私が史料を読むもっとも重要な動機は、まずは全体の量と構成を知ることにあります。何がどのくらい物理的に残って
いるかどうか、ということを知ることは、結構重要なことだと思っています。百聞は一見に如かずといいますが、「一冊の
本」といってもその分量は様々であり、量という外形情報を把握することは重要だからです。
例えば、『漢書』は書かれた当時は、当時の編纂方法で全100巻、トゥキディデス『戦史』は8巻ですが、現代日
本語訳では、漢書は文庫一冊約450頁が8冊、『戦史』は文庫一冊約500頁弱で3冊、西洋古典叢書では2冊です。『漢
書』原書の一巻分は文庫邦訳平均36頁、『戦史』1巻分は文庫邦訳で約180頁となっていて、1巻あたりのボリュームは
5倍の開きがあります。タバリーの『歴史』は校訂本で10000頁、現代英語訳で各巻200頁くらいで全39巻もありま
す。
何がどのくらいの分量で書かれているのかを知ることは重要です。もしかしたら、現代の歴史書で頻繁に引用されて
いる部分は、冒頭や末尾の一部かも知れないからです。ほんの一部にしか書かれていない場合、他の部分に何が書かれている
のか、どうしてそういう構成となっているのか、興味が出るわけです。
ここで訳出している史料は、一部を除いて日本語訳が存在しないため、英文で読んだ当初、読み直す時に何度も英文を参照 するのが面倒なので備忘録代わりに作成したものですが、手っ取り早くボリュームや概要を知りたい方の参考になるかも知れ ないためネットで公開しているものです。大学の卒論やレポートの出典に引用・利用するには適切ではありませんので、利用 した英語や漢文や原典の記載箇所を手っ取り早く特定する場合等、何かの生産性向上のためのものであるため、あくまで情報 収集の効率化と参考のためにご利用ください。 関連記事ローブ古典叢書のギリシア語書籍とラテン語書籍の 割合。 |
古代中国の史料
(漢文からの参考日本語訳) |
後漢 王充『論衡』 宣漢篇 参考 日本語訳 |
常璩「華陽国
志」 巻3「蜀志」冒頭に描かれた古代蜀 揚雄 「蜀王本紀」 大越史記全書(外紀第一巻に記載されている文郎国に関連する部分 |
古代ローマの史料(英語版からの参考日本語訳) |
ディオ・カッシウス「ローマの歴史」に登場する
セウェルス帝・カラカラ帝のパルティアの遠征の記述 アエリウス・アリステイデスの『ローマ頌詞』参考日本 語訳 |
サーサーン朝の史料(英訳版からの参考日本語
訳) |
ボー ラーンとアーザルミードゥクト-セベオス年代記、タバリー5巻、11巻、旧唐書からの訳 ホスローと小姓 |