古代ローマドラマ「HISPANIA, la leyenda(ヒスパニア〜伝説)」シーズン 1(第一話から第九話)

  現スペイン中西部(現エストレマドゥーラ州北部)からポルトガル中東部に住んでいたルシタニア族のロー マによる征服戦争(ルシタニア戦争(前155-140年))を描く。一話70分。全20話。

 紀元前151年にローマのヒスパニア代官(プラエトル)となったセルウィウス・スルピキウス・ガルバ時代のスペインに対する酷い仕打ちと実在の英 雄ビリヤット(ウィリアトゥス)をリーダーとする原住民の抵抗を描く群像劇となって います(ビリヤット はポルトガル史上でも英雄とのこと)。公式サイトのトップページに 人物相関図がありますが、ローマ側とヒスパニア側の間では、一切友情・恋情関係が無いことになっています。徹底的な対立の模様。 イベリア半島征服戦は凄惨を極めたようなので、当然かも知れませんが。。。。ただし、裏切り・経済的利益を優先させる現地商人が ローマ側につき、現地人家族内部で対立がおこるな ど、複雑な人間関係が展開され、この点が見所のドラマとなっているものと思います。

第一シーズン 全9話 2010年10月25日-2011年1月11日 amazonのDVDはこちら
第二シーズン 全8話 2011年4月10日-2011年6月28日 amaoznのDVDはこちら
第三シーズン 全3話 2011年7月11日から25日  amazonのDVDはこちら

 本日までで第一シーズン(第9話まで)を視聴しました。第4話までの作品のイメージは、ローマのブリタニア征服時を扱った映画 「ウォリアークイーン」と、悪辣な代官に反抗する勇士を描いた映画「七人のあばれ者」 を足してニで割ったような印象です。第一話でガルバが開戦事前交渉で、ヒスパニア人を騙して、和平と謀り、武器を供出させた直 後、雨あられと矢を射かけ、 包囲殲滅する卑怯極まりない事件が描かれています(このエピソードは恐らく古代ローマの著述家アッピアノス「イベリカ」に載って いる話の筈です)。この虐 殺で10歳くらいの娘アルテアを失った父ビリヤット、恋人ネレアを奴隷に取られたパウロ、長老の子ダリオ、ビリヤットの妹婿サン ドロらのレジスタンス(ゲ リラ戦)が始まります。ローマ侵略モノとしては、ガリアでもブリタニアでも構わないような内容です。私はブルガリア語版を視聴し たのですが、トラキア(当 時のブルガリア)の話として放映しても構わない内容。しかし、第5話以降は、登場人物達の人間関係が掘り下げられ、複雑な展開が 話を引っ張ります。最初の うちは、一面的な印象(悪辣、卑怯、裏切り者等)しか無かった人々が、物語が展開してゆくにつれ、違った側面を見せ出すところに 引っ張られ、話が展開する 程面白くなっていった感じです。取り敢えず第1話だけ、4話くらいまで、などと思いつつ、結局毎晩見続け、第1シーズンを見終え た今は、第3シーズンまで 見るつもりになってしまっています。

 ガルバは実在の人物ですが、いつまで生きていたのか歴史上では確定していないようなので、ドラマ中、暗殺や病気などガルバは何 度も死にそうになる場面があり、このまま死んじゃえばいいのに。と思わず何度も思ってしまいました。


主要登場人物

レジスタンス
  ビリヤット レジスタンスの首領。娘をローマ軍に殺害された(と思っている。実は実は奴隷に売られ、生きている)。ローマ側に面 が割れ、追われ、レジスタ ンス基地である洞窟にひそんでいる。ビリヤット以外は面が割れていないので、他のメンバーは普段村で普通に生活している。
 サンドロ  妻バルバラ(ビリヤットの妹)をローマに殺される。気の弱い卑怯者の弟ヘクトルを嫌っている。
 パオロ  恋人ネレアがローマの奴隷となる。
 ヘクトル サンドロの弟で、ローマ側に内通しているが、完全な裏切り者になりきれない弱く哀れな男。
 ダリオ 村の長老セスラの子。愛馬をローマに殺され、レジスタンスに参加する。
 
原住民(ルシタニア人)
 テオドロ 商人。経済的利益の為、ローマ側に立つ中心人物。
 エレーナ テオドロの娘。ローマ側に立つ父親と対立し、ビリヤットと恋に落ちる。
 アレーホ テオドロがエレーナと結婚させようとした商人の青年。エレーナに振られた為、完全にローマ側に立つようになる。
 セスラ カウラ村の長老。

ローマ占領軍
 ガルバ プラエトル(法務官)職でヒスパニア総督に赴任。
 マルコ ガルバの側近で武官。ガルバの妻クラウディアの愛人。密かにガルバを亡き者にしようとしている。
 クラウディア ガルバの妻。ガルバは妻の実家が名門であるため結婚した経緯があり、二人の間に愛は無い。
 ネレア パオロの恋人で、奴隷にされ、ガルバの侍女にされる。命・貞操含め何度も危機を迎えるが、毎回あわやのところで助か る。
 サビーナ ガルバ付奴隷女。ネレアを守る為、様々な汚れ役を引き受ける損な性格の女性。
 ガビーノ ガルバの手下の文官。

 主要登場人物は他にもいるのですが、以下の第一シーズンの各話紹介に登場する人物だけを記載しました。

以下各話題名と簡単な紹介です。

第一話 伝説の誕生
  前150年、イベリア半島の東南半分を支配するローマは、カルタゴ戦争をひとまず延期し、イベリア半島の残りの部分を征服するよ う前年赴任したヒスパニア 総督ガルバに指令する。ガルバは卑劣な方法を用いて勝利する。家族を殺された現地人の一部はレジスタンスを開始するのだった。

第二話 奴隷の解放
 ネレアは奴隷の焼印を押されガルバの侍女にされる。一方占領された現地側では、積極的にローマ側に立つ人々が現れ、レジスタン スに参加する人物とローマに協力する人々、普通に被占領生活を送る人々に色分けされてゆく。

第三話 ビリヤットの死
 レジスタンスはゲリラ戦を開始する。ローマ軍の陣営の井戸の水脈となっている川に毒を混入し、ガルバの暗殺を図るが、ガルバは 毒見の為にグラスをネレアに渡すのだった。ネレアはグラスを口に運ぶが。。。 

第四話 バルバラの救出
 サンドロの妻バルバラがローマ軍に捕まり拷問される。サンドロ達は救出に向かうが、クラウディアはバルバラに自害するよう短剣 を渡すのだった。救出は間に合うのか。。。

第五話 殺人者達
 実家の財産をガルバに奪われた(らしい)クラウディアは、ビリヤットに夫ガルバの暗殺を依頼する。村の収穫祭に総督夫妻が臨席 し、ビリヤット達はそこを狙うが。。。

第六話 犠牲
 総督ガルバは伝染病にかかり重態になる。薬草の知識のあるエレーナはガルバの治療に当たらせられるが、マルコはガルバの血液を テオドロの傷口に塗りつけ、ガルバを治さないと父親も死ぬことになると脅す。一方襲われたネレアは、ガビーノを殺害してしま う。。。

第七話 裏切り
 ビリヤット暗殺の任務を請け負った剣闘士がビリヤットのレジスタンス部隊に潜入する。それを知ったヘクトルは。。。

第八話 サンドロ救出
 サンドロがローマ軍に捕まり、レジスタンスの本拠の洞窟もローマ軍に急襲され、ダリオ、パオロ、ヘクトルなど幹部達はローマ軍 に捕まり、多くの一般レジスタンス兵は殺害され、レジスタンス勢力は大打撃を受ける。エレーナを訪ねていた為一人逃れたビリヤッ トは。。。

第九話 最後の戦い
  ナレアは、クラウディアとマルコの暗殺計画をガルバに漏らし、マルコとクラウディアは逮捕される。一方、息子ダリオを人質に取ら れた長老セスラは、ビリ ヤットに息子の命を救うため、ローマに投降してくれと説得し、ビリヤットは投降する。しかし一方で、セスラら長老達はビリヤット の集めた2000名の兵を 引き継ぎ、反乱を起こす覚悟を決めており、マルコも腹心の部下を用いてガルバを虜にする。そうした状況下で、現住民の反乱が始ま るのだった。。。。



  内容的にはローマ時代のイベリア半島全土を表す「ヒスパニア」の題名より、中西部の一地方を表す「ルシタニア」の方がしっくり来 ますが、さすがにそれだと 視聴者にアピールしないので、「ヒスパニア」の題名になったのだと推測しますが、それにしても、第一シーズン前半は、一切ローマ 側のいいところが出て来ま せん。スペイン人の子供がこれを見ると、ローマのイベリア征服は全てこんな感じだったのかと、古代ローマについて物凄く否定的に なりそうな描きぶりとなっ ています。ところが、第一シーズン後半に入ると、ローマ側の各人物が掘り下げられて描かれ、ローマの酷いイメージはガルバ一人に 集約されてゆくのでした。

  今回だいたい630分くらいを視聴したのですが、最後になるまで画面ショットを取る気になりませんでした。映像的にしょぼいわけ では無く、小道具や衣装も しっかりしていますが、特にこの作品ならではの映像が見られなかったのです。公式サイト掲載の画像や映像を見れば直ぐに雰囲気は わかり、公式サイトに無さ そうな、珍しい映像も特に登場していなかったのです。スペインの、この地域独特の景観という感じは殆ど無く、丘陵地帯と森と小 川。都市は一切登場せず、 ローマ軍は木柵で囲まれた軍営とテント群だけ。原住民の村落(殆どカウラ村だけが登場している模様)も、十件くらい藁葺き屋根と 石と土壁の民家が登場して いるだけで、建築物と景観という観点では、空間的な広がりを感じない、非常に狭い場所だけで物語は展開します。ガルバやその妻が ローマと手紙をやり取りす る場面が出てきますが、そうした場面で、一瞬ローマ側の映像(手紙をやり取りしている相手が部屋の中で読んでいる場面とか)が登 場する、などということも ありません。当時(前2世紀中頃)のイベリア半島東南部は、フェニキア時代以来の都市は幾つかあった筈ですが、それらが登場する こともなし。そんなわけで 以下ラストの箇所以外は画面ショットは撮りませんでした。

 この辺りの時代のローマの連続テレビドラマでは、BBC製作の「ROME」や、今年日本でもdvdが発売された、「スパルタカス」 がありますが、「ROME」や「スパルタカス」のような、過剰な暴力と性描写はありません。ヌードも出て来ないので、過剰な暴力 や性描写があまり好きでは ない方でも安心してご覧になれる作品だと思います。子供向きとまでは言えませんが、子供には見せられない場面が頻発する 「ROME」や「スパルタカス」と 比較すると、本作は健全な作品です(とはいえ、私が視聴したブルガリア版は、冒頭で12歳以下視聴禁止のメッセージが入っていた ので、恐らく胸が開きすぎ で、トップが見えそうで見えないガルバの奴隷侍女二人の衣装に問題があると思われます)。古代ローマものは好きだけど、子供に見 せられない場面の無いもの を見たい、という方のニーズを埋める作品だと思えるので、本作は、日本語版が出てもよいのではないかと思います(この手の映画に つきものの剣闘士場面も一 切無いので、物足りないと思う方も多いかも知れませんが、剣闘士作品は多数あるので、そちらを見れば問題ないかと思います)。た だし、第二シーズンでは若 干アダルト度が上がっているようです。

 第一シーズンのラスト。よく考えるとありがちな終わり方なのだけれど、感動してしまったので、画面ショットを取ってしまいまし た。

  ローマ軍に勝利したビリヤットがローマの旗を高々と掲げている場面なのですが、この場面も、兵士たちが「ヒスパニア!」と叫んで いるのが良かった。米国作 品であれば、99%「フリーダム!」と叫んでいるであろう場面です。私は、この手の映画でよくある剣闘士場面と「フリーダム!」 の連呼にうんざりしている ので、本作は、映像的には平凡なものの、回を追う毎に気に入ってきてしまい、今では最後まで見る気になっています。
 

公式サイトはこちら。各話につき、合計30分程の映像やあらすじ、人物相関図など 多くの情報があります。
Wikiの記事はこちら(シリーズを通したあらすじが記載されています)
IMDbのドラマ紹介はこちら。 

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