シリア製古代ローマ歴史ドラマ「ゼノビア」最終回

  1996年シリア製作、古代ローマドラマ「ゼノビア」最終回(第一話から第七話はこちら第八話から第十四話はこちら第十五話から第二十一話はこちら

二十二話

 病床のナルジェスは、「あなたが愛しているのはタイマよ」とマルコに告げる。

  エラベルは酒浸りとなってしまう。家内奴隷を前に、「他の男の妻を助ける殊勝な男の話を聞いたことがあるか?」など、いくらつく してもマルコの事しか頭に 無いタイマに、ほとほと疲れた様子。マルコに、これ以上ローマ兵を暗殺して回るのはやめるよう、説得しに来たモッキーモを、マル コは、「司令官カッシアス で最後にするから」と逆に説得し、モッキーモも巻き込んで数名でカッシウスの暗殺を図る。しかし失敗し、負傷したモッキーモを抱 えたマルコは、エラベルの 家に逃走してくる。エラベルは、モッキーモを寝椅子に寝かせ、宴会に酔って寝込んだ酔客を装わせて、マルコと一芝居打ち、踏み込 んできたカッシウスとロー マ兵を欺くのだった。下はエラベル家の広間。

  タイマは振り向いてくれないし、マルコも抵抗闘争をやめてくれないし、病床のマルコの妻を追い出すこともできないエラベルは、い ずれローマ側に全てがバレ るだろうと諦めたようだ。エラベルはアブソスに活動資金を提供する。恐らく、この時点でもう、全てがどうでもよくなっていたのだ ろうと思われる。ナジュレ スは身ごもっていたが、子供が誕生するまでもなく、死去してしまう。

 地下組織が蜂起。カシアスはマルコが、マクシミリアンはアブソスが し止め、女王の彫像を王宮に飾る。一時的に反乱は成功する。アブソスはゼノビア血縁のアンティオコスを国王に立てる。ローマで報 告を受けたアウレリアヌス は激怒。パルミラを徹底的に破壊することを神に誓い、自ら進軍することを決定する。



  毎日酒浸りが続くエラベル。遅かれ早かれローマに滅ぼされることを確信しているのだろう。例え滅ぼされなくても、タイマの心はマ ルコにある。しかし流石の タイマも自室にこもったまま酒浸りのエラベルを心配するのだった。ある日部屋から出てきたエラベルに、タイマは「悩みがあるなら なんでも言って」と問い、 遂にエラベルは、「もう拷問を終わりにしたい。僕を夫として受け入れてくれる?」と告白するのだった。考えてみればエラベルは、 タイマに好きだと言ったこ とは無い筈で、男に親切にされることを当然のように受け止めてきたタイマは気づいていなかったようだ。動揺したタイマは、 「ちょっと答えを待って」と言う が、エラベルは、「それは拒絶ということだね」と虚ろに答える。「エラベル、どうしちゃったの?あなたは強い人だったでしょ」 「そう。僕は君を幸せにする ために強い男であり続けた。でももう。。。」エラベルは肩を落とし、「ダイアモンドをかき混ぜにゆく」と謎の文句を残して家を出 てゆくのだった。入れ違い にマルコが入ってきて、タイマへの愛を告白するのだが、タイマは、「アタシどうしちゃったの?これは何?気づかないうちに愛して いたんだわ」と、遂にエラ ベルを愛していることに気づき、「拝火寺院にダイアモンドなんて無いわ!彼は死ぬつもりだわ」とエラベルを走って追うのだった。

  マルコは随分な心変わりのように見えるが、22話冒頭でナルジェスに、「あなたが本当に愛しているのはタイマなのよ」と指摘され ていたように、元々タイマ が好きだった可能性がある。実は蜂起の直前に、タイマとマルコが大喧嘩し、溜まっていた胸の内を明かす場面があった。タイマは、 「こんなに愛してきたの に、あなたは満足しない人なのね!」と詰り、マルコは、「君は男どもを煽って競わせるのが好きなだけなんだ」と詰る。マルコは、 そういうタイマの一面を 嫌っていただけで、それ以外の部分では惹かれていた、と匂わせる場面ではあった。

 もう一つ、前回からの伏線がある。エラベルが自殺を決 意して拝火寺院に向かったのにも伏線があり、拝火寺院の祭祀が、ローマ皇帝崇拝に同意して以来、拝火寺院に入るローマ人、ローマ 側の人間が拝火寺院に潜む 暗殺者に吹き矢で暗殺されるという事件が発生していたのだった。エラベルはその事を知っていたのだろう。タイマが寺院に着き、エ ラベルを見つけた時には、 既に吹き矢が刺さっていた。毒矢だと思われる。吹き矢が刺さったエラベルを見てもタイマは驚いていなかったので、恐らく拝火寺院 での暗殺の噂をタイマも 知っていたのだろう。「愛していたの!」とエラベルに駆け寄るタイマも吹き矢を浴び、瀕死のタイマは、体を引きずってエラベルの 遺体までたどり着き、その まま息を引き取るのだった。

 その夜、ローマ軍がパルミラ城内に突入。モッキーモ、アブソス、マルコ、老人女子供含めて虐殺される。こうしてパルミラは滅び た。

 ラスト、「ローマの力はその文明を永遠にはしない。パルミラの文明は力そのものである」とゼノビアの声がこだまし、「文明と力 と文明の力の間には大きな違いがある」とのテロップが映り、このドラマのテーマが集約されているセリフとともに終わるのだった。

古代ローマ歴史一覧表はこちら

BACK