小説「カエサルの魔剣」(文春文庫)の映画化作品です。漸く見れました。 原作は、そのタイトルや表紙イラストから、中世ヒロイックファンタジーモノの色彩が色濃く、ゲーム的な内容なのかと思っていたい のですが、意外に歴史モノ となっていた、という印象。映画の方は、DVDのパッケージの写真から、結構リアルそうだと期待していたのですが、概ね期待通り の内容でした。ほぼ原作を 読みつつイメージした通りの映像が展開されていて、殆ど違和感がありません。既視感さえ感じる程です。セット、日常風景など、5 世紀末の古代ローマ世界に トリップできます。ただし、主人公とヒロイン、及びその仲間の兵士だけは、原作のイメージと少し違う感じ(あくまで個人的)。と はいえ、原作でイメージで きる主人公とヒロインの方が、少し違和感があったので、映画の方がしっくりする印象があります。 今手元に原作が無いので記憶が曖昧ですが、映画ではヒロインはインド出身となって、インド人のアイシュワリヤー・ラーイが演じ ています。この人は、最近ご紹介した「ジョダーとアクバル」のジョダー役だった人。ジョダー同様、野生的なアクションを見せてく れます。 ヒロインはなかなか強烈でしたが、主人公のアウレリウスの仲間の兵士は、個性がいまいちな描かれ方だったのが少し残念。また、描 かれる場面は、ほぼ原作の イメージ通りだったのですが、上映時間の制限があるからか、ローマからカプリ島に向かう道中や、アルプスを越えて、ライン河沿い にゴート人部隊の追跡を振 り切るスリルある逃走場面は、ローマの広大さや、ローマ支配が及びがたくなっていた5世紀後半ゲルマニアの状況も少し垣間見るこ とができる箇所なのです が、全面カットされていたも残念です。 その執拗に主人公達を追跡する野蛮で一見頭が悪そうな割に、それなりに切れるゴート人の頭目は、原作のイメージ通り(写真左が その追跡者で、右側は、西ローマを滅ぼしたとされる有名人オドアケル)。 資料の残る限りでは、カンパーニャに軟禁されて以降のロムルス・アウグストゥルスの生涯は不明ということらしいのですが、本作で は、後のアーサーとして語 り継がれる人物が、ロムルスや、主人公アウレリウスそのものではなく、辿りついたブリタニアのハドリアヌス長城付近で定住したア ウレリウスがロムルスを養 子とし、そのロムルスの息子がアーサーとされている点にあるのではないかと思います。この点、ローマ指揮官アルトリウスとそのサ ルマート騎士たちをアー サーと円卓の騎士に直接に結びつける「キング・アーサー」よりも一ひねりしてある、という感じです。ちなみに、ローズマ リー・サトクリフの「ともしびをかかげて」でも、現地の指揮官がアーサー王の原型のひとつとして登場し ています。アーサー王伝説の起源は、尽きぬ魅力があるのでしょうね。 ところで、原作表題のカエサルの魔剣とは、ロムルスがカプア島の地下で見つけたカエサル縁の剣のことで、 「CAI IUL CAES ENSIS CALIBURNUS'(ユリウス・カエサルのカリビ人の剣)」 と いう銘文が刻まれていて、ラスト、ロムルスが平和の象徴として、投げ捨てた剣が岩に突き刺さり、年月が経ち、剣身が苔に覆われ、 「ENSIS CALIBURNUS」、の一部の文字が判読できなくなり、「E S CALIBUR」(エクスカリバー)となり、アーサー王伝説に登場するエクスカリバーとなった、ということ。作中では単なる優れた剣ということで、魔術と は関係ない感じでした。 下記は主人公が奪った漁民の小船。こういう何気ない映像がわりと好きです。 |