オスマン歴史映画「イスタンブル征服」(1954年版)

  2012年2月16日にオスマン朝のコンスタンティノープル征服を扱った映画「Fetih 1453」が、トルコ及び西欧各国、更にはマレーシアやインドネシアなどで一斉に公開されました。制作費1700万ドル(1ド ル=100円で17億円)。 公開時ではトルコ史上最高の制作費をかけ、CGをふんだんに盛り込んだ160分の大作。トルコではコンスタンティノープル征服を 扱った作品は過去にも作ら れていて、アニメ作品もあります。今回ご紹介するのは、冷戦たけなわの1954年に製作されたモノクロ版。たいして期待していな かったので、以外によくで きているように思えました。

主要登場人物。右から、主役のウルバトゥル・ハサン、その恋人のエラ、メフメト二世、ビザンツ高官で悪役のユスティニアーニ。


〜あらすじ〜

パー ディシャー・メフメトが製造中の大砲を視察している場面からはじまる。次いで宮廷へのメフメト入城。並行してイェニチェリの訓練 場面が映る。訓練中の兵士 ウルバトゥル・ハサンが、パーディシャーに呼び出されて宮廷に赴く。道すがら途中で、ムスタファの恋人の女性エラがバルコニーか らウルバトゥルに花を投げ る。史実性はともかく、なんとなく当時の街路の雰囲気が出ていなくもない映像(遺跡が壊れた部分に張り出し窓を就けたというだけ のセットだと思われる が)。

 高官達と審議中のオスマン宮廷。何やらメフメト激怒。席を立って演説。そこに呼び出された兵士ウルバトゥル・ハサンが来る。コ ンスタンティノープルに潜入し、内情を偵察するよう特命を受け、更に二名の兵士を与えられる。

  任務を与えられたウルバトゥル・ハサンは恋人の家を訪問し恋人と庭でキスして別れる二人。しかし、ウルバトゥルが去った後、ビザ ンツ人の賊が恋人を誘拐す るのだった。ウルバトゥルは同僚二人のイェニチェリ達と居酒屋で飲んでいるが、なんとそこに誘拐犯が入ってきてしまう。理由は不 明だが、ウルバトゥル達と 誘拐団は乱闘となるが、ウルバトゥル達はあっさり片付けて、そのまま居酒屋を脱出し、一路コンスタンティノープルを目指して走 る。一方居酒屋の外に止めて あった荷馬車の中には恋人エラが縛られ、猿轡をはめられていた。唸り声だけは荷馬車の外に届いているのだが、ウルバトゥル達は気 づかない。誘拐団は荷馬車 を駆ってウルバトゥル達を追ってコンスタンティノープルに達する。

 その頃コンスタンティノープルの宮廷では、会議が開かれていた。奥に 皇帝の玉座があり、右手前黒服の男の左隣の男がインペラトール・コンスタンティン(皇帝コンスタンティウス11世)。宮廷ではユ スティニアーニ、カルディ ナール(枢機卿)、コマンダー(司令官)などと言葉が出ている。ユスティニアーニがこの後主人公と敵対する高官のようだ。

 皇帝コンスタンティウス11世。王冠の上に十字架が立っている。

  一足先にコンスタンティノープルに着いたウルバトゥルら三人は城門警護の兵士をどう言いくるめたのか、あっさり城内に入る。続い て誘拐団の荷馬車が城門に 来る。こちらは少し入城に手間取ったようだが無事入城。イェニチェリの三人はコンスタンティノープルの貴族の家を訪問する。どう やら、オスマン側に内応し ている貴族のようである。

 高官ユスティニアーニが女官部屋にやってくる。他の女官達を退散させ、誘拐されてきたウルバトゥルの恋人エラ だけを部屋に残させる。エラに話しかける高官。しかし顔をはたかれる。この宮殿の女官部屋は結構広く、開放的な感じ。扉も巨大 で、城門の通常出入り口より も大きい(城門の通常出入り口は防戦用に小さくなっているものと思われる)


聖 ソフィア大聖堂。司教(コンスタンティノープル総主教かもしれない)に会っているウルバトゥルらイェニチェリの三人。今は黒い被 り物をしている。更に途中 から三人が厄介になっている貴族(恐らくノタラスという名前)も入ってくる。司祭はオルトドクス(聖教)、カトリキ(カトリッ ク)と口にしている。多分、 カトリックとオルトドクスとは相容れないので、オスマン朝支配でも問題無い、というような話をしているのだろう。ウルバトゥル達 は教会の見張りの兵を殺 し、ウルバトゥルはオスマン軍に情報を伝える為に二人を残して教会を後にする。これが一番内側の城門の内側の出入り口。石とレン ガが交互に積み重ねされて いる当時のビザンツ建築の様子がよく出ている場面。

  ウルバトゥルは城壁上の兵士も殺して城外へ脱出する。一方、城内に残った二人(片方の名前はムスタファ)は、番兵が倒れているの に気づいた他の兵士に後を つけられてしまう。ムスタファ達二名は貴族ノタラスの家に入る。一方戻った番兵は上官に報告し、その上官はユスティニアーニに報 告。その後司教が貴族ノラ タスの家に来て、ムスタファ達に、居場所がバレてしまったことを伝えるのだった。下記左側が通りに面した貴族の家の入り口。右側 が玄関内側。司教を貴族の 婦人が迎えているところ。

  ノタラス夫妻は逃亡を図るが路地で兵士に捕まってしまい、婦人は拷問部屋に連れていかれ、ユスティニアーニが臨席する前で、配下 の兵士に鞭で拷問に会う。 それを見せつけられた夫ノタラスは、オスマン間諜を手引きして連れてくることに同意してしまう。そして隠れ家へゆき、間諜二人を 連れて拷問部屋に戻ったと ころで、ビザンツ兵士がオスマン間諜の二人(ムスタファともう一人)を捕まえるのだった。ユスティニアーニが拷問部屋に降りてき て捕まった二人と会話して いるところに、オスマン軍楽が聞こえてくるのだった。。。

 場面は変わって進撃するオスマン軍。牛が大砲を引っ張っている。ウルバトゥルがメフメトに会っている。三重の城壁を見てメフメ トがウルバトゥルに何やら説明している。


 ミニチュアの城壁だと思うが、雰囲気はよく出ていた。

 ビザンツ皇帝からメフメトに使者。戻る使者達の最後尾の一人にウルバトゥルが入れ替わって、コンスタンティノープルに侵入。司 教と会うことに成功する。

 大砲の砲撃が始まる。ビザンツ側は煮えたぎる油、水を城壁から落とし、双方火のついた弾丸を投石器で送る。下記は、オスマン軍 が放った火のついた砲弾を、ビザンツ城壁側から撮影した場面。観客に向かって一気に砲弾が近づいてくる映像は、当時の映像として はかなりの迫力。

 オスマンが打ち込む火の弾丸や、ビザンツ側が城壁上から注ぎ落とす煮えたぎった油、火矢などで、炎上する城壁。攻め寄せて梯子 をかけて城壁を登るオスマン軍。

  司教の案内でウルバトゥルは宮廷の城壁を超えて侵入。貴族と仲間の二人を取り戻しに忍びこむウルバトゥル。首尾よく貴族夫妻と仲 間二人を助けだす。ビザン ツ守備隊弱すぎ。更に後宮に入りエラを助けだす。続いて聖ソフィアの外観映像が一瞬登場。教会では人々や女性が祈っている。

 地下のトン ネルを掘っているオスマン。が、ビザンツ側に掘っている音が気づかれ、爆薬を仕掛けられ爆発する。メフメトの宮廷では作戦を変更 する。木材を山に並べ、道 路を作り、その上を艦隊を人出で引いて山越えをするオスマン艦隊。下記左側が、ボスポラス海峡を、山越えの道に向かって進むオス マン艦隊。右側は、山越え 中のオスマン艦隊。ミニチュアだが、それなりに雰囲気は出ていた。モノクロ画面だったからよかったのかも。カラーだともっと安っ ぽく見えたかもしれない。

オ スマン艦隊の山越えを受けて検討するビザンツ宮廷。高官ユスティニアーニが司祭、エラを捕まえ、教会にウルバトゥルらをおびき寄 せて捉えて縛り上げる。メ フメト、軍営で会議。全軍の前で軍隊を鼓舞。ビザンツ宮廷では皇帝も甲冑になっている。皇帝も城内で兵士を前に演説。ウラーと万 歳をいう兵士達(トルコは 歴史的にロシアと敵対してきたので、ビザンツは正教会ということもあり、ロシアを象徴している様子)。牢獄の三人は手袋人形に看 守の気をとらせ、鍵を奪い 脱出。指人形に見入る間抜けな看守。


 脱出途中でムスタファがビザンツ兵の矢で射られてしまい、討ち死にしてしまう。城門の内扉の前に立って仁王立ち。ウルバトゥル ともう一人はオスマン陣営に帰り着く。

  陣営に戻ったウルバトゥルは一隊を率いて強引に城壁に突撃し、城壁上にオスマン旗を掲げる。メフメトも突撃。あっさり逃げ始める ビザンツ兵。ウルバトゥル とユスティニアーニの一騎打ち。このあたりは、活劇風。追いつめられたユスティニアーニはエラを人質に取る。お約束な展開。最後 にウルバトゥルが勝つ。悪 (ユスティニアーニ)は滅んだ。こうして千年間以上ビザンツ帝国の首都だったコンスタンティノープルはオスマンの手に落ちた。

 兵士達、高官達、メフメト、の入城式。女性たちが花を巻いて入城するオスマン軍を迎えるのだった。

 下記左は攻撃中に突撃するメフメト。右は、陥落後、兵士、高官に続いて最後に入城したメフメト。興奮して暴れまわる馬を御すメ フメト。かっこいい映像でした。



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