2020/Oct/31 created
2020/Nov/07 updated

 アケメネス朝歴史映画『女王トミュリス』紹介


2019年カザフスタン制作。155分。映 画『ダイダロス』の監督エイケン・サタイヴ作品(前大統領の娘アリヤ・ナザルバエワ脚本)。英語版と日本語版を 視聴。記事は基本的に英語版に基づいて記載しています。日本語版は英語版より約28分短いため、カットされた部分の詳細を末 尾にまとめてあります。

本作は、紀元前565年頃から530年までの中央アジアを描いた伝説的な歴史映画です。一応前4世紀のヘロドトスの著作に登 場する有名なエピソードを元に、それを中世のイスラーム時代の知識人ファー ラービー(870年頃‐950年)が941年に写本を作成しながら物語る、という形式で描かれています。史上西 アジアを最 初に統一した大帝国 であるアケメネス朝の初代皇帝キュロス2世(皇帝としては初代だが、アケメネス朝が大帝国となる前の地方王朝の王統では二世 となるので、通常キュロス二世と呼ばれる)が死没した戦いの相手の、中央アジア遊牧民マッサゲタエ族の女王トミュリスの半生 を描いた作品で す。トミュリスの生涯は、ちょうどキュロスがアケメネス帝国を確立し、拡張してゆく時期に相当しています。キュロスはトミュ リスの父親と同世代くらいという設定です。トミュリスとマッサゲタエ族のエピソードは、ヘロドトス『歴史』岩波文庫(上) 第一巻204節−216節にあります。

トミュリスは、2003年に「あまり知られていない女性君主たち」 という記事を書いた時、最初に取り上げた女性君主の一人です。結構思い入れがあった人物です。2016年頃にimdbで制作 を知りましたが、その時は2017年完成予定となっていました。しかし、2017年になっても完成せず、imdbに登録され ていても、何年も遅延し続けた挙句途中でぽしゃってしまう作品があまりにも多いこと、当時、インドや中国の歴史映画があまり にコスプレファンタジーとなる一方なのに飽き飽きしていて、きっとCGてんこ盛りのインドの歴史もどき神話ファンタジーなん だろうと、興味がなくなり、その後ウオッチしていなかったのですが、9月に入って突然日本上映を知ったというものです。予告 編を見て、予想と異なりリアル史劇な出来具合に興味を持ち視聴したもの。もともと期待してなかったこともあり、リアルな映像 には感激はひとしおです。

この記事では、ストーリーではなく、登場する風俗中心に作品紹介をします。


【1】舞台の地理と民族

舞台となる地域の当時の地理は以下の通りです。登場する民族は、赤字で記載しています。以下のアケメネス朝の領域地図画像はこ ちらのサイトから拝借し、私の方で赤字で民族名を追加したものです。




主人公のトミュリスは、スキタイ系の遊牧民族です。当時、中央アジア北方は、イラン系遊牧民族が支配的勢力で、ギリシア人や ペルシア人には「サカ人」と呼ばれました(スキタイはスク≒サカの複数形で、サカ人と同じ意味。サカはペルシア人側の呼 称)。よって、この時代の中央アジア北方のイラン系民族は、南方のギリシア人やペルシア人からは、「サカ人」と総称されてい ました。映画でも、トミュリス達は、自分たちをサカ人と自称しています。そのイラン系民族の中の、個別の部族集団に、マッサ ゲタイとかダハエとかサルマートと呼ばれる部族集団に分かれてい ました。本作の主人公トミュリスは、このうちの「マッ サゲタイ族」の女王です。実態は、王というよりも酋長という感じで、字幕も酋長となっていましたが、音声では 「ハーン(汗)」となっていました。

他に本作に登場する中央アジアの遊牧部族には、サ ウロマタイ人ダ ハエ人が登場しています。ダハエ人、サウロマタイ人(地図上赤字でサルマートと書いてあるところ)、マッサゲタ イ人が一緒に登場する地図を見つけることができず、今回上の地図を作製したというものです(もしかしたらこれらの民族が同時 代に存在したことはないのかも知れませんが、映画では同時に登場しています)。

マッサゲタイ族・・・・主人公の部族
ダハエ族・・・・・・主人公の夫の部族
サウロマタイ族・・・・・主人公が亡命した部族
ホラズム人(コラズミア人)・・・・主人公の父親と親族を殺害してマッサゲタイ族を吸収した部族(農耕都市を支配下 としている、一大勢力)

現在の地理でいうと、ダハエとあるところが、ウズベキスタン共和国西部のアラル海南岸地域(ウズベキスタン内部のカラカルパ クスタン共和国のあたり)、コラズミア人は、トゥルクメニスタン共和国の西部、サウロマタイはウクライナ東部からカザフスタ ン共和国の西部、マッサゲタイはウズベキスタンからカザフスタン南部あたりです(カスピ海東部という説もあり)。現在のウズ ベキスタンの殆どは砂漠であり、遊牧民が暮らすステップ地帯ではないが、もしかしたら、紀元前の当時はこのあたりもまだス テップ地帯だったのかも知れません。

他にバクトリア人、ペルシア人、バビロン人が登場してます。


【2】登場人物


左から、トミュリスの夫アルグン。完全に現在カザフ族(モンゴル系)の顔立ち。その右はトミュリスの親友、サウロマタイ族の 酋長の娘で女戦士サルダナ(この人も東アジアならどこでもいそうな顔立ち)。中央とその右がトミュリス。西アジアから欧州系 の顔立ち)。右端がホラズム族に捕まっていて、トミュリスについてゆくことにした少年ティラスが成長した後の姿。トミュリス は、発音ではタフマリス、と聞こえました。



その他遊牧民族側の主要人物としては、トミュリスの父スパルガピゼス(カーン(汗)と呼ばれている)、ホラズム族と内応して スパルガビゼス一族を謀殺したマッサゲタイ族の 中の一部族の酋長 ガヴァース(Kavas)(もしかしたら、後世のイラン神話のカワードなのでは?)が登場していましたが、あまり登場場面は 多くはないので省略します。他にクルトゥン(Kurtun)、ティグラハウダ(Tidraxauda)なども登場していまし たが、これも省略。

下左は、キュロスに侵略されて亡命してきたバクトリア人の商人。バクトリアは現アフガニスタン北部からウズベキスタン南部あ たりのアムダリア中流地方。この商人たちがマッサゲタイ族に鉄器をもたらし、鉄器が後のキュロスとの戦争で活躍します。右は キュロスの使者のバビロニア人(確か名前はグバール。記憶が曖昧)。バクトリア人とバビロニア人は、サカ諸族とは まったく異なった風俗に描かれています。正直、紀元前6世紀の装束というよりも、この映画の語り手であるファーラービーの 10世紀の時代情勢を反映した風俗となっている気もします。つまり、とんがり帽以外のサカ族の装束は、10世紀に北方からイ スラーム帝国に浸 透を始めたトルコ人の装束であり、アケメネス朝領土の南方の人々は、アラブ風の装束という感じです(個人的な印象です)。ア ケメネス朝の人物はみな西アジア系の顔立ち。



下がアケメネス帝国を築いた大帝キュロス二世(在550‐530年)。このキュロ スの衣装は結構凝っていて、左端は都バビロンでの玉座での装束で、右三つはマッサゲタイ討伐に向かっての行軍時の装 束です。行軍中の衣装など、視聴者はどうでもいいと思っていそうなのですが、何度も着替えています。芸が細かい(と いうか、いろいろ衣装を用意しておいたのだけど、脚本の都合で都の場面が削られ使う場面がなくなってしまったので、 行軍中の場面に無理やり着せた、という感じがしなくもありません)。



キュロスのような有名人を映画に登場させる場合、なかなか配役が難しいと思うのですが、これは結構イメージの範囲内でした。 一代で大企業を作り上げた成り上がりの人物の風格がよく出ています(現代でいえば、学歴がないにもかからず一代で業界5−6 位の企業を作り上げた立志伝中の人物、という感じでしょうか)。リドリー・スコットの『キングダム・オブ・ヘヴン』でサラ ディンを演じた役者さんで、2012年のサウジアラビアのドラマで、第二代正統カリフのウマルの生涯を描いた連続大河ドラマ『ウマル』で 初代カリフのアブーバクルを演じたシリアの俳優さん(こ の人)です)。私の記憶では、2002年のシリア・モロッコ合作連続大河ドラマで、アンダルス・ウマイヤ朝初代 カリフで、「クライシュ族の鷹」との異名をとったアブドゥル・ラフマーン一世の生涯を描いたドラマ『クライジュの鷹』に 登場した、ウマイヤ朝時代のアンダルスの梟雄スマイルを演じた方だと思っていたのですが、imdbには記載されてないので、 別の人かも知れません。キュロスは策謀でトミュリスの夫と息子をだまし討ちにするのですが、最後の合戦では、遊牧民連合軍の 中に内通者を作ろうとしたり、合戦中での卑怯な作戦を立てる、というようなことはまったくなく、正攻法でがっぷり組んだ大合 戦で戦没します。悪くないキュロス像でした。


【3】家屋

1.サウロマタイ族のテント。左が酋長の天幕。右が娘のサルダナの天幕。右はテュルク/モンゴル系のゲル、左はアラブ系のテ ントに似ています。テントの中央で火を焚いているのはマッサゲタイと同じ形式。使い古されたみすぼらしい感じがリアルです。




2.マッサゲタイの主邑

マッサゲタイ族は、遊牧民ですが、居住形態はテントではなく、定住しています。農耕している描写はないので、牧畜と狩猟と農 耕民への略奪で生計を立てているものと思われます。

以下がマッサゲタイ族の主邑の映像。コイ・クリルガン・カラ遺跡(こ ちら)がモデルだと思われます(ただし、コイ・クリルガン・カラ遺跡の想定されている再現では、もっと巨大な要 塞)。真ん中の煙が出ているところが王(トミュリスの父)の宮殿兼神殿で、神殿で炊く火の祭壇の煙が天井の穴から立ち上って いることがわかります。



(1)空撮と堀

この主邑は堀に囲まれていて、正面入口の前に跳ね上げ式の桟橋が設置されています。左画像は、回転式の巻車を回して綱を下ろ し、桟橋を下ろしているところ。




(2)桟橋と堀(左)、および主邑の.門(右)



主邑の門の拡大画像。城壁の高さは3m程度でしょうか。城門には扉はありません。



集落は恐らく円形で、城壁を入ると、内側に、やはり円形の宮殿があります。下右はその宮殿の入り口。入口の上に、中央の神殿 から立ち上る火の祭壇の煙が沸き上がっているところが見えます。下左は、確か内側から主邑の城門を見たところ。




(3)宮殿の屋根

上の右画像の宮殿の門をくぐると、下のような、宮殿に入ってゆくことになります。このあたりは、語り手ファーラービーの10 世紀のオアシス国家の主邑というよりも、紀元前6世紀のこのあたりの地域の宮殿の雰囲気が出ているような印象を受けます。



(4)宮殿内部

宮殿中央に祭壇があり、そこで火がたかれ、司祭がテングリ(古代と中世トルコ語で「神」の意味)を崇めています。下左画像の 上部に、穴の開いた天井が見えています。ここから煙が情報に吹き上がり、前掲の主邑遠景にあるように、集落の外からでも立ち 上がる煙が見られることになるわけです。映画では「テングリ」(トルコ系の神)といっていたので、10世紀の風俗の反映か も、と思えるわけですが、視覚的には、古代のゾロアスター教の祖型の宗教形態であるように見えました。バクトリア・マルギア ナ文化複合体の遺跡で発掘されている祭壇に似ている気がします。



下左は祭壇後部にあるマッサゲタイの王の玉座。玉座の手前に祭壇の端っこが見えてます。下右は、トミュリスの父スパルガピゼ スの 墓。単純な、高さ数メートル程度の墳陵です。






【4】サウロマタイ族が襲撃していた農耕民の町


こういう映像が見たかった。感激。右端は町の中心部の広場。中央は、その広場に面している建物(右の画像の左端と、中央画像 の右端が繋がっています)、左画像は、中央画像の中央左の建物を正面から見たところ。これが富裕な家。これも10世紀という より、前6世紀という感じがします。





【5】装束

(1)王族の正装

トミュリスとアルグンの結婚式。カザフスタンの都(旧名アルマトゥイ)近郊イシック遺跡から発見された黄金人間の装束(こ ちら)と似ています。



(2)装甲騎兵

中 央から左の画像は、マッサゲタイ&サウロマタイ連合軍VSホラズム戦争で登場したホラズム側の兵士の武装。どうみて も中国風の鎧。これはもしかしたら、本作の監督の前作、18世紀初頭のジュンガルによるカザフの侵略時代を描いた映 画『ダイダロス』で利用したジュンガル兵 の衣装の流用では???しかしこれも、(一応計画されているらしい、本作の第二部第三部で、(以下私の妄想)マッサゲタイ族が東遷し、春秋時代の中国の辺 境に出没するという展開を踏まえての伏線かも、と妄想して喜んでみてます)。右下は、ホラズム族の戦車。なんの装飾 もない骨格だけの素朴な戦車。リアルな感じがします。




【6】バビロン

以下前20世紀頃以来の南メソポタミアの首都バビロン。バビロンのセッ トは映画『ダイダロス』に登場したジュンガルの要塞都市のセットを、外側をベニヤかなにかで覆った流用では ないか、という気がします。でも今までバビロンが登場した映画の中で一番リアルさを感じた再現映像でした (オリバー・ストーン監督の映画『アレクサンダー』のバビロンは盛り過ぎという感じでしたし、サイレント映 画最大の大作『イントレランス』に登場したバビロンは、かなりファンタジーでした。この『イントレランス』 にはキュロス二世が登場しています(こ ちら))。

(1)城門



(2)市街地

町中物貰いがたむろしていて、いかにも近代以前の大都市という風情です。右下は城 門を内側から見たところ。




とまあ感激ひとしおなのですが、ちょうど今週Gyaoで映画『ダイダロス』がまた放映していたので(2年に一度くらいで放映して いる感じ)見てみたところ、ダイダロスのセットを改造したものではないのだろうか?という疑惑も感じますが、良い再 現映像でした。

下左はバビロン宮殿の城門。下右はバビロン宮殿から見た町の風名。遠目にジッグラトが見えています。




(3)バビロン宮殿内部

下右は、キュロスの玉座。手前にバビロンを訪問したトミュリスの夫アルグンと息子のスパルガピゼスが、中央奥左手に キュ ロスがいます(下左は、比較のために出したサウロマタイ族の王宮テント。ただの天幕です。手前に火の祭壇が見えてい ます)。宮殿の外観映像はなし。



宮殿でのスパルガピゼス達の歓迎会。左画像の左手に踊り子たちが、右手にテーブル があ り、客人と接待側が着席して踊りを見ながら食事してます。右画像は楽師たち。



右三人の左がマッサゲタイの元に来た使節。中央がアルグン、右が息子のスパルガ ゼス。左画像は、広間の豚の丸焼きとその調理人。



テーブルの上の青銅器と思われるワインの器。



下左は、踊りが終わって引き下がる踊り子たち。お辞儀をしながら後ずさり。右は、マッサゲタイの主邑の城門の前で、やは り後ずさりしながら退去するアケメネス朝の使節。いかにも”狡猾なペルシア人”という雰囲気がめちゃくちゃよく出ている 場面でした。




キュロス大王からマッサゲタイ王アルグンに送られた書簡。マッサゲタイ側は文字がないので読めないわけですが・・・・




【7】その他

(1)マッサゲタイの墳墓

 キュロスから送り返されてきたアルグンとスパルガピゼスと遺体の埋葬。イシック遺跡の黄金人間の遺物がモデルと思 われ ます。アルグンの装束は結婚式の時のものと同じ。



(2)鍛冶屋

バクトリア人から伝達された鉄器の作り方を学習したマッサゲタイ(や今やサウロマタイ、ホラズムと連合しているの で、これらの部族かも知れないが)の鍛冶屋が鉄器を製造している様子。左端は、制作された馬の鎧を見せる鍛冶屋。



(3)軍装

侵攻してくるアケメネス朝軍との決戦に向かうマッサゲタイ・ダハエ・サウロマタイ・ホラズム連合軍。馬が全身装甲し ています。この時代にはまだこのような全身甲冑はなかった筈なので、これは恐らく後世の風俗を流用したのだと思われ ます。ヘロドトス(1‐214)によるとマッサゲタイには青銅製の胸当てがあったそうです。

『ダイダロス』も悪い映画ではないのですが、いかんせん、ゲリラ義賊が主役なので、合戦場面などはイマイチでした。 本作でのアケメネス朝のような巨大帝国の侵攻のような巨大な合戦は描き切れないのではないか、と当初懸念されたので すが、まったくの杞憂に終わりました。



前掲の、ホラズム戦で中国風の甲冑が登場していたのと同じくらいの違和感のあった のが、このキュロス側の親衛隊と将軍の軍装。アッバース朝の兵士の軍装に非常に似ています。



右の画像はこ ちらのサイトから拝借、中央の二つはこ ちらのサイトから拝借したアッバース朝の兵士。左はこちら のサ イトから拝借したウマイヤ朝の兵士。これは物語の語り手である10世紀のファーラービーの想像に 基づいた映像化、という設定のような気がします。



軍営でのトミュリスの軍装。左はアケメネス朝との決戦の様子を丘の上から見ているところ。





【8】最後に

Wikioediaの映画ト ミュリスの記事のペルシ ア語版によると、本作は第二部、第三部の計画もあるそうです。実現すると嬉し いのですが、その場合、第 二部以降は、後半生となるだけですが、マッサゲタイ=月氏説もあるとのことですから、トミュリスが中央アジアに覇を 唱え、その知名度が東トルキスタンにも伝わり、それが中国の伝説である西王母伝説の成立の一因となった、というよう な展開とかあると いな〜と妄想したりしています。

本作は、トミュリス側がトルコ系の言語、アケメネス側がペルシア系の言語を話していたようです。マッサゲタイ王やサ ウロマタイの酋長たちはハーンと呼ばれ、キュロスは、シャー・ハン・シャー 、パディシャー、カーン・クルシュ、な どと呼ばれていました。

筋は非常に簡単で、複雑な設定や伏線は一切ない、直球勝負の王道の歴史映画です。本作を視聴した後、Gyaoで『ダ イダロス』が放映されていたので、再度視聴しましたが、ダイダロスと比べると本作の完成度は段違いに高いものとなっ ています。戦争場面も、ダイダロスはそれほどの映像ではありませんでしたが、本作は大迫力です。最近の歴史映画は CGを使い過ぎて盛り過ぎの映像てんこ盛りの作品が多いのですが、本作ではCG利用は抑制されていて、古きよき歴史 映画の映像に近いものとなっています。現在ではドローンを利用した空撮が低コストで簡単にできますので、空撮場面で のCG利用も抑制されていて、リアルな映像となっています。これまで400本以上の歴史映画を見ていますが、本作は 結構上位の方に来る気がします。なんというか、あらゆる珍味を味わい尽くして、素朴なサンマの塩焼きとお茶漬けが一 番だという境地にたどり着くような感じと同じような感覚があります。CGがまったくないと、迫力不足となりますし、 資金不足で再 現セットが建設できないと、リアルさが欠けてしまいますので、CGは適度な利用に留めたスタイルの、実写映像主体 の歴史映画が、もっともリアルな歴史映画でありうるのではないかと思うわけです。この点でも、本作は王道の歴史映画 だと考える次第です。


追記 【9】日本語版でカットされた部分

英語版DVDは2時間35分12秒、日本語版dvdは2時間7分11秒です。合計28分1秒カットされています。と もに古代トルコ語単語の混じったカザフ語、(恐らく古代ペルシア単語の混ざった)ペルシア語です。Amazonの商 品解説にあるロシア語は登場していません。カットされた部分が気になるため、両方平行表示して確認してみました(秒 数は視聴しながらカウントしただけのだいたいの値です)。

無印は、セリフがなくカットしても問題ない部分(映像が少し冗長な程度、計402秒程度)
●は、他の場面の続きの一部をカットした箇所や、セリフの無い景観映像、セリフがあるがカットしても話の印象は変わ らないと思われる場面計、296秒
〇は、独自の内容を持つ場面、計262秒
◎は、ここだけの登場人物や独立した場面186秒
これ以外に、普通に見ているだけでは補足しにくい0.5秒以下程度の省略が5分半程(計算上数百か所になる)あると 思われる

0)冒頭オープニングのロゴ12秒カット
1)冒頭5分間で合計約4秒(細かいカットの集積で、どこかは特定しずらい)
2)6分20秒のあたり:5秒程度(呪術師の祈祷の場面)
3)7分45秒のあたり:5秒程度(トミュリスの父が集落に入りところ。集落の上空からの空撮等)
4)11分13秒のあたり:数秒(父親によるトミュリスの剣術訓練の場面)
5)12分15秒のあたり:1秒
6)13分00秒のあたり:2秒(トミュリスの父と親族との会話の場面)
●7)14分30秒のあたり:14秒(あばら家の中の場面。ここは多少まとまった会話のある箇所)
8)15分45秒のあたり:1秒
9)17分30秒のあたり:3秒(このあたりで計約40秒)

10)19分45秒のあたり:5秒(父を殺され、逃亡に出た一族が砂漠等を逃亡している場面)
11)20分45秒のあたり:3秒
●12)20分52秒のあたり:49秒(逃亡中の一族が休憩している時の会話の場面)
13)22分15秒のあたり:13秒(逃亡一族が森に入るところ)
14)24分10秒のあたり:2秒
15)24分31秒のあたり:20秒
●16)25-26分のあたり:約60秒(森の中の狩りと住居中のでの会話の逃亡中の親族の会話の場面、ここまでで 合計カット計約4分)

〇17)28分20‐29分47秒:約87秒(滝の場面、トミュリスの回想、王族の指輪をする場面)
18)30分45秒のあたり:2秒
19)31分15秒のあたり:8秒(森の中の隠れ家が襲撃されたのをトミュリスが見つけるとこと)
20)33分25秒のあたり:5秒(傷を負ったトミュリスが盛りを脱出する場面)
●21)34分10秒のあたり:21秒(サルダナに助けてもらい、サウロマタイ族の集落に運ばれることになるとこ ろ)
22)34分50秒のあたり:4秒(サルダナの集落に運ばれるところ)
●23)37分16秒から44秒のあたり:治療を受けるところ。うなされるトミュリスの回想(妄想)の順番が変更に なっているようにも見え、カット箇所の特定は難しいが、30秒程度カットされていると思われる。ここまでで合計6分 半カット。

24)38分22‐30秒:8秒
25)40分30秒のあたり:1秒(サルダルの父とトミュリスの会話)
26)41分10秒のあたり:7秒(サルダナの部族の集落の風景)
●27)43分25−48秒:23秒(サルダナとトミュリスが草原にいるところ)
◎28)44分18‐46分05秒:87秒(サルダナの部族の女性戦士たちとのレスリングの場面と、小さな町をト ミュリスとサルダナ達が夜間襲撃する場面)
◎29)46分5‐48分00秒:55秒(サルダナとトミュリスが血の誓いをする場面、女性戦士たちが川で水浴びす る場面、ホラズムの町を襲撃する冒頭の場面) ここまでで計約11分カット

○30)50分10−42秒:約32秒(拾ってきたティラスを前にしたサルダナとトミュリスの会話)
31)52分10秒のあたり:3秒(カバスとクルトンが集落に来る場面)
32)52分40秒のあたり:3秒(アルグンがレスリングをする場面)
33)54分20秒のあたり:6秒(クルトンとサウロマタイの幹部たちの会合)
34)54分55秒のあたり:4秒(同上)
35)55分20秒のあたり:3秒
・1時間2分50秒から、父を殺害したクルトンたちへの復讐戦
●36)1時間05分41−45秒:4秒(マッサゲタイの集落の跳ね橋が下ろされる場面)
37)1時間6分8‐26秒::18秒(トミュリスがマッサゲタイの集落へ入城する場面)
38)1時間6分58秒‐7分4秒のあたり:6秒(マッサゲタイの集落遠景)
英語版1時間07分45秒=日本語版55分27秒(ここまで計12分18秒カット)

39)時間18分45−53秒:8秒(マッサゲタイの王座の間に入る前の場面)
●40)1時間16分22‐40秒:18秒(夜、サルダナとの会話)
41)1時間19分30秒のあたり:数秒(ここまでで計約13分カット)

●42)1時間21分40秒のあたり:4秒(集落全体映像)
43)1時間22分10秒のあたり:数秒(結婚式)
44)1時間22分40秒のあたり:9秒(結婚式の出席者の雰囲気)
・英語版1時間25分=日本語版1時間11分(ファーラービーの場面)
45)1時間25分40秒のあたり:約7秒(玉座に座るアルグン)
●46)1時間26分20秒のあたり:10秒(父アルグンとレスリングをする息子のスパルガビセス)
・1時間27分44秒(日本語版1時間13分00秒)のあたり:ライオンの幻想場面
47)1時間28分40秒:2秒(ペルシア使節)
48)1時間29分30秒:14秒(ペルシア使節が贈り物を出すところ、ここまで計約15分カット)

49)1時間32分15秒のあたり:5秒
50)1時間35分40秒のあたり:7秒
51)1時間36分00秒のあたり:10秒
●52)1時間36分30‐37分27秒:57秒(アルグンがバビロンに向かう旅の様子と、その旅を監視するティラ ス一行の場面)
・英語版1時間38分35秒=日本語版1時間21分28秒

53)1時間39分50秒のあたり:21秒(バビロンの城門の場面)
〇54)1時間44分40秒あたりから45分02秒まで:22秒(宴会の踊りの場面、「飲みましょう」の直前22 秒)
●55)1時間46分10秒のあたり:8秒(トミュリスが寝室で、夫と息子の異変を感じ取る場面)
56)1時間48分25秒のあたり:9秒(夫と息子が惨殺される場面とトミュリスの場面が交互に登場しているが、日 本語版では交互の個所はカット)
57)1時間49分20秒のあたり:11秒(ティラス帰還の旅)
58)1時間50分20秒のあたり:7秒(帰還したティラスとの面会場面の一部)
59)1時間51分55秒のあたり:2秒(跳ね橋)
60)1時間52分10秒のあたり:11秒(ペルシア使節の入城場面)
◎61)1時間54分38秒‐1時間55分22秒:44秒(アルグンの両親が息子と孫の死を嘆く場面)
62)1時間57分29‐40秒:11秒(葬儀)
63)1時間59分00−16秒のあたり:16秒(ペルシア使節がキュロスからの弔電の手紙を差し出すところ。粘土 板の書簡は、最初に使者が来た時にアルグンに差し出す場面があるのでここで省略しても問題なし。ここまでで合計約 20分カット)

64)2時間01分のあたり:2秒(トミュリスとサルダナの会話)
65)2時間03分のあたり:2秒(ファーラービーの場面)
66)2時間04分のあたり:3秒(進軍するペルシア軍)
〇67)2時間4分35‐53秒のあたり:18秒(トミュリスの作戦会議と進軍するペルシア軍)
68)2時間05分00のあたり:28秒(作戦会議の一部と鍛冶屋の場面の一部)
69)2時間07分40秒のあたり:3秒
70)2時間08分04秒のあたり;7秒
71)2時間8分30秒のあたり:8秒(キュロス軍のシルダリア渡河場面(日本語版では1時間46分22秒のあた り)
〇72)2時間11分22秒‐12分25秒:85秒(夜襲とキュロスへの報告)
・英語版2時間12分25秒=日本語版1時間49分30秒=トミュリスがライオンを幻視する場面)
・2時間14分05 キュロスとの決戦開始(2時間15分00秒と28分30秒と40秒で装甲騎兵登場)
73)2時間14分30秒のあたり:7秒
74)2時間16分45秒のあたり:5秒
75)2時間17分10秒のあたり:2秒
76)2時間18分05秒のあたり:8秒
〇77)2時間19分40秒のあたり:18秒(せっかくの激戦場面、カットするのはもったいない)
78)2時間20分50秒のあたり:7秒
・終了 英語版2時間29分14秒、日本語版2時間04分42秒
79)エンドクレジット 英語版5分58秒が日本語版では早送りで2分29秒に短縮(英語版一画面12秒のスクロー ルが日本語版では5秒でスクロール)

今回平行視聴して初めて気づいたのですが、途中、英語版と日本語版が、完全に同期がとれていると思われる箇所が出て きたり、それが次第に0.5秒くらいずれ、そのうち再び同期が取れたりと、カットを挟まずに場面が不揃いになる箇所 があることを発見しました。映像の再生スピードにムラがあるような印象を受けました。見たところカットはなさそうな のですが、実は0.1秒づつ等、肉眼では補足しにくい長さでカットされたり、或いは若干再生速度を調節したりして、 一時的なズレが出ているのかも知れません。

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