2008年フィンランド・チェコ製作。1595年、スウェーデン・ロシア戦争直後に辺境の村で
起こった
奇妙な惨劇を描くホラー映画。一応1595年が舞台とのことなので、「歴史映画」というタイトルにしていますが、衣装や建物含めて15世紀でも19世紀で
も現代でもいいような話です。どうやら、「どこでもない時代・どこでもない場所」という雰囲気を出す為に、1595年のフィンラ
ンド辺境地、という設定になっている模様(ベースがフィンランドの民話という解説もあるそうです)。そういうわけで、実のところ
歴 史映画では無いのですが、USのアマゾンレビューを読ん
でみたところ、こういうレアな設定自体に惹かれて観てしまう人は意外にいるようです(私もそうですが)。 おどろおどろしい雰囲気、カメラの隅に一瞬影がよぎる時のJホラーによくある効果音、地図にない、そして何故か子供が一人もい ない謎の村、唯一の子供も少年か少女かわからない。静謐で透明感のある美しいヨーロッパ北方湖沼地帯の自然は、タルコフスキーの 映像を思わせるものがあり、地図にない村という設定は、ドイツ映画「Black Death」を思わせるものがあります。明確な怪物やゾンビが登場するわけではなく、じわじわと雰囲気で追い込む映 像にはJホラーやツイン・ピークスのよ うな香りがあります。 日本人にとっては、あまり目新しくもない作調かも知れませんが、基本的にゾンビや猟奇殺人鬼やモンスターものがホラーである米 国人にとっては新鮮なようで、USアマゾンレビューにも、「米国ホラーはこんなものをもっと作るべき」という意見があり、この手 のも のに飢えている米国人が多いのか、レビューも評点も絶賛する人がいます。明確な説明がほとんど何もないので、尻切れとんぼな終わ り方にも思えますが、見直してみてわかる部分もあり(冒頭の書類の件は2度目の視聴でわかりました)、起承転結のある煩く疲れる ジェットコースターストーリーではないことで、かえって美しい風景の映像を見ながら、力まずにゆったりと流しながら再視聴して発 見 するところがある、そんな感じの作品に思えます。アマゾンレビューを見ると、本日時点でフランス・アマゾン、イタリア・アマゾ ン、スペイン・アマ ゾンにはレビューがひとつもなく、ドイツアマゾンには19評、米国アマゾンに14評あります。ラテン系にとってはあまり興味が沸かない映像 感覚といえるのかも知れません。 なお、英題の副題に「Sauna - Wash Your Sins」とあるように、蒸し風呂のサウナも映画に登場していますが、全体的には、”Wash Your Sins”の方に比重があり、日本でいうところの「霊験あらたかな湯治場」とか、「温泉の霊場」というような意味にとっておいたほうが良さそうです(特 に冒頭の方で蒸し風呂サウナが登場するので何か意味があるのかと 思ってしまう)。 〜あらすじ〜 スウェーデン・ロシア戦争後(25年戦争=1558-83年にスウェーデン・ロシア間で戦われたリヴォニア戦争)とRusso- Swedish_War(90-95年)の後の時期。戦争(1590-95年)の終了(テウシナ 条約)直後、フィンランドの農民が支配者であるスウェーデンに対して蜂起したカジェル戦争(1596 年11月-97年2月)の間の、フィンランドのKiertamajyoki 近郊付近。川に流れてきた鞄を開くと、中に数名の人物のサインと印章付きの書類が入っていた。そ こに書かれていたのは、国境付近にある地図にない村で起こった奇妙な出来事だった。。。 エリックを演ずる主演のVille Virtanenはスウェーデンの名優マックス・フォン・シドーの再来と言われているようです。容貌も似ています。非常に強い雰囲気をもった方でした。 実は村に入る前から、隊は荒涼とした平原に現れる亡霊に悩まされていた。エリックと
クントの兄弟は戦争中民間人を惨殺したり、正教徒(当時スウェーデンはプロテスタント)を迫害したりしていたこともあ
り、罪の意識にさいなまれ、亡霊である幻覚(と彼らが思い込んでいる)を見るようになっていたのだった。そうしてこの村
でもミイラから血が流れだしたり、フードの中の人物の部分が真っ黒に塗りつぶされたイコンがあったりと奇妙なものに遭遇
し、やがて兵士にも死者が出始める。そんな中、隊長はある本と書類を発見し、この怪異が以前にも発生していたことを知る
のだった。。。隊長と兵士達は、それらの書類にサインと印章を押印し、その書類を本隊に届けようとするが、兵士達は亡霊
たちに次々と取り殺されてゆき、書類を持って村を脱出した少女も、川べりで亡霊に遭遇する。書類を入れた鞄が川に流され
るのだった(こうして映画冒頭の場面で書類鞄が拾われる場面に繋がる)。
以下は、主演のエリックが、湯治場(サウナ)の白い建物に剣を抜いて立ち向かおうとする場面。結構きまってます。この 場面は予告編やポスターにも登場していて、何か凄いことになりそうな期待をさせられてしまう場面ですが、実のところあま りたいした場面ではないのでした。 |