2011年10月8日作成

第一次ブルガリア王国歴史映画「黄金の世紀」(シメオン王) 第五から第八話


 前回の 続き。ブルガリアのシメオン王のドラマ「黄金の世紀」の第5話から第8話です。


第五話

  マジャール襲来へ対抗する為、北へ向かうブルガリア軍。北への軍の移動はまるで民族移動である。ハンコ部隊は山の斜面の、牧畜と 畑を作っている農家に出く わす。そこに逗留させてもらうことにする。どうやら国内を移動する場合、軍隊は輜重隊を持つのではなく、道々村落にやっかいにな り、そこで労働力を提供し ながら宿泊と食事を貰うことになっているらしい。少女が、「ママ、兵隊が来たよ!」と伝えに行く。

 ハンコ部隊が厄介になることになった家では、父親がおらず、まだ子供の息子と14,5歳の姉、母親しかいない。部屋も狭く、下 記のようにひしめき合って食事を取る。
 

  一方シメオンは、カラーチと再会する。彼は建築家なのだが、この地方の地主でもあるらしい。貴人は地方貴族や地主のところに宿泊 するだろう。シメオンは単 身狩に出るが、風にあおられ、馬が暴れ、落馬してしまう。そこに熊が。地元の女狩人が危機一髪で熊を射殺し、助けてくれ、女の館 に泊めてもらう。どうやら この地域の地主らしい。ヨセフと偽名を名乗るシメオン。その館の従者が馬を見つけてきてくれる。カラーチが探しに来る。俺はヨセ フだ、ということにしてく れ、と頼むシメオン。弓の名手の女はノナと名乗る。ノナのところにカラーチと一緒に泊まるヨセフ。ノナの母にカラーチも名前を聞 かれている。ノナの母は、 シンギドヌゥムとか、ベオグラッドとかあれこれc地名を言っていて(よく聞き取れない)ご機嫌である。なんか勢いで押し倒されそ うな迫力の女主人、といっ た感じ。恰幅の良いカラーチも押され気味である(右が女主人、真ん中がカラーチ)。

 その頃ノナとヨセフは部屋でキスなんかしてるだった。。。。

 翌日ハンコたちは、屋根に藁をあげるなど、家の手伝いを始める。

シ メオンの方はプリスカに戻ることになる。奥さんと聖職者達が聖歌を歌ってシメオンを迎える。しかし、奥さんが卒倒しそうになる。 シメオンにコートを送る夫 人。これ好き?とか甲斐甲斐しいじゃないですか。邪険にすんなよシメオン。が、シメオンも風邪になってしまう。どうらや、都・プ レスラフには病が流行して いるようである。呼吸が荒れ、ヴラジミールの目をつぶした時の記憶や、アドリアノープル前の斬首の記憶にうなされるシメオン。3 日3晩うなされ、4日間眠 り続け、6日間奥さんが看病した(といっているようであった)。看病疲れでよろよろしてシメオンの部屋から出てくる夫人。その 後、少しよくなったらしく、 シメオンは手紙を口述。そこにカラーチが入ってきて歓談。 父ボリスも見舞いにやってくる。下記はプレスラフの建築物。

 大理石の柱のあるところが旧都プリスカと大分違う。



第六話

 すっかり農夫になってるハンコ。ハンコは母親に気に入られているようである。農家なんて、中世も近世も、場合によっては現代も あまり変わらなかったりするが、それでも画面ショットをいくつかとってしまった。やはり一般人の日常生活は興味深い。

  もともとマナーの悪い同僚の酔った兵が、娘を襲ってしまう。悲鳴。呆然として納屋から出てくる娘。首を吊ろうとしたが、思いとど まったようであった。激怒 したハンコは同僚の首に縄をつけて、小川沿いの木に男を吊るす。そこに隊長が訪ねてきて、事情を話す。逮捕され、連行される。

 雪山を家臣と遠乗りに出るシメオン。家臣も皆ご機嫌。宮廷に戻ると、ハンコ事件の報告が来ていた。地下牢のハンコを訪ねるシメ オン。ハンコはカラーチのもとで働くことになる。

 カラーチの家の宴会(主人席にカラーチが座っているのでそれと知れる)。ノナが招待されている。そこに入ってきたのはシメオン だった。驚くノナ。

  カラーチのもとでのプレスラフの新しい教会建設が始まっていた。ハンコはそこで働いている。カラーチの家には机があり、その上に 教会とその城壁の模型が置 いてある。机の普及度がわかる映像である(まあそういう解釈でドラマを作っている、というだけだろうけど)。ハンコに文字を教え るカラーチ。その後文字の 練習に励むハンコ。

 ついでだが、シメオンの執務机の上が映っていたので何があるかとってみた。

 鐘の音がガンガンひびく。シメオンの長男が誕生したようである。ミハイルと名付けられた。この時点までは、村娘のデヴォロが産 んだミハイルが、数奇な運命を辿ってシメオンの子として迎えられるのかと推測していたのだが、違った。
 真冬。何かの祭り。総主教が凍った池の一部の氷を砕いて水面が出ている部分に十字架を投げる。それを裸の男達が氷のはった冬の 池に入ってとってくる、という儀式。その十字架でシメオンはじめ家臣たちに祝福を与える総主教。

 寝こんでいる王妃。寝こんだまま、最後の望みとして、修道院に輿で運ばれる。修道院の前で見送るシメオン。そして宮廷に戻ると ノナがいた。しかしシメオンは、一人で写本室に篭ってしまうのだった。。

 城壁完成落成式。足場を皆で一斉に引いて外すのである。シメオンがやってくる。ということはプレスラフの教会とその城壁だと思 われる。

  そして戦争場面となる。騎馬民族が村落を襲撃している。狼煙を上げ、狼煙を連携させて通信し、都に知らせる。6403年(895 年)、マジャール人のブル ガリア侵攻である。現在のブルガリア北東部、ドナウ川沿いのドゥルストル要塞(現シリストラ)近郊の戦いが行われる。ハンコもこ れに参加。戦闘場面はアッ プばかりで戦況の全体像はわからないカットが続き、あっさりとした扱いだった(史実とされている内容では、実際はシメオン軍は要 塞に立てこもり、マジャー ル軍に攻囲され、小競り合いがあっただけで、大規模な会戦は無かったようである)。しかし、この戦闘中に、ハンコが刺されて倒れ る場面が登場する。ブルガ リア農民の家がマジャール人に襲われ続ける映像が続いてこの回は終わる。マジャール(現ハンガリー人)の服装や装備・生活などの 映像も期待したのだけれ ど、なし。下記のような、騎馬の場面のカットばかりだった。それでも欧州進入当時のマジャール人が見れたのは良かったけど。




第七話

  或晩、ドナウ川を船で、コンスタンティノープルから使者が来た。彼は2つ条件を出してきた。ルメイテ(ルメ=ローマ(当時のビザ ンツの呼称)のバシレフへ 宛てに親書を書かせる。その条件が聞き取れなかったのですが、その後、町に住むある女性が民衆に石投げの刑に合い死亡する場面が 描かれる(この女性は何故 殺されたのか。このあたりの筋は良くわかりませんでした)。再びビザンツの使者が来る。どうやら時間稼ぎの取引をシメオンが行っ たようである。途中、マ ジャールとの戦のカットが少し入る。マジャール人の装束は、300年後のタタールと変わらない。

 一方ハンコは部隊を離れ、オーグリ(ウ ノグリ?)という場所(?)で若い女性と暮らしている。冬、ある日、武装したマジャール兵が通りがかる。「お前はブルガリア人 か?」と尋ねられ、「彼はブ ルガリア人のようだ」とばれる。若い女性は弓を構えて兵を追い返す。そしてハンコの胸を叩いて攻めるような仕草をし、その後ハン コを逃がしてやる。つま り、ハンコはマジャール人の女性と暮らしていたようだ。いつ、どうしてそうなったのだろう。ひょっとしたらナレーションで説明が あったのかも知れない。推 測するに、ハンコはドゥルストル要塞の戦闘で傷つき、マジャール人の女に拾われたのかも知れない。そうして、このことは、ドナウ の北に広がるブルガリアの 北方領土がマジャール人によって侵食されている現状を表したものかも知れない)。このあたりの事情は、シメオン時代の地図を参照 すると理解しやすいと思い ます。下記は、Wikiの英語版のシメオンの項から持ってきた地図で す。ドナウの北の緑の斜線部分は、ボリス汗時代まではブルガリア国の領土だったものの、マジャール人の進入により、ブルガリア国 による一貫した統制が取れ なくなってしまった領域です。もちろん、ブルガリア語Wikiではシメオン時代もその後も、ドナウの北の領土は全てブルガリア領 とされています。なお、 Wikiのシメオンの項目には、マジャール語のリンクが無いのでした。。。。

ハンコは、なんとかブルガリア人の陣営までたどり着き、昔の仲間が喜んでくれる。その歓声はシメオンの天幕まで聞こえる。シメオ ンの前で復員の誓いを行う ハンコ。ハンコは隊長に選出される。その後シメオンは、マジャール人に焼かれた村の跡を検分し、その夜、ボリスを訪れる。その 後、ビザンツ使節とまたも面 会するシメオン。ビザンツ側とかなり頻繁な交渉が続いているようである。「メッセンブリア(現ネッセベール)まで をブルガリアに譲る」という点で交渉が行わ れているようである(他にも交渉内容はあるものと思いますが、聞き取れませんでした)。

  ハンコ隊は、演習中に川のそばで焼け落ちた家に遭遇する。それは、ハンコが育った村だった。焼けた教会があり、昔なじみの司祭が いた。「自分はハンコだ。 デヴォロはどこだ?」と尋ねるハンコ。デヴォラ一家は皆死んだが、デヴォラの子供だけは、ボヤール(貴族の意味)のステファン (ステファン・ヴラジミー ル)のところにいると伝える司祭。


第八話
 
 896年の夏。また戦争が勃発する。カラーチも軍と一緒に馬車で移 動している。今回はビザンツ軍も出兵している。この時のコンスタンティノープルの宮殿の様子が描かれる。皇帝は宴会に明け暮れ、 作戦は全て現場の将軍に丸 投げしているようである。下記はその宴会の楽隊。左から、琵琶、木琴、ハープ、トランペット、シンバル。


  夜。ビザンツ軍の陣地。天幕ではビザンツ高官たちが乾杯なんてしている。そこにハンコ隊はじめブルガリア軍が夜襲をかける。ビザ ンツ軍、防備が甘すぎない か?皇帝の宴席場では踊り子達によるダンスの見世物が行われている。ビザンツの将軍の一人を負傷させるハンコ。その将軍は、生き てなんとか、総司令官の宴 会にたどり着く。ワインを与える皇帝。更に、下っ端の兵士もやってきて、ブルガリア軍がコンスタンティノープルに迫っている、と 報告する(ここで、下っ端 兵士は「ブルガリア軍」という言葉を使っているが、将軍(ドメスティコという名前らしい)は、ブルガリア・バルバリテ(蛮族ブル ガリア人)と呼んでいる点 が興味深い)。

 翌朝シメオンが戦場に来る。ブルガリア側の損失は2000人。敵方の損失は8000。戦果に満足するシメオン。ギリシア 人の町を占拠した兵士達は戦利品に沸き返っていた。ヘルメットに酒を入れて飲む兵士達。ところが、たまたま通りがかったギリシア 人が落とした貨幣を、その ギリシア人と、一人のブルガリア兵が奪い合いとなり、その兵士がギリシア人を殺してしまう。楽しい戦勝雰囲気ばぶち壊される。殺 人を犯した兵士は軍規に 則って処罰されることになり、木刀で背中を叩かれる刑にあう。34回目くらいで死亡してしまう。それを見ていた修道士が卒倒して しまう。

  シメオンは教会で重臣達4人を前に会議を行う。議題はコンスタンティノープルへの侵攻について。4人のうち2人が賛成。臣下の一 人が二つの理由を挙げて反 対する。一つ目は疲れたこと。当初はアドリアノープルまでが目標だった、という。二つ目。どこまでいけば満足なのか。都か、帝権 か?とシメオンに問う臣 下。しかしシメオンは最終的にコンスタンティノープルの都への侵攻は、政治的な効果があるため、都まで侵攻することを決定する。

 海岸でブルガリア軍をビザンツの使節が迎える。町の鍵を渡す。ついに、都を見るところまで来たシメオン。貢納品が続々と提出さ れる。戦利品に喜ぶハンコの同僚兵士達。

  さあ、これからコンスタンティノープル入城か!?、と期待してしまうが、この時のシメオンはコンスタンティノープルには入城せず に終わる(本作では描かれ ていないが、王位についた後のシメオンがコンスタンティノープルに入城するのは913年である)。そして冬となったブルガリアに 場面は移ってこの回は終わ る。

 以下次回。
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