イスラム歴史ドラマ「ウマル」第六話から第十話


 第二代正統カリフ・ウマルの半生を描く2012年サウジアラビ ア製大河ドラマ。全30話のうち第六話から第十話。一話45分全30話。youtubeのMBCアカウントに英語字 幕版全30話(こ ちら)で視聴できます。この作品は音楽も印象に残ります。視聴した後もしばらく耳のこってしまう感じ。

第六話


 町中では、子供達まで黒人奴隷に石を投げつけるようになる。子供は大人のすることをよく見ていて直ぐに真似する、ということな のだろう。奴隷の所有者が奴隷の棄教を迫っているのであるから、アブー・バクルは手が出せない、ということなのだが、い くらなん でも早くなんとかしてやれよ、とイライラし始めたところで、アブー・バクルが、Umayyah Ibn Khalafに、ビラルを 売ってくれともちかける。ウマイヤは、「7」といいかけて「いや金40オンスだ」とふっかけて妥結。その場でアブー・バ クルは買 い取ったビラルを奴隷から解放するのだった。これを見ていたウマルは、なんて親切なんだ、と感動するのだった。アブー・バクルは他 にも町中で数名の女性の奴隷を購入して解放していた(この部分は前回登場していたが、その場面の意味がここで漸く判 明)。毎日奴隷 を拷問す るのに疲れてきていたウマイヤは、「やれやれ助かった」、とぼやくのだった。強硬派のひとりだったウマイヤも、段々根負けしてきていたのだ(下の左は拷問 に疲れ て一休みしているウマイヤ)。



 その一方、疲れてきているものの、アル・ハカムは執念をかけて拷問をやめない。奴隷 Ammar(左端)の両親も拷問し、強行に棄教を迫る。Ammarの母親スマイヤに剣をつきつけ脅迫したところ、スマイ ヤはアル・ハカムにつばを吐き掛ける。激高したアル・ハカムは、怒りのあまりスマイヤを殺してしまう。スマイヤはイ スラ ム教最初の殉教者となった。その夜Ammarの父のYassafも死去。このような拷問と脅迫の結果、アル・ハカムは遂 に、Ammarに「ムハンマドは嘘つきだ」といわせることに成功する。「俺はウマイヤのように弱くないぞ!」と叫ぶ ア ル・ハカム。



 拷問から解放され、泣きながら町をさまようAmmarを、アブー・バクルはやさしく抱きしめる。ウマルはそれを遠くか ら見詰め るのだった。

 31分頃、ムハンマドようやく登場。カメラがムハンマドの視線となっており、ムハンマドの姿は描かれない。人々がカメ ラ(ムハ ンマド)に挨拶する、という映像となっている。

しかし、なんとくか、何故主人みずから拷問するのだろう。疲れて嫌になるくらいなのであれば、手下にやらせればいいの に。それとも奴隷を直接痛めつけることができるのは主人だけに限られている のだろうか。



第七話


 ウマルはアブドッラー兄弟に、「混乱の原因たるムハンマドを殺し、その後ハーシム家に出頭し、殺される。それで以前の 状 態に戻る」、 とまで口にする。

 メッカの中心広場でムハンマドが布教していることを聞いたシャムス家一門は、アブー・バクルに、ムハンマドに説教をや めるよう忠告 するが、神の使徒に命令は出来ないと返答したアブー・バクルに、遂にUtbanとハカムが暴力を振るう。アブー・バクルは重傷を 負う。バクルは、母親に、Umm Jameel Bint Al-Khattab(ハッターブの娘ウンム・ジャメール)のもとに避難しているように指示する。アブー・フンダイファが、父親のUtbahのもとに、 Utbahがアブー・バクルに暴力を振るったことに抗議しにやっ て来る。

 シャムス家でもワリードがアブドッラー兄弟と密会していて、ムスリムに親近感を持っていることが知られ、ハーリドと父 親シャムスに難詰される。

 Suhail家では、アブドッラーが父親にムスリムになることを告白し、父親Suhailは、勘当だ、殺してやる、と 叫ぶ。弟ジャンダルは、父に 「まだムスリムではないが、明日はわからない。父殿、あなただって、今日はそういっているが、明日は違うかも知れない」と告げる。

 ムハンマドが、支持者をアビシニアに逃しているという噂が流れる。ワシーもライハナに何故逃げないのか、と尋ねる。

 フンダイファとワリードがアビシニアに移住する決意をする。なんだかんだいっても父親の二人(Utbahと SUhail)はメッカ の境界(城壁・城門はない)のところまで見送りに来る。少しさびしそう。

 シャムス一門総会議。ハカムは、いきたい奴にはいかせてやればよい、アビシニアとネグスの王はキリスト教徒で、宗教が 異なってい るから、迫害されるだろう、とイスラム教徒のアビシニア移住は放っておけと主張。会議からの帰り道、ウマルと若手数名が論じて曰 く、

 「ムハンマドは戦略家だ。彼らがアビシニアに逃れて無事に生活できれば、アラブは子供を安心して育てることも出来ない と他の民族 に思われる。さらにアビシニアで教徒を増やすこともできるかも知れない。アラブの評判を落とし、教徒を増やすことができるかも知 れず一石二鳥だ」



 ワシーが町中でビラルを呼び止める。自由になった感想はどうだ?アビシニアに移住するのか?ビラルは答える。

 「アビシニアに移住はしない。アビシニアはアラブに攻めてくるかも知れない。僕は同輩を見捨てることはしない」

 ワシー は、「お前の 考えは理解できない」と言う。ワシーは、荷物をもって来ていたので、ビラルがアビシニアに行くと答えたら、一緒に行こうと考えて いたのかも知れない。ビラルが移住しないと知り、荷物をもって引き返すワシー。考えの理解できないビラルに苛立っている と同時 に、少し寂しそうである。

 アブドッラーも移住する。弟が郊外まで見送りにきて、兄に馬を与える。見送る弟も寂しそうである。

−アビシニア(エチオパ)王宮廷の映像。右が国王−



  王は、イスラム教徒の移住を歓迎すると共に、彼らを通じてアラブとの商業的なつながりを強化したい、と提案する。困り顔のイスラ ム教徒。追放されたとはいいがたいのだろう。一方、メッカでもシャムス家の総会議で、移住を放っておけといっていたハカ ム、ウス マン、シャムスがUtbahに攻められていた。どうせ戻ってくると思っていたが、戻ってこない。少なからぬ 人々が移住すると、 我々商人の購買者が減るということであり、移住した連中がアビシニアに商業的なノウハウを教えてしまうかも知れない。ここはアビ シニアに人を送り、彼らが戻ってこれるようにするべきだ、と提案するのだった。Utbahも自分の息子が移住してしまわ なければ こんなことは言い出さなかったと思うが。


第八話

 Utbahはムハンマドの支持者へのプレッシャーを低めるべきだ説くのだった。一族の総会が終わり、広場を歩いていたアブー・ハカムは、ムハンマドに出 くわし、苦情を述べる。ムハンマドの映像は勿論登場しないが、カメラがムハンマドの視線を表現していて、ハカムがカ メラに向かって「お前のせいでえらいことになって迷惑だ」と延々と罵るのだった。

  Abu Imarah(ムハンマドの叔父アブー・イマーラ。別名ハムザ)が狩から戻ってくる。彼は「クライシュの鷹」でバドルを演じた役者さん。乗馬姿(下右) は、中世叙事詩に登場する騎士という風情があります。



 ハカムがムハンマドを罵り侮辱したことを聞きつけたイマーラは、ハカムの元に訪れ、いきなりハカムを殴りつける。 Utbanはハカムに、「彼はムスリムではなかったが、あんたがムスリム側におしやってしまった。今日にもムスリム 宣言するぞ」と警告する。その通り、イマーラはその足でムハンマドの家にゆきムスリム宣言するのだった。

  イマーマがハカムを殴り倒したのを見て、家に戻ったウマルは、以前友人に、この剣でムハンマドを殺す、と言ったことを反芻し、剣を持って家を出る。剣を もって厳しい顔つきで早足で歩くウマルを呼び止めた知人は、ウマルの妹のファイティマ・Bint・ハッターブが、夫 のSaeed ibun Zaid Ibn Amrとともにムスリムになったことを告げる。家に戻ると丁度入信式の真っ最中。扉の外でその声を聞いたウマルは、部屋へ入るなり妹婿に殴りかかり、止め に入った妹を張り倒す。何があろうと神への信仰は変わらないと叫ぶ妹に、ウマルは我に返り、頭をかかえて椅子に座り 込 む。



 コーランの一節を書いた紙がクッションの下に隠してあるのを見つけたウマルは、それを読む。その足でムハンマドの 家にいくウマル。イマーマ(ハムザ)は、剣を持って何しに来たと締め上げる。ウマルは入信を宣言す る。そこには異母兄弟のザイドもいた。続いてウマルはハカム家に赴き、ムスリムになったことを告げる。次はシャムス家、さら にシャムス一門の集会所へ赴き宣言するのだった。

続いてAdiy一族の居住区へいき、広場で一族のものにムスリムとなったことを宣言し、これまで私がharmや処罰 した 者は、ここに来て私に報復して構わない、と杖を差し出すのだった。人びとは皆口々に「許します」と口にするのだった。

メッカ市街をいまや数百人近く増加したムスリムが行進する。

ハカム、スフヤーン、シャムスは、ムハマンドが奇跡を起こせるだろう、と持ちかけようとするが、モーセの奇跡の例を ひいてウマルは封じる。

商人の口からアビシニアに移住したイスラム教徒にも、ハムザとウマルの改宗の報が伝わり、アブドッラーが確認のため 密か に帰郷するが、結局足枷をはめられ監禁される。父のしうちに抗議するアブドッラーの弟アブー・ジャンダルは、自分も既に ムスリムだと告白し、同じく監禁されるのだった。



第九話

 シャムス家総会では、アビシニア王を反ムスリムに仕向ける案が提案さ れ、 アムル・イブ ン・アル・アース(後のエジプト征服者)が使者に任命される。

  アムルは、昔からの誼でアビシニア王をうまく言いくるめようとするが、賢明は王は、君の言うことと彼らから聞いているこ とが違う。双方私の面前で話をして、君が正しければ彼らを追放し、彼らが正しければ私は彼らを保護する、という。こ の頃のアビシニアのリーダーはJaafar(ジャアファル/預言者の従兄弟)。



 上はアビシニア王の王宮。シャンデリアが特徴的。ジャアファルは、偶 像崇拝か ら逃れてきた のだと主張し、王に聖書の一節を暗誦させられる(ザカリアの話)。王は、それはイエスの啓示と同じ出典だと感動し、今後 いかなるものも諸君に手出しをさせないと宣告するのだった。がっかりするアムルだが、王に明日、もう一度チャンスを くれ と譲らない。翌日。アムルは王に、彼らにイエスについての見解を問うよう願い出るが、ジャアファルの簡単な答えに王は満 足した表情ではないものの、ムスリムの保護を確約する。以下は主にこの回から登場するようになった三人(少し前の回 でも 登場していた)。左がアムル・イブン・アース。中央ジャアファルはアブー・ターリブの息子らしい。するとアリーの兄弟と いうことになる。右がアリー。



 メッカに戻ったアムルは、友人のスレイマーンに、イスラム教とキリスト教が同じ人物、イエス、ザカリア、ヨハネ、 マリ アを尊敬しているとは知らなかったのだ、と、自分を使者に立てた長老たちへの不満を口にするのだった。その時捧げ物が十 分でなかったのか!とアムルが見上げたのが右下の彫像。もっと早く出してくれればいいのに、小出しにされるから何度 も画 面 ショットを捕る羽目に。



 ゲルニカというか、アフリカン・アートというかダダイズムというかキュービズムというか。。。この回の後半では上 左と 上中の像も登場してい た。

 アブドッラーとジャンダル兄弟、及びフンダイファとサマーマ兄弟達がメッカに戻ってきてウマルと再会する。ア ブー・ ター リブは、ハーシム家全体の意志を問い、ハーシム家は全体でムハンマドを支持することが決まる(あれ?アッバース兄弟は幽 閉されていたんじゃなかったっけ?まあいいか)。

 シャムス家総会では、以下の対策を立て、町に張り紙をする。

・ハーシム家とは通婚しない
・ハーシム家と売買しない。
・ハーシム家には食料物資を与えない。
・ハーシム家のものと会話してもいけない、ハーシム家に出入りしてもいけない
・これらに違反したものは村八分にする

暗殺を恐れたムスリム側は、毎晩ムハンマドの寝所を変える対策をとる。この頃ウマルには5歳くらいの子供(アブドッ ラー)が生まれている。いつ結婚したのだろう?妻は誰なのか。

 シャムス一門による迫害の結果、ハーシム一門は、メッカ郊外で難民キャンプ生活を強いられる状況の陥った。一方、 この ような政策に反感を持つ氏族も出てきて、シャムス一族に、あのような張り紙に同意した覚えはない、あんたたちのやってい ることはクライシュ族全体の利益に反する、と抗議する。最近は、シャムス一門も、雁首そろえて登場することが多く なって きた。以下は、記憶の限りでは、シャムス一門全員がワンショットに収まっている数少ない映像。左からアブー・スフヤーン、Utbah、Suhail、ア ブー・ハカム、一人置いてイブン・シャムス、ウマイヤ。



 こうしてハーシム家ボイコット運動は終息を迎えるのだった。朗報をムハマンドに伝えに難民キャンプへ急ぐ。


ムハマンドの啓示から12年目(621年目)

アブー・ターリブは臨終の床に就く。ムハンマドや親族が見舞う中亡くなるのだった。

 さらにしばらくして、ヤスリブ(メディナ)から教えを広めて欲しいと使者が来る。ムスリムがメディナに移住し始 め、教 えを広め始める。



 第十話

  預言者の啓示から13年目(622年)

  イスラム教徒の大々的なメディナ移住が始まる。邪魔者がいなくなってシャムス家一門は胸をなでおろしているかと思ったら 違った。メディナ住民は農民が殆どであるため、イスラム教徒の移住は、メディナの商業的興隆を招き、メッカと競合す るこ とになると恐れ、移住を妨害することになる。

 アブー・アリー・ハカムは自らメディナに出向き、母親(この時の会話によると、フンダイファとハカムは同母兄弟ら し い)の体調が悪いとフンダイファを騙してメッカに連れ帰り、弟のサマーハとともに足枷をつけて監禁する。

 ハカムはさらにマナーフ家の屈強な若者達を率いてムハマンドを暗殺するべくムハンマドの家を襲撃するが、家にいた のは 甥のアリーだけで、アブー・バクルも夜のうちにメディナへ向けて出発していた。そこでハカムは広場で、100頭の雌らく だを懸賞金にかけ、ひろく人びとにムハンンマドを連れてくるようにいい広める。これを聞いたSuraqah ibn Malikという人物はアブー・バクルを追跡するが、アブー・バクルの駱駝を見つけたところで、馬が動かなくなって しまい、心を改める。アブー・バクルに 声をかけて、ムハマンドの首に懸賞がかかった件を伝え、後からやってきた追っ手に、こっちの方面にはいないとアブー・バ クルを救うのだった。

 アリーは一人、徒歩でメディナへ向かう。足が血だらけになる。アリーがメディナの手前の町に到着した時には、既に ムハ ンマドは、そこで最初の集団礼拝のための場所−モスクを建設していた。翌日ムハンマドはメディナに入る。

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