2011年9月30日作成

第一次ブルガリア王国歴史映画「ボリス一世」第二部「文学 の言葉」

  前回に 続き、 1984年ブルガリア製作、「ボリス一世」第二部です。冒頭のオープニング・クレジットに配役表が出ています。注意深く見ている と発見がありました。例え ば、ボリスの子女は、「ガブリール ボリスの息子」「アンナ ボリスの娘」などと説明がつくのに、「シメオン」だけは、何の説明 も無し。まあ当たり前か。 シメオンを知らないブルガリア人はいないだろうし。家康の父親や息子の名前を知らないのが日本人でも普通なのと同じ理屈なので しょうね。で、本作は、映画 としても面白かったのですが、私にとっては、グレート・シメオンの、イメージ通りの画像が見れたのが一番記憶に残っています。シメオン主役のテレビドラマ シリーズもあるのですが、そちらのシメオン はイメージと少し違うんですよね。。。。こっちの役者にやって欲しかっ た。


 
 伝記作家が述べる。天地創造から6394年、キリスト生誕後885年。クレメント、ナウム、エンゲラーリイについて語り始め る。。。。

  3人の旅の僧が登場する。ドナウ川に出て、「遂にブルガリアに来たぞ!」と感激する。最初は、この川がオホリド湖かドナウ川のど ちらかわからなかったので した。なぜならば、冒頭部分では旅の僧の名前はわからず、キリル、メトディ、クリメント達はテッサロニカかコンスタンティノープ ルあたりからオホリドに来 たものと思い込んでいた為です。しかし、どう見てもドナウ川にしか見えないので、調べてみたところ、後に名前が判明するこの三 人、クレメント、ナウム、エ ンゲラーリイは、モラヴィアから南下してブルガリアに来たのですね。。。こういうことも文章を読んだだけでは頭に入りにくいの で、映画は役に立ちます。

  近くに家があり、男が小船で出て行く。その男の家にいくと妻と息子、娘がいる。旅の僧は、我々はキリスト教徒だ、と自己紹介し て、母子の警戒心が解ける。 右から十字を切っているので、この母子は正教徒であることがわかる。3人は、「ちょっと座っていいかな」とかいいながら、結局し ばらくその家で暮らすこと になる。夫に対岸の場所を確認しにいくようお願いする三人。男は恐らく猟師なのだと思われるが、対岸に渡ったことは無い様子であ る。対岸の渡り口がわかる まで、3人は、家の息子に笛を吹教えたりして過ごす。翌朝夜明け前、まだ薄暗い中に、対岸に火の狼煙が見えた。ずっと監視してい たと思われる漁師は3人に 知らせに来て、奥さんまで見に来る。

 3人はプリスカへたどり着き、王城前で、大勢の一般人含めた教会人などに迎えられる。 第一部と比 べると、白髪となり年老いたボリスが、「あなたがたを知っている」、と名前を挙げる。3人はクレメント、ナウム、エンゲラーリイ だった。3人はキリル文字 の表をボリスに贈る。こうしてブルガリアにスラブ語を表す文字が伝わることとなった。下記は石造の城壁で囲まれたプリスカ王城。

 地下で首をつらされていたギリシア人書記を、地下におりて一人思い出す老齢のボリス。エトックのことも思い出す。斬首も思い出 す。リア王のような風貌になってきてしまっているボリス。

 地下にある聖堂で若い女性が祈っている。娘のアンナだった。彼女は熱心なキリスト教信者のようである。

 別の日、王宮で聖歌を聴く王と家臣。ボリスが、歌っている人に、君はブルガリア人か?と聞いているので、歌はギリシア語で歌わ れていたのかも知れない。そしてクレメントら3人にブルガリア語での説教を頼む。その後3人でブルガリア語で聖歌を歌う。聴き入 るボリス。

 ある日の宮廷。長男のウラジミールと次男のガブエリエールがなにやら難題をボリスにもちかけている。父がウラジミールを殴る。 出て行け!と言う。下記右がガブリエール、左がヴラジミール。どうやら祖先の信仰への復活を巡った話のようである。

  地下の聖堂でまた、エテックと斬首にした臣下の幻影を見る王(ひょっとしてこれが原因で、早めに引退して僧院に入ったのかも知れ ない)。そのまま仰向けに 倒れてしまう。兄弟臣下娘がやってきて彼を連れ去る(が、それはまるで娘が礼拝するから場所をどけるように見えなくも無かっ た)。モラヴィアから来た3人 のうち、最も年長のエンゲラーリが病で寝込んでしまう。クレメントに支えられ、窓から祭りを見るエンゲラーリ。そこにボリスが やって来る。開校前の学校を 見学したいという。下記はその学校。教壇の奥にキリル文字のアルファベットが書かれている。その後開校式を迎える。生徒は子供 ばっかりであったが。。。そ してエンゲラーリは死去する。開校式と葬式が同時に行われるのだった。

 クレメントはプリスカを離れ、オホリドに向かうことになる。下記は、残るナウムとの別れの場面で背景に登場したプリスカ王城の 城壁。



 伝記作家に戻る。天地創造6398年、キリスト生誕889年について語り始める。

  ボリスはウラジミールに後を託して僧院に入った。しかし、ヴラジーミルは父親の政策には従わず、東フランク王国のアウグスグルグ から使者を招く。下記はそ の一行、ジギスムント、キオストら(彼らは自分の事をアルマーニと自己紹介していた。南ドイツのアレマンニ族のことだと思われ る。イタリアのブランド、ア ルマーニって、ひょっとしてアレマン族が語源?)

 ドイツ人一行は、ヴラジミールには兜や盾、妻のコサラには琥珀のようなもの(海で取れるといっていたような気がする)を贈る。 王妃のコサラに、詩をつくるんですか?、と質問され、Yesと答えていた。コサラは、恐らくドイツの吟遊詩人に興味があったのだ ろう。

 場面は変わって、オホリド湖沿いを行く2頭の馬。下記背景に有名なスヴェタ・ヨワン・ボゴスロフ・カネオ教会が見えている(教会写真はこちら)。次いでオホリドの 市場が出てくる。結構嬉しい場面。
 さて、オホリドを訪れた2人は、ボリスとその従者だった。王城へ行き、門番に、クレメントのいる場所を尋ねていた。門番の兵士 は前王の顔は知らないようである。

 ここには学校があり、窓から学習の様子を眺める二人。アルファベットを子供たちが学んいた。窓から覗き込んでいたボリスと従者 は、邪魔になると、教師に追い払われてしまう。続いて彼らは写本室を覗く。写本を写しているのは青年達である。

 クレメントがボリスに気づき、ボリスを学生たちに紹介する。

 農村のそばの街道を早馬が駆け抜けてゆく。当時のブルガリアの農村の再現映像が見れて嬉しい限り。

 どこへ向かうのかと思っていたら、オホリドだった。息せき切ってボリスに面会に来る。それは三男シメオンだった。

  ボリスは、クレメントに、彼は三男のシメオンで、8年間コンスタンティノープルで学んでいた、と紹介する。シメオンはボリスを湖 に面したバルコニーに誘 い、ヴラディミールがネムスキーグラッド(「ドイツの町」の意味)から人を招いている。ヴラディミールに賛同しているのは、ガブ リール、ホノ、イスカッ チ、ソンドケ、チェスラフ、イスタシス、などと名前を挙げる。

  その頃プリスカでは、相変わらず娘のアナが地下礼拝堂で熱心に崇拝している。そこに馬で入ってくるウラディミールと妻、家臣た ち。礼拝に出席している人を 鞭で追い散らす家臣たち。更に王城内に作られたビザンツ式教会を取り壊すヴラディミール一派。そこにボリスが馬で駆けつけてく る。解体作業をやめさせよう とするボリス。しかし、そこにヴラディミールの臣下がやって来て「誰が作業を止めているのだ」と叫ぶ。ボリスは、これは私の教会 だ!と言い募るが、臣下は ボリスだとわかると逃げてしまい、解体作業はそのまま進められる。更にヴラディミールがアラブの使者と謁見している場面が登場す る。下記は王座のヴラジ ミール。

 アラブの使者は、我々は支援するつもりでい続ける、といって退出する。

 アラブの使者が退出した直後、ボリスがやって来る。息子に跪いてまで懇願するボリス。しかしヴラジミールは、臣下のクルツを呼 び、王を連れ出させようとする。王な粘って訴え続け、ついには卒倒してしまう。そしてエトックの幻影に話しかけられるのだった。

  僧や娘、側近たちが見守るところで気づくボリス。ボリスは、ガブリールに棺から剣を取出すようにいい、その剣を持ちながら何か命 ずるが、ガブリエールは、 ヴラディミールは兄だ、といって拒否される。するとボリスは、シメオンの肩に手を置き、彼に王位を渡す、というのだった。

 シメオンとボ リスはクルトを訪ね、シメオンが剣を向け、ボリスがクルトの剣を奪う。そしてクルトに剣をつきつけながら、王の寝室内に入る。気 づいたヴラディミールは、 剣をもち、「かかって来い」という。外でも剣の音がしている。次々と駆けつけてくるボリスの臣下。包囲され、ついに剣を捨てるヴ ラディミール。クルトはヴ ラディミールの剣を拾い、タングラに祈って自害する。

 ヴラディミールは地下室に連行される。ボリスは焼いた剣先をヴラディミールの目の 前に差し出し、十字架に誓いを迫るが、ヴラディミールは十字架につばを吐きかけ、何もいうことはない、と言う。娘のアナが泣き去 る。ついにヴラディミール を縛り付け、火で焼いた鉄器で目をつぶす。そこに妻のコサラが階段をおりてきて、階段の途中で悲鳴を上げる。連れ去られるヴラ ディミール。コサラは髪を切 られ、修道院に送られる。

 ラスト。ベログラチック(ブルガリ ア西北部の奇岩地帯)にいる王。そこに一人の修道士が やってくる(名前が確認できなかったが、息子といっていた気がするので、次男のガブリールかも知れない)。やがて修道士は去り、 一人奇岩を眺めるボリス。

 最後は伝記作家が「アーメン」と言い、映画は終わる。

〜終わり〜
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