28/Feb/2012 created

オスマン朝歴史ドラマ「壮麗なる世紀」38/39/40話の1529年第一次ウィーン包囲戦とサ ポヤイ・ヤーノシュ

   原題Muhteşem Yüzyıl((英語題名Magnificent Century、主役のスレイマンの異名が壮麗者(the Magnificent)であることから、「壮麗なる世紀」となる)。今回は、1529年のスレイマーンのウィーン親征。ハンガリー史とどこが関係してい るかというと、史実はともかく、このドラマでは、ハンガリー王位を巡るハプスブルクのフェルディナンド(在1526‐64年)とハンガリー在地貴族サポヤイ・ヤーノ シュの王位争奪がきっかけでウィーン遠征が起こり、少ししか登場しないとはいえ、サポヤイ・ヤーノシュ(在1526‐40年)が登場しているから(1526-70 年の間、ハプスブルク家とサポヤイ家の二王並立が続く)。

  筋としては、ハプスブルク家縁戚で、恋人イサベルをスレイマンの後宮にさらわれてしまったフレデリックという青年が、サポヤイ・ ヤーノシュからハンガリー 王冠を強制的に取り上げ、ウィーンのフェルディナンドのところに持ってゆく。オスマン宮廷では、これをきっかけとして表向きは王 位返還の圧力、本音は ウィーンを制圧すべくイブラヒムが総司令官となり出兵することになる。ところが、フェルディナンドはオスマン朝出廷の圧力にも関 わらず、ブダペストで即位 式を挙行。オスマン側は王冠を運ぶ馬車を襲撃し、ブダ制圧後、ヤーノシュに戴冠する。ここで一度イブラヒムはイスタンブールに引 き上げ、スレイマンから報 償を受けるが、ハプスブルグ側はカール五世がウィーンにやってきて全面対決の姿勢を見せたことから、スレイマン自らが親征するこ とになる。という展開で す。筋は殆どこれで終わりなのですが、一応ヒュッレムの動向もあらすじを書きました。


第三十八話

 まずこちらの方が皇帝カール五世の弟で後の神聖ローマ皇帝(在1556-64年)で、オーストリア大公(在1526-64年) フェルディナンド様。左はウィーン宮殿でフレデリックからハンガリー王冠を受け取る場面。

 これがウィーン宮殿。字幕ではヴィェナ・サライと出ています。山の中の別荘みたいな感じの宮殿。

 こちらはハンガリーのブダ王宮。

 御前会議で、黄金できた林檎を投げ上げ、それをキャッチするスレイマン。スレイマンはウィーンを”黄金の林檎”に例えたそうで すので、これは、「ウィーンを手にするぞ」との決意を家臣達に宣言しているものと思われます。

 この回でウィーン征服に関係するのはここだけ。一応ヒュッレム関連の動きもメモしておきます。

  イサベラは暗殺を免れ、女官ニギャールに発見される。ニギャールは宦官アールとヒュッレムに相談し、三人で毒死したイサベラの侍 女カルモナの遺体を隠し、 毒殺現場を隠蔽する。ヒュッレムは怯えるイサベラに「後宮はこんなものよ」と言って後宮に留まるのはやめるよう暗に忠告している 様子。ところが、アール、 ミギャール、ヒュッレムの会話を影でマヒデブランの侍女が聞いてしまい、マヒデブランはヴァリデに事情を話しにゆく。そしてヴァ リデがヒュッレムを訪問し た時、扉の外で、ヒュッレムが娘に語っている話を聞いてしまう。ヒュッレムは、「マヒデブランとその息子ムスタファ、ヴァリデが いなくなれば」とか口にし ている様子で、それをヴァリデが聞いてしまい、その足で憤激したヴァリデはスレイマンに聞いたことを伝えにゆく。ヒュッレムは発 言のせいで、スレイマンに 叱責され、首を締め上げられるがそのままキス。ヒュッレムがどんなに悪女であろうと、許してしまうスレイマンに、マヒデブランは 下のバルコニーから見上げ て悔しそう。
 
 一方妻アミルに病死され傷ついて田舎に引っ込んでいたマルコチョーロが宮廷に復帰し、マルコを昇進させるスレイマン。昇進はマ ルコ本人も動揺する人事だったようだが、イブラヒムも狼狽するのだった。下記は以前より立派になった衣装のマルコ。

 マルコチョーロはその後、アルミの墓を訪れる。そこにはアミルの父親がいて、父親から形見分けをもらう。がそれは元々アルミに マルコがプレゼントしたネックレスだった。

 女官達のお昼に入っていって、食事を一緒にするヒュッレム。バルコニーから見下ろすヴァリデ、マヒデブランとその女官を見上げ て不敵に微笑むヒュレムなのだった。下記が昼食する女官達(ヒュッレムは反対側の端にいる)。

  これまで何度も登場した薬剤師(毒殺薬調合係)を今度はハティジェ訪問する。続いてハティジェが出て行った後、宦官アールが入っ てきて金袋を渡す。一方、 前回ヒュッレムの侍女ネリフェから取り上げた短剣をダイル(マヒデブランの侍女)がイェニチェリ(顔は出ない)に渡す、という怪 しい動きをネリフェが目撃 する。ネリフェは目撃した事を乗馬しようとしていたヒュレムに伝えにゆく。後宮に戻ったヒュッレムは女官の誰もがあやしくみえ る。この時のスローモーショ ンのヒュッレムの映像は悪くはなかった。自室に戻ると子供を抱いている女官から子供を取り上げるのだった。自分や子供の暗殺に怯 えるヒュッレム。そして事 件は起こった。ヒュッレムの馬が刺し殺され、現場にわざとらしくネリフェの短剣が残されているのだった。報告を聞いたヒュッレム は血のついた短剣を手に ヴァリデにもとに赴くのだった。


第三十九話

 まずはウィーン戦の経緯。
 
 こちらがサポヤイ・ヤーノシュ様(ドラマではヤーノシュ・ザポリアと呼ばれている)。史実ではこの頃42歳くらいの筈なので、 少し若すぎる俳優さん。

 前回ご紹介した、25、26話のモハーチの戦いで登場した20歳の筈のラヨシュ2世が中年の俳優さんが演じていたので、今回の サポヤイ・ヤーノシュとラヨシュ役の俳優さんが入れ替わればちょうどいいのに。と思いました。

  イブラヒムが政務の場でスレイマンの書状を読み上げる。iki(2)ミリオン・アクチェの何かと、ウチュ(3ミリオン)アクチェ の(トルコ語がわからない ので)何か、という文言が出てきて、他の家臣が顔を見合わせ、イブラヒムも読み上げながら戸惑いの表情。イブラヒムへの支給なの ではないかと推測していま す(イブラヒムを表面では厚遇し、その実追い詰める為のスレイマンの策謀なのではないかと思っています)。その後、イブラヒムと スレイマンは地図を見て、 ウィーン攻めの作戦を検討。1529年5月、イブラヒムとスレイマンは出陣し、ハンガリーの城を次々と落とす(ここは戦闘イメー ジ場面が出るだけ)。しか しフェルディナンドは、8月に、ブダペストで戴冠式を挙行するのだった。戴冠するフェルディナンド。ローマから司教を呼び寄せ、 ブダの王宮で戴冠。王冠の 画面ショットを何枚も取ったのは、ハンガリー王冠は”イシュトヴァーンの王冠”として有名なので、後で実物と比較してみようと 思ったから。

  同月、オスマン軍はモハーチ平原に至り、そこにサポヤイ・ヤーノシュが出頭して来る。「王冠を取り返してください」と陳情しに来 たものと思われる。そこで マルコチョーロの一隊が、ハンガリー王冠を運搬中の馬車を襲撃し王冠を奪取する。その王冠は、軍営のスレイマンに一度献上され る。帷幕にはサポヤイ・ヤー ノシュもいるのに、スレイマンは彼に王冠を直ぐには渡さないのであった。この事件に対して、ハプスブルク側は、遂に皇帝カール五 世がウィーンに来臨するこ とになる。下記がカール五世。左画面の左側に立つ人物がフェルディアンド。

 カール五世の衣装が気に入ったので更に画面ショットを取ってみました。左端と右から二番目がカール。右端はフェルディナンド。 そして、左から二番目は、ブダの王宮で、**マルコチョーロ**から戴冠されたサポヤイ・ヤーノシュ。

スレイマンではなく、宰相格のイブラヒムですらなく、御前会議に出席している高官ですらないマルコから戴冠されるところが、この 番組でのサポヤイ・ヤーノシュの地位のようです。これはハンガリー人を刺激するんじゃないでしょうか。

 この回のウィーン戦関連は以上。以下はこの回の後宮の動き。

  前回のラストで短剣を持ってヴァリデの元に向かったヒュレムはナイフをヴァリデに差し出して、私を殺して、という感じで訴える。 ヒュッレムはネリフェとエ スマ以外の女官を信用していないので、他の女官が娘の世話をするのは許さない感じで警戒している。そして間もなく、解任されてい たヒュッレムの侍女ネリ フェとエスマが再任され、一件落着かと思いきや、イブラヒムが、自分も利用していたものの、ヒュッレムなども利用し、いまや危険 となった薬師を毒殺し、更 にマルコチョーロはヒュッレムの馬の刺殺事件を捜査し、もともと短剣はヴァリデの侍女ダイルからネリフェに渡った事を突き止めて しまう。そしてネリフェは 何者かに獄中で絞殺させるのだった。。。。。

 第二十七話から登場し、準主役級だったネリフェが葬られるとは思わなかった。推測ですが、 これもヴァリデの差し金ではないかと思うのでした。マルコの捜査が進んで、ヴァリデの身に及びそうになってきたことから、ヴァリ デがすべてをネリフェの身 に被せて闇に葬ろうとしたのではないかと思うのでした。

 一方、どういうわけかニギャールは、森に埋めて隠しておいた「レオの手帳」を掘 り出して部屋に持ってきてしまう。しかも部屋の本棚に置いとくものだから、ニギャールの部屋を訪問したマヒデブランの侍女が目ざ とく見つけて手帳を持ち 去ってしまうのだった。なんというご都合主義的展開。そして侍女がマヒデブランに手帳を届けたところにヴァリデが来合わせ、「そ れは何」と尋ねたことか ら、遂に手帳の存在がヴァリデに知られることになるのだった。ヴァリデがヒュッレムを呼び出すところでこの回は終わり。

 気がついたらイサベルは出なくなってしまいました。どこにいったのでしょうか。。。。

第四十話

ま ずはウィーン侵攻から。プレスブルグ/プラチスラバと地名テロップが出て、オスマン軍が順調に城を落としながら進撃する様子が映 る。1529年9月27 日、オスマン軍は遂にヴィーンに到達する。下記左側がウィーンを包囲するオスマン軍。画面の両側に投石機が、その内側遠方に攻城 櫓が、更に中央遠方にシュ テファン寺院の尖塔が見えています。右側は、包囲するオスマン軍を窓から見下ろすカール。

 これがカールの目に映った包囲するオスマン軍。遠くに攻城櫓が何本も見えています。

 左側、シュテファン寺院の下に、白い円が二つばかり見えますが、これが大砲の噴煙。ウィーン城に向けて大砲で攻撃しているとこ ろ。右の画面は、何で画面ショットをとったのか忘れてしまいました。

 このCG映像がウィーン包囲で一番印象に残った映像です。窓から見下ろすカールから、カメラが一気にバックし、ウィーン全体を 俯瞰する場面。感激しました。

 が、感激したのもここまで。遠方から砲撃しているくらいしか戦闘場面は無く、ハプスブルク軍側の応戦場面は一切無し。ひたすら 籠城していたことになってました。本当にこんな感じだったのでしょうか。

 で、そのまま結局11月、雪になり、凍傷する兵士が続出し、それを見たスレイマンは撤退を決意するのでした。左が雪に埋もれた ウィーン。右が雪の中を耐え忍ぶオスマン兵士達。

 というわけで、期待以下では無かったものの、期待以上でも無かったウィーン包囲戦の場面は終わったのでした。

 今回の後宮の動き。

  ヴァリデに呼び出されたヒュッレムは、何やら隠し玉の秘密を漏らしたようで、ヴァリデは卒倒して倒れてしまう。その騒ぎに手帳を 取り替えそうとするが、う まくいかないヒュッレム。手帳はヴァリデの侍女、ダイアに回収されてしまう。しかしそれを見ていたヒュッレムは深夜、ダイアを自 室に呼び出すのだった。あ くる日。回復したヴァリデに再度呼び出されたヒュッレムはふてぶてしく「手帳?何のことですか?」という具合にとぼける。ヴァリ デはダイアに手帳を持って こさせようとするが、ダイアは無い、と答える。そして、前の晩、ダイアがヒュッレムに呼び出された場面が映る。そこでは、ヒュッ レムはダイアにとって都合 の悪い文書を隠し持っていて(記憶に無いので、見ていない回にこの文書の伏線があると思われる)、その文書と手帳を取引したの だった。

 ダイアから手渡された手帳を、ダイアに向かって艶然と微笑みながら暖炉にくべるヒュッレム。背筋がぞくぞくした場面でした。

  一方、ニギャールとイブラヒムの関係に気づいているハティジェが夕食の席で給仕をしているニグヤールの前でイブラヒムにかまをか けると、ニギャールがカッ プを取り落とす。激しく動揺するニギャールとイブラヒム。全てが終わったと思ったらしきニギャールは、自室で泣きながらイブラヒ ムへの想いを綴り、イブラ ヒムのバイオリンケースの中に手紙を入れる。ニギャールはそのまま屋上へ出る。自殺するつもりだと思われる。しかしニギャールの 遺書はハティジェがバイオ リンを弾いていて見つけてしまうのだった。

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