥサを攻 め落とす場面から始まりま す。デケバルス王(本作ではデチェバーラと聞こえた)は、Amza Pelleaという、同じ俳優さんが演じています。脚本家も、Titus Popoviciという方で同じなのですが、監督は異なっています。その為か、映像や話の展開が全く異なっている印象があります。一言で言えば、暗くて地 味。冒頭のサルミゼゲトゥサ要塞攻撃場面は、下記のように、トラヤヌス円柱に彫られたローマ軍そのものですが、華やかな戦闘とい う感じはまったくせず、煙 があたりに立ちこめ視界は悪く、カメラが揺れたりして、兵士の視点を描いたリアリズム映像となっています(下記は、数少ない、煙 にまかれていない箇所)。 前回はフランスが製作に協力していたようなので娯楽作品の側面が強かったのかも知れませんが、本作はいかにも、共産主義時代の東 欧映画という感じ。本作 も、観たのはGWなのですが、前回「ダキア人」で、ブログ記事を書く当日、英語版を発見した経緯もあり、今回も再度調べてみた ら、数日前にロシア語版が上 がっていました。ここ2,3日突然暑くなったので疲れ気味なのですが、結局ロシア語版を見てしまいました。まあ、聞き取れるとこ ろなんて1%も無いのです が、それでもルーマニア語版よりは、理解が進んだのでした。

 下記は要塞から脱出するデケバルス王。左は前回も登場していた司祭。

 要塞は陥落し、夜、トラヤヌスが入城する場面。

  軍営で並ぶ将校に指示を出すトラヤヌス。この時将校達が手に持っている兜は前回「ダキア人」で登場したリオのカーニバルなピンク や紫の飾りのついた兜なの だが、これを被っている場面は登場せず、この場面と、植民市落成式の場面でしか登場しない。そして本作の主人公は、将校の一人、 ティベリウス将軍である。

 これがその、ティベリウス。あまりぱっとしない地味な見栄えの俳優さん。

  しかし、彼は、ダキア人の一人を裏切らせ、デケバルス王の隠れ家に案内させる。観念したデケバルスは自害して果てる。降伏した多 くのダキア人が、トラヤヌ スの前を連行される。そこにデケバルス王の、袋に入った首が持ち込まれ、首の袋をダキア人に向かって掲げるトヤラヌス。

 その後、ティベ リウスは配下の兵士とともに、(恐らく)植民市建設地を探すことになる。一行は大量の羊を連れており、本格的な植民を目指してい ることがわかる。旅の途中 で現地の青年に槍を投げられ、現地長老達の取り成しで青年は助かるが、この長老のアドバイスで、最適地を目指して旅を続ける。峻 険な山岳地を抜ける時、峠 で笛を吹いている仙人のような老人に出会い、彼に都市建設最適地まで案内してもらう。キャラバンを解体し、っ砦と、それに隣接す る都市建設を始めるローマ 軍(要塞と都市の隣接は古代ローマ植民都市の基本形のひとつ)。
 


 まずは、砦作りから。建設中に事故がおきて死者が出たことからローマ軍内でも(この場所に決めた)ティベリウスに反発が起きた りする。

  一方サルミゼゲトゥサを生き残った一人のダキア人は、山あいに住むダキア人に要塞陥落とデケバルス王死去の様子を伝え、洞窟を根 拠地とした反乱軍を組織す る。まずは資金集めに、山あいの川で金の採掘を始め(砂金ではなく、石ころのような金が見つかるのがちょっと非現実的)、村民の 少年を兵士に武器の訓練を 施し、ゲリラ部隊に仕立て挙げるのだった。

 植民地近くを調査していたローマ兵士の青年は、夜、野原で乙女達が神に祈る儀式を目撃し、思 わず祈りの場に入り込んでしまう。驚いた娘達は散り散りとなり逃げるが、その中の一人を追いかけ、抵抗する娘を思わず強姦してし まう。青年がハンサムなの がミソですね。結局娘(シーア)は青年と恋に落ちてしまうのだから。で、娘と恋を語る場面が出てくるのですが、こんなことしてて 青年は脱走兵扱いにならな いのだろうか。調査任務に数日間与えられていた、と解釈することにする。ところが、娘と別れて、娘が洞窟基地に戻るのを、青年は 尾行し、場所を突き止め、 ローマ軍を率い戻り、急襲する。青年は娘を見つけて追いかけるが、娘は青年を強く詰る。そこに反乱軍のリーダーが登場し、今度は 娘は青年を逃がそうとする が、リーダーは青年の目を潰してしまう(その後目を潰された青年は、ローマ軍の陣地まで娘に連れられて戻っている。数年後には、 青年は子供達の教師をする ようになる。その頃にはシーラとの子供が一緒に生徒となっている)。

 その頃、ローマ軍の陣地では、Andradaという反乱軍に組織さ れてしまった女性(ソフィア・ローレンに似ている。少女というよりも逞しいラテン女性というイメージ)が、ローマ軍将校と一夜を ともにし、将校を殺害する 事件が発生する。女は捕まり殺されそうになるが、そこに、植民地建設に反発する兵士の意見を相談に皇帝のところに出かけていた ティベリウスが戻ってきて、 とりあえずダキア人長老とともに、女に事情聴取を行い、何故かティベリウスは見逃すのだった。いつの間にかダキア人長老達とダキ ア人(映像に映っているの は壮年者が多い)は、植民地建設を手伝っており、彼らに何故手を貸すの、とアンドラ(ローマ人のティベリウスはアンドラーダが発 音できないようで、最初の 頃はアンドラと発音していた。ダキア人はアンドラーダと呼んでいる。そして数年後にはアンドラーダと発音できるようになる)は疑 問をぶつける。その日、ダ キア人とローマ人は、一緒にローマ神殿の上に女神像を設置し、夜、宴会を催し一緒に祝うのだった。


  ある日、ティベリウスはアンドラに馬を与え、出て行っていい、という。陣営を後にする途中、建設作業中の老人達と会話し、そし て、「建設に同意する」と告 げ、ティベリウスの家(この頃には、天幕ではなく、木造家屋になっている)に戻るのだった。その世、建設作業員のダキア人のとこ ろに、ゲリラ軍のリーダー が尋ねてくる。彼が去ると、番犬が吠え出し、ローマ人歩哨兵が出てる。ティベリウスもダキア人老人達のところに来て、誰かいたの か、と聞くが、老人達は誰 も、ととぼける。そしてティベリウスが部屋に戻ると、既に女房扱いのアンドラがいるのだった。なし崩しに同居するようになったよ うだ。そしても子供までで きてしまうのだった。ティベリウスと乾杯しあう長老。この時、シーラが世話をしているから、シーラもローマ陣営にいついているよ うだ。本記事の四枚目の画 面ショットでティベリウス将軍の画像を掲載しているが、このカットは、子供が誕生する時に落ち着かずに部屋の中を歩き回る将軍。 いつの間にか、丸太むき出 しだった部屋の内装がローマ風になっていることがわかる。そして、以下、生まれた子供を抱えてティベリウスはローマ人・ダキア人 に見せにゆくのだが、その 背景には建設中の凱旋門が見えている。植民地建設が着々と進展していることがわかる(子供の名前はトラヤン)。

 植民市建設は順調に進み、子供が4歳くらいになった頃、植民地落成式が行われ、元老院議員が視察と演説に訪れる。ところが、元 老院議員の演説中、ゲリラが放った矢で議員は刺殺されてしまう。

  そして次の場面では、子供は7,8歳にになっている。また数年が経過したようである。そのある日、ダキア人とローマ人の数十名に 上る遺体が担ぎ込まれる。 ゲリラ軍の仕業らしい。この場面、背景に映るローマ軍兵士は、軍装の上にダキア人と同じコートを羽織るようになっている。段々融 合化している場面を描いて いるようで、芸が細かい。今回はティベリウスも兵を率いて出撃する。一方のゲリラ陣営。かつての少年兵は、青年となっている。そ してローマ軍を襲撃して 奪った金貨を踏みつけにしてリーダーは大喜びなのだった。この場面、ゲリラが単なるテロリストに堕してゆく感じが良く出ている。 1968年、冷戦時代の東 側陣営で作られたとは思えないゲリラの描きぶり(IMDbの配役表を見ると、このリーダーの名前はGerula(ジェルーラ)と いうらしい。ゲリラ、と発 音できなくもない名前なのであった)。

 山間部でティベリウス一隊とリーダーに率いられたゲリラ兵の会合が持たれる。ジェルーラを罵る ティベリウス。何を言ったのかわからなかったが、最後にGerulaは槍をティベリウスに投げ付けようとする。ティベリウスは、 「注意しろ、思い知ること になるぞ」というようなことを言っていたようで、ジェルーラも思いとどまり、ティベリウスは去る。

 その後また2,3年平和な状況が続い ていたらしい。ジェルーラは、山に遊びに出てきたティベリウスの息子トラヤンを可愛がっている場面が出てくるのである。両親の名 前を聞いていたし、更にト ラヤンにメダルの土産を持たせ、狩を教えたりしているようだからである。それを見ていると、もうローマ軍放逐の意欲は低下してい るように思える。更に、 Gerulaは、下記のような、覆面をしている一団のリーダーと会談する場面が出てくる。この覆面男は、会談の最後に覆面を取る のであるが、どう見ても ローマ人である。
 

 冬。一面雪の中、この覆面団が植民市に押しかけ、ローマ軍との対決となる。久々の戦闘で、砦に逃げ込むローマ軍。そこに、ジェ ルーラ一隊が救援にやってくるのだった。

  覆面団を撃退したローマ軍だが、ジェルーラは親友(ひょっとしたら息子かも知れない)が戦死してしまう。遺体の前に泣き崩れる ジェルーラの元に向かった ティベリウスは、ジェルーラに剣を向けられ対決することになる。「何故だ!」と叫ぶティベリウス。ジェルーラは理由を言うが、聞 き取れなくて残念。ティベ リウスは討ち取られてしまう。ローマ軍兵士が盾の上にティベリウスの遺体を載せて砦に戻る。遺体の上に泣き崩れるアンドラーダ。 砦から植民市に引き挙げて ゆく隊列にはダキア人も混じっている。その隊列を見ながら、ジェルーラがティベリウスの息子に語り掛け、その後、子供を隊列に送 る。ジェラートが隊列を見 守る場面で終わる。

〜幕〜

 一度だけ見て面白い、という意味では、「ダキア人」の方が娯楽性が高く面白かったのですが、 将来見返すかも知れない、という観点では、私にとっては、地味ながら、こちらの作品となりそうです。でもなんか、最近の勢いを見 ていると、一ヶ月くらいし たら、英語字幕版も上がってしまいそう。。。。

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