ポーランド歴史ドラマ「兜と修道服」・歴史映画「鉄十字軍」(15世紀初頭)

 「兜と修道服」の原題は「Przyłbice I Kaptury」。直訳では修道服は、頭巾(フード)付の外衣のこと。納まりが悪いので修道服にしました。1985年ポーランドのテレビドラマ。一話50 分で全9話。私が見たのは最初の三話だけなのですが、一応ご紹介します。1409年の、ポーランドとリトアニアVSドイツ騎士団 の抗争を描く時代劇。一言 で言えば、隠密同心と三銃士を足したような話。年代的に、グルンヴァルトの戦い(1410年)に至る前哨スパイ戦ということなの だと思うので、最後の方は グルンヴァルトの戦いに連なってゆくのだと思われます。

 「鉄十字軍」は、現在はVHSもDVDも出ていないようですが、日本でも公開済みで、ネットでもあらすじ情報があるので、画面 ショット中心に簡単にご紹介します。

「兜と修道服」は、修道服を着た軍人、宗教を使った征服者、という意味にもとれ、結局は、ドイツ騎士団のことを意味しているのだ と思います。そういう意味では、 「鉄十字軍(原題「Krzyzacy(チュートン人(ドイツ人)」」と同じ意味だと言えそうで す。


1. 「兜と修道服」

 三銃士っぽい三人の主人公。

  左から、リーダーのCzarny(チャルネー)、Jaksa(ヤクサ)、Dzieweczka(ジベッチュカ)。チャルネーは、 鼻の下のヒゲがいかがわし い詐欺師のような風貌。ヤクサは金髪のドイツ人みたいな風貌、まあ二枚目。ジベッチュカは口の周りが全部ひげで覆われた、ちょっ とどんくさい感じで人のよ さそうな風貌。この三人と彼らを取り巻く仲間たち(ベンコ、ジータ)が、マルボルク(Malbork(Marienburg): 現グダニスク南東50km 付近にある、当時のドイツ騎士団の拠点のひとつ)を拠点とするドイツ騎士団の陰謀を粉砕する。

第一話 誘拐

 舞台は 1409年のBarciany(バルチャニ:現ポーランド北部、ワルシャワから真北のロシア領との国境付近)。ドイツ騎士団の拷 問から始まる。 Witlold家(ヴィトルド家:リトアニア王家)とヤゲイロ家(ポーランド王家)への戦争を検討しているドイツ騎士団。3人目 の拷問者は主人公の一人ヤ クサ。彼をマルボルクに移送する途中ゲリラに襲われる。ヤクサは助け出される。救ったのはチャルネーたち。救出後、クラクフに向 かう。

  クラクフの映像はどう考えても現在(撮影当時)の映像。ウナはクラクフにいたが、母親が帰れというので帰るのだが、途中で馬車に 乗車してきた男が馬車の護 衛に毒を盛る。驚くウナ。そしてウナは誘拐されてしまう。ウナはクラクフの副宰相(Vice chanceller)ドニーナ(Dunin)の上司(つまり宰相)の秘書官コレツスキーの姪なのだった。

 クラコウ王宮。宰相 (Chanceller)から、隠密のリーダーらしき男が、部下達が予算使い過ぎと注意を受けている。その部下たちは、あちこち で変装し、国境と Wloclawek(ヴウォツワヴェク)の間でメッセージを届けている。ヴウォツワヴェクはグダニスクの真南200km、クラク フの北約300km付近に あり、情報の要所だった。姪が誘拐された秘書官は、「私のところを出てからもう2週間だ。Chancellerに命じよう」と隠 密のリーダーに命じるが、 隠密に「予算は?」と返されるだけでどうにもならない。

 夜、秘書官(コレツスキー)のもとに侵入者が入る。クラカウとWitlowの間の手紙の内容を教えろという。だれがお前に指示 を出しているのかを、教えろ、と。姪のウナ解放の条件は、王の書類のコピーだという。

第一回はここで終わり。

 チャルネーの仲間のベンコが住む農村。柵があり、一応防衛体制のあることがわかる。第一話冒頭で救出されたヤクサが一時身を隠 していたところ。




第二話 On the Trail of Treason(陰謀の証拠)

 十字軍は豊かだ。身代金は必要ではない。だから身代金目的の誘拐では無い筈だ、と隠密を仕切る神父アンジェイ (Andrzej)に指令が下る。

 チャルネー達は居酒屋でウナがさらわれた馬車の痕跡を発見。居酒屋で帽子を見せて横柄に振舞った男に、「どこでこれを見つけ た?」と聞くと、埋めてあるのを見つけたらしい。男にその場所を掘らせるチャルネーたち。
そして楯を掘り当てる。そのデザインはSosnicaからのJakubの装備だとわかる(が、視聴者にはSosnicaと Jakubが何かはこの時点ではわからない)。

  ドニーナはGrand Duke(リトアニア大公)への手紙の概要を書き写してしまう。一方、チャルネー達は、上司のアンジェイに経過報告。上司は、Vistula(ヴィスワ 川)へ向かえ。ウマの痕跡を追って。と指令を出す。また、コレツスキーとアンジェイは、秘密でない手紙にサインをして機密扱いに して出すよう案を練る。お とりの手紙を出すわけである。マルボルクにはアンジェイの兄弟エラズム(Erazm)がいて、彼の支援があてにできる、というこ とらしい。

 また酒場の場面。酒場で女将にいたずらしていた男に、チャルネーが注意して喧嘩になる。チャルネーはすばやさで彼に勝つが、、 男に脳震盪を起こさせてしまう。しかし男目覚めると、また暴れだすのだった。

 翌日のチャルネーとヤクサは、ヴィスワ川の船で働きながら川くだり。予算が無いからなのか。。。。(と最初は思ったが、これは 潜入捜査なのだった)。

  深夜、トルン行きの船が停泊していて、そこには見張りがいる。怪しいと思ったチャルネーは泳いで近づく。するとウナが空気を吸い に家から出てきた。彼女を 発見。物音に気づかれるが、なんとか舟から離れる。しかし、ぬれた服を着替えているところを、船員に見られるものの、その船員は 黙って寝込む。そこに十字 軍が来て、「変わったことは」と質問するが、「皆よく寝てるよ」と答える船員。その船員、ジベッチュカは隠密に加わることになる のだった。

 チャルネーは、ヤクサに、クラクフのホテルBullに泊まれと指示を出す(そこを情報収集の根拠地とする、ということらし い)。チャルネーとヤクサはクラクフに戻り、法学生に変装してドーニナの後をつけることにするのだった。

 アンジェイ神父と宰相の会話。

 神父−ドニーナは手紙を渡しましたよ。
 宰相−娘は?
 神父−もう見つけましたよ。
 宰相−どこに?
 神父−トルン(Torun)の遺跡の近くに。
 宰相−何故する助けない。
 神父−機会をうかがっているのです。

 そしてドーニナの後をつけるヤクサ。ドーニナは修道院に入ってしまう。ヤクサは途中で、ドーニナをつけている男を見つけるが、 修道院の入り口には貧民・ものもらいが多く、彼らにたかられて、修道院にたどりつけなくなってしまう。下記は修道院の手前で男を つけるヤクサ。

 一方Bullの店。ディナール貨幣を20枚程出して情報収集するチャルネー。娘はいま、Claristsに移動している、との 情報を得る。

  修道院を監視していると、秘書官がメモをベルトから取り出して男に渡すところを、チャルネーが目撃する。メモを受け取った男をつ けるヤクサ。そのヤクサを つける男をつけるチャルネー。男は宿(The Boneという名前の店)に入り、奥の部屋でマントを脱いで出てきて、店の主人となる。更にはメモを受けとった男が店内にいるのだった。ヤクサが、店員の 女にわざとぶつかる。ヤクサの服に汁がかかり、服をかえてもらうためにヤクサが奥に消えたところを見計らって、男が奥の部屋に入 る。チャルネーは2階にか けあがり、部屋に入りマントを取り、窓から路上へ飛び降りる。中庭に出ると、話し声が聞こえるので、はしごを上る。部屋を除いて みると、男がヤクサを拷問 しているのを発見する。

 「お前は教会の中で何をしていた?誰がお前を送った?」拷問しているのは奥に座っていた男だ。飛び掛るチャル ネー。乱闘になり、男がナイフを使ってきたので、それを奪って男を刺し殺してしまう。ヤクサにはBullの宿に行って2,3日回 復するまで休んでいるよう にと逃す。

 店の主人は、男が戻ってこないので裏に来る。そして殺されている男を発見する。

 夜。チャルネーの部屋に侵入者があった。それは店主だった。しかし店主は何もせずに引き上げる。実は目を覚ましていたチャル ネーは、店主が出て行った後、起き上がって、店主が出て行った扉を見つめるところで第二話はおしまい。


 これは第二話で登場した尾行者。当時の街の様子が見れてうれしい映像。


第三話 惨劇

 アンジェイ神父の執務室。The Bornの店主が呼び出されている。

  ドニーナに持たせた偽の書類を見せ、「これがお前の部屋から見つかった。今後言うとおりにすれば、ユダヤ人のように金持ちになれ るぞ。裏切ったらどうなる かわかるな」と寝返りを促す。店主がとぼけると、兵士を呼び寄せて暴力を振るう。「で、何をすればいいんで」と寝返る店主。「誰 がお前に指示を出している んだ。「吐け!」と詰め寄られ、「ある商人です。。。」と白状するのだった。

 早速法学生の装束でその商店を訪ねるチャルネー。店主(Vogelweder(ヴォゲルウェデル))に、「マルチナがよこした のか?」と聞かれ、「The Bornの亭主の?」と答え、カスパーという法学生だと自己紹介するチャルネー。下記がその店。

  「法学生でクラカウに法律を学びにきた。レーゲンスブルクにもいった」とチャルネーがいうと、店主は「レーゲンスブルクの広場で 一番大きい店はヘルムスド ルフだよな」と言われ、いや、一番は「ギュンターの家」だった、などと探りを繰り返すチャルネーと店主。そうこうしているうち、 2階から男が出てくる。 ヴォゲルウェデルは兄のヨハンと紹介する。なんとかごまかしおおせたチャルネーは、店でアルバイトをすることになる。午前中は学 校と図書館に行くので午後 だけ。じゃあ1日1ペニー(発音は1グロッセ。字幕はペニー)と店主が提案、チャルネーは3グロッセを要求。2グロッセで妥結。 チャルネーは午後、店番を するようになる。

 ジベッチュカにもヴォゲルウェデルのところで働け、と指示するチャルネー。一方、、また誰か捕まって拷問にあってる。ドイツ騎 士団の元締め、ソネンバーグ(Sonnenberg)に捕まったようである。

  カスパー(チャルネー)の部屋を探すヨハンの弟。何かの証拠を見つけてしまったように見えるが、チャルネー(カスパー)は3週間 働いて、ブレナー (Brenner)を紹介される。そして彼に手紙を届けることが仕事だ。義務さえ果たしていれば金はもっと考えるよ。と、陰謀の 一端に食い込むことに成功 するのだった。

 一方ヤクサはヴォゲルウェデルのメイドのハンカをナンパすることに成功する。また、カスパーは手紙を届ける最初の仕事を 行う。捜査は順調に進んでいるようだが、拷問された男(誰かまだわからない)は、ベンコの家を白状してしまう。ベンコの家にドイ ツ兵が来る。ベンコの家に いた男は槍で刺されてしまう。そしてドイツ騎士団兵は農村全体を虐殺するのだった。

 チャルネーとアンシェイが会話している。アンジェイの意見は、彼らは罠にはめて君を確認しようとするだろう、と指摘する。続い てチャルネーとヤクサのの会話。ハンカによると、ヴォゲルウェデルの兄弟が、ある修道院にいっている、という情報を得た。

  農家にベンコが戻り、虐殺を目にして絶望し自殺しようとしたところを誰かが助ける。助けた男はErazm(アンジェイの兄弟であ る。ベンコに正体は明かさ ず、クラクフの商人だと名乗る)。ベンコの妻ジータは生きている、連れ去られたのだ、という。その彼女はチャルネーの妹だった。 エラズムは、ベンコに協力 する、と申し出るが、ベンコは疑う。何か証明するものは?そこでエラズムは杖の先についた鷹かなにかの意匠を見せる。「これは君 の妻の兄からもらったもの だ」それを見たベンコは、エラズムの手先となるのだった。エラズムはベンコに問う。「ドイツ語は?」「OK」。「ロシア語とリト アニア語は?」「少し。父 親が捕虜になっている時に学習した」と答える。これが当時の農民の実力か?と思ってしまうが、日本のような島国と異なり、支配・ 被支配を重ねてきた地域の 農民は案外こんなものかも知れない。

 毎週金曜日にいなくなるヴォゲルウェデルの兄弟を、ヤクサがつけて突き止める。男は尾行に気づいて 途中で姿を隠すが、ヤクサは馬の蹄鉄の跡をつけ、更に通りがかりの農夫に尋ね、男が定期的に郊外の修道院に向かって行くところを 目撃されていることを知 る。そして、農夫が市場に持ってゆくヤギを、売ってくれと交渉するが、売ってくれないので強引に奪い、それをもって、修道院の門 を叩き、「罪を犯しまし た。聖ヴァーツラフに祈りたいんです」という口実で進入に成功する。

 守備よく修道院に入ったヤクサは、入れてくれた修道士に雑談がて ら、「ここでくる途中であった男なんかは沢山寄進しているのだろうね。彼は金持ちそうに見えるしね」とカマをかけると、彼は Anzelmに会いにくるん だ。Schwaben(シュヴァーベン:南西ドイツの地方名)の出身だからね。彼は春来たばかりで、写本用の紙を寄贈してくれ る。と、ヤクサが言葉巧みに 誘導したというよりも、案外おしゃべりな修道士なのかも。ヤクサが帰ろうとすると、「あれがその男と修道士だよ」とわざわざ教え てくれる。ヤクサは「い や、あの男ではないよ」といいおいて修道院を後にするのだった。



 これはクラクフの城門。夕方になると閉まる。

第三話終わり。

とまあ、結構面白そうなので、続きを見てみたいところ。ネットには三話までしかあがっておらず、ポーランドのサイトにはdvdが 上がっているのですが、英語字幕の有無は不明なので買う気にはなれません。英語版のdvdも見当たらないのが残念です。


2.「鉄十字軍」

 1410年に長年ドイツ騎士団に苦しめられてきたポーランド・リトアニアが、ドイツ騎士団に決定的な打撃を与えたグルンヴァル トの戦い(タンネンベルクの戦い)と描く。

 あらすじはGoo映画紹介に記載が あるので、どうでもいいと思ったのか、自分でも簡単なあらずじと感想を書いたつもりだったのですが、どこかに行ってしまったよう で見つかりません。仕方が ないので、画面ショットの紹介だけとなってしまいましたが、私は戦争は好きでは無いので、画面ショットも、あまり筋に関係するも のではなく、衣装や建築物 ばかりになってしまいました。

 ドイツ騎士団の司令官の一人。本当にこんな装束だったのでしょうか。 

 騎士団の騎兵。

 街の人々の服装。ピエロかトランプノジョーカーに見えます。本当にこんな装束だったのでしょうか。。。。

 死刑執行人。中世拷問ソード・サンダル映画に登場してそうな装束。なんか、パペット・ムービーでも見るよう。

 一番不思議だったのが、このドイツ騎士団の頭の飾り。史実だとしても、いったいなんでこんな格好にしなくてはならなかったの か。。。。

 別の角度から見たところ。これは、主人公のスビシュコと決闘する場面での相手の騎士。

 これは連合軍側の会議だったと思います。中央、背もたれのある椅子に腰掛けているのがポーランド王・ヤギェウソ家開祖ヴラディ スワフ二世王。

 当時の(多分富裕な)農家。ヤゲンカの家(だったと思う)。Goo映画紹介に記載はありませんが、ヤゲンカは、農村で育ったも のの、確か貴族か王族の姫君だったということが途中で明らかになるのでした。

 実戦軍装時でも、ヘンな飾りをつけているドイツ騎士団。

 どっちの側だったか忘れましたが、グルンヴァルトの戦いで、進軍太鼓を打ち鳴らす兵士。この装束もちょっと。。。

 大砲が使われています。

 どうしても気になるので何度も撮ってしまった騎士団の羽飾り。

  突撃するドイツ騎士団。まあ、かっこいいとは思います。なんかこう、ナチスドイツもそうですけれど、ドイツって、歴史的に軍装や 軍事に関する美学があるよ うに思えます。ドイツ騎士団の揃ったユニフォームに比べると、ポーランド・リトアニア・諸国連合軍の装備の画面ショットは一枚も 無いので、他の映画に登場 しているような、中世末期ではよくある装備だとしか思えなかったのかもしれません。




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