神聖ローマ再現ドラマ/ ドイツ教育番組"DIE DEUTSCHEN(ドイツ史)"(2)バルバロッサ,ヒルデガルド,カレル4世

  前 回の続きです。ドイツ教育番組・歴史再現テレビドラマ「DIE DEUTSCHEN」から、以下の神聖ローマ帝国時代の下記三回をご紹介します。

DIE DEUTSCHEN 第一シリーズ第三回 「バルバロッサと獅子公」(皇帝フリードリッヒ一世とバイエルン・ザクセン公獅子公」
DIE DEUTSCHEN 第二シリーズ第三回 「ビンゲンのヒルデガルドと女性達の力」
DIE DEUTSCHEN 第二シリーズ第四回 「カレル四世と黒死病」です。

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  このシリーズは、現在フリードリヒ二世とマリア・テレジアの回と、ポーランド王となったザクセン公アウグストの回も見たのです が、フリードリヒ二世とマリ ア・テレジアはいまいちでした。肖像とか資料が色々残っているので、先入観ができてしまっているからか、両者とも配役が期待外れ な感じでした。このシリー ズは、(配役表を調べたわけではありませんが)恐らく同じ俳優が別の回に出てきているようなので、マリア・テレジア役の人が別の 役に見えてしまったりする んですよね。これらもいずれご紹介したいと思います。本作はZDFのHPで視聴できます。

 なお、本作はZDFのHPで視聴できます。

  かなり解像度も良いです。HPで無料で見れるのに、dvdが出ているのは、大画面で観たい方や、ネットに縁の無い方向けだと思う のですが、dvdも、シ リーズ全部のboxと、各話個別のものが出ています。各話個別のものを買うのは割高になるので、なぜ出ているのか疑問です。割高 なのであれば、各話別の dvdに英語字幕をつけてくれればいいのに。英語字幕があれば絶対買います!


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関連記事:「中世欧州歴史映画バルバロッサ(皇帝フルードリッ一世ヒバルバロッサ)
    :「チェコ王カレル四世自伝(神聖ローマ皇帝カレル四世)


第一シリーズ第三回「バルバロッサと獅子公」
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  結構レア映像に満ちていたので、バシバシ画面ショットを取ってしまいました。正味40分くらいしか無いのに見終えるのに倍くらい の時間がかかってしまいま した。結構いい出来だとは思うのですが、2点不満な点があります。ひとつは、1155年から1184年までを扱っていて、30年 も経っているのに、フリー ドリヒと妻ベアトリスが全然が更けない点。2点目はバイエルン公ハインリヒ獅子公の出番が少なすぎる点。題名が「バルバロッサと 獅子公」なんだから、もう 少し出番があっても良かったのではないでしょうか。

 さて、冒頭、1155年のローマでの神聖ローマ皇帝戴冠場面から始まります。下記が教会から出てきたフリードリヒ。ハインリヒ 四世同様、十字架付の王冠をしています。

 で、ローマ市民には全然歓迎されていないので、ローマを出発する時は、道路沿いの家々から石などを投げられ、かなり危険な状 態。12世紀のローマの町に、マントを広げた北方の騎士は違和感があります。地面に投げつけられた瓦礫のようなものが見えていま す。

 家臣の案内で裏道を通って逃げるフリードリヒ。ローマの町の先進都市ぶりが見所の場面。街路があって、家にドアがある)。この 後出てくるドイツの景観とは大違いです。

 これがどうやらドイツのフリードリヒの本拠地の城のよう。シュトゥットガルトのKÖIGREICH(フランクフルトの南約 200km。スイス国境まで100km程)。これは再現映像ではなく、遺跡として残っているようです。山の頂にある、絵に描いた ような中世の城。

  1156年、フリードリヒ一行が城に戻る途中、沿道の農民は熱狂的に歓迎する。下記は、マントにキスする熱烈なファンと思わしき 女性。30歳くらい(当時 は晩婚だったから、まだ未婚なのかも)に見えたが、現代の女性の方が若く見える筈なので、当時としては20歳くらいなのかも。い づれにしても、老若男女全 てに好かれている感じ。

 どうやら下記が、その城の復元CGみたいです。概観だけではなく、内部の様子、一階の広間や、二階の王座などがCGで再現され ていました。

 WÜRZBURG(ヴュルテンブルグ:フランクフルトの東約100km)で1156年7月17に開催された騎士のトーナメン ト。奥の背景にヴュルテンブルグ城が見えています。

 下記は吟遊詩人。もう絵に描いたような中世絵巻(最初は測量技師かと思った)。ワーグナーやヒトラーが泣いて喜びそうな映像。

 トーナメントを見るフリードリヒとベアトリスの天幕。真ん中あたりに皇帝夫妻がいます。

 より近くから見た場面。薄暗いのでわかりにくいかもしれませんが、中央がフリードリヒ。左の女性が皇后。

  実はこのトーナメントの映像は、後で出てくる1184年のマインツ郊外での開催のトーナメントと同じもの。せめて皇帝夫妻だけで も衣装を変えて、老けメイ クにすればよかったのに。下記はその、1184年マインツのトーナメントで騎士に剣を与え、皇帝から剣をもらった騎士が観衆に見 せるところ(真ん中と右側 の二名がそれ)。真ん中の騎士の横の奥がフリードリヒ。左がベアトリス。本当に中世騎士物語の世界。

 こちらがトーナメント会場全景。奥がマインツの町。

1157 10月ブルグンド(ブルゴーニュ)のBESANÇON(ブザンソン(現フランス東南部))で教皇の使節と面会する場面です(妻のベアトリスはブルグンド 伯)。この席でもベアトリスが同席しています(というか、殆どの場面で常にベアトリスが隣にいる。仲が良かったことを強調したい のだろうか)。平凡なこの 場面の画面ショットを取ったのは、この場面が、フリードリヒが、「帝国は教皇の領土である」と教皇書簡を読み上げる教皇使節に向 かって、激怒した皇帝が、 「SACRUM IMPERIUM(略号SACM IMPII:神聖帝国)」と口にした重要な場面だからなのでした。これ以前は、ローマ王とか帝国とか皇帝という用語だけが用いられていて、「神聖」という 文字は、文書で確認できる限りは登場していなかったようなので、神聖ローマ帝国史上、画期的な場面なのでした(文書としても、 1157年から「神聖帝国」 の文字が現れるとのこと)。

 で、怒り収まらない皇帝はイタリア遠征に赴くのでした。下記はアルプスを越えるドイツ軍。左側遠方にかすかに延々と続く隊列が 写っています。遠方の隊列はCGだと思うのですが、この場面は左側にカメラが移動して、延々と続く長い隊列を移している、印象的 な場面です。

 1158年のミラノ包囲。マイラントという発音が出ていたのでMy Landかと思っていたら、ドイツ語でミラノはMAILANDなんですね。初めて知りました。手前がミラノ市を包囲する皇帝軍。遠方にミラノの城壁が見え ています。


  ミラノは敗北し、上画面と同じ角度で、ミラノ市民がミラノ市から行列を作って退去する場面が出てきます(ミラノ破壊は1162 年)。このあたりでもう半分 程過ぎてしまっているのですが、ここで漸く獅子公登場。イメージと違ってハンサムな役者さんを起用していて驚きました。ハインリ ヒ獅子公の彫像など見たこ とが無いので勝手に想像していただけなのですが、もっと脂ぎった直情型のおじさんを想像してました。スマートな配役に少し驚き。 フリードリヒの方がよほど 獅子のニックネームが相応しい感じです。


 その獅子公の最初の映像は、ミュンヘン市の建設式(1158年)。野原に獅子公が剣をつきたて、都市建設の場所を決める儀式。 全然獅子っぽく無いのですが、この後、遠景に建築物が増えてゆくCGは結構よく出来ていました。ミュンヘン市って獅子公が建設し たんですね。

 せっかく登場した獅子公は直ぐに引っ込んでしまい、今度は1176年3月29日、北イタリアのロンバルティア同盟との決戦、レ ニャーノの戦い。皇帝軍は敗北。下記は戦勝に沸き返るイタリア都市。

  しかし、この戦いのハインリヒは参加しなかったため、1176年一月、シュヴァーベンのHERZOGTUM のCHIAVENNAにてハインリヒとフリードリヒの会談が行われ(この時もベアトリスは同席していた)、会談が決裂した様子で、マントを翻して去ってゆ くハインリヒの姿が印象的でした。その後ハインリヒが、現在のポーランド北方、メクレンブルクやグダニスク方面に勢力を伸ばして 行った話が現代の史跡の映 像や地図とともに出てきて、そのうち、ハインリヒがなにやら文書に捺印する場面となるのでした。よくわからないのですが、恐らく 1181年のドイツからの 追放に関することなのではないでしょうか。下記は火で溶かした蝋を文書に落とした直後の映像。この後、印象を押し付けて、捺印す る場面が出てきます。こう いう映像はなかなか見たことが無いので非常に参考になるのでした。

 で、その後はハインリヒ夫妻の墓(ドイツ語Wikiには、もうひとつ石棺の写真が出てきていて、両者の関係はいまい ち理解できませんでした)の写真が出てきて獅子公の登場はおしまい。獅子公の事跡は殆ど知らなかったので、もう少し多く扱ってほ しかったところです。印象としては、出場時間は、全体の1/5以下くらいな感じ。

 1184年のマインツ市。CG映像ですが、あまり高層建築のまだ無い中世ドイツ都市の俯瞰図として参考になりそう。

 ここで前述の通り、1157年と同じセットを用いてトーナメント試合が催されるのですが、途中で大変な嵐が来てトーナメント場 はおろかマインツ市も壊滅的な被害を受ける様子が出てきます。多くの死傷者が出たようです。下記はその壊滅したマインツ市。

 最後にフリードリヒの彫像が中央に刻まれている、下記の遺跡が出てきて終わります。この遺跡がどこなのかわからなかったのです が、そのうち調べてみたいと思っています。


 フリードリッヒの映画は、2010年イタリア製作の「バルバロッサ」があります。こちらに紹介記事を記載しており ます。


第二シリーズ第三回 「ビンゲンのヒルデガルドと女性たちの力」
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 一応幼年時代から中年くらいまでを描いているようで、最初は5歳くらいのヒルデガルドが登場し、早くも幻視をしてる場面が出て きます。その後、20歳くらい、40歳くらい、と順調に老けてゆく(様に見える)のがフリードリヒの回と比べて良かったところで しょうか。

  今回はシリーズの他の回と少し違う感じでした。時間を計ったわけではないので印象ですが、正味40分のうち、再現映像は半分くら いで、歴史ドキュメンタ リー番組の色彩が強い印象でした。せっかくだからヒルデガルドが作曲した曲とか流したり、演奏している場面とか出してくれれば良 かったのにそれも無し。修 道院にこもって内省的な生活を続けた人なので、あまり再現映像向きでは無いのかも知れませんが、ドイツ語のわからない私にはあま り参考にならない映像が続 く内容でした。とはいえ参考となる映像がまったく無いわけではありません。
 下記はヒルデガルドが長年過ごした修道院で、現在は遺跡が残っている場所の再現CG映像。建物が増設されてゆく様子がCGで再 現されていました。


 これは同修道院を山の下から見たところ。


 これは、理由は良くわかりませんが、ヒルデガルドが修道院を退去する場面。恐らくCGとの合成映像なのではないかと思います。


 最も興味を引いたのはこれ。楽譜かなにかなのでしょうか。普通の紙ではなさそうで、蠟版とも違うようです。この筆記用具には興 味を惹かれました。

 普段は、下記のような、普通の筆記用具を使っているようです。これは、皇帝フリードリヒに手紙を書いているところのようです。 皇帝との面会の場面はありませんでしたが、この手紙がきっかけで面会することになるようです。

 フリードリッヒとの面会場面は、2010年イタリア製作の「バルバロッ サ」にも出てきます。ヒルデガルドが皇帝の最期を予言する場面の画面ショットがあります。また、2009年には、「Vision - Aus dem Leben der Hildegard von Bingen」という、ヒルデガルドが主人公の映画もあるようです。


第二シリーズ第四回「カレル四世と黒死病」
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 冒頭、英仏百年戦争での有名な戦いのひとつ、クレシーの戦い(1346年8月26日)にフランス側として従軍するカレル(左) と父のヨハン(右)。ヨハンはこのこと完全に失明しているので、白眼となっている。カレルがクレシーの戦いに従軍していたとは知 りませんでした。

 フランス側が敗戦したクレシーでは、ヨハン王は戦死。カレルも、下記のように、薄汚れて戦場を後にします。

 続いて一ヶ月くらい前に戻って1346年7月11日。RHENS am RHEINという場所でローマ王の戴冠式を上げるカレル。カレルの右の方にはヨハンも座っている。

 そのカレル。アップはこんな感じ。ひげの人だったんですねぇ。こちらのWikiに、(記憶があいまいですが、確か存命中に書かれた)カレル四世の絵が ありますが、確かに似ている感じです。

Google Mapで調べると、RHENS am RHEINは、ライン川畔のランスという、ボン東南100km付近にある町なのですね。下記のような平原で戴冠式をしているとは知りませんでした。中央の 黒マントがカレル。民衆や貴族などに挨拶するところ。

 こちら対立皇帝のバイエルン公国のルートヴィッヒ様。一族の者と大テーブルでお食事中。この直後に、カレル即位の手紙が届き、 激怒して手紙をたたき付ける場面が出てきます。

  こちらは現在のドイツ、バイエルン州ヴュルツブルクの町で1342年7月22日に発生した大洪水。このCGは、ハインリヒ四世の 回でSpeyer(シュパ イアー)の町とされていたものなのですが、1342年7月22日にシュパイアーで洪水があったという情報はなさそうなので、ヴュ ルツブルクの町とシュパイ アーの町で同じCGを使ったということなのかも。力の入ったCGなので、色々な町について作る余裕がなかったのかも知れません。 そもそも、この回は、 1346年以降を扱っているので、1342年の洪水がどうして突然出てきたのか不思議です。ヴュルツブルクの町がルクセンブルク 家領だったのでしょうか。

 カレルの書斎。窓はガラス窓のような感じ。

書斎の背後の書棚。写本時代なのに凄い本の量。まあ、皇帝なんだから当たり前か。

 カレル時代の勅令のようです。金印では無く、通常の蠟のようですので、金印勅書では無いと思うのですが、古文書館の保管庫から 取り出してきて、折りたたんであるのを広げる場面が出てきましたので、それなりに重要な古文書だと思われます。

 金印勅書で選定された皇帝選挙権を持つ七選帝侯の地図。結構わかりやすいので画面ショットとってみました。

  蝗の大群が襲来したり、黒死病に襲われたりする場面も出てくるのですが、黒死病の映像は、以前ご紹介した「Black Death」の映像と非常に似ています。やっぱ「Black Death」は神聖ローマ帝国映画としか思えないのでした。それにしても、タイトルは、「カレル四世と災害」とした方がよかったかも。

〜お終い〜

 
 本シリーズは、全20作で、こちらにリストがあります。 ドイツ史上の著名人は網羅されている感じがしますが、カール五世とか見てみたかったところです。題名が「DIE DEUTSCHEN(ドイツ人)」(本記事のタイトルでは、歴史ものということを明示する為、「ドイツ史」と訳しています)なのだから、ドイツ語が話せな かった、ほぼスペイン人のカール五世とかは外国扱いということなのでしょうか。でもほとんどシチリア王だったフリードリヒ二世は ありますし、ヒルデガルド のような、政治と無関係な人も出てきます。そもそもコルシカ人のナポレオンも出ていますしね。そういうわけで、個人的には、第三 シリーズも作ってほしい と、下記内容を妄想しているのでした。

第三シリーズ案

第一話 ドイツ騎士団
第二話 シュテルテベイカーとハンザ同盟
第三話 グーテンベルクと情報革命
第四話 カール五世とフッガー家
第五話 ルドルフ二世と魔術
第六話 シラーと文豪(ゲーテ)
第七話 ベートーベンと哲学者(ヘーゲル) 

でも第七話までしか思いつきませんでした。。。。しかも第一話は人名が出てこないし、シュテルテベイカーは伝説の人。
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