2004/Mar created 
2019/Mar/03 last updated

パルティア・サーサーン朝文献史料


『Cambridge History Of Iran』(vol ,3-2)(Seleucid,Parthian,Sasanidの巻)の『Source of Parthian and Sasanian history』、G.Widengren(p1261−1283)の内容に情報を追記しています。
 
パルティア

(1)1次資料

1.ギリシャ語資料
    ・ アイリアノス 2世紀
    ・ アポロドトス
    ・ ポリビウス 前2世紀
    ・ パルティアの駅程 カラックスのイシドルス アウグストゥス代 (www.parthia.comのこちら に英訳があります

        松田男博士古希記念出版の研究者達の論文集である「東 西文化交流史」に、山本弘道氏の翻訳「イシドロスのパルティア道里記」訳注が掲載されています。日 本語参考訳はこちら

2.ラテン語資料
    ・ キケロ キリキア総督時代の手紙。カルラエ敗北後の東方属州について。
    ・ サルスト ルクルスのパルティア関連について

3.シリア語資料
    ・ 「パールの歌」とトマスの伝道(トマスの伝道については、パルティア訪問部分が「 新 約聖書外典 (講談社文芸文庫) 」荒井 献 (編集)所収)

 

バビロニア征服前の封建制とゴンド ファール王 国について。 
    ・ 「アルベラの年代記」 (英訳はカリフォルニア大学のサーサーン学サイトで公開されています(こちら)。
    ・ エデッサのアブガールの伝説(「アダイのドクトリン」所収)
 オスロエネとエデッサの状況。


4.ユダヤ
    ・ マカベース


5.バビロニア語資料
    ・ 楔形文字のタブレットなど。
    ・ バビロニア天文日誌(AD60年頃まで。日本では、春田晴郎、三津間康幸氏等が 研究している)。

6.中国語資料
    ・ 史 記 巻123大 宛列傳
    ・ 漢 書 巻九 十六上 西域傳第六十六上   

    ・ 後 漢書(三国志(魏略)に基づく)巻八 十八 西域傳 第七十八

(2)2次資料

1.ギリシャ・ラテン語資料
       
        まとまった記載があるのは、ポンペイウス・トログス、プルタルコス、タキトゥスである。

    ・ ポンペイウス・トログス(ユスティヌス) 「地中海世界史 (西洋古典叢書)」として京都大学出版会より邦訳あり

    ・ ストラボン
    ・ ディオドルス・シクルス
    ・ ディオ・カッシウス(パルティアが登場する部分をこちらに 訳出してみました
    ・ アッピアノス
    ・ ヨセフス (「ユダヤ戦記」「古代ユダヤ誌」の邦訳あり)

    ・ プリニウス(「プリニウス博物誌」の全訳あり) 

        ・    タキトゥス『年代記』
    ・ ユリウス・アフリカヌス
    ・ ポリャエヌス
    ・ オロシウス
    ・ ヘロディアヌス
    ・ ルキアノス 

 「歴史をどうかくか」(岩波文庫「神々の対話」所収)で 166年のパルティア戦役記述に関する安易な歴史書の乱立批判。ウォロゲソス、オスロエスの名が登場している。 

・ フィロストラス「ティアナ のアポロニウスの生涯」(京都大学学術出版会)に、アポロニウスがバビロンを訪問する話が出てくる。アポロニウスは紀元前後 の人で、フィロストラト スは2世紀の人なので、バビロンの話は、パルティア時代の状況を描いていると考えられる。当該部分は英 訳書のp79に記載がある。

2.アルメニア語資料
    ・ アガサンゲロス
    ・ モゼース・ゾレナシ
    ・ パウストス・ビワザンダシ
    ・ ラザール・パルペシ
    ・ エギシェ・ヴァルダペト

3.イラン語資料
    ・ 「Ayatkar i Zareran」 アヴェスター伝説に基づく詩英語訳はこちら

      邦訳は清水嘉隆 雑誌「オリエント」1976年19-2号「Ayādgār ī Zarērān(1)」pp53-68、雑誌「オリエント」1978年21-1号「Ayādgār ī Zarērān(2)」pp109-125

    ・ 「Draxt i asurig」 

その他 アルタバヌス3世がスーサの執政官と市民に当てた書簡。市の選挙が有効であることを伝えたもの。


ササン朝

1.ギリシャ・ラテン語資料

    ・ ディオ・カッシウス  パルティア滅亡とササン朝勃興についての資料を提供こち らに訳出してみました
    ・ アテナのデキシピウス  250年以後  
    ・ トレベリウス・ポリオ    300年頃
    ・ フラヴィウス・ヴォピスキウス 300年頃
    ・ アウレリウス・ヴィクター 300-360年
    ・ アンミアヌス・マルケリヌス 

  354-378年のローマ史を記 載。ユリアヌ スのシャープール2世への遠征部分の第1級1次資料。英 訳はこちら

    ・ エウナピウス 400年頃
    ・ エウトロピウス ユリアヌスの遠征に参加。 一次資料
    ・ モプスエスティアのテオドルス 428年頃没
    ・ キプロスのテオドレット 397-428年
    ・ ソクラテス・スカラスティクス 5世紀前半
    ・ ソゾメヌス 5世紀前半
    ・ ゾシムス  410年
    ・ プリスクス 5世紀
    ・ オロシウス 5世紀
    ・ ユーグリウス 600年頃
    ・ プロコピウス 

カワードとホスロー1世時代の1次資料。 ベリサリウスの東方遠征に従軍。

    ・ ペトルス・パトリキウス 外交官?の経験に基づく史書
    ・ アガシアス (-582年没) プロコピウスを継ぐ1次資料。

 クテシフォンの公文書の年代記を見ることが 出来たらしいが、内容的には伝承が多い。

    ・ メナンデール・プロテクター 6世紀 外交についての一次資料。
    ・ テオフィラクトス・シモカッタ 7世紀 

  ササン朝の制度とバフラーム・チョーベーンの 叛乱についての資料とアルメニア人史家セベオスと協力して執筆。  しかしあまり信用できない内容が殆どらしい。

    ・ マララス 6世紀
    ・ シンセルス 810年没
    ・ テオファネス 817年没(英訳あり)
    ・ ニケフォロス 
    ・ セドゥレヌス
    ・ ゾナラス 
    ・ 「Chronicon Paschale」 (7世紀)

2.アルメニア語資料

    ・ アガサンゲロス 「アルメニア人の歴史」 

456年に独立した複数の史書をもと に編纂さ れる。 アルメニアの初期キリスト教時代の歴史だけでなく、初期ササン朝の歴史も記載。 その史書はヨハン・マミコニアンの 「聖ナルセスの生涯」、「タロ ンの歴史」に継承される。
    ・ パ ウストス・ビウザンダシ(ファウスト・ブザンド) (5世紀前半) 
420-85年の重要な特に政 治・軍事資 料を残す。英訳サイトはここ
    ・ コルブのエズニック 450年頃 宗教関連
    ・ カザール・ パルペシ 504年に記す。
パウストスを継承し485年まで 記載。客 観的で信頼できる。英訳サイトはここ
    ・ エリゼー・ヴァルダペット(エ ギシュ・ワルダペト) (410-475年頃)
「ヴァルダンの歴史とアルメニア人の 戦争」  客観性を欠くが439-451年のアルメニアのゾロアスター教化についての重要な資料。
    ・ セベオス 第1次資料。
ペーローズ時代から滅亡まで。特 にホス ロー2世時代の重要資料。英訳サイトはここ
    ・ モーゼス・ゾレナシ 9世紀の編纂。取り扱いに注意が必要だが、地理資料として重要。
     
3.シリア語資料

    ・ 「アルベラの年代記」 パルティア滅亡とササン朝勃興期について重要。
    ・ 「カラカー・デトセロークの年代記」 

ササン朝初期の歴史とキルクク地域で のゾロア スター、マニ、キリスト教の混乱について。
    ・ 「エ デッサの年代記」 初期ササン朝のエデッサについて。
    ・ 「シリアのミカエルの年代記」 アンティオキアの司教ミカエル(1166-99)記載。
    ・ 「セールトの年代記」 
シリアのネストリウス派の文書。アラ ブ語で記 載。ササン朝でのキリスト教や税制度について。
    ・ アブルファラジの年代記 上述のミカエル年代記に依拠。
    ・ エフェソスのヨハネスの歴史 ホスロー1世時代について。他で見れない情報がある。
    ・ 登 塔者のヨシュアの年代記
第1級1次資料。ペーローズ時代から カワード 時代前半について詳細な情報を提供。邦訳を進めてい るサイトがあります。特に495年から506年のビザンツとペルシャの抗争がメインで、著者の時代にはこの戦争 を体験した人々がまだ生きていて、 直接話を聞いた著述となっているようである。
    ・ 「グイディの無 名者の年代記」 
670年以降比較的すぐに記載され た。590 年-アラブの征服に至る1次資料。
    ・ 「背教者ユリアヌスの小説」
    ・ テオドール・バー・コーナイ ゾロアスター、マニ、キリスト、マズダック教について。
    ・ ペルシャ人僧侶 イェスボクトの法律書
 

4.中世ペルシャ語資料

    ・ ササン朝の法律書「Matigan i Hazar Datastan」 (千の審判の書)難解で殆ど解読されていないらしい。 英訳 The Book of a Thousand Judgements: (A Sasanian Law-Book) (Persian Heritage Series (Zurich, Switzerland), No 39)
     
   また、ゾロアスター教の家族法についての書籍はこちら(「千の審判の書」や「デールカント」などからの抜粋)
   
Studies in Zoroastrian Family Law: A Comparative Analysis (Carsten Niebuhr Institute Publications)

  ・ 「Karnamag i Artaxer i Papagan」英語訳はこちら

パーパクとアルダシールについて殆ど 伝承の域 を出ないが軍事と政治制度については他で見られない情報もある。

・ザレールの回想 英雄文学
英 語訳はこちら
・ モーパッド カルティールの碑文 。英 語訳はこちら。「伊 藤義教 ゾロアスター教論集」に全訳あり。
 ナグシェ・ロ スタム碑文とナグシェ・ラジャブ碑文の日 本語参考訳はこちら

シャープール 1世、ナルセス碑文。 英語訳が「The History of ancient Iran」 (Richard N.Frye 著Verlag C.H.Beck社 ミュンヘン)に掲載されている。ネット上にも掲載されています。
 シャープールのナクシェ・イ・ロスタム碑文の英訳はこ ちらを参照。 日 本語参考訳はこちら。
 ナルセス パ イクリ碑文の英訳はこちらを参照日 本語参考訳はこちら。
  初 期の碑文一覧表はこちら。

    ・ 「エーラーンシャヒルの州都のカタログ」英 訳はこちら。(関連記事)。
  マークワートによる翻訳と註は伝 承と事実の区 別に多大な貢献をしている。

・ホスローと小姓(Xusrow ud Redak )
    メアリー・ボイス「ゾロアスター教3500年」に概要説明あり。全 体の3/4の部分訳はこちら。
・ボーグタグの子ワルズミフルの回想(Ayadg-i-Wazurgmihr)
    河出書房新社「世界の歴史8 -イスラム世界」伊藤義教「古代ペルシャ」、東洋文庫「カリーラとディムナ」に若干内容説明あり。

 ・封泥・印章史料 Rika Gyselen『Sasanian Seals and Sealings in the A. Saeedi Collection(ACTA IRANICA)』に研究がまとめられている。 

5.ペルシャ語資料

    ・ フィルダウシー 「シャーナーメ」 10世紀。
    インターネットアーカイブに英語訳が掲載されている。
      英 訳第一巻はこちら英 訳第二巻はこちら英 訳第三巻はこちら。 英 訳第四巻はこちら
        英 訳第五巻はこちら英 訳第六巻はこちら英 訳第七巻はこちら
英 訳第八巻はこちら。  英 訳第九巻はこちら。
    ・ バルアミー 「アルタバリーの歴史」10世紀、サーマン朝宰相による翻訳。
    ・ 「ムズマル・アル・タワーリーク」
    ・ 「イブン・アル・バルキーのファールス・ナーマ」 封建制度と地理についての1級資料。
    ・ 「シヤール・アル・ムルク」

 セルジューク朝宰相ニーザム・ア ル・ムルク 著。あまり信頼できない。
    ・ イブン・イスファンデャールのターリク・イ・タバリスターン」
            タンサールの手紙を含んでいる。
    ・ ザヒール・アル・ディン・マルアシーのターリク・イ・タバリスターンとルーヤンとマーザンダラーン
    ・ ハッサン・イブン・ムハンマドのターリク・イ・クム
    ・ ターリク・イ・シースターン

6.アラビア語資料

    ・ ヤアクービー 850年以後 政府や軍事関連情報
    ・ ジャーヒズ  869年没 「キターブ・アル・タージ」の著者 法廷儀礼関連
    ・ イブン・クタイバ 889年没 軍事関連
    ・ バラードゥーリー 892年没 アラブ征服時代についての年代記
    ・ ディーナワリー 895年没 他で見られない内容もあり、タバリーとも別個の資料を提供
    ・ タバリー 923年没 詳しくはこちらへ
    ・ サーイド・イブン・バトリーク(ユーツキウス) アレクサンドリアの司教 940年没
    ・ マスウーディー 956没 「Muruj al dhahab」「Kitab al tanbih」の著者。
    ・ ハムザ・イスファーニー 961年著(関 連記事
    ・ ムタハール・イブン・ターヒル・アル・マクディシー 966年著
    ・ タアリビー(サアリビー) 1038没。「シャーナーメ」の散文版。
    ・ ビールーニー 1048没 
    ・ 「ニアーヤット・アル・イラブ」著者不明 1050頃著
    ・ イブン・アル・アシール
    ・ イブン・ミスカワイ
    ・ アブルフィダー
    ・ フワーラズミー 「Mafatib al ulum」

  ・ 「アノーシーラワーン伝」

7.グルジア語資料

    ・4 世紀
                Iakob C‛urtaveli,Vita Šušanik著「 The Passion of Šušanik」

    ・5-6世紀
Vita Children Kolay著「The Passion of the Nine Children of Kolay
    ・7世紀
            Vita Evstat‛i著「The Martyrdom of Evstat‛i
            The Conversion of Kart‛li
            The Primary History of K‛art‛li (date uncertain)
    ・8-9世紀(特に790年頃813年)
           The Life of the K‛art‛velian Kings
         The Life of Vaxtang Gorgasali Continuation by PseudoJuanšer Juanšeriani
  ・9−10世紀
            Vita Nino The Life of Nino Royal Lists I-III (dates uncertain)
 ・11世紀(?) 
The Life of the Successors of Mirian


8.中国語資料

    ・ 魏 書(北魏書)巻102西域
    ・ 周 書 巻50異域下
    ・ 北 史 巻97西域
    ・ 梁書 武帝紀、西域伝
  ・ 南史 西域伝
  ・ 梁職貢図
    ・ 隋 書 巻83西域 

    ・ 旧 唐書 巻198 西戎
    ・ 新 唐書 巻221 下(西域下)



クシャン朝

  1.碑文
    スルフ・コタル
(Surkh Kotal)碑文 カニシュカ2世碑文。英 訳が 「The History of ancient Iran」 (Richard N.Frye 著Verlag C.H.Beck社 ミュンヘン)に掲載されている。Wikipediaに英訳あり。 邦訳宮本亮一『バクトリア史研究』(PDF)

   ラバータク碑文    

 解説がこ ちらのサイトにあります。全文の和訳が大 月氏 ―中央アジアに謎の民族を尋ねて―」小谷仲男 東方書店 第2版2010)や邦訳 宮本亮一『バクトリア史研究』(PDF) にある。な お当サイトでも参考訳を作成しています


 2.その他出土資料

   同上のラバータク碑文に関するサイトにその他出土資 料(「バクトリア文書」と言われる手紙、契約書など、332年から8世紀までの史料)についての解説がある(日本では、宮本亮一『バクトリア史研究』(PDF) が研究している)。

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