トミス


紹 
 日本では1995年に出版されたランスマイアー「ラストワールド」の舞台となったトミスは
ドナウ河口の南、現在のルーマニア黒海沿岸港湾都市コンスタンツァに位置し、紀元前6世紀頃にギリシャ人によって建設され た。ローマ帝国の首都がコンスタンチノープルになって以降コンスタンツィアと名称が変わり黒海沿岸都市群の繁栄の一翼を担っ た。
 
 ラストワールドが、アウグストゥスに追放された詩人オウィディウス・ナソの物語である様にコンスタンツァといえばオウィ ディウスというところがあると思うが実際コンスタンツァ自体オウィディウスを意識していて、観光地となっている旧市街の真中 にある考古学博物館前にオウィディウスの立像が立っている。
 写真1はコンスタンツァのビーチ。ビーチとしてはあまりたいしたことは無い。コンスタンツァという街はルーマニアにとって は第3の都市で日本で言えば横浜の様なもので大港湾施設がこのビーチの反対側にある。
 写真2はギリシヤ時代の住居跡。写真3はモザイク博物館となっている遺跡で、写真の1階部分が遺跡で2階部分がモザイク博 物館となっており、1階の建物の屋根の部分が一面モザイクで覆われている(10mx50mくらいか)。モザイク自体は幾何学 模様。フレスコ画を見る様な人物や風景ではない。
 ガイドブックを見ると、この遺跡は浴場跡となっているが、1階部分は「港湾施設の倉庫」という記憶がある。当時はこの前 (写真3の左の方)が港湾になっていたという情報であるが、記憶違いなのかどうか現在確認中。

 写真3の1階部分の各穴の中は写真4にある様にドーム天井を持つ部屋になっている。

 「ラストワールド」のこれは個人的感想だが、結構退屈な小説で読むのに時間がかかった。ラストワールドは現代と古代 が交錯ではなく、もはや混交しているとしか言い様のない不思議な小説である。最早SFに近いとも言えるかもしれないが (「大理石」という戯曲があったが、あれと似ている)、そのわりにはトミスのイメージが良く出ていて、トミスというより 「黒海西沿岸」というと「ラストワールド」が思い浮かぶ様になってしまった。
 黒海沿岸の香りを味わうためにたまに「ラストワールド」と読みかえすまでになってしまった。結構お薦めの小説。純粋な 歴史小説でもないくせに、歴史小説以上に「古代のトミス」や黒海のエッセンスを含んでいる様に思えるのである。

遺 
跡 
見 
取 
り 
全体的な地形としては古代からの旧市街部分はコンスタンティノプールの3角形に突き出た地形に似ており、あれを20分の 1にした大きさだと思えば。モハメッド2世モスクはコンスタンチノープルのスレイマニエに相当する位置にあるし。。。
旅 
行 
情 
報 
 トミスは大都会。駅の掲示板は電光掲示板。銀行にはクレジットカードのATMまである。ブカレストから鉄道で3時間。
 北70Kのところに古代都市ヒストリア遺跡がある。
 コンスタンツァの考古学博物館はギリシャ・ローマ時代の展示物が非常に充実している。ブカレストの歴史博物館より規模は小 さいがはるかに充実していると思う。
トラヤヌスのダキア征服から270年の放棄までのダキアの地図が、4つの時期に分けて壁に展示されている。それぞれ属州の境 界がことなっており、結構頻繁に行政区画変更がされている様子がよくわかる。

旅行日記
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